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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/01 (Wed) 01:18:45

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No.183
2008/04/04 (Fri) 20:32:16

アンラブリンク『童話企画』出展作品です。

いつも通り加筆・修正を加え、前後編に分割させていただきました。

HEY!HEY!HEY!・・・・・寒そうでしたね。
J-webでリーダーからメールが来てビックリしましたよ。


出演 : 井ノ原 快彦 ・ 三宅 健









依存指数限界突破

 

 

 ITバブルの入り口の頃に就職を決めたから、そこから数年は、本当にベタな表現にはなるけど「左うちわ」な生活をさせてもらっていた。社会人1年生のクセに、結構な家賃のマンションに住んで、外車とまではいかないけれど高級に分類される車を乗り回して。

 でも、始まりがあれば終わりがあるのは世の常。ITバブルは終了した。いともあっさりと。会社の経営は見るも無残な有様で、大量リストラが敢行されて、お世話になった上司や先輩たちは次々に自主退職をしてしまった。そんな中で今のところ、ボーナスカット、給料も3割カットの憂き目に遭いながらも、首の皮一枚で繋がっているのは奇跡かもしれない。収入が激減すれば、当然ながら生活レベルは急落。カードの支払いを延滞したくなかったから、車を売ってみた。ギリギリで、支払いには事足りて安心。一銭の余裕もなく使い切ったから、生活の足しとまではいかなかったのが少々残念だ。

ということで、わたくし、井ノ原快彦、家賃滞納でマンションを叩き出されました。会社から帰ってきたら、家財道具一式、見事にマンションの前の路上に並んでいて、なんというか、驚くよりも管理会社さんに少しだけ感謝と謝罪の念を抱いてしまった。おそらく、管理会社的には早々にでも退去させたかったに違いない。家賃滞納期間が、かれこれ半年だから。でも黙って強制退去に踏み切らずに、それをほのめかす張り紙が玄関のドアに何枚かしてあった。3ヶ月前くらいから。なのに家賃は払えなくて、ついに来た張り紙が、「強制退去を敢行いたします」のお知らせ。先々週中に家賃を1か月分でもいいから振り込めばセーフだったらしいけれど、今の懐具合では土台無理な話で、張り紙通りに管理会社がことを運べば、家財道具一式は先週末には路上に出されているはずだった。ならばどうして今日まで日がずれ込んだのか?それは週末から昨日まではずっと雨だったから。そして重ね重ねご丁寧な張り紙。「強制退去は、雨天のため延期いたしました。」この良心的さ、泣けます。まぁ、結局は雨も上がって、放り出されたんですけど。でもこれって、貴重な初体験。普通に生活していても、なかなかできないものでしょ?なんて考えているあたり、自分はかなりの楽天家なんだなと思う。

 路上に家具を並べて暮らすなんてとんでもない話なので、さっそく新たなマンションを確保。このマンションが素晴らしい買い物だった。賃貸だけど。けど、ただの賃貸じゃない。スーパー賃貸。駅近、コンビニまで徒歩1分、築1年の2LDKロフト付。バス・トイレはもちろんセパレート。オートロック、9階建ての7階でバルコニーがある。こんなすごいマンションなのに、家賃はたったの6万円ポッキリ。敷金・礼金・仲介手数料ナシ。すごくない?とんでもない激安物件です。ただし、そういう物件ならではのいわく付きではあるんだけど。けど、それさえガマンすればいいわけ。ある意味とっても簡単。快適な生活が格安で手に入るんなら、全然OK。ちなみに、気になるいわくの内容は、入居者が4人連続で変死体で見つかってるんだとか。みんな、すごく幸せな夢を見ながら寝ているんじゃないかと思えるくらい、穏やかな死に顔だったらしい。穏やかな変死体って違和感があるけど。これまでの最長居住記録は2ヵ月と10日。たったそれくらい?記録更新して見せようじゃありませんか。死体でも幽霊でも、真っ向勝負で打ち負かしてやろうじゃない。

 そう息巻いていたのは2ヶ月前の話。現在、予告通りに部屋で待ってくれていた「いわくさん」と・・・・・楽しく暮らしちゃってたりしますが、何か?ワガママ、自分勝手、とにかく横柄で、口の悪さたるや下手をすれば殺意を抱きそうな、けれど見た目はとっても可愛らしい男の子の地縛霊。中国の貴族が来ていそうな女物のドレスを身に纏って、しかもご丁寧にドレスは毎日違うもので、お気に入りは黒の大きくスリットの入ったロングドレスなのだそうだ。それを着て現れた日、約2時間は鏡の前でファッションショーを開催していた。テレビを見ることと甘いお菓子を食べることが大好きらしい。勝手に出歩いて自分でチェックしているのか何なのか、特にお菓子には詳しい。どこの店に限定のケーキがあるだの、どこのデパ地下においしいスイーツの店が出店しただの、コンビニでチョコレートの新製品が今週は何種類発売されただの、インターネット限定のお取り寄せスイーツがあるだの、毎日のように甘ったるい声で言い寄っては、用意させる。手に入らなければ全開のポルターガイストで大暴れ。部屋を台風一過よろしく荒らし尽くしてくれる。生きている人間と同じように飲み食いするくせに、幽霊の力もフル活用。時々、悪魔なんじゃないかって錯覚しそうになるほど。そういう意味で手に負えない幽霊と楽しく暮らしていられるのは、彼の笑顔と見返りだと言って見せてくれるあたたかい夢が理由。地縛霊くん、基、自称17歳の少年、三宅健くん、健ちゃんは、かなり俺を癒してくれてます。これ、本当。

 不景気ながらも楽しい毎日。独り暮らし(?)なのに、家に帰ったら電気がついていて、「おかえり。」と笑顔で出迎えてくれる人、じゃなくて幽霊がいるのは嬉しい。朝はちゃんと、「いってらっしゃい。」ってお見送りもしてくれる。世間話なら付き合ってくれるから、退屈する暇なんてありません。会社の愚痴は、さすがに聞いてくれないけど。一度、言ってみたけど「つまんない。」とあっさり却下された。それに、何より、健ちゃんの見せてくれる夢が幸せを感じさせてくれるんだな。はっきりしたものから曖昧なイメージ的な夢までいろいろあるけど、起きたときに「今日も頑張ろう!」って思えるのが最大のポイント。ただ、何となく気になっていることがある。なんとなく、なんとなく、ずっと微妙に感じてる違和感。だけど勝手に自分の中で確証してたり。この違和感の正体が分かってしまったら、健ちゃんを失ってしまうときが来たということなんだろうって。だから自分の中だけにしまってる。気のせいに決まってる。毎日が楽しいんだから、それで充分。

 健ちゃんと暮らすのには、お金が必要なわけ。本当はずっと家で一緒に過ごしていたいけど、仕事を辞めれば、当然収入が途絶える。したら健ちゃんの大好きなお菓子が買えなくなっちゃう。その上電気代が払えなくなったら、健ちゃんがこれまた大好きなテレビが見れなくなっちゃう。そうなったら、三行半的なノリでどこかに消えてしまいそうでいやだから、頑張って仕事に行ってた。仕事にありつけるのは、会社が雇ってくれるからであって、今日、その雇ってくれてる会社を、俺は失った。不景気っていうのはやっぱり、例外を認めてくれないらしい。叩かれました、肩。リストラだそうです。今月いっぱいで解雇。異論なく素直に受け入れてくれるなら、退職金を奮発してくれるんだとか。奮発ってどれだけ奮発?会社の経営状態は芳しくないから、たかが知れてるんじゃないの?とも思ったけど、どうしてか、あっさり「分かりました。」なんて笑顔付きで答えてた。苦渋の選択っていうやつ?もめるのはゴメンだから。で、考えてるわけだ。これからどうしよう。いくら家賃が安いとはいえ、このままだと払えなくなることは火を見るより明らか。あのマンションも強制退去?それは困る。あの部屋を出れば、健ちゃんとの楽しい毎日も終わっちゃうじゃん!・・・・・アルバイト、しますか。アルバイトしながら、次の仕事を探そう。あの部屋だけは絶対に、出て行きたくない。

 という超ブルーな心境でマンションに帰ると、玄関で迎えてくれるのは癒しの笑顔。充電完了。

「おかえり。」

「ただいま。」

交わす言葉と笑顔。もう元気になれた。会社をリストラ?あー、そんなこともあったかもしれない。でも健ちゃんの笑顔の前ではそういうの、関係なくなるわけ。今が幸せなら満足なんだなぁって思ったりして。

「今日はねぇ、囲炉裏庵のきんつば、買って来たんだよ。」

一日限定100個、行列必至の人気モノを手渡せば、健ちゃんは嬌声を張り上げて大喜びしてくれる・・・あれ?してない。なんか苦笑い?もしかして、嫌いだったとか?や、けどテレビで見て「食べたい!」って連呼してたし・・・・・

「井ノ原くん、今夜はとっておきの夢、見せてあげるね。」

「健ちゃん?」

「リストラって言われて、悔しかったんでしょ。でもちゃんと俺の前で笑おうとするなんて、偉いって思う。だから特別。」

ああ、お見通しですか。

「ありがとね。」

 いい夢を見るために必要なんだ。とかって、健ちゃんは絶対に部屋中に香を焚く。しかも触ったりはできないんだけど、ああ、幽霊の作った幻とでも言うのかな?部屋中に花が溢れかえって、埋もれそうな気分になる。ただ、その気分もつかの間。焚かれてる香の甘くて纏わり着くような匂いが、体中を這うように包み込む。そうして、ゆったりと、優しい手に引きずり込まれるように、夢に堕ちる。リラックス効果のあるアロマテラピー的なものなんだろうけど、キャンドルとか香炉とかは使ってない。花だって目が覚めたらきれいになくなってる。幽霊って、意外といろんなことができるものなんだね。

「おやすみ。夢の中で、お幸せに。」

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