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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/02 (Thu) 19:14:07

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No.186
2008/04/06 (Sun) 23:38:56

10000HIT御礼リクエスト、第2弾でございます。

2作品目は雅さまより頂きましたリクエスト。

メンバーが最近個々の仕事が忙しくてバラバラになってしまった雰囲気を井ノ原さんが修復しようと頑張るが・・・みたいなお話をシリアスで。

ありがとうございます。シリアスをリクエストしていただけたので、とても楽しく書かせていただきました。
えーと、いかがでしょうか?
雅さまのご希望に沿ったお話になっていますでしょうか?
かなり痛い話になってしまったのですが・・・・。

ということで、こちらは雅さまのみご自由にお持ち帰りください。
本当に、これでよろしいでしょうか?




Painful Everyday


 

 答えはとても簡単なことだったんだ。

 

 待ち時間、楽屋のテレビに森田が映っているのを見かけた。随分と昔のドラマの再放送で、とがった笑顔を浮かべてセリフをつむぐ姿を、赤の他人がそこに存在しているような感覚を伴いながら、ぼんやりと井ノ原は見ていた。特番構成がテレビの多くを占めるこの時期、メンバーと顔を合わせる回数は格段に減っている。みんなそれぞれに忙しく仕事をこなす日々、ありがたいことだ。坂本と三宅は舞台、長野は新しいバラエティ番組、岡田と森田はドラマ。そして井ノ原自身も、映画の撮影で撮影所に拘束される毎日。共演者が忙しい人たちばかりで、半ば強引に詰め込まれたタイトなスケジュールは、予想外の速さでクランクアップを迎えるという結果を出した。当初の予定の三分の二の日程で撮影が終わってしまった井ノ原は、翌日、翌々日とレギュラー番組の収録があるために、スタッフの「これでゆっくり休めますね。」という社交辞令に、苦笑で答えるしかなかった。

 映画の撮影中、ずっと気にはなっていたけれど、黙って隠し通したことがある。それはメンバーならば気付いて鋭く指摘したかもしれないが、その場限りの共演者やスタッフを騙すことなど簡単。風邪も引いていないのに、中途半端に続いた微熱だ。体が疲労を訴えているのか、毎日だるく、意識がどこか虚ろになりがち。けれど自分一人の体調不良でスケジュールを変更してもらうわけにはいかないし、撮影に遅れを齎すわけにもいかない。元気いっぱいに笑っていれば、誤魔化せる。そうやって無理矢理に乗り切った。次に控える収録も、同じように勢いでやり抜いてみせると、決めている。仕事には妥協しない。やり遂げるのが当たり前のことなのだから。でも、体調が思わしくなく精神的ダメージを受けているせいなのか、暇さえあれば考えてしまうことがあった。一緒にいるのがメンバーだったとしたら、気付いて、さりげなくフォローしてくれるのかもしれない。と。甘えた考えなのは百も承知だ。メンバーが共演者だからといって、気を抜いていい理由にはならない。ただ、久しく6人で顔を合わせていないことに寂しさを感じてしまって、先週、ラジオの収録のときに何となく坂本に聞いてみた。最近、メンバーの誰に会った?しかし返ってきた答えは、今、井ノ原と長野に会っている。というもの。その会話を聞いていた長野がポツリと呟いた言葉は、なんともいえず胸に突き刺さった。メンバーに会うと、とても久しぶりだと思ってしまう。同じグループだからといって、常に6人が行動を共にしているわけではない。けれど、現在の状況ははっきりと言ってしまえば「疎遠」と表現しても過言ではないだろう。最初から知っていたのに。自分たちよりもずっと先に表舞台へ向かって走り出した人たちを見て、ちゃんと理解していたはずなのに。なのに、どうあっても納得できない自分を、井ノ原は疎ましく思った。そんな脆弱な気構えでいるから、ダメなのだと。心が、真っ二つに割れてしまったような気がする。

翌日の収録は、気が楽だった。後輩たちとの番組。何を気負う必要もなく、思わしくない体調を隠すことに躍起にならなくてもいい。彼らはきっと、気付かないから。案の定、収録は滞りなく終了し、井ノ原は気が休まったような気さえした。このまま、この鬱陶しい体調も全快してくれたらいいのに。そんな都合のいいことを考える余裕さえある。とても久しぶりにスタッフに食事に行こうと誘われたが、謹んで辞退させていただいた。今日を乗り切ったことはいいが、明日に待ち受けるのは長野、岡田と一緒のロケ。万全でない体調で望むそれは、メンバーにかけてしまうかもしれない無駄な心配を考えさせてくれて、憂鬱だ。約1ヶ月ぶりに会う岡田に、どんな風に絡もう。いつもどおりの笑顔を作る練習でもしておこうか。無用の杞憂は、いつの間にか井ノ原に深いため息の応酬を引き起こさせていた。

「具合が悪くなったら正直に言うこと。それが約束できるなら、俺は見なかったことにしとく。」

先制攻撃。顔を合わせるなり、井ノ原は長野に挨拶もそこそこに釘を刺された。こういうことを見抜かれたのに、強制的に休まされなかっただけマシだ。井ノ原は素直に承諾すると、ふいにため息をついてしまった。隠し通すことがうまくできない自分に、無性に嫌気がさして。とたんに症状を現した偏頭痛も、著しく下がってしまったテンションも、精神的な弱さが生み出すもの。V6が欠乏している今、抗う術は少ない。笑顔の練習に重ねて、具合が悪くなったことを隠す練習もしなければならないな。鏡を見ると、この上ないほどに眉間に皺を寄せた自分が、情けない顔をして存在していた。慌てて視線をそらして、楽しいことを考えよう。と自分を奮い立たせる。あのロケ、楽しかった。あの番組の収録、楽しかった。去年のライブ、楽しかった。新曲のレコーディング、楽しかった。浮かんでくるのは6人が一緒にいるヴィジョンばかり。しばらく会っていない森田は、携帯の番号もアドレスも変えてしまったらしく、一方的につながる大切な線を断ち切られてしまったような気がした。さっき岡田に聞いてみたが「知らんわ。」の一言で終了。いつもはマメにメールに付き合ってくれる三宅も、忙しいのか、おととい送ったメールに返信は未だされていない。坂本や長野も、ラジオの収録で会うけれど、収録が終われば、次の仕事に急き立てられるように行ってしまう。近いはずの人たちはとても遠く、何度泣きそうになっただろう。寂しいなんてわがままを、大人は言ってはいけない。我慢するのは当たり前。なのに、ちゃんと分かっているのに、心が言うことを聞いてくれない。このまま、V6は個々で活動するのが当たり前のこと。なんて風になってしまったら、V6がフェードアウトしてしまったら、自分はどうなるのだろう?井ノ原はこめかみを押さえ、蹲る。大丈夫、そんな未来は訪れるわけないのだから。そう必死に思い込もうとして見苦しくももがけば、嘲笑うように頭痛の波は怒涛の如く押し寄せる。今日をとにかく乗り切ろう。メンバーにこんな暗い想いを悟らせてはいけない。現実になってしまったら、もう二度と笑えないに決まっているのだ。

 自分で自分に驚いた。ロケが始まれば頭痛は嘘のように消え、身体がだるいなんて感覚もなかったことのように元気いっぱいでいられて。長野からのドクターストップはかかることなく、無事に一日を乗り切った。まだまだ大丈夫なんだ。井ノ原はすっかり気を緩めて、次がある。と速攻で帰り支度を始める長野と岡田を笑顔で見る。6人が揃うことがなくても、それを自分が耐えられないと思っていても、崖っぷちじゃない。もっともっと我慢できる容量は残っている。それを知ることが出来た途端、フワフワした感覚に陥って、視界に映る慌しい2人のメンバーに「がんばってねぇ。」なんて激励の言葉を、かけたはずだった。憶えていない。二人をちゃんと見送ることができたのか。最後の一瞬まで元気で笑顔の井ノ原快彦でいられたのか。ただ、本当にフワフワ、大丈夫だと・・・・・

 

 壊さないことが、何より重要。

 

 薄暗い間接照明が照らしていたのは、渋い表情で台本を凝視する坂本の姿。見知らぬ白い天井を見ても、坂本の姿を視界に捉えても、なぜか何も感じない。井ノ原が目を開いたことに台本に集中しているのか気付いていない坂本に少し苦笑を浮かべて、ゆっくりと起き上がる。そこで初めて、坂本は視線を井ノ原に向けた。

「どうしたの?坂本くん。稽古は?」

努めて冷静な口調で問えば、

「お前が倒れたって、長野が動揺しまくって電話してきたから、抜けてきた。」

少し気まずそうに答える。チクリ。と頭痛がした。

「ごめんね。大したことないのにね。」

「倒れといて、大したことないわけないだろう。」

「大したことないよ。大丈夫。」

「・・・お前さ、倒れたとき顔面蒼白だったらしいぞ。ずっと、具合悪いの、我慢してたんじゃないのか?ついさっきまで、長野と岡田が心配だからそばにいたいって、ここにいた。剛からは何回もメールが来た。大丈夫なのかって、スゲー心配して。健は、まだいるんだよ。何か飲み物を買いに行くって、出て行ったけどな。」

警鐘を鳴らすかのように、頭痛が増していく。メンバーが自分のことを気にかけてくれるのはとても嬉しかったけれど、それよりも、まだこうして、繋がっていることを確認できて、安心している。単純な近道に、どうしてもっと早く気付けなかったのだろう。

「なんか、こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど、みんながいるって感じられていいなぁって、思った。6人って、いいよね。」

「そうだな。」

まるで子供の相手をするように、少し困った表情を浮かべて坂本は短く答えただけだった。対する井ノ原は、胸が高鳴る想いでいる。ひどい頭痛に苛まれているのに、視界が突き抜けたように視野が360度開けて、届かなかったその向こうが見えていた。

 

 簡単に見つかった。V6が壊れない未来は、こうすればやってくる。

 

 遠足や修学旅行の前の晩みたいに、興奮している。もうすぐこの世で一番大切なものが、確かな存在になるから。永遠に壊れない、ずっとそこに存在し続ける。何よりも守りたくて、絶対に過去になんてしたくはないと切に願った、たったひとつ。儚く見えて寂しくなってしまったこともあったけれど、大丈夫。今日からはそんな気になることなんて、なくなるのだ。次第に減っていった共有できる時間も、取り戻せる。元通り。今日も体はだるくて頭痛がひどいのに、どうしてだろう。最高の気分。伝えたいたくさんのことを込めたこれから訪れる出来事がみんなの心の中に焼きついて、一生消えない跡になればいい。

 6人でそろっての収録。用意されたのは最高のステージ。いつまでも、いつまでもV6がV6であるように、希う気持ちが届くといい。井ノ原は上機嫌で収録の時間を迎えた。倒れて病院に運ばれた後だというのに、その元気で明るい様子に、メンバーは訝しがって無理をしているのではないかと勘繰ったけれど、無理なんて一ミリもしていない。とても正直に自分が思うがままに、振舞っている。もう少し。あと少しで得られるのだ。ああ、なんて居心地がいい日なのだろう。

 収録が進んで、VTRを見ているけれどどこか上の空で、静かに始まっているカウントダウンを高らかにみんなに宣伝したい気分。二つ隣の席の坂本が、VTRを見ながら話しかけてきた。少し身を乗り出す。振られた話に答えながら、聴覚の片隅が捉えた。永遠が始まるかすかな音を。「ギシ・・・」という本当にかすかな音。始まる。終わらないV6が。井ノ原はゆっくりと目を閉じ、少し息を吸い込んだ。背中に降りかかってくる強い衝撃は合図。数秒後に薄れゆく意識の中で聞こえたのは、メンバーが繰り返し、自分の名前を呼んでくれる声だった。明るい世界。肺を圧迫されたような感覚のせいでうまく出ない声を必死に振り絞って、聞こえただろうか。この壮大で、些細で、日常で、非日常な願いは。

「V6が・・・みんなが・・・ずっと続いてほしいんだ。」

答えはとても簡単なことだ。メンバーがV6を見放すことなんて、出来なくなる状況を作ればいい。すべてと引き換えに望むから、応えて欲しいと言えばいい。

 

 井ノ原の願いは聞き遂げられた。断ち切ることの許されない重い鎖で、V6を止まった時の中に繋ぎ止めたのだ。収録中に落下した照明の直撃を受けて、意識不明のままになってしまった井ノ原の元には、毎日メンバーの誰かしらがやって来る。井ノ原が帰ってくる日をV6はずっと待ち続けると、公共の電波に乗せて言わしめた。これで6人が離れてしまうという未来は消えた。バラバラになろうとしていた大切な人たちを、井ノ原は自分の世界に束縛することに成功したのだ。たとえその手段が狂ったようなそれでも、構わないと思ったのは自分自身。全身全霊で叫んだ想いは、届き、形を成す。誰にどんな非難を受けようとも、揺るがない願い。是が非でも譲れない、一番の大切。永遠が、始まった。

 

 もう決して、V6が失われる日は来ない。
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