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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/01 (Wed) 04:37:10

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No.175
2008/03/20 (Thu) 22:25:27

Live Show 第38話です。

カミセンCM見ましたが・・・・・
いいですね。

末っ子宅にて焼肉大会!けれどタレ忘れる。
いいですね。


出演 : V6(森田剛→名前のみ)






 陰鬱と暗い海の底で、息を潜める。

 今いる場所は、薄っぺらい壁を隔てたすぐ隣りに膨大な影がある。その存在が強すぎて見失っている日常があるのだとしたら、自分はもう、戻れないのかもしれない。

 坂本と長野が取り戻そうと必死なことも、井ノ原が結局は元鞘に収まったことも、森田が何を考えているのか平静でいることも、岡田が必死で手探りをしていることも、すべてが三宅にとっては迷走の原因の一端に過ぎなかった。周囲が非日常な変化を見せれば、順応できない自分が混乱する。ほんの数歩だけでも歩み寄れば変わるのだろう。必要性を無視すれば、何も気付かないふりを決め込むことができれば、もうしばらくはV6でいることができるはずだ。何もなかった。何も見なかった。そう割り切ってしまうだけでいいのに、そうできない。拗ねてへそを曲げた子供のような自分の所作に、嫌気が差す。

 岡田が話している。新商品だというチョコレートをくれた。クールなキャラのはずの男は、必死にチョコレートの批評を披露している。話しかけるきっかけのアイテムとして使っているのだろうけれど、残念ながら話の内容はまったく耳に入っていなかった。他愛のない世間話を聞いて笑っていられるほどの、余裕がない。チョコレートの新商品なんてどうでもいいし、岡田の近況を聞かされても「そう。」とか「ふぅん。」とか短い返事で事足りてしまう。それらがあとどれくらい続くのか、次第に耳鳴りのようなノイズのような、癇に障る音に変わっていく。

「あのさ・・・」

「恋のシグナル!」

「は?」

「ああいう歌、今度はV6で歌うん。で、6人でチョコのCMとか。かわいくない?坂本くんにしてみたら苦痛やろうけど。」

「そうだね。」

つまらない話だ。

「あの歌、トニセンが歌ったらさ、どうなんねやろ?可愛くなんのかな?っていうか、可愛いトニセンって時点で違和感発生しそうやな。でもファンの人は喜びそう。健くんはどう思う?」

「さぁね。」

どうでもいい。

「憶えてる?CMやったとき、常識的に考えて絶対におかしいやろ?っていうくらいチョコもらったん。剛くんが思わず「いらねぇ。」ってうんざりした感じで言うて、したら健くん「いらないんなら俺にちょーだい。」て。俺はいつも思ってた。この2人と一緒に仕事しとるけど、なんか行き違いで居合わせる羽目になってもうた部外者みたいやな、俺。って。2人でやったほうが、絶対しっくり来るのに。って。」

「へぇ。」

「やから俺は、2人のやりとりには参加せんかった。やのに健くん「やったー!岡田、山分けしようぜ!」言うて話振ってきてさ、ごっつビックリしたわ。この人すごいなぁって。俺のこと、ちゃんと見とるんやなぁ思た。」

「そう。」

憶えていない、そんな些細なこと。

「健くんは俺に見せてくれた。色付きのV6を見せてくれた、大事な人なんやで。」

何が言いたいのか。

「『恋のシグナル』はすごい思い出の曲やから、20曲の中に入れた。アルバムに入るかどうかは別として、俺の中では大事な曲やから。」

「ふぅん。」

泣き笑いのカオで見られても困る。眉尻を下げて、まるでV6に放り込まれたばかりの頃のように頼りなく揺れる。そうじゃないだろう?もう居場所はあるのだ。

「スタッフが呼んどるし、行こっか。」

贅沢な不安を抱える岡田は、酷く残酷。無意識にたくさんのものを薙ぎ倒す。そこに例え悪意がないとして、他人に及ぼす影響までは本人の中で測りきれていないから厄介この上ない。封を切られることなくゴミ箱に直行するチョコレートは、そんな憂き目に遭わされるために生産されているわけでは決してないのに。

「健くん。」

「分かってるよ。」

毎日が楽しければ幸せだったはずなのに、いつの間にか随分と欲張りになってしまった。その代償として、きっと平和的な人格を失ってしまったのだろう。

 

 長い階段の一段目を上る勇気が、足りない。

 

 打ち合わせの席で、とてもイライラしていたのは岡田が何も言わなかったからだ。訥訥とではありながらも、森田でさえ自分の意見を要所要所で述べているというのに。井ノ原はまるで憑き物が落ちたようにいつもの井ノ原で、長野や坂本と盛んに意見を戦わせている。三宅が無言の業を貫き通していることには誰も触れないが、この打ち合わせには本当に6人そろっているという条件が必須なのだろうか。という疑問を故意に黙り込んでいる分際ながら、三宅は抱いていた。ときどき長野と視線がぶつかる。決まって、反らすのは三宅のほう。チラリと携帯の液晶に目をやる。開始から3時間が経過、ほとんど進展はない。何時間も缶詰状態で出した意見なんて、本当に意義を持つのかどうか怪しいものだ。そんな分析を繰り広げる三宅の思考に飛び込んできたのは、自分の意見を飲み込んでいた男のもの。

「そろそろ、休憩せぇへん?」

そうすべきだと、心の中で賛同する。無駄に時間だけかければいいなんて、ナンセンスだ。

「ああ、そうだな。じゃあ15分、休憩にしよう。」

熱を遮られてしまったせいか、拍子抜けしたような口調で坂本が答えた。ホワイトボードを埋め尽くすのは自分たちの持ち歌のタイトルたち。置かれたデッキからは、エンドレスでこれまでの楽曲が流れている。なんて、息苦しい部屋で自分は座っていたのだろう。三宅は真っ先に立ち上がり、外へ出た。

 缶ジュースを片手に廊下の椅子に腰を降ろすと、さも当たり前のように隣りには岡田が座った。手にはここのところお馴染みになった、チョコレート。

「これ、あげる。」

これまでは話をするのが億劫で、黙って受け取ってきた。けれど、どういう気まぐれなのかは自分でも理解に苦しむけれど、チョコレートを一瞥して、三宅はしっかりとそっぽを向いた。努めて冷めた口調で、言う。

「いつまで続ける気?」

意地の悪い質問だったが、岡田の答えはすぐに提示される。

「汚名返上できるまで。」

強い言葉。迷いも曇りもない。眩しくて、すべての視界を失いそうだ。どう返せばいいのか、頭の中が真っ白で何も浮かんでこない。必死で探る。探って、探って、頭の中に浮かんだのはタイムリーな指摘だった。

「岡田はやっぱり、嘘つき?」

歪んだ。そう感じられた。三宅の放った質問に、岡田は口を動かそうとして、躊躇っている。

「どうして『恋のシグナル』を押さなかったの?俺に話したことって、作り話?」

一切意見を述べずに耳だけ傾けていたのは、何故なのか。

「大事な思い出だなんて、嘘?」

納得のいく理由があるのならば聞かせてみろ。くらいの勢いで、三宅は岡田に問う。問われた岡田は、次第に固くなった表情をほぐして、

「嘘やないよ。でも、無理矢理に押し込んで、大事なものやのに壊れたらイヤやなぁって。」

「言い訳じゃん。」

「違う。健くんとの大事な思い出を、汚したくないし傷つけたくないだけやよ。」

自信に満ちた目線。やはり直視できないほどのそれ。突如として、訪れた奈落。飛び込んだ先に待ち受けるのは、希望か堕落か。強大なきれいごとは凶器。何かが割れた音がした。

「クラインの壺は、俺が壊すって決めたから。」

凛と研ぎ澄まされた岡田の声が、三宅の感情を激しく彷徨わせる。

 強い意思を持った年下のメンバーに圧倒されて、井ノ原はぼんやりと座り込んでいた。呼吸を自分がちゃんと繰り返せているのか、思わず確かめる。あんなにも強大な想いに真っ向から向き合おうとしていたなんて、少し無鉄砲すぎたかと苦笑さえ零れた。立っている場所に差があったのはちゃんと知っていたことで、それをかき消すくらいに間合いを詰めてやろうなんて、がむしゃらに意気込んでいたのは若かった頃の話。もう、そんな揺るぎ無いパワーは残っていない。現実は、厳しい。

「参戦しそびれちゃったね。」

ため息交じりに声をかけてきた長野は、手の中で小銭を鳴らす。何か飲みながら、さりげなく話しかけようとでも考えていたのかもしれない。このタイミングで首を突っ込むくらいのこと、昔の自分ならばやってのけたはずだ。失敗を恐れることなく、突き進めていたのに。井ノ原は長野を見上げて、とてもへたくそな笑顔を作ってみせた。返ってきたのは、温かい掌が優しく肩を一度だけ叩いてくれるという、無言の気遣い。

「あきらめないよ。」

井ノ原は模範解答を示して立ち上がる。

「無理しないで。」

長野は危惧を隠さない。

「俺はただ、健の笑った顔が見たいだけだから。」

かつて似たようなことを坂本に言ったな。と長野は思い出す。ただ、大切な人には笑っていて欲しいだけ。井ノ原も同じことを願っている。この願いを乗せた声がちゃんと三宅に届けば、何かがいいように変わるのか。誰にも分からない未来。

「笑ってくれると、いいね。」

月並みな励ましの言葉を吐いて、鮮明すぎる残酷な現実を傍観する長野の肩を自分がしてもらったのと同じようにやわらかく叩こうとして、井ノ原はその手をゆっくりと引っ込めた。そんな些細な行為にも壊れてしまいそうなほど、長野が儚く見えたからだ。巻き込んでしまったのを後悔するように視線を足元に落とせば、降ってきたのは穏やかな声だった。

「お前は独りじゃないよ、大丈夫。」

ずっと支えてくれる人を感じて改めて誓う。自分も、支えられる人間であろうと。

 タバコを吸ったら気が滅入るとか、有り得ない。坂本は火をつけて間もないタバコを、あっさりもみ消す。一息入れるアイテムとして最適なこれとは、随分長いお付き合いだった。三宅が一番に部屋を出て行った。岡田が追いかけるようにカバンから出した小さな箱を持って出て行った。続いて井ノ原が出手行った。おそらく、あの2人を追ったのだろう。一連の動きを見ていた長野が、少し笑って「行ってくるね。」といい残して出て行った。井ノ原を追いかけたのだと思う。そして微妙な空気の打ち合わせの中でパンパンに膨らんだ緊張感をほぐすために、坂本は部屋を出た。先に部屋を出た4人がどうなっているかは気になるが、それよりもタバコを吸って、気持ちを緩やかにしたかった。それなのに、いざ吸い始めればため息が出て、異様にタバコがまずいものに感じられて、さっさと消してしまっている。打ち合わせだけだからと気を抜いて、くたびれたジーンズを履いて来た。なんだか、今の自分と被る。余計に気が滅入った。

(リーダーなんだから、がんばれ。)

自分で自分にはっぱをかける。やると決めて一足先に走り出したのだから、信じて最後まで走り抜くしかない。もう一度タバコに火をつけた。さっきよりも、少しだけマシな気がした。まだ幼さを残した出会ったばかりの井ノ原に、なぜかキラキラさせた目で聞かれたことを思い出す。

「タバコって、おいしいの?」

おいしいとかおいしくないとか、そういうものじゃない。とかいう風に答えたはずだ。実際に、味を愉しむというよりは、一息入れたくて、気分転換がしたくて吸っているものなのだから嘘ではない。依存にもよく似た喫煙という行為はやがて、そんな井ノ原にも遺伝した。かわいい弟分がタバコを当たり前のように吸う姿を始めて見たとき、どこか苦い思いを味わった記憶がある。百害あって一理なしのそれが、憎らしく見えた。いつまでも弟分の井ノ原に甘いのは、井ノ原が坂本にとってタバコのような存在だからなのかもしれない。依存している。存在がなくなれば慌てふためき、落ち着きがなくなってしまう。だから今回だって、必死になって連れ戻すという足掻きをやってのけたのだし。

(井ノ原が笑うと、安心するんだよな。)

考えてみて、そうかと気付く。井ノ原だけではない。メンバーが幸せであれば、安心する。リーダーとしてメンバーの幸せを願ってやまないとか、それほど大仰なものではなくて、V6が安泰だということを知れて、安心するのだ。もちろんメンバーが幸せであってくれるに越したことはないし、心のどこかではそれを祈ったりもするのだけれど、自分がリーダーでV6がちゃんと成り立っていることを、知れて良かったという自己満足。利己的な人間だと責められるかもしれない。が、不安定な場所にいると意識すると、きっと逃げる術を考えてしまうであろう臆病な自分がいるのだ。自分の脆弱な心を守るため、V6を守るため、メンバーの笑顔を守るため、

(立ち止まるな。振り返るな。全力疾走で前進しろ。)

坂本は自分に課すのだ。リーダーという重圧を。その活力を養うため、タバコだって吸う。何度だって気持ちを切り替えて、まだ負けるつもりはない。アルバムもライブも高い完成度のものに仕上げて、足場を固めることが当然の役目だ。またタバコに火をつけた。本数がテンションの高さに比例すると言わんばかりに。

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