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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/04/30 (Tue) 23:07:39

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No.176
2008/03/22 (Sat) 23:18:39

Live Show 第39話です。

久しぶり『裏 my shelter』 を見ました。
大熱演のイノに爆笑。


出演 : 井ノ原 快彦 ・ 坂本 昌行 ・ 長野 博 ・ 三宅 健 ・ 森田 剛












 先ほどまで微妙な空気を目いっぱいに生み出していた部屋は今、楽しそうな歌声であふれていた。かき鳴らされるギターの音色は歯切れが良く、雰囲気が歌い手を後押しする。突如として始まったこの状況に、誰も疑問や苦言を口にしないのは単純に、心地がいいからとしか言いようがない。大人3人分の歌声は廊下までしっかりと漏れているだろうが、深夜2時過ぎに廊下を歩く人もいないだろう。という勝手な結論を持って、途切れることを知らない歌。はかどらない打ち合わせに辟易とした空気さえ流れ始めていた2人は、おもむろにギターを弾き始めた1人に怪訝な目線を送っていたが、いつのまにか、巻き込まれていた。自然の流れのように奏でられる、聞き慣れているはずの曲が変化した新鮮なメロディ。持ち歌メドレーは、かれこれ30分以上ノンストップで続いている。

 休憩が明けて再開された打ち合わせは、ほんの少しの進展を見せただけでお開きとなった。曇天の日のような空気。次々とメンバーが帰っていく中、井ノ原だけは帰り支度を始めるどころか、愛用のギターを取り出す。そして、単独ライブ強制スタート。耳を傾けてはいるものの、黙々と荷物をまとめて上着を着込んでいた坂本は、途中から変化したそれに気付き、思わずため息をついた。同じように帰る支度をしていたはずの長野の本意気の歌声が耳に入ったからである。視線を移動させれば、机に座って井ノ原と一緒になって楽しんでいる姿。とっくに日付は越えているし、数時間もすれば仕事が待ち受けている。遊んでいられるような時間じゃないと咎めようとしたけれど、言葉を飲み込んでしまった。2人が、本当に楽しそうにときどき笑顔をかわしたりしながら歌っていたのを目の当たりにして。帰ることを中断して、暫し傍観する。ただ持ち歌を歌っているだけなのに、どこか特別に見えていた。次は何を歌うのだろうか?なんて想像までしてしまっていて、踵で拍子を刻んでいたら井ノ原と目が合った。ニヤリと笑ったのが見えたのは気のせいなんかじゃない。歌っていた曲が終わると、軽快に次の曲の導入部。何を選んだのかはすぐに分かったのだが、その原曲とはかけ離れた調子に違和感。しかし歌いだしの部分を目前にして長野と井ノ原の視線は坂本に集中。歌え。ということなのだろう。スウと息を吸い込んで、ここまできたらきっと乗りかかった船だろうと思い込み、歌に参加してみた。

 客を入れてライブでもしているような盛り上がりで締められたのは、本来ならばしっとりと歌い上げる曲『ありがとうのうた』。タンバリンがあれば確実にシャカシャカいわせていた。それほどノリのいいナンバーは、終われば長野と井ノ原の表情をシリアスなものに変化させていた。

「帰ろっか。」

帰宅を妨げるような行為を率先して始めた張本人の静かな一言に、坂本は眉間に皺を寄せる。それを見て苦笑した井ノ原は、急に顔を伏せて呟くように言う。

「ごめんね、ありがと。」

すっかり伸びてしまった前髪の隙間からのぞく表情を、坂本は慎重に観察した。泣き出すのかもしれない。また自分たちの腕をすり抜けてどこかへ独りで行ってしまうのかもしれない。それらの不安要素を次の瞬間、カラリとした笑顔と明るい声が取り払った。

「そんなに怒んなくてもいーじゃん。坂本くんだって楽しそうだったくせに。」

違った。今までに井ノ原が何度も見せてきた、大丈夫な自分を貼り付けているものとは。

「怒ってねぇよ。っつーか、なんで『ありがとうのうた』があんなにポップなんだ。」

聞けば井ノ原はイタズラっぽく長野と顔を見合わせて、自信たっぷりに答える。

「だって光に満ち溢れてる歌だもん。」

光は、光になりうる要素は、すぐ近くにあった。

「知ってる。」

時間を巻き戻してやり直すという魔法は決して使えないから、今を隅から隅まで満喫する努力をするのだ。方法は違っても、想いが同じならば道は交わるだろう。道を分かつことがあっても悲観して絶望することはない。ただ、もう一度交わったときに、笑えればいい。

 

 長野が強引に何かのビデオを貸してくれた。井ノ原がこれまた強引に一枚の封筒をくれた。アルバムの曲がいくつか決まったけれど、その中に岡田の大事な曲は入っていない。森田が連続ドラマの主演をやるそうだ。頭脳明晰で理詰めを地でいくピアニストの役らしく、自分で「チョー似合わねぇ。」と言って笑う。そして宣言するように、こう言った。「テレビ雑誌の新ドラマ紹介のページに出んだよ。写真と役名と森田剛(V6)。で、そこに書いてあんの。頭脳明晰なピアニスト、理詰めで人を言い負かす。って。特集記事とかあったらさ、見出しが『V6の森田剛は頭脳明晰?』みたいな。なんか俺ら当たり前にV6のって付くじゃん?それってさ、名刺の会社名みたいじゃね?」と。その瞬間の表情がどこか誇らしげで、森田のヒカリを垣間見た気がした。遠回しに底辺から引っ張り上げようとしてくれている。そんな不器用な優しさは、V6にならなければ出会えなかったものだ。程なくして坂本と長野が何の話をしているのかと声をかけてきたが、もう森田の口調はぶっきらぼうなそれに戻っていて、「内緒。」と短く答えたのが酷く印象的だった。トニセンにどこか入り込めないと感じさせる3人だけの世界があるように、自分たちにもそういう世界があるのだと思えば、久しぶりに気持ちが浮上した気がした。

 心の中のもやが若干だけれど晴れたような気分で帰宅した三宅は、最初は中も見ずに捨てるはずだった井ノ原に渡された封筒を開けてみた。パソコンでプリントアウトされたらしい写真は、その存在すら忘れていたもの。ロケ先で撮った集合写真。誰もが、三宅自身も、眩しいほどに笑っている。ハッとして、長野に渡されたビデオを急かすようにデッキに押し込む。画面に映し出された映像は、やはりそのときのロケの様子。どうして今頃になって、こんなものを寄越してきたのだろうか?ゆっくりと映像に沿わせながら記憶を手繰り寄せる。始めに廃校になった中学校に行って、いろいろな教室を見て回った。美術室。井ノ原の突っ込みが響き渡る。倉庫よろしく置かれた元校長の描いた絵。そして、その元校長の家を訪ねた。そこでは親が仕事なので預けられているという男の子が出迎えてくれて、井ノ原や三宅に元気に挨拶をする。名前を聞くと、また元気に「よし!」という答え。「孫のよしはるです。」元校長の老人が注釈を添えた。井ノ原が自分と同じだと騒ぎ出し、勝手に「Wよし。」と命名した。男の子はとても楽しそうにロケに参加している。特に井ノ原に懐いたようで、2人は年齢差というギャップなど物ともしない同じレベルの行動でロケを華やがせた。三宅の中に、蘇る時間。男の子は両親が仕事だといって、ほとんど老人の家に預けられているにも関わらず、寂しい。とか、お父さんとお母さんと遊びたい。とか、そういう大人を困らせるようなことは言わなかった。待ち時間に井ノ原が、やるせない表情を浮かべて会話をしていたことを、思い出した。我慢強い子。心の中の傷を決して人には見せない。井ノ原と、重なった。辛かったり悲しかったりする本音は、絶対に隠し通す。今になって気付いた。井ノ原には聞こえていたのだ。隠した本音。誰にも言わず、自分の中だけで握りつぶしてしまおうと必死にもがいて。

(この2人は、同じだったんだ。)

そうすることが当たり前の日常だと、染み込んだ本能。

(井ノ原くんの声は、この子の声だった。)

まがい物な人格を人に見せることで必死に自分を保って、無理矢理に笑う。

(あんな風になった井ノ原くんを坂本くんと長野くんが隠したのは、井ノ原くんを守るためだったのかもしれない。)

自分の傷を知られてしまったら、そのことにまた重ねて傷つくだろうから。

(なんか、それはそれで複雑かも・・・)

12年も一緒にいるからよく知っている。いい年をして誰より手のかかる人。繊細なのに強がりの意地っ張りで、それが最後のプライドであるかのように譲らない。メンバーに頼ることが罪だとか勘違いしているのか、絶対に譲らない一線。気付けば手の差し伸べようもあるけれど、それも不用意なものでは通じなくて、手遅れギリギリになって、コチラが泡を食ったように慌てさせられることばかりで。だから手遅れになる前にと探ってみても、決して自分からは見せない。

(じゃあどうして、井ノ原くんは俺に教える気になったんだろう?)

長野に騙されて千葉県まで早朝から呼び出された日、井ノ原は自分から秘密を話すと言い出した。この写真も、三宅は忘れ去っていたのに今になって引き合いに出してきた。

(・・・・・俺の、ため?)

12年も全力疾走を続けて、まだ追いつけない背中。手の内にある大事なカードを明かして、それでもちゃんと振り返ってくれる背中。同じラインに立っていなくても、バカにしたり蔑んだりしたことは一度もなかった。疎外感を感じて目を反らしてしまった自分にまだ、仲間だからと示そうと必死になってくれている。個々での活動が多くなったこともあって、広がる一方の距離感に気持ちが不安定になっていたから、冷静に考えられなかった。

(声が、聞きたいかも。)

テレビの画面は、いつの間にか砂嵐を映し出していた。ふと、これも開けずに捨てる気でいた岡田に貰ったチョコーレートをカバンから出す。たまたま楽屋にあった情報誌で見たことがある。コンビニ限定発売の新商品。これを購入するためにわざわざコンビニまで出向いてくれたのか、何かのついでに購入したのか。箱を開けてひとかけらだけ口の中に放り込む。

(あまい・・・・・。)

甘くてぬるくて、胸の奥に広がった。もう一度ビデオを見ようとテーブルの上のリモコンに手を伸ばす。目に映ったのは無機質なリモコンと井ノ原がくれた写真。薄っすらと何かが透けて見えた気がして、裏返してみて三宅は息を呑んだ。見慣れた字で、とても丁寧を心がけたようなその字で、

『健がいつも、光と共にありますように。』

綴られたメッセージは、井ノ原の浮かべる笑顔のように、明るかった。

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