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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/12/28 (Sat) 15:38:26

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No.179
2008/03/28 (Fri) 10:06:15

Live Show 第42話です。

長野博が卵から生まれた何かしらの生物だと発覚(笑)。
すごいですね、監督さん。


出演 : V6

 珍しく落ち着きのないその様子を見て、長野は「レアなもの見ちゃったな。」などと微笑ましい気持ちになっていた。赤信号に引っかかれば「もう。」と小さく呟き、時計を繰り返し見て、いつの間にか苛々と貧乏ゆすりを始めて。岡田がこんなにも落ち着きを無くす場面には、そうはお目にかかれない。ちなみに二人は今、タクシーに乗っている。打ち合わせに向かう途中なのだが、告げられていた開始時間などはとっくの前に過ぎてしまった。ドラマの顔合わせの仕事で一緒だったのだが、話の長いプロデューサーの語りに付き合わされ、共演者の挨拶や世間話に付き合わされ、そんなことはよくある話だが、よりによって打ち合わせに間に合わないということが、岡田の冷静さを掻っ攫ってしまったらしい。一通りのことが終わるなり局の廊下を全力疾走で突っ走り、タクシーに乗り込むなり運転手に「これ以上ないくらい飛ばしてください。」と告げた。岡田は仕事に対してとても誠実で、どんな現場でも大切にしている。なのにこれほどまでになってしまっているのは、V6を想ってくれているから、いや、今回の事で大きく入ってしまった亀裂を埋めることに必死だからなのか。いずれにしても、軽い渋滞に巻き込まれたタクシーが飛ばせるはずもなく、時間は容赦なく過ぎていき、どんどん余裕を無くしていく岡田をさすがに見ていられなくなってきたのは事実。

「岡田、深呼吸しようか。」

突拍子もない長野の提案に、岡田はキョトンとした視線を向ける。

「打ち合わせを大切に考えてくれるのは嬉しいけど、少し落ち着こうよ。」

「けどっ、もう時間過ぎてるし・・・」

「がんばりすぎたら、普通に見えるはずのものも見えなくなっちゃうんだよ。これ、最近学んだこと。井ノ原のおかげでね、学んじゃった。」

やっと視線が交わった。貧乏ゆすりも止まる。

「コンビニ、寄らなくても大丈夫?」

「えっ、あ、えーと・・・」

「チョコレートにハマってるんでしょ?運転手さん、その先のコンビニで止めてもらえますか?」

長野は終始冷静で、顔合わせの最中はずっと落ち着いていて、タクシーに駆け込んで岡田が行き先を告げることなどすっ飛ばしてこれ以上なく急いで欲しいと言ってしまったときには、ちゃんと運転手に行き先を告げていて、今だって、最近の岡田がコンビニでチョコレートをよく買っていることに気が回って、フォローじみた立ち居振る舞いが自然とできていた。どんなに背伸びをしても、こういう時に敵わないと痛感させられる。

「博なら、もっとうまく、健くんに取り入れたんかもしれん。」

ぐるぐると真っ暗な迷路の中で無造作に歩き回る三宅を、正確に導くことが出来たのかもしれない。

「健は俺の言うことになんて、きっと耳を貸さない。だから岡田と剛で、うまくやりな。」

「そんなことない。博とか、いのっちのほうが・・・」

「そんなことあるんだよ。俺たちがカミセンだけの大事な世界に、土足で踏み入るわけにはいかない。恋のシグナルのときだって、そうだったしね。」

守るべき世界がある。そこは部外者の侵入を決して許さないテリトリー。

「なんか博、ほんまにお坊さんになれそうやなぁ。」

「生臭坊主に?」

「ドラマではそうやけど、実際はすごい、優しいお坊さんになれそう。」

「岡田のほうこそ、そのルックスを生かして詐欺師とか、なれるよ。」

「やめてや。詐欺師って意外と大変やねんで。法律のこととか、めっちゃ知らなアカンし。」

「問題はそこ?」

「一番の大問題やわ。セリフ、頭に入ってけぇへん。」

笑いながら話す岡田の肩からは、いつの間にか力が抜けていた。他愛のない冗談でも気が紛れるならばいい。その手の中にあるカミセンという大きな世界は、たった三人だけのメンバーのものだ。三人だけで守らなければならない世界、三人だけが帰ることを許された場所。長野は思っている。手を貸すことは出来ても、根本的な解決に立ち入ることは出来ないと。不可侵のその部分は、どんなに手を伸ばしても触れられない。6人で構成されるV6の中にある、独立した特別な世界。

 

 何かをしてやろうと上から見下ろすのでなく、何かを共にやろうと肩を並べて手を取ることのほうが、ずっと難しい。だから、難しい選択に背を向ける大義名分が欲しくて、年上のメンバーであるという立場を利用していただけなのだとしたら、自分はなんて愚かな人間なのだろう。結局は他の二人がフォローしてくれないと、動けなかったのに。なのに、リーダーなんて肩書きを一人で背負っている演出をしたりして、愚の骨頂にもほどがある。こうして再び6人で議論を交わすことが出来るのは、決して自分の力ではない。また助けられて、背中を押されただけ。今だって小さな窓から見える空が青いと感想を抱いている時点で、自分は議論の輪の中から安全地帯へ非難している証拠。とてもよく聞こえている声に、干渉する手立てが見当たらない。こんな風に思いの渦に沈みこんでいる間に、嵐が過ぎてくれれば、

「ねぇ坂本くん、いつまで放し飼い?」

見守るという形で繰り広げられる議論の傍観者でいた長野は、ため息交じりに当たり前の疑問を投げかけてきた。もうどれだけ長い間、4人での会話は交わされ続けているだろう。止めようとは微塵も思わないけれど。

「気が済むまでやらせなきゃ、意味ねぇよ。」

「知ってる。」

議論の中心は井ノ原と三宅。的確に反論を繰り出す岡田、ピンポイントで反論を短く告げる森田。その構図は長い間さほど変わることなく、答えにたどり着く兆しは見えそうで見えず。予定調和の範囲内で、坂本と長野は待機を余儀なくされた。口を挟んで場を諫めることは簡単だが、してはいけないことでもある。これはV6にとって絶対に、必要な時間なのだ。

「井ノ原はさ、必死なんだよな。いつも必死で生きてる。」

「それが今回みたいな事態、引き起こした原因でもあるけどね。」

「もっと、アイツの力になりたいと思うんだ。思うのに、どうすればそれがうまくできるのかが分からない。」

「V6の中で、一番扱いが難しいから。」

「大切な人のためになら、どんなに大変だとしても何かをしてやりたいってのが、人情だ。それを井ノ原はよく知ってるから、あんな風にカミセンのために道を用意できる。けど自分のことには呆れるほど無頓着で、誰かに助けられることが間違ってると勘違いしてんだよ。」

「恐いんじゃない?」

「何が?」

「弱い自分を知られて、俺たちに壊れ物扱いされるのが。」

「そんなこと・・・・・」

「井ノ原が強がりの負けず嫌いの意地っ張りだなんて、ずっと昔から分かってることでしょ。その上で、一緒にいることを決めたんじゃない。」

井ノ原をうかがい見る。今もその限られた肩に許容量以上のたくさんのものを乗せて、全力ですべてに立ち向かっていた。

「往々にして、年上なんてそんなもの。か。」

Dahlia、楽しみだね。」

「ああ。」

自問自答に出される答なんてない。けれど何度でもヒントをくれる大切な存在がすぐ近くにあることで、また前に進むことが出来る。愚かで非力なリーダーでもいいと言ってくれる人が一人でもいてくれるのなら、逃げずに直視し続けるのだ。

「うまくいかなかったら、そのせいでアルバムにケチがつくんだよ。」

「できるよ!カミセンとならできる自信があるんだっ。これまでだっていろんなこと、みんなで挑戦してきたじゃん。」

「じゃあトニセンがやってみなよ!楽器って大変なんだよ!」

「ダメ!俺らだけでやっても意味なんてない。6人でやらないと意味ない。」

「そんなのっ・・・そんなの分かってるもん。でも、本当に俺たち、出来るとは断言できない。」

「俺が断言する。できる。三人ともできる。」

「勝手に断言されても、困るんだけど。」

「いいの。少なくとも俺と坂本くんと長野くんは、出来るって思ってるから。」

井ノ原が坂本と長野を振り返る。二人は笑顔を作って、はっきりと頷いた。

「ね?」

三宅が森田と岡田を見る。森田は肯定の代わりに息をつき、岡田が苦笑交じりに頷いた。

「言ったからには、付き合ってよね。」

この軌跡と奇跡は必然なのだと、胸を張って言えるリーダーであろう。坂本は立ち上がり、打ち合わせの進行役に戻った。

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