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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/06 (Mon) 04:23:16

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No.165
2008/02/23 (Sat) 23:55:26

Live Show 第30話です。

10000HITリクエストの募集は続行中です。

質問のメールを下さった方も、自由にリクエストお寄せください。


出演 : 井ノ原快彦 ・ 三宅健 ・ 坂本昌行 ・ 長野博






 

 不思議だ、何も感じない。

 幅を利かせているのは劣等感。もしくは疎外感。虚無感もあるだろう。とにかく、それらのマイナスな波が津波よろしく押し寄せて、平穏な日常に慣れていた心を薙ぎ倒していった。もう何もかもが台無しになってしまったと沈んだりもしたけれど、それも去って、今は心が軽くなった気さえする。外側から見たV6はとても滑稽。噛み合っていないゼンマイが無理矢理回るものだから、不協和音を轟かせて孤独よりもさらに孤独に近い空間を形成する。他の5人の考えなど知ったことではないが、三宅は坂本が暴走と言っても過言ではない勢いで始めたライブについて考えることが多くなった。こんな状態で、どんな希望的観測をすれば理想など抱けるのか。それを想像したときに三宅が至る結論はいつも同じ。

(リーダーだから、責任感を背負っちゃってんだ。ご苦労様なことだよ。)

刺し違えてでも元に戻す。なんて夢見がちなことを思っているのかもしれない。そう考えると、余計にV6という存在が重くなる。改めて6人の結束や人とのつながりと向き合おうとでも考えているのだろうが、本末転倒な気負いに終わりそうだ。次の打ち合わせまでに決めておくようにと言われている、自分が選ぶV6の楽曲20曲。一応は選んでおかないと、坂本が熱く説教など始めたら面倒なことこの上ない。適当にピックアップして、ルーズリーフに書いておいた。友人からもらったDVDを観ながら片手間に、何も考えずに書いておいた。上辺だけでもカタチを繕っておけばいい。そのうち壊れるだろうモノに、振り回されてなどやるものか。

(俺を守ってくれる人なんて、俺以外にはいないしね。)

開き直れば、簡単だったことが見えてくる。

 

 小さな寂れた映画館に入った。随分と古い映画を上映している。客席は井ノ原も含めて4席しか埋まっておらず、一人は大学生風の女性、一人は平日の昼間にどうしてしまったのか?というスーツ姿の男性、一人はふんだんに酒臭さを振りまく初老の男性、そして自分。別に見たい映画を上映したから入ったわけではない。外の明るさとか、喧騒とか、それらの要因が引き起こす頭痛から逃れたかっただけだ。映画の内容よりも、タイトルを和訳したときに導き出された単語が頭の中を支配している。友情モノの映画なのに何故、こんな言葉を宛がってしまったのだろうか。友情、つまり傍にいてくれる人がいて、決して完全な孤独にはならないのに『かかし』とは?それともそばにいてくれる誰かが居たとしても、心の孤独までは埋めることができないという、皮肉?例えばこの映画の内容をV6に変換してみたら、主人公は全員だろう。確かに自分は大きな問題を抱えてしまって離れることを選ぼうとしているけれど、言葉や態度に示さなくても、誰もがそういった類の感情を少なからず抱いているような気がする。大人だから、本音を偽るのは当たり前。大人だから、我慢するのは当たり前。自由な場所を目指して走り出せるのは、そう、まさに映画などの世界だけでの話。実際には思うが侭に生きるなんて、できっこない。

 ふと視界が遮られた。3列前の席に座っていた初老の男性が、席を立ったのだ。一瞬でも見逃したくないと思っている映画でもなかったから、その行為に関しては何も思わない。しかし、引き戻された。思考の中にもぐりこんでいて気付かなかったけれど、この映画館は古い建物だからなのか、ガタガタという音がときどき響いてくる。それは下を通る地下鉄が通過する音で、音を耳にするなり、井ノ原も席を立った。急ぎ足でロビーに出る。そして、こみ上げてきた感情を人目を憚ることなく吐き出す。一気に放出されたのは、すべてを嘲る大爆笑。モギリの女性が訝しげな視線を送ってきた。関係ない。とにかく笑いたかった。この世界に存在するすべてを嘲笑してやりたかった。所詮はみんな『かかし』なのだ。偶然に飛んでくるカラスさえも、幸せにすることなんてできない。些細なことで壊れ、傷ついて、本質的に癒す術なんて微塵も持たなくて、たった独りで壊れて終わる。いかに上手に嘘を塗りたくって、それを誤魔化すか。勝ち組と負け組の基準はその優劣で分かれるのだ。あの映画の中にある友情だって、所詮は人が作った脚本上での存在に過ぎない。今回の坂本が持ち出してきたライブも、紙の上に文字で表現された世界観を実体化させただけの代物。もっと言うならば、V6というグループも、事務所が作り出したはるかに虚構に近い集合体。だったらこんなにも、気に病む必要なんてないではないか。作り物の構造を変えるなんて、きっと容易いことだ。井ノ原が欠けてしまったとして、新しく他の誰かを入れるのもいい。そのまま5人で続けるのもいい。自由自在。この答に気付けずに大騒ぎをしている坂本や長野にも、教えてあげないと。すべてを擲ってまで翻弄されるようなものなど、この世にありはしない。

 ひとしきり笑ってしまえば、心が晴れた気がする。映画館の外に出て、町の中を歩いてみても、さっきのような頭痛は襲ってこない。だから調子に乗って考えてしまってから、後悔した。この後の予定は、6人で打ち合わせ。アルバムの話をするのだろう。そんなことを考えた途端、晴れた気がしていた心は一気に曇って、始まる頭痛。あの中に行きたくない。いや、むしろ行ってはいけないと言ったほうがいいのだろうか。まっすぐに向かえば集合時間に間に合う。歩いたって充分な時間だ。だから、行くのか?思ったばかりだ。作り物の構造を変えて、新しく踏み出してもらえばいいと。ならば、向かう場所は違う。時間の問題ではない、もう間に合いやしない。手遅れ。終わってしまったのに続ける?そんなムシのいい話、あってはいけない。

 通りかかったタクシーを捕まえて、乗り込んだ。行き先を告げて、窓の外に目をやる。そこに広がるのは鈍色の日常。カーラジオからは、人生相談が流れているのが聞こえた。相談者は女性らしく、夫がリストラに遭い、定職にも就かず自分に四六時中当り散らしてくるらしい。熟年夫婦にありがちな話だと思っていたら、その女性も夫も井ノ原と同い年だという。離婚も考えたが、小学校に上がったばかりの息子がいるので、簡単にそれを選ぶことができないそうだ。息子を連れて実家に帰ろうとすれば、息子は父親が大好きで、離れたくないと駄々をこねて叶わなかった。どうしようもない状況に、この番組にアドバイスを求めようとはがきを出したという女性。しかし、そんなときこそ妻は夫の支えになるべきだと無責任に説教を始めるDJ。井ノ原は相談の内容について、自分なりに考え始めた。ラジオの人生相談に助けを求めるハガキを送るような女性が、この逆境を独りで乗り切れるほど強いとは思えない。それを説教なんてして、責め立てて、もしもこの女性が夫も子供も捨ててどこかへ逃げてしまったら、このDJはどう責任を取るつもりなのだろう。夫はさておき、子供は堪ったものではない。7歳にして無職の父と2人きりになってしまうのだから。年端もいかない時期に、母親を失ってしまうのだから。目先の問題をとりあえず片すことに意識がいってしまって、そこまで考えていないであろうDJに苛立ちが募る。これ以上こんな話を聞くなど、ストレスを蓄積させるだけだ。ぎゅっと目を瞑り、目的地に着くまで惰眠をむさぼって誤魔化そうと、井ノ原はシートに身を沈めた。

 

 短時間だから。と、申し訳ないが路上駐車をさせてもらい、坂本は見慣れたマンションの前に立つ。長野からいろいろな話を聞かされて、不安が増殖の一途を辿った。自分が知る限り、井ノ原は妙なところで頑固だ。長野が差し出した手を取ったからといって、あっさりと心の中に抱え込んだ闇を手離すとは思えない。目の前にある帰る場所を、拒否することさえ辞さないだろう。ぐるぐると頭の中で考え込んではみたが、今朝になってみれば行き先は決まっていて、迷うことなく車を井ノ原の住むマンションへ向かって走らせていた。マネージャーに迎えに行く予定だった時間を聞きだし、強引にその役目を強奪。約束していたという時間の15分前。坂本はマンションのエントランスへ踏み込む一歩を少し躊躇う。ここまでしてしまうリーダーに、井ノ原は引いてしまうかもしれない。今さら、少し後悔。インターホンを押したときの第一声も肝心だ。四の五の考え込みながら中に入れずにいると、マンションの前でタクシーが止まる。ちらりと一瞥しただけで自分の思考へと戻ろうとした坂本は、何となくもう一度振り返って、ギョッとした。タクシーの後部座席に座っていたのは、まさに今から迎えに行こうとしていた相手。仕事前にどこかに出かけていたのだろうか。それとも昨夜から帰っていないのか。いずれにせよ、インターホン越しに話すという一つ目の難関はクリアされたわけで、坂本はすぐに降りてくるであろう井ノ原を待ち構える。止まれば、料金を支払って降りるだけ。何も難しいことはない。しかし坂本は運転手と井ノ原のやり取りに違和感を感じた。明らかに運転手の男は困ったいて、井ノ原と何かを話しているようだが、財布を出してお金を払おうとしている様子は見て取れない。たかがタクシーを降りるくらいのことで何をやっているのか。坂本はため息をつき、タクシーに駆け寄ると窓をノックしてみた。すぐに開けられる窓。

「あの、どうかされました?」

坂本の問いに安堵したような表情を見せる運転手。

「いえね、それが・・・・・」

「おとーさん!」

「あー。」

後部座席から泣き出しそうな表情を隠すことなく現れた井ノ原。降りるなり、必死に纏わり着いてくる。坂本は苦笑を浮かべ、上着のポケットから財布を出した。

「いくらですかね?」

6歳児にタクシーのシステムを理解していると考えるのは難しい。そして、この状況をタクシーの運転手が理解できると考えるのはもっと難しい。無賃乗車未遂のアイドルの抱える事情を説明するよりも、さっさと料金を払ってこの場を収めるほうがいいだろう。

 謝罪と支払いを済ませ、タクシーを見送った坂本は考えあぐねる。ぎゅっと口をつぐんで上目遣いに坂本の様子を探っている6歳の井ノ原は、きっと短い沈黙だって不安で仕方ないはず。気の利いた言葉でも言えればいいのだが、その気の利いた言葉が選び出せない。どうするべきなのかと考え込めば、弱々しい力に上着の裾を引っ張られる。何も言わないのは父親が自分のことを迷惑していると思い込んでいるからで、裏腹に上着の裾を強く掴んでしまったのは心の奥では父親を欲しているから。ぶつかり合う双方の感情を共に尊重するように、坂本は井ノ原の手をそっと握ってやる。ビクリと肩を跳ねさせる仕草にも優しい笑顔を浮かべて見せると、やさしくやさしく頭を撫でた。

「ヨシ、久しぶりにお父さんとファミレス行こう。」

まだ捨ててなんていないよ、大丈夫。そんな気持ちをこめて、握った手を引いた。返事どころか頷きもしなかった井ノ原は坂本に引かれた手を一度は引っ込めようとしたが、もう一度引かれるとおずおずと一緒に歩き始めた。

 先に助手席に井ノ原を乗せた坂本は、携帯を握る。時計を見れば集合時間が迫っていることは一目瞭然で、本当ならば井ノ原を連れてすぐにでも向かわなければ行けないところだ。が、こんな井ノ原を連れて行くわけにはいかない。たった今してしまった約束は、一緒にファミレスに行こうというもの。打ち合わせにメンバーが2人も遅刻するのは申し訳ないが、やむをえない理由がある。こういうときに呼び出すメモリーは一つしかない。ゆっくりと発信ボタンを押せば、数度のコール音に続いて「もしもし、坂本くん?」という声が聞こえた。

「ごめん長野。俺と井ノ原、ちょっと遅れそうなんだ。緊急事態発生でさ。」

―・・・・・もしかして、よっちゃん?

「ああ。悪いんだけど、先に始めるなりしといてくんねぇか。」

―いいけど、大丈夫なの?

「どうかな。でも、がんばってみるよ。なんせ、お父さんだからさ。」

照れたように答えて、坂本は電話を切った。なんだか自分で自分をお父さんと言ってしまうあたり、その順応力の高さを感じる。現実にはそんなことはありえないのだけれど、実際に坂本は井ノ原が子供の頃からの付き合いである。すぐそばでかわいがってきた後輩を、今となってはかけがえのない仲間を、見限るわけにはいかない。車に乗り込めば、井ノ原は俯いて少し緊張したように両手でジーンズを握り締めている姿が目に映った。それでも黙ってエンジンをかけ、カーナビのスイッチを押せば、流れ出す音楽。井ノ原が反応を示す。アクセルを踏み込みながら、坂本は音楽に合わせて歌いだす。

「誇り高き空に悲しみはなく 人は希望を信じることを知る 争いが振りかざす狂気に 世界が覆われる瞬間まで・・・」

「ひめいのようにふりそそぐごうう いきているあかしさえきえ たいせつなものをみうしなわないよう あがくことをえらんだそのさきに あたたかいねがいをつよくいだいて・・・」

流れ始めた曲にウズウズと身を乗り出しそうにしていた井ノ原は、坂本が歌ってくれたことに気を許したのか、元気いっぱいに歌い始めた。そう、長野の入れ知恵の賜物。コスモレンジャーの主題歌。これが井ノ原の気持ちを浮上させてくれるのならば、流すことを躊躇するわけがない。横目で瞬く間に楽しそうな表情に変わっていく井ノ原を確認して、坂本は小さく息をついた。まさか率先して歌う羽目にまでなるとは考えていなかったが、一緒に歌ってやることができればと憶えておいたものが役に立ったらしい。繰り広げられる6歳の井ノ原の単独ライブに、坂本は今年のV6のライブで楽しそうに歌う井ノ原の姿を想像した。なんとしても、あの場所に立たせてやりたい。そんな想いが改めて強くなった気がする。

 また笑顔で呼んでくれる日を、また恥じることなく大声でみんなが大好きだと宣言してくれる日を、誰より望んでいる。還ってくる場所に、いつだっているから畏れないで。そう、どれだけさまよっても還る場所さえあれば、戻ることは可能だ。それを、伝えたいと強く望む。

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HN:
ごとう のりこ
性別:
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職業:
妄想家
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