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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/05 (Sun) 18:00:23

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No.163
2008/02/18 (Mon) 23:48:35

Live Show 第29話です。

次回の少クラプレミアムは平家派同窓会!

必見です!


出演 : V6








 共にある人の想いに気付けないほどに、ギリギリだったのだ。

 相変わらずだ。続々と集まるメンバーは、挨拶以外の言葉は交わさない。三宅のイヤホンから漏れてくるノイズと、岡田が文庫本のページをめくる音が、その場を支配する。ドアが開けられるたびに必死な視線をそちらへと向けていた長野は、井ノ原が入ってきたときに至極安堵した表情を浮かべて、小さく「おはよ。」と消え入りそうな声で告げると、俯いてしまった。井ノ原は困ったように頷きながら笑って、長野とは一番離れた場所に座る。カバンからノートパソコンを出し電源を入れた井ノ原は、ふと傍にいた岡田に話しかけた。かつで楽屋などで年下のメンバーに無邪気にじゃれ付いていたような軽い口調ではなく、とても静かに。

「何、読んでんの?」

小さな声だった。本気でその本に集中していたなら、岡田は聞き逃していただろう。けれどすぐに書面から視線を上げると、若干の苦笑を滲ませて答える。

「惜別。」

「せきべつ?」

「魯迅と日本人の友達の話。」

「ふぅん。」

「大東亜戦争の為の国策で出版されたって聞いたけど、そんなん抜きにしておもしろいよ。」

「戦争に利用された本なんだ。」

「建前はな。けど、普通に文学小説として面白いと思う。いのっちも、読む?」

「俺はいいや。」

井ノ原の言葉に反応するように、部屋に響いたのはバサバサッという紙束を落とす音。ちょうど入ってきた坂本が、手にしていたそれを派手に床にばら撒いていた。きっと、かつて自分に向けて井ノ原が言った「俺はいいや。」とは違う意味合い。それでも坂本にとっては、充分に動揺を誘う言葉に値した。落ちている紙を急いで拾い集めながら、井ノ原を盗み見る。会話は終了したのか、視線はノートパソコンに向けられていた。

(俺がしっかりしないで、どうすんだよ。)

折れそうになる心に喝を入れながら、拾い終わった紙束を抱えて立ち上がった坂本は、自分に集まる視線に気付く。その視線を受けて、会議室の中を見渡し、思わずため息をついてしまった。あからさまなメンバー同士の亀裂の縮図のような、それぞれの座っている距離感に。

「おい、メンバー同士で集まれよ。」

言えばのろのろとだが、座る位置を改める。これからの打ち合わせに必要は資料を2つに分けて回しながら、坂本は一番前に立ち、沈みそうな気持ちを必死に浮上させ、口を開いた。

「みんなは聞いてなかったと思うけど、今日は夏のライブの話をします。」

初めて今日の打ち合わせの内容を聞かされた5人は、訝しげな表情を浮かべている。それは当然のことだ。坂本が言ったが、ライブが行われるのは夏。まだ半年も先の話。それよりも先に個々に仕事が入ったり、新曲が出たり、アルバムを作ったりと、優先してやることは山積みのはず。なのに、なぜ半年先の予定を早々に持ち出さしたのか。それには、ちゃんと坂本なりに考えた理由があるから。

「早すぎるって思ってるかもしれないけど、その前にやらないといけないことがあるので、まずその話からする。俺らのアルバムの話。えーと、次のアルバムは、オリジナルはやりません。メンバーとファンの人で、今までの楽曲から選んだ30曲を全部録り直して収録します。」

戸惑いの感情だけが湧き上がってくる。こんな状況でなければ、井ノ原は楽しそうだと笑ったかもしれない。三宅はこの場で好きな楽曲を羅列し始めたかもしれない。他の3人もその雰囲気に流されてあっさりと首を縦に振ってくれたかもしれない。そうやって会議はヒートアップし、6人で白熱した議論が交わせたかもしれない。逆に言えば、楽しくなってしまって熱のこもるメンバーと、宥めて、諌めて、見守って、まとめる役回りだった坂本が率先して全力疾走を始められた。こんな状況でなければ、きっと一生回ってこなかったであろうポジション。首を傾げたり眉を顰めたりと、いまひとつ乗ってこないメンバーのリアクションはスルーし、坂本は話を続ける。

「約1ヶ月間でファン投票を募って、それと同時進行で俺たちも曲を選ぶ。レコーディングに時間がかかるだろうけど、7月の中旬くらいには発売できたらと考えてる。曲については通常のままで行くのか、アレンジするのか、歌い分けを変えるのか、別途、話し合いの場を設けますのでよろしく。次に今日のメイン、ライブの話。手元に資料があると思うけど、それに書いてある通りだ。そういうことをやるんだってことは、最低でも頭に入れておいて欲しい。以上。意見とかある人は?」

坂本の問いかけに、「はい。」と一番に挙手したのは珍しくも岡田だった。

「コンサートの中で、芝居やるん?」

資料の中のライブの構成に関する説明は、まだ詳細が決まっていないから端折ってあったものの、とかく目を引く内容は誰も同じだったはずだ。『歌と芝居を織り交ぜたV6の物語』という、まるでミュージカルの紹介のような文面ミュージカルとコンサートでは意味合いがまったく変わってしまう。

「昔さぁ、なんかのテレビで見たんだよ。ドラマなんだけど、間にフリートークが入ってんの。ちゃんとまじめに芝居やって、カットがかかるなり思いっきり砕けたフリートークして、また本番の掛け声でマジの芝居にスーッと戻るんだよ。それ見て、こういうのいいなぁって思ってたんだ。けど、多分そういうのは場数踏んでる人間じゃないとできないことだろ?今の俺たちなら、きっとできると思う。芝居やって、歌やって、MCもやって、全部別の区切りできっちり切り替えてやる。もちろんライブやる場所は大きな会場だから、そういう場所でも、2階の一番後ろでも、芝居をお客さんが楽しめる方法を考えないとだけどな。」

どこか楽しそうに話す坂本に、それ以上の意見や質問は出なかった。それぞれに渡された資料をパラパラとめくって、それぞれの表情をして。資料を読んでくれているということは、まったく無関心というわけではない。今日のところはそれで充分だと思うべきだと、坂本は短い打ち合わせを終えることにする。

「じゃあ今日の打ち合わせは終わり。質問とかあったら、いつでも俺に言ってくれればいい。大変だと思うけど、よろしくお願いします。」

終わりを告げれば、さっさと帰ってしまう三宅と井ノ原。岡田もロケがあるとかで慌てて帰ってしまった。ライブやアルバムの話をメンバーに告げるだけなのに異様な緊張感を抱いていた坂本は、大きく息をついて座り込む。今のバラバラなV6に結束力を持たせるために、あえて困難な道へ進もうとしている。メンバーからブーイングが起こらなかったのは、せめてもの救い。

「なぁ、俺は面白いと思うけど。」

前途多難な現実に肩を落とし気味の坂本に、そんなことを言ったのは森田。まだ座ったまま資料をめくっていて、坂本が少し驚いた視線を向ければ、ニヤリと笑う。

「面白そうじゃん。6人で芝居とか、久しぶりだし。」

「そう、思うか?」

「新鮮だし、いいんじゃね?」

今回のライブについて、坂本はさまざまな考えを巡らせていた。ライブをいいものにすることはもちろん、V6がV6であり続けるためには何をすべきか。自分の役割を全うするとはどういうことなのか。だから、たった一人にでも、メンバーである人間に肯定してもらえることは嬉しかった。自覚する。今日、いや、ここ何日かで初めて、気持ちが軽くなるような感覚を味わったことを。

「それを聞けただけでも、満足だ。」

思わず正直な気持ちを告げると、森田は笑顔を引っ込め、まっすぐに坂本を見据える。

「早ぇよ。まだ始まってもいないのに。」

「そうだな。」

確かに、森田の言う通りだ。まだ叩き台にも値しないほどの、漠然としたベース部分だけが決まったに過ぎない。やるべきことは、まだまだ山積み。

「あんたなりの熱さ、見せてよ。したら、いいものができそうじゃん。」

好戦的な目をして、部屋を出て行く際に森田は坂本に告げた。12年分の記憶を辿っても、こんなシーンはきっと数えるほどしかない。「あんた。」などと乱暴な呼び方ではあるが、森田なりのぶっきらぼうな激励だと、坂本は受け止めることにした。メンバーからの支えになる言動は、自分を突き動かす力になるから。

「で、このあとは時間あるの?」

一人で暖かい気持ちになって浸っていた坂本に、同じく帰らずに資料をめくっていた長野が声をかける。声をかけられた坂本は、緊張で表情が強張る。まともに会話を交わしたのが、とても遠い昔のことのようにさえ感じられて、しかも、その会話は坂本が長野と井ノ原に「リーダーを代わってくれ。」と泣き言を言ったものというのだから、咄嗟に思ったことは、怒られる?というちょっとした怯えだった。が、この後に予定はない。予定があると、その場凌ぎの嘘で逃げたとして、あとでバレればさらにややこしくなること必至だ。

「特に、ないけど。」

答えれば、長野から言われたのは、予想していなかったこと。

「久しぶりにご飯、食べに行かない?坂本くんにはさ、井ノ原のこといろいろ、あれから進展とかもあったから、話しておきたいし。」

思わず、キョトンと首を傾げてしまった。説教の嵐がいったいどれほどの大長編で続くのか。と考えていたからだ。しかし長野は表情も穏やかに、どちらかといえば嬉しそうに見える。

「気持ち、吹っ切れたみたいだね。剛も言ってたけど、やっぱり坂本くんは熱くないとだよ。」

「悪かったと思ってるよ。」

「リーダー降りなかったから、帳消し。何にも聞かなかったことにしとく。それに、やっぱり井ノ原を連れ戻すには、坂本くんが居てくれたほうが心強いから。」

「いや、俺は・・・・・」

「分かってる。坂本くんは井ノ原が還ってくる場所。俺、がんばるからさ、井ノ原が還ってきたら、頭でも撫でて甘やかしてやって。」

ずっと続くと言い聞かせるように唱えてきた。今だって、唱えている。誰の声を聞き逃してしまったとしても、メンバーの声だけは届くようにと。それは井ノ原だけに対してではなく、今、ここにいる長野にだって同じ。担う役割が違うのだから、まったく同じようには立ち回れないけれど、同じ荷物を分かち合うことは、できる。重く圧し掛かるそれを、共に。

「坂本くんは、井ノ原を受け止められる人だから。」

不器用ではないけれど器用でもない。とてもよく知っている。年下のメンバーの手を引くことが自分がここにいる理由だとでも言うかのように、動くことをやめないのだ。坂本の見てきた長野は、井ノ原と変わらないくらいに自分だけで何もかも抱え込んで解決しようとする事を。年上である以上、そんなことは当たり前だと決め付けて。そうじゃないと、人には言えるくせに。坂本はまっすぐに長野のほうを向いて、口角を意識して上げると、強く断言した。

「お前のことも、撫でてやるよ。」

呼ばれたなら、呼ばれた数だけ応えてみせる。いや、メンバーの声が聞こえたと判断すれば、それが呼ばれたという種類のものではなくても、向かい合って応えてやる。

(後退なんてダサい真似、もう絶対にしない。)

思いのほか遠回りをしてしまった。今ここから、一緒に走り出す。

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