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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/12/28 (Sat) 15:35:32

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No.180
2008/03/29 (Sat) 12:14:23

Live Show 第43話です。

本当に言いたいことを伝えるのは難しい。
それを文章にするのはもっと難しい。


出演 : V6







 恐いから、離れられないだけなのだ。そんな、子供じみた理由。

 

 メンバーが決めるアルバム曲の選考があまりに難航して、ファン投票の結果発表に軽く追い越されてしまった。だからといって慌てて決めるでなく、すべての曲が決まったのは、いい加減にレコーディングを始めないと、アルバムの発売が延期になります。というマネージャーの苦言を聞かされた頃だった。それは曲が決まらなかったこともあるけれど、後で聞いた噂だと、トニセンの3人が、6人そろってでなければ打ち合わせはしない。と、珍しく駄々をこねたらしい。長野、森田、岡田がドラマの撮影に入り、6人で同じ日にスケジュールを切るのは困難だなんて、ちゃんと分かっているはずなのに。その切羽詰ったレコーディングの初日、これもトニセンのワガママが考慮されたのか、6人がスタジオに揃うという状況。ブースの中では渦中の三人が楽しそうにレコーディングをやっている。岡田はガラス越しに茶々を入れながら楽しそうに参加していたが、少し離れて座っていた残された二人。持ち出された話題は今回の裏事情。三宅の話を聞いて、森田は笑ってしまった。

「なにそれ。ただのガンコジジイじゃん。」

笑ってしまったし、嬉しかった。

「やっと、見れたか。」

安堵したように吐き出された言葉に、仕入れてきた情報をキャンキャンと話していた三宅が、首を傾げる。

「見れたって、何を?」

ストレートに聞けば、森田は珍しくも満面の笑みを浮かべて、答える。

「俺さ、井ノ原くんのこととか分かっても、何も言わなかっただろ?秘かに待ってたんだよ。っつーか単に見たかったっつーか・・・V6がさ、元の姿に再生するトコ、見たかった。やっぱりこの6人でV6なんだって結果、見たかった。だからズルイかもしんねぇけど、何も言わずにじっと待ってたんだよ。」

切なる望みが叶うようにと、祈るような気持ちで待っていた。

「ズルくない。剛は俺よりもずっと、大人だ。」

三宅の中でここ何日か、気持ちいいくらいに順調に嵌っていたパズルのピースの、一番気になっていた部分が今きれいに嵌った。至極当たり前で壮大な願いを抱えて、たった一人で待ち続けた森田は、きっと強い。

「待っていられたのは、みんなをちゃんと信じてたからでしょ。俺は、違うから。喚いて罵ってみんなの心をかき乱しただけ。みんなをイタズラに困らせただけ。」

思い出すだけで、吐き気がする。自分の振る舞いのせいで、大切な人に辛い表情をさせた。

「本当は、戻る資格なんてまったくないのにね。」

自嘲気味に笑いながら言えば、森田はめったにしない、両の掌を三宅の頬に当て、やさしく包み込む。スキンシップなんて、皆無に近かった。一緒にいることは多くても、微妙な距離は取り続けてきたのに。

「困らせるだけ困らせてやりゃ、いいんだよ。それが許されるのは、お前だけの特権だ。」

「とっけん?」

「お前っていう、三宅健っていうヤツだけが利用できる、特権。みんな本気では怒んねぇだろ?お前だけなんだよ、自分の気持ちに正直でいるの。思ったことをまっすぐに口にしてくれるから嬉しくて、聞いちまうんだって。だから、いいんだって。お前はそのままでさ。」

「それって俺、スゲェわがまま放題なヤツってことじゃん。」

「ちげーよ。坂本くんがいつも言ってんじゃん。自由なだけだって。」

「そうだけどさぁ・・・」

「変わんなよ。そういうお前が、俺はいいと思うし。」

「なんかビミョー。」

三宅は複雑そうに少し笑う。森田は満足げにブースの中とコチラにいる岡田のやり取りに視線を戻す。代わり映えしない大好きな光景が、そこにある。

 想う気持ちを無くさなければ、返すチャンスはいくらでもあるだろう。

 区切りが付いた三人がコチラへ戻ってきた。何か楽しそうに話していたが、特に中でも井ノ原が大はしゃぎで、テンションの高さは若干引いてしまうほどだ。絡まれて困ったように岡田が相手をしていると、坂本がおもむろにそれを引き剥がし、空いていたソファに強制連行する。

「なに?なに?」

ソファに深く座らされた井ノ原が抗議と困惑を織り交ぜた口調で聞けば、坂本はよく冷えたスポーツドリンクを押し付け、くしゃりと頭を撫でる。

「お前は休憩だ。」

たった一曲歌っただけで休憩を促すなんて、相変わらず甘い。そんな風に思ったが、それは的外れな感想だと、次の長野の言葉で知ることになった。

「大人しく座ってな。冷えピタもらおうか?」

「ん。大丈夫。」

彼は発熱中らしい。周囲に悟られないように隠すことが上手だが、坂本と長野には最初からあっさりと見抜かれていたらしく、まだ大丈夫。と必死に食い下がっている。元気いっぱいの挨拶と共にスタジオ入りをし、レコーディングが始まるまで、うるさいほどにぎやかに昨日のロケで起こったエピソードを語っていた。聞こえてきた歌声だって、普段と変わりなく聞こえたのに。

「本当に、大丈夫なの?」

三宅が聞けば、井ノ原はひらひらと手を振って、平然と立ち上がった。

「だーいじょうぶ。二人が大げさなだけで、実際に微熱程度なんだから。」

本人からの言葉は、何より信用ならない。坂本と長野に確認するように視線を送れば、二人は苦笑しながらも頷いた。今のところは、とりあえず微熱で済んでいるらしい。「ほらぁ!」と井ノ原は自身あり気にふんぞり返るが、すぐに長野に襟首をつかまれてソファに戻されてしまった。

「調子に乗らない。そうやって微熱で現場に来て、大騒ぎして、高熱で倒れそうになりながら帰っていくのは誰?」

「今日は大丈夫だよ!ホント!絶対に大丈夫!」

嫌に食い下がるな。そう思った長野は、泣き出しそうな三宅の表情を見て、すぐに気付いた。ワガママで元気を主張しているわけではない。井ノ原はこの場で、元気でなければいけないのだ。

「おチビのよっちゃんだからね、甘やかしてあげないと泣いちゃうでしょ?」

ふわりと厳しい表情を崩し、冗談交じりの表情を表面に貼り付けた長野がいじわるをするように笑う。

「おチビとか言うなよ。」

本当に「おチビ」という呼び方がしっくり来るような膨れ面をする井ノ原に、「ハイハイ。」とおざなりな返事をして、長野はソファに座り、複雑そうに視線を泳がせている三宅に言った。

「心配するだけ損だよ、健。甘い顔してもらって、調子に乗ってるだけだから。」

「そうなの?」

「そう。今日の帰り、坂本くんを飲みに誘ったり出来るくらいだし。」

そこまで聞いて、三宅の表情はやっと解れた。

「なんだよ、もう。スゲー責任感じちゃったじゃん。損したー。」

「損とかヒドくない?」

「酷くない。レコーディング、行ってくる。」

森田と連れ立ってブースに入っていく三宅を微笑ましく見送りながら、井ノ原は背もたれに体を預けて、大きく息をついた。

「ごめんね、長野くん。」

「ホントだよ。急に話合わせるの、大変なんだからね。」

「うん。でもさ、これで俺がすごく体調崩してるって分かったら、健が気にするでしょ。」

「お前、今日はマジでまっすぐ帰れよ。岡田の練習なら、俺が付き合うから。」

「ありがと、坂本くん。って、え?っと、え?」

「バーカ。とっくにお見通しだ。」

ポカンとする井ノ原に、坂本と長野は顔を見合わせ、笑う。

「健との約束、律儀に守ってたから疲れが出た。なんて思われたくなかったんだよね。」

「3人が揃ってても、ばらばらでも、練習してる情報仕入れて顔、出してたんだろ?」

敵わない。井ノ原は心の中でため息をつく。押し切った以上は責任を持って最後まで付き合おうと思って、できるだけ三人の練習に付き合うようにしていた。それをあっさりと見抜いているあたり、この二人の背中はまだまだ遠いものだと思わされる。微熱があることだって、スタジオに来るなり言い当てられてしまったし。

「ホント、いろいろ、ゴメン。」

小さく告げると、両隣から頭を撫でられて髪の毛を引っ掻き回された。

「ちょっとぉ。」

いいだけ乱れた頭を撫で付けるようにして押さえ込みながら文句の意味を込めた声を上げれば、目の前に手が差し出されて、思わず身構えた。すると手を差し出した坂本はニヤリと笑い、

「貸せ。」

と、短く言う。

「貸せって?」

突然に「貸せ」と言われても当てがない。と井ノ原が首を傾げれば、坂本はさらに深く、勝気な色合いも含めて笑うと言葉を足した。

「練習に付き合うために、パーカッションのこと勉強したんだろ?その資料だよ。」

この人は、根っからのリーダーだ。関わる以上はとことん責任を持つ。こんなにも自分にたくさんの課題を課して、こなして、それでもまだリーダーとしての合格点を自分に与えようとしない坂本は、だからギリギリ崖っぷちになって弱音では済まされないようなことを言い出す。井ノ原はカバンから資料を出して坂本に渡そうとして、その手をふいに引っ込めた。

「お前は子供か。」

坂本が呆れたように言うが、井ノ原はにっこり笑って答える。

「貸してあげるから、坂本くんのも貸してよ。」

今度は坂本がポカンとする番だ。それこそこちらこそ当てがない。なんて言いた気な表情をしている。井ノ原はさっきの坂本を真似るようにニヤリと笑うと、同じく言葉を足す。

「ライブのこと。もう結構決まってるって聞いたよ。その資料、貸してくれたら俺のも貸す。」

「あのなぁ、それとこれとは・・・」

「同じでしょ。坂本くんは独りでパンクするまで抱え込んで、長野くんとか俺に「リーダー代わって。」って言うから。だから、そうなる前に強制的に協力する。聞きたくないから。坂本くんのそういう痛い言葉、聞いたら泣きそうなくらい後悔するんだから、もう先に聞き出して、一緒に頭抱えることにする。だから、貸して。」

じっと、互いに睨み合う。譲れない線を動かすことは、葛藤を要する。井ノ原はタダで転ぶつもりなんて毛頭ないし、坂本は自分以外のメンバーに精神的な負担はかけたくない。出来る限りの力になりたくてしている提案のつもりだ。相手のことを考えている同士、無言で続くそちらが譲れ攻撃。たった一つの動作、資料を相手に差し出すという動作をすればいいだけだ。ただ、その動作は気持ちと連動しているのだから、容易なものではない。まだまだ継続中、無言の駆け引き。それを断ち切ったのは、ひとこと。

「坂本くんの負け。」

有無を言わさぬ圧倒的な笑顔で繰り出されたひとことは、破壊力抜群で坂本の意地など簡単に無視して踏み越えて主張する。

「俺も井ノ原に賛成。だから2対1で坂本くんの負け。」

「なんだよ、勝手に対戦方式とか。」

「V6のメンバーの名前、言ってみて。」

「は?」

「言ってみて。」

長野が静かに怒っていることを敏感に察知して、井ノ原は「言いなよ。」と坂本を促す。急に振られたワケの分からない質問に思い切り戸惑いながらも、坂本はぐるりとスタジオを見回して、確認するかのように指を差しながら、

「長野、井ノ原、健、剛、岡田、んで俺?」

最後は長野を顔色をうかがうように疑問形にしたりして答えてみた。

「ふぅん。ちゃんと言えるじゃん。」

「当たり前だろう。バカにしてんのか?」

たった一つしか年が違わないのに、普段から他のメンバーと一緒になって坂本を年寄り呼ばわりする長野は、やっぱり今日も平然と答えた。

「してるよ。」

「なっ・・・・・」

「周りが見えてなさすぎるから、この人本気でバカなんだなぁって。自分で6人でV6だとか言っておきながら、なんでも自分一人で抱え込むのがリーダーとして当たり前とか思っちゃってるとことか、どうしようもないなぁって。」

頑丈に鍵をかけたその部分に立ち入れるのは長野だけ。偶発的な状況に便乗して入り込むことはできても、自分から、正面を切って入ることができるのは長野だけ。すっかり会話に乗り遅れてしまった井ノ原は、もう何年も見てきた目の前のやり取りに、ぼんやりと思考を逡巡させる。とても長い長い時間を共有してきたこの二人の中に、昔は自分も加わってやるのだと気負って無理な背伸びをした。それをしなくなったのは、どんな理由からだったのか。自分などが入る隙などありはしないと諦めたのか、それとも、傍で見ていられるだけでいいと納得したのか。まだV6が結成されて間もない頃に、思ったことがあった。この二人は自分にとって・・・・・

「またやってんの?」

邂逅の紐解き作業を遮ったのは、ゆったりとした声。

「岡田はさぁ、あの二人のこと好き?」

「大好き。」

「え?」

「え?」

間抜けな会話だった。気持ちを聞きたくて振った質問だったけれど、岡田があまりにも簡単に、しかも「大」まで付けて寄越したものだから、井ノ原は疑問符を零してしまう。疑問符は当たり前なのだろうが疑問符で返されて、短く空虚な間の後に、先に笑ってしまったのは岡田のほうだった。

「トニセンってさぁ、ホンマ、ふとした瞬間に可愛くなるねん。ズルイわ。」

どう切り返したものか。

「普段はごっつ大人やのに、急に可愛いスイッチ入るからドキッとさせられてまう。言いたいこといっぱいあっても、飲み込んでまう。そういうの、ズルイ。」

それは無意識の行為に過ぎない。

「でも、やから、一緒におっても大丈夫なんかもしれんね。」

大丈夫・・・・・

「なんて、生意気かな。」

「ドイツもコイツも突き放してんじゃねーよっ!」

「いの、っち?」

「坂本くんも長野くんも健も剛も岡田も俺もみんなっ、突き放すなよぉ。」

心臓が止まってしまいそうな、衝撃。スタジオすべてを巻き込みそうな強く激しい叫びは、坂本と長野の会話を止め、岡田をフリーズさせ、ブースの中にいた森田と三宅に雰囲気を突き刺し、レコーディングの作業中だったスタッフの手を止め、すべての意識を集めて、弾けた。それを発した張本人である井ノ原は子供のように泣き崩れ、嗚咽交じりにもそもそと零し続けている。「突き放すのは嫌だ。」と。埋もれさせられたままでいた本音は、表面化した。

「熱が、上がっちゃったんだね。」

とても自然に近づいた長野が、優しく井ノ原の背中をさすりながら、そうっと額に手で触れる。坂本は苦虫を噛み潰したような表情でただ立ち尽くし、森田と三宅が慌てふためいた様子で駆け戻ってきた。岡田は、その場から動くことが出来ない。空気を察知したスタッフが、穏やかに告げた。

「今日はここまでにしましょう。」

世界は再び、暗転してしまったのだろうか。

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