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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/05 (Sun) 23:38:35

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No.166
2008/02/28 (Thu) 23:55:43

Live Show 第31話です。

更新が滞って申し訳ありませんでした。

今回は会話を中心としています。


出演 : 井ノ原 快彦 ・ 坂本 昌行








 ファミレスの駐車場に車を止めて、エンジンを切れば当然になくなる音楽。「あ・・・」という小さな呟きと同時に黙り込んだ井ノ原は、伏せ目がちになった。坂本が先に車から降りても、シートベルトを外すことさえしようとせず、助手席のドアを開けて笑いかければ、やっとでノロノロとシートベルトを外して降りてきた。かつては6歳の井ノ原をファミレスに連れてくれば、大騒ぎだったものだ。率先して車から降り、坂本の声に立ち止まることもなく店内へまっしぐら。入り口のウインドウにあるメニューに目をキラキラさせながら張り付き、お子様ランチを諦めさせるのに四苦八苦。元気いっぱいの声で「おとーさん。」と話しかけてくるから、声を抑えるように注意して、食事に来たのにアイスクリームやパフェに夢中の井ノ原に先にご飯を食べるように言って、箸やフォークの持ち方も、何度も注意した気がする。それが、今日は一言も発することなく、坂本に促されなければ歩き出そうともしない。店内に入っても座れば黙りこんでしまい、メニューを広げてもわずかな視線も向けては来ないから、坂本がコーヒーとオレンジジュースを注文した。それが出されるまでは互いが無言のまま座っていたけれど、目の前に飲み物と伝票が置かれ、店員が席を訪れることもなくなるだろうと判断すると、坂本は覗き込むように視線を合わせながら、名前を呼んだ。

「ヨシ。」

返事は返ってこない。その反応は怯むほどのことではないし、予測していた範疇だ。一度だけコーヒーに口を付け、坂本は努めてゆっくりと穏やかな口調で話を始めた。

「お父さんとお母さんの話、ヨシにしたことってあったか?」

左右に振られた首。必要な情報を与えてもらえずに、憶測だけで自分を責め続けていた健気な子供に、坂本は眉間に深く皺を寄せた。

「お母さんが出て行ったのは、ヨシのせいじゃない。お父さんのせいなんだよ。」

何も罪の意識を感じるようなことはないのだと、はっきり諭してやらなければいけない。

「俺はお母さんに何もしてあげなかった。だから、お母さんは寂しくて悲しくて、苦しい気持ちがいっぱいになってしまって、それで、ヨシに優しくなれなくなった。俺はお母さんの心が幸せに、穏やかに、本当に安らげるような存在になれなかったんだよ。お母さんに何度も聞かれたのに応えられなかった。「あなたにとって私は何?」「あなたはどうして私と結婚したの?」「あなたはいつも音楽のことしか考えてないじゃない。」「愛してる?」「今でも、いいえ、結婚する前から、少しでも私を愛してくれていた?」「見栄が張りたくて結婚したわけじゃないと言い切れるの?」「実家の財産なんて眼中になかったと言い切れる?」「愛してるなんて一度も言ってもらったことがないし、支えてもらってると感じたこともない。子供だって放ったらかしで、あなたは自分勝手な振る舞いを改めようともしない。」「あなたを見るとイライラするの。」「あなたとの子供だと思ったら、あの子だって鬱陶しく感じてくる。」「私をダメな女にしたのはあなただわ。」「あなたもあの子もこの家も大嫌い。」「あなたのせいで、全部大嫌いになったのよ。」・・・・・お父さんは泣き叫ぶお母さんを見ても、お母さんのことが本当に好きなのに、愛してるの一言が言えなかった。だから、お母さんはお父さんのことがイヤで、ちゃんと愛してるをたくさん言ってくれる他の男の人と出て行ってしまった。ヨシのせいじゃない。お父さんがダメな男だったから、お母さんもお前も、2人ともを守れなかったんだ。やりたいことを我慢して、愛している人のことを考えるって当たり前のことに、お母さんが出て行ってしまうまで気付けなかった。世界中でたった一人、心から結婚したい、一緒にいたいと願った女の人だったのにな。だからヨシは、悪い子じゃないし、いなくならなくてもいい。とてもお母さんから愛されていたんだということは忘れないでいてくれ。」

俯いて肩を震わせる井ノ原の頭を、繰り返し撫でる。たくさんの人に井ノ原は愛されているのだと、伝わっているのか不安でたまらない。6歳の子を相手に大人の身の上話なんて、みっともないと非難されても、それでも、どんな手段を使っても、連れ戻さなければいけない。

「ヨシは何も悪くない。たくさんの人に望まれて生まれてきたんだ。」

みんなが、井ノ原の笑顔を待ってる。

「お前は愛されてるよ。」

「・・・ほん、とに?」

「ああ。本当に。」

「坂本くんも、そう思ってる?」

「当たり前だろう。とても大切に・・・・・井ノ原?」

「長野くんも健も剛も岡田も、俺が勝手に問題を抱え込んで一人でテンパってたのに、俺のこと嫌いにならなかったの?俺はじいちゃんを騙したのに、悪いヤツだって思ってないの?」

「思ってるわけないだろう。お前は騙したんじゃない。優しい嘘で最後までおじいちゃんを笑顔でいさせてあげようと努力した。それを、責める理由なんてないよ。」

「でも、嘘には変わりない。すごくいい人だった。すごく俺のことかわいがってくれた。俺も実は孫なんじゃないの?って錯覚するくらい大切にしてくれたのに、裏切った。恩を仇で返すなんて最低だ。俺、最低の人間だ。」

「それに気付いているなら、まだ最低じゃない。まだ、あの場所に還れる。本当はちゃんと、知ってるだろう?長野が待ち焦がれているのを。岡田が願ってくれているのを。」

「もう自信がないんだ。上手に笑っていられる、自信がない。」

「無理して笑顔を作れなんて、誰も言わない。お前が持ってる本当の笑った顔が、自然に零れるそれがいいんだからさ。」

「じゃあ、それさえもできなかったら?」

「そういうことばっか、考えるなよ。やってみなきゃ、分からない。端から投げ出すなんて、格好悪いだけだ。嘘でうまく作った笑顔だけを真実として見てるなんて、そんなの虚構を追いかけてるだけに過ぎないだろう?嘘がうまくなっても、誰も喜ばない。」

「V6は俺にとって、世界中で一番大切なものだよ。何としても守りたい。なのに、俺が戻ったせいで、それに傷がつくのはいやなんだ。」

「目の前で倒れそうになっている大切な人に差し伸べた俺の手は、一度は届かなくて気が狂いそうになった。けどな、それで分かったことがあるんだ。気が狂うような想いを味わうくらいなら、死に物狂いで手を伸ばして、何がなんでも掴めばいいんだ。ってな。井ノ原、俺はお前のことを大切だと思ってる。それと同時に、自分が悔やむような道も選びたくない。利害が一致してると思わないか?お前が戻ってきてくれれば、V6は6人であり続けられるし、俺は大切なものをなくさずに済んだって満足感が得られるし、お前は自分が望む場所に還れるんだ。」

「そうなのかな。」

「V6のことを大切に思ってくれるのは嬉しいが、腫れ物扱いは心外だぞ。12年もかけて一緒に積み上げてきたものを全部、否定する気か?俺たちはそんなに、脆くない。」

「・・・・・。」

「俺はこの先、何があってもお前を見捨てない。誓うよ。だからお前も、俺を見限らないでくれると、一緒にこの先に続く道を歩いてくれると嬉しい、いや、心強い、いや、違うな。何て言えばいいんだ?もっと頑張れる気がする。そうじゃないか。えーと、そうだな・・・」

「そういうところが、いいなって思った。」

「え?」

「坂本くんの、すごく熱くて必死でちょっと強引に見切り発車しちゃうくせに、ツメが甘いとこ。だから一緒に、走りたいって気になったんだと思う。坂本くんの期待には全部応えたいって考えちゃったんだと思う、んだけど・・・」

「けど?」

「想いが強くなればなるほど、恐くなった。俺は、依存してる。坂本くんと長野くんが手を引いてくれるのが普通だって、2人が一緒にいてくれることは当たり前なんだって、甘えてる。それがこれからもずっと続いていくと思ったら、恐くなったんだ。俺も2人もV6も、ダメになっていくだけだよ。きっと、噛み合わなくなる日が来る。」

「バカだな。それが何だよ。」

「そんなV6を誰も望んでない!」

「お前、井ノ原快彦だろ?」

「そうだよ!V6の井ノ原快彦だ。だからっ・・・」

「俺は井ノ原の笑った顔が、スゲェ好きだ。見てると、力をもらえる気がする。その笑顔を持ってるのは井ノ原快彦っていう、一人の人格だろう?V6は関係ない。ただ、お前が好きだって思える場所ってだけのものなんだよ。」

「違う。」

「違わない。依存したっていいじゃねぇか。俺も長野も、お前の手を引くことを特権だとか思って自惚れてんだぜ。甘えてくれないと物足りないとか、思ったりな。どっちかっつーと、俺らのほうがお前に依存してる、みたいな感じなのかもしれない。」

「坂本くんが、俺に?」

「V6にお前がいるんじゃない。V6を作ってる要素の一つがお前なんだ。俺たちがほしいと思ってる明るさとか元気とか前向きな姿勢とか、そういう要素をお前が持ってきたから、それが他のメンバーの持ってるそれぞれの要素と合わさったから、V6はできたし、12年も続いてる。だから、俺たちは井ノ原快彦を待ってる。ずっと、いつだって、待ってるよ。」

「・・・・・俺は、どうして・・・」

「ん?」

「俺はこんなにも大切なものを、どうして捨てようと思ったんだろう。ごめん、坂本くん。俺やっぱり・・・・・V6にいてもいい?」

「バーカ。なんで謝るんだよ。しかも聞いちゃってるし。お前がV6に還ってくるのは、当たり前のことだ。みんな、そう思ってる。」

「うん。」

「よくがんばった。」

「うん。」

「だから、もうがんばらなくていいぞ。」

「がんばらなくても、って?」

「がんばるな。お前は全身全霊でお前をやってろ。」

「難しいよ。」

「簡単じゃねぇか。ただ、楽しく笑ってりゃいいんだ。」

「そっか・・・そっか、俺、バカだから気付かなかったわ。」

坂本は井ノ原が決して正しくはなかったと、むしろ愚かだったと思っていた。けれどそれを知りながら何もできずに途方にくれて、背を向けた自分がいて、井ノ原を嗤ったり責めたりすることはできない。大きな傷を一人で抱え込みながら、虚勢でも明るく坂本を、V6を想った井ノ原は、折れない心を持っていることを見せ付けられた。だから何が何でも救いたかったし、信じ続けられるような気がする。もしかしたら、互いに救いあっただけなのかもしれない。まっすぐな井ノ原に、坂本は教えてもらったことがある。失ってから後悔しても、手を伸ばすことをやめなければ、手遅れにはならないものもあると。だから、

「還ろうか。」

「ファミレスで、熱いことしちゃったね。」

「この店には、当分来れないな。」

「ときに、さっきのお父さんの話って、どこから持ってきたの?」

「企業秘密。」

「実話だったりして。」

「それはねぇよ。っつーか俺、結婚してないだろ。」

「実はしてましたー。とか?」

「ない。」

涙目の大人2人は、冗談めいた会話を交わしながら、店内を見渡してばつ悪そうに笑った。コーヒーのおかわりを聞きに来た店員が、ギョッとして黙って立ち去ってしまったことは、冷静になってみれば恥ずかしい話。偶然にも店内には客が少なかったことが、せめてもの救いだ。そして今度は、目を見合わせて嬉しそうに笑いあう。望んでやまない光ある場所へ、一緒に還ろう。始めるために。

 見ないように目を逸らしていたものに目を向ければ、そこには本当に見たかった光景が広がっている。

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