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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/12/28 (Sat) 15:14:02

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No.172
2008/03/15 (Sat) 23:42:15

Live Show 第36話です。

明日はいよいよ、平家派同窓会。

今日の夕方、ちょっとだけ予告が流れていました。
オレキミ歌ってたんですが・・・なんですか?あのかわいい振りは!!


出演 : 井ノ原 快彦 ・ 長野 博 ・ 三宅 健 ・ 坂本 昌行








さっきまで店内で味わっていたものとは打って変わった穏やかな雰囲気を醸し出す長野と井ノ原は、店内へ戻ろうと踵を返す。そんな2人に再びの緊張感を齎したのは、カラカラ・・・という引き戸が開く音と共に現れた三宅の姿だった。足の裏を貼り付けられてしまったように、その場で足を止めてしまった2人。2人を視界に捉え、目を反らして立ち止まる三宅。しかし三宅の足が止まったのはほんの数秒で、まっすぐに歩みだす。伏目がちなまま長野の前に立つと、手にしていた袋を突き出した。

「俺に?」

今にも上ずってひっくり返りそうな声で長野が問えば、無言の頷き。受け取ってみれば若干の重量感を持つそれは、かすかにいいにおいを漂わせている。面食らってしまって何も言えずにいる長野に代わり、井ノ原が三宅に声をかけた。

「さすが健。やさしいじゃん。」

「別に。ただ店の人が残念がってたから。」

ぼそぼそとした答えだったけれど、井ノ原は笑みを深くし、長野もふんわりと笑う。言葉として発せられる理由がどうであれ、三宅から手渡してもらえたという事実は変わらない。

「ありがとう。すごく嬉しい。ごめんね、大人気ない席の外し方して。」

本当は、うろたえた。これが確固たる差なのだから。どんなにひねくれた言動を見せても、その裏を考えて応対してくれる。甘えを誘発するには、充分すぎる性質。三宅はチラリと時計を窺い見る。本当のロケの集合時間までには、まだ充分な余裕があった。どうにかして、自分のペースに戻さなければ。

「健に、俺の話しちゃおうかな。」

「井ノ原っ?」

何気ない風にも聞こえた井ノ原の突然の発言は、誰より長野を動揺させる。しかし井ノ原はまるで世間話でもするかのように、容易く話し始めようとした。が、

「知ってるから。」

それは三宅の一言で遮られた。井ノ原は少しだけ眉間に皺を寄せて長野を見る。長野は力いっぱい左右に首を振る。2人の一連の動作があまりに滑稽で、三宅は嘲けるように笑った。はっきりした。もう隠しようのない事実が証明されたのだ。

「偶然見たんだ。学校の収録の日に、駐車場で。誰も教えてくれなかったよね。俺もV6のメンバーなのに。俺も、剛も問題の輪の中から省いたんだ。」

今だ。この不条理が故、V6を脆弱な塊に変化させてしまったと、指摘できるのは。

「坂本くんも岡田も俺も、知ったのは偶然だよ。そりゃあ、こんなに大事なことを2人に黙っていたのは悪かったと・・・」

「思ってないくせに。」

「思ってる。」

いったい、いつまでこれは続くのだろう。

「蚊帳の外ってさ、スゲー嫌な感じ。でも分かってるよ。俺はV6に必要ないんでしょう?必要なのは三宅健という装飾品だ。お飾り感覚?確かに年下だし、子供っぽいかもしれないけど、それでもみんなが好きだから、力になりたいって思った。でも眼中に入れてもくれない。俺に何かあったら、あーだこーだ干渉するくせに、自分たちは隠してて、それってどうなの?どういう心境?優越感?仲間とか言う割には、すごく高い壁があるよね?結局それは、俺がメンバーの数に入ってないってことなんじゃないの?」

嘘とまではいかずとも、12年も一緒に過ごしてきた仲間にしでかした仕打ちは、もう罪としか言いようがない。

「俺が、全部悪いんだ。」

みんな同じように、心を痛めていたのに。

「余計なトラブルを抱え込んだ俺が、悪かったんだよ。」

それが辛くて、独りになろうと考えたはずなのに。

「健、明日の打ち合わせまで、時間が欲しい。この上待ってなんて、勝手かもしれないけど。」

「いいよ。」

幸せが遠ざかるのは、耐えられない。井ノ原は悲痛なほどに表情を歪める長野にヘラリと笑って見せて、殊更明るい口調を心掛けると、言った。

「V6のこと大好きだから、結末はハッピーエンドにしなくちゃね。」

仕方のないことだ。これは必要な選択肢。

 

 カタチさえ変えれば、守ることができる。

 

 ずっと笑っていて欲しい。それが叶うのなら、その場に自分が居合わせることができなくても、どこか離れた場所から幸せだと思える。

「俺は、いいや。みんなが笑っててくれるなら、俺はいいや。」

坂本が呟いた言葉は、何の脈略もない。これまで一切の会話はなかったし、手元に置いて視線を落としているのはアルバムの資料。たいした感情も込められず、淡々と発せられたそれに、長野は何を言えばいいのか迷う。何となく察しが付いたのは、それが決していい意味を含んで発せられたものではないということ。坂本の無機質なまでに変化しない表情を見ていれば、分かる。それはきっと、望まない言葉だったのだ。

「俺、空回りばっかしてるよな。」

してるけど、してないよ。そう言おうとして、飲み込む。違う。ここで告げるべき言葉はそれではない。坂本の表情を見れば一目瞭然だ。

「また言うの?リーダー代わってくれって。」

「言わねぇよ。ただ・・・・・」

「ただ?」

長野が問うたのに、坂本は何の返答も寄越さない。きっと見てはいたけれど何の視覚的情報としての意味も成していなかっただろう資料を、勢いよく払いのけた。衝動的ともいえる行動をとがめることもなく、長野は足元にいくらかの皺や折り目を伴って落ちたそれを拾い上げ、パラパラとめくる。たくさんの書き込み、書いて、消しての繰り返し。坂本は自分ができる最上級のことをやろうとしただけ。これを妨げるような周囲の意見など、突っぱねてやる。なんて気概で、きっといたのだろう。空回りだと非難されても、折れないほどの強い決意を抱いていたに違いない。長野は待つ。坂本が次の言葉を紡ぐのを。

「俺は、いいや。みんなが笑っててくれるなら、俺はいいや。って、井ノ原に言われた。これから先の明るい未来を辿るV6の中には、ちゃんと井ノ原もいるんだって言おうと思ったのに、それを遮ってまで、言ったんだ。泣きそうになった。そしたらアイツさ、コスモレッドのセリフとか引用して「男が人前で泣くなんてみっともない真似、するな。」だって。泣くだろ?面と向かって拒絶されたら、泣くだろ?俺は、泣き叫んででも井ノ原を止めたかったんだよ。」

「いつのこと?」

「ちょっと、前だよ。全員がオフだった日。偶然さ、会ったんだ。」

「でも、それから色々なことがあった。井ノ原と俺たちは、少しだけど前に進んだよ。」

「そうなんだろうけどな、うん、なんだろうな、有体に言えば、恐い。」

「今日、来なかったし?」

「音信不通だし、な。」

メンバー全員で打ち合わせの予定だった今日、井ノ原は姿を現さなかった。仕事に対しては誰よりも誠実で厳しい井ノ原が無断欠席など、常軌の沙汰ではない。自宅は留守、携帯電話は繋がらず、消息自体が分からない。マネージャーは血相を変えて、絶対に探すと息巻いて飛び出していった。岡田も心当たりを探してくれると言った。森田はとてもあっさり帰宅し、三宅は・・・「答え、ね。」と呟いて、暫くはじっと坂本と長野に険しい視線を送っていたが、それ以上は何も言うことなく、帰ってしまった。てっきり自分も探しにいく。と坂本が言い出すと踏んでいた長野は、未だに残ってグダグダと頭を抱えている様子に、いい加減辟易していた。ただ手を拱いて待っているだけなら、誰にだってできる。半ば強引に背中を押してやろうかと思っていたら、先に坂本が口を開いて井ノ原のことを話しだして、誰より弱い心の持ち主かもしれない。小さくか細い声は、今にも途切れそうだ。

「井ノ原が視界から消えると、不安で堪らなくなる。剛が何も言わない理由を、悪い方向へしか考えられない。健のさっきの目、絶対に俺を責めてた。岡田は探すって言ってたけど、見つけてくれるかもしれないって希望的観測が、一ミリも浮かんでこない。V6が壊れる様を実況中継で見せられてるみたいで、ヤなんだよ。俺と長野と井ノ原がトニセンで兄貴みたいな存在で、剛と健がと岡田がカミセンで弟みたいな存在で、導いて、支えて、助け合ったり、トニセンの中でだってそうだ。俺と長野は井ノ原の手を引いて、未来はこっちにあるとか・・・」

「坂本くんは、V6の中に不変のヒエラルキーが欲しいの?」

「お前、岡田みたいなこと言うなよ。」

途端に不機嫌な声を作って、反論する坂本。

「岡田にも同じこと、言われたの?」

長野が苦笑しながらも聞いてみれば、同じように苦笑をして、坂本は答える。

「違うよ。そういう横文字の言葉とかさ、スゲー小難しそうなこと、岡田がよく言うんだって。」

「ヒエラルキーは小難しくないでしょ。」

「そうなのか?」

「上下関係の確立された組織的構成、みたいなこと。」

「なっ、俺はそんなのV6に求めてないぞ!」

慌てて坂本は否定したが、無自覚だったのかと思うと余計に性質が悪い。知らず知らずのうちに、年下のメンバーには自分の背中を追いかけ、自分が守ってやらなければならない状況を望んで安心を抱いていたのなら、それは確執の原因に充分に成り得る。

「俺はただ、V6の始まりがそこだったってことを忘れたくないだけで、いつまでも同じでいたいって思ってるわけじゃない。」

「追いかける背中が、遠くてジレンマを感じる。」

「は?」

「何、ジレンマも分からない?」

「それくらい分かるっつーの。」

「健はね、健だけじゃない。剛も岡田も井ノ原も、俺も、いつまでも坂本くんと肩を並べて歩けないことにさ、ジレンマを抱いてたんだよ。特に健は、今回のことで顕著にそれがあらわれちゃったんじゃないかな。」

「今回のことって?」

「知ってたんだってさ、井ノ原のこと。偶然に見ちゃったって。でも坂本くんと岡田と俺は言わなかった。だから、除け者にされたんだって思い込んで腹を立てた。ううん。悔しかった。昨日ね、井ノ原も誘って3人でご飯、食べに行ったんだ。そのとき、怒られた。」

「そうか。」

「健が自分はV6に必要のない人間だとか言い出してさ、したら井ノ原、俺が悪いんだって。打ち合わせの日まで待ってくれとか、結末はハッピーエンドじゃないといけないとか。きっと心の中で決めてたんだね。自分が外れることで、V6にできた澱みを取り除くこと。」

どうしてこうも、望んでいない道ばかりに進むのだろう。そんな筋違いの優しさを望んだわけではない。ハッピーエンドの結末がいいというならば、

「違うだろ。」

一体いつまでV6は続くのだろうか。

「V6はずっとずっと、6人でそろって続けるんだよ!」

坂本が圧倒的な自信を含んだ宣言をすれば、長野は頷いて資料を坂本に手渡す。

「それが一番、いいと思う。」

叶えば誰もがハッピーエンドだと笑ってくれる、そんな結末が他にあるということを、井ノ原に今すぐに伝えたいと。

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