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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/12/29 (Sun) 05:39:38

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No.168
2008/03/05 (Wed) 23:16:38

Live Show 第33話です。

クルグルが書籍化されるそうですね。
とてもマニアックな世界に出会えそうな予感です。

そしていつのまに調理師免許など・・・・・


出演 : V6








 深夜まで及んだ打ち合わせの内容は、ほとんど頭の中にない。ライブの叩き台になる大切なアルバムの話なのだけれど、それよりもずっと気になることがあったからだ。適当に相槌を打ちながら、井ノ原が気になって仕方なかったのは三宅のこと。まるで傍観者がそこに一人紛れ込んでしまったかのように、話し合いに参加せず、話をきちんと聞いているのかさえも定かでない。坂本や長野が話を振れば「うん。」とか「そう。」とか、上の空な返事を俯いたまま、ボソリと呟くように発するだけ。その声はいつものよく通る高い声ではなく、籠ったような低い声。その一方通行がもどかしくて、一度だけ井ノ原は意見を求めてみた。何年か前、コンサートの為に一緒に作った曲をどう思ってる?と。しかし返ってきた答えは簡素なもので「分かんない。」のみ。とても頑固に作詞についてこだわりを見せていたことを知っている坂本が苦言を呈せば、三宅は不機嫌そうに撥ね付けるような視線をまっすぐに向けてきて、慌てて井ノ原が自分の意見を取り下げた。何年も前のことだから印象なんて薄くなっているはずなのに、今さら掘り返して悪かった。と謝罪を添えて。井ノ原が一生懸命に場をとりなそうとするものだから、坂本は長野に若干諫められたこともあって、引き下がる。以前なら、もっと上手に話を運ぶことができていたような気がする。三宅の考えていること、どんな風に持っていけば話に乗ってくれるか、何に惹かれるか、弁えていたはずなのに。だからカミセンとトニセンの距離を縮めるという役回りをさせてもらえていたのに。自己嫌悪で思わず激しく凹んでしまえば、「大丈夫。気にしなくていいよ。」という長野のフォローが耳元で囁かれた。それは余計に井ノ原の気持ちを沈ませる言葉で、V6にいるのに何もできない自分を確認するに至ってしまう。それから先は井ノ原の言葉数が少なくなり、坂本もほとんど三宅には話を振らず、打ち合わせなのに当たり前に蔓延る沈黙。悪循環の拡大は延々と続き、居た堪れなさが限界に達した坂本が諦めたのが、深夜3時過ぎだった。

 恐かった。という感想が最も適しているだろうか。思い出しただけで、すべての行動を後悔したくなる。打ち合わせの内容が頭の中にほとんど残らなかったのには、もう一つの理由があった。おそらく、そちらの理由のほうが及ぼしている影響は大きい。井ノ原は解散になるなり、即座に帰宅しようとしていた三宅に声をかけた。

「健、明日の夕方まで、オフだよな?」

「だったら?」

「久しぶりにさ、メシ食わねぇ?」

「やだ。」

それはいつもとは違う、はっきりとした拒否。振り返らず、帰ろうとドアに向かう足も止まらない。たった一度くらい断られたからといって、引き下がれない。井ノ原は足早に三宅とドアの間に割り込んで、もう一度同じ誘いを告げる。

「長野くんにさ、おいしいピザの店、教えてもらったんだ。一緒に行こう、おごるから。」

「行かない。」

「何か先約アリ?」

「あってもなくても、行かない。長野くんと行けばいいじゃん。」

「俺は、健と行きたいんだよ。」

笑顔で言えば、その表情を確認した途端に見せた三宅の表情は険しく変化する。親の敵に向ける如く強い睨みつけるような視線を投げつけ、言う。

「俺に干渉しないでくんない?鬱陶しい。」

「鬱陶しいってっ、酷くない?照れ隠しとか?シャイなんだから、健ちゃ・・・」

「偽善のつもり?苛々する。邪魔だから、どいて。」

明らかに力では勝っているはずの井ノ原は、いとも簡単に三宅に肩を突かれて横によろけてしまった。目が恐くて、怯んだ。冷たく、鋭く、井ノ原を蔑むような無機質な目線。動けず、何も言えなくなってしまって、井ノ原は呆然と目の前で閉まるドアを見ていた。森田が深いため息をついて後を追うように出て行ったことも、壁一枚隔てて向こうで起こった出来事のように思考にはうまく届かない。鬱陶しい。偽善。邪魔。頭の中を埋め尽くすのは、三宅の放ったそれらの言葉ばかり。メンバーの誰かが自分の名前を読んでいると分かっているのに、それさえ受け付けるキャパがない。ただ恐くて、苦しくて、

「俺は必要のない人間だって、こと?」

ここにいることさえ、禁忌だと警鐘が鳴り響いている気がする。

「戻ろうなんて、ムシのいい話だったんだ。俺はいらない。俺がいるから、みんながバラバラになっていく。俺が壊してる。悪い人間。よし、わるいこだからじゃまばっかりっ、よしがいたらみんなしあわせじゃなくなる。よしは、やっぱりしななきゃ。よしがいなくなれば・・・」

「お前、お父さんを一人ぼっちにする気か?ヨシがいなくなったら、お父さんは不幸になるぞ。知ってるだろう?大好きな人が自分を置いて遠くへ行ってしまうことが、とてもとても悲しいことだと。それをヨシは、お父さんにするのか?」

いつの間に傍に来たのか、とても近くで聞こえた声は優しく、すべてを癒すようにやわらかく耳に響いて、揺らいでいた心が現実に引き戻される。

「坂本くん、俺・・・」

「誰だって虫の居所の悪い日はある。健は今日がそうだっただけだ。」

肩に置かれた手を確かめるように握れば、よく知った大きな手で、急激に落ち着く。大きな呼吸を一つすれば、クリアになる視界。ふわりと笑う、長野の顔。

「井ノ原はね、何も悪くないんだよ。焦らなくてもいいからね。」

「長野くん。」

「俺たちと健の間を、取り持とうとしてくれたんでしょ?ごめん。辛い思いさせて。」

「だって、それが俺がV6にいる理由だからっ、俺がそれをやらないと、俺がいる意味がないから、だから、俺は健と話をしないといけないのにっ、なのに、できなかった。」

「魔法使いじゃないんだから、なんでもできるわけじゃないだろう。俺たちと健の間に何かしらの溝ができていたとして、それを井ノ原が埋めようと頑張ってくれるのは、正直、助かる。けどな、それができなかったとしても、俺たちは井ノ原を不必要だとは思わない。」

「坂本くん。」

「ありがとう。お前の気持ちは、いつも俺たちにパワーをくれるよ。」

そんなに立派じゃない。だって実際には、何もできていない。井ノ原は2人の慰めの声が痛くて耳を塞ぎたい衝動に駆られた。ふと心配そうに様子を窺っている岡田と目が合う。岡田は不器用に笑って、とたとたと駆け寄ってきて、ぎゅっと両手を握りしめた。また甘えている。自分はまだできるはずだ。この人たちの言葉にもたれたら、終わり。

「がんばる。俺はもっとがんばらないと、ダメじゃん?」

精いっぱいの虚勢だった。3人が揃いも揃って泣きそうな顔をして見つめてくるものだから、ここでこれ以上の弱さを見せたら、離れられなくしてしまうと気付いた。気付いたから一生懸命に元気な声と笑顔を作って、車だから送るという坂本の申し出も、家まで送るというマネージャーの申し出も辞退し、タクシーを呼んでもらって一人で帰った。

 坂本やマネージャーの好意を断ってしまったことは申し訳なかったが、その選択は間違っていなかったことを井ノ原は帰宅途中に知る。タクシーで自宅へ向かう途中、考えるのは今日の出来事ばかり。窓の外に視線を向けても、カーラジオに耳を傾けても、運転手の様子を観察しても、意識は逸れることなくそこへと向かう。そして、考えれば考えるほど酷くなる頭痛。ついには気分が悪くなり、自宅まではまだ少しの距離を残した場所で、タクシーを降りた。危うく無用の迷惑をかけるところだったのだ。一人でよかったと、胸を撫で下ろす。20分も歩けば、自宅に着くだろう。気分が悪くて、しばらくは移動できそうにはないが。そう、井ノ原はすでに、路肩に座り込んでいる。ガードレールに身体を預けて、頭が痛い、気持ちが悪いと繰り返し呟いていた。時間が時間だけに通行人の姿はなく、路上に座ることも、弱音をあっさりと吐き出すことも憚られない。ひんやりとしたアスファルトの感触が思考をクールダウンさせ、頭痛がするから何も考えたくないという気持ちを嘲笑うかのように、繰り返し、繰り返し、フラッシュバックする音声付の映像。これは何かができると過信していた罰だ。自分にはカミセンと坂本、長野の間を取り持つことができるなどと、おこがましいことを考えた報いだ。

(坂本くんも長野くんも、呆れただろうな。健ちゃんには、嫌われたかも。)

家に帰れば気分転換の一つでもして、次こそは頑張ろうと前向きになることができるのかもしれない。けれど、何故だか動く気にはなれなかった。電池が切れてしまったように、何もしたくなくなってしまって、そのまますべてをもみ消すように目蓋を下ろした。その程度のことで、消えてくれるものなどなかったが。

(世界が暗い。でも、きっとこっちが真実だ。)

かつて、楽しく、仲良く。という甘い戯言を正しいと勝手に思い込んでいた自分が、陳腐に感じられて笑う。その理想論を振りかざしたせいで、坂本や長野だけでなく、岡田にまで気を使わせてしまったのだ。利己的で、短絡的で、稚拙。大した力も持ち合わせないくせに、理想ばかり高いなんて本当に笑える。目を開け、掌を見つめた。多くのものを取りこぼしてきた情けない掌。夜の闇の中で、ぼんやりとした輪郭しか捉えられない。いっそ、このままこの黒に溶けてしまえばいいのにと思った。

 大義名分がなければ、共に歩くことが恐かった。自分がいかに小さな人間であるかという本性を燻り出され、やっと我に返るのだ。

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