今回は短め。
ですがターニングポイントの一部になっている、はずです(大汗)。
さて、トニのシングル、予約してしまいました。
ネクジェネで聞けば聞くほど、欲しくなってしまって・・・はっ、これが戦略?(笑)
そしてカミっこ3人組でのCM決定!
久しぶりですね。
出演 : 井ノ原 快彦 ・ 長野 博
何だろう?この感じ。胸の中がザワザワしている。不安?を通り越して、恐い。店の外に出れば、長野ははす向かいにあるタバコ屋のベンチに、頭を抱えるようにして座っていた。声をかければ充分に届く。というか、十数歩で手の届く距離だ。なのに、井ノ原が感じたのは漠然とした不安で、声をかけても届かないとか、手を伸ばしても触れることは叶わずにすり抜けてしまうとか、そういう事ばかりが想像されてしまって、近くにいるはずの長野との距離は、とても遠く思えた。名前を呼んでも、返事すら返ってこないかもしれない。無力な自分に苛々する。
(長野くん!)
たったそれだけの短い言葉。声にすればいいだけなのに、できない。
(長野くん。)
1歩だけ、近付いてみた。
(長野くん。)
もう1歩前へ出る。
(なが・・・・・)
単車が2人の間を遮断するように通過。2歩、戻った。こんなことを続けていても、何も進展などしないのに。大きく息を吸って、もう一度数歩踏み出す。もう単車は通らない。このまま進めば、長野の傍にたどり着けるだろう。じわり、じわり。靴底がアスファルトを引きずる音が、何か大きな出来事へのカウントダウンのようにさえ思えた。
「井ノ原、すぐに戻るから、続き食べてていいよ。」
流れるように上げた顔に貼り付けられていたのは笑顔だったけれど、発せられた口調は薄暗い玄関に響き渡る嗚咽のように、虚しい。
「俺は大丈夫。」
嘘だ。
「長野くん。」
引きちぎることができないまま絡まった鎖を、解く鍵はあるだろうか。
「大丈夫だよ、井ノ原。」
嘘を厚く塗りこめた笑顔で、誤魔化されたりしない。
「大丈夫だから。」
ずっと目を逸らしてきたのは、自分が弱すぎたからだ。
「よしはながのくんもみやけくんもすてないよ!」
想いは同じだった。
「ふたりともだいじだからっ、ぜったいにすてない。」
決して縮めることができないできないとさえ感じていた距離を瞬く間に無くし、井ノ原は長野にぎゅっと抱きついた。とても、強く。
「よっちゃん。」
「だからながのくんも、だから、よしをすてないで。」
この声は、届いていますか?
「いらないって、いわないで。」
よしはるも井ノ原も、自分の気持ちをまっすぐに言葉にして伝えたいのに、それをすることなく深い奥のほうに閉じ込めてきた。それを知ったとき、年齢とか境遇とか、そんな距離はすべて飛ばして、重なった。2人してこれ以上はないほどの大声で、本当の気持ちを叫びたくて。
「おねがい。きらいでもいいから、すてないで。」
多くは望まない。唯、一つの切なる願い。
「いらないこだからって、ひとりでおいていかないで。」
二つの背中に拒まれたくなくて、必死だったのだ。三つの笑顔に拒まれたくなくて、形振り構わず全力で足掻いてきた。
「井ノ原はね、たぶんV6の中で一番、ちゃんとみんなと肩を並べて歩いてる。」
「そう、なの?」
「だって井ノ原の声は、誰の胸にも響いてたから。」
「声、届いてたんだ。」
遠い背中はさらに遠ざかる一方で、常に「置いていかれる。」という恐怖感と闘ってきた。取り巻くのはいつも、呑み込もうとする負の世界。
「聞こえてたよ。井ノ原の泣き叫ぶ声が。」
「耳障りだったよね、ごめん。」
「ううん。むしろ、安心できたかな。」
「安心?」
「井ノ原はまだ、俺たちを必要としてくれてるんだなぁ。って。」
叫び続けていれば、届く声もあると、
「V6はすごく短命なグループなんだろうな。っていうのが、結成された当時の正直な感想。で、解散したらそのあと、自分はどうなるんだろう?なんてね、いつも考えてた。」
初めて・・・・・
「そんなこと、思ってたんだ。」
「俺も坂本くんも、いい年な上に出戻りだったから。だから、長く続けていられるのは嬉しかったし、反面、毎日が緊張の連続だった。明日、終わりが来たらどうしよう。って。井ノ原もカミセンの3人も、随分と立派になっちゃったからね。気付いたらすぐ後ろ、そして隣り。遠くない未来に、俺たちを置いてどんどん先へ全力疾走で走っていく。そうなればきっと・・・」
「その日は来ないよ。」
「え?」
「っていうか、来ないって、俺の勝手な希望。」
もう少し、このままこの場所で。一番強く、きっと一番儚い望み。降って湧いたような亀裂に譲ることなんて絶対に、できないのだ。希望という言葉を確立するように、いつも通りをいつも以上に意識して、笑顔を作る。長野は井ノ原の笑顔を見て、ゆとりのある笑顔を浮かべた。
「・・・・・戻ろうか。」
「どこ、に?」
「どこって、店だよ。健のこと、放ったらかしにしちゃってるし。」
「あ、ああ。」
「坂本くんが憶えてたなんて、計算外。」
立ち上がった長野が、困ったような声で呟く。
「一緒に来たの?」
井ノ原が聞けば、少し遠い目をして、
「むかぁし、すごく昔の話。甘いものが苦手だって知ってて、強引に食べさせたのが、さっきのココナッツ汁粉。甘さ控えめだから大丈夫だと思ったんだけど、それでも無理だったみたい。その割には、味を憶えてるとか、すごいよね。あの人、井ノ原とかカミセンの為だったら、必要以上にがんばれちゃうんだもん。」
自分の身内を自慢をするように、話す。感じる、強い気持ち。
「居た堪れなくなって、坂本くんのせいにしちゃった。」
始めから先を歩くことが日常だった人は、傷つき方を忘れたのかもしれない。傷ついたときにどんな風に振舞って、どんな風にそれを示せばいいのかを、どこかに置き去りにしてきたのかもしれない。
「2人だけの秘密にしとけばいいじゃん。ここにいないんだから、知りようがないし。」
軽い口調で言えば、返ってくるのは、
「そうだね。」
笑顔で彩られた明るい答え。心の中がどんな状態なのかなんて覗けない。けれど、これを噛みしめられることが嬉しいと、つい思ってしまうのだ。
「俺、長野くんと朝ごはん食べられて幸せ。」
「捨てないよ。」
「は?」
「井ノ原のこと、絶対に捨てないよ。だからまた、一緒に来ようね。」
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