ネプリーグに長野氏とイノ登場。
メールって、みんな凝るものなんですね。
世界のすべては手の中にあると君は笑った
2056年、東京。
「古き良き時代」という言葉は、すでに死語になってしまった。まさに、日本が超近代国家と呼ばれるようになってしまった。そんな時代の話。
24時25分、蒼閣寺境内。周囲を山に囲まれ、人気は感じられない。一見は、ひっそりとした闇。実はそこには・・・。
「あと5分ちょいくらいですね、奴らの吠え面を拝めるまで。」
上から下まで今時の若者風な格好の、周囲の雰囲気からは完全に浮いた男。森田剛、警部補。FBIにあこがれ、日本の警察で偉くなれば、次は自動的にFBIに転属できると思い込んでいる、勘違いな男。遠足に出発する前の小学生のようなテンション。これで、警視庁のキャリアなのだから世間は広い。
「お前が、つまらないミスさえしなきゃな。」
ジーンズにジャケット。三宅とは真逆のテンションの男。井ノ原快彦、同じく警部。警視庁のキャリアだが、上昇志向はない。淡々と仕事をこなす、真面目一辺倒。ただ言うなら、時々、勝手に黙ってどこかに行ってしまうことがある。
「ちょっとぉ、まだ泉林寺のこと、根に持ってるんですか?しつこく細かい事にこだわる男は、女にモテませんよ。」
「どこが細かい事だよ。前代未聞の大失態だろ。犯人のグー一発で失神だなんて。よく降格にならなかったもんだよ。」
「そこはもう、俺の饒舌なトークの勝利ですって。」
この2人、同じ事件の担当。森田はともかく、井ノ原はこのコンビに猛反対。軽いノリの森田とは、どうまかり間違っても合わないと文句轟々。現場に来ても、森田の事を心底快く思っていない態度を前面に押し出している。
―その会話は、余裕と取っていいのか?全戦全敗の迷コンビのお2人。
2人の会話に無線で割って入ってきた、事務的な口調の男。坂本昌行、警視。警視庁最強のブレインと呼ばれ、その呼び名の通り高いIQが売り。IQ勝負で負けることを、本当に嫌がっている。
「今日は大丈夫っすよ!坂本さん。ちゃんとあのコソ泥の首根っこつかんで、本庁に連れて帰ります!」
―その言葉は、半分くらいに聞いておくよ。
「そうしていただけると、気が楽ですね。」
―井ノ原、その発言も困るぞ。俺はあの連中には、心底ムカついてるんだ。森田も、いい加減、決着を付けてくれないと、上に報告する俺としても、いいかげんフォローの言葉が尽きてしまうんだがな。
「坂本さん、森田じゃなくって剛でいいですよ。」
―連中を捕まえられたら、そう呼ばせてもらおう。じゃあ、予告時間まであと2分。くれぐれも抜かりのないようにやってくれ。
無線終了。坂本の言う通り、警察は何十回と完敗を喫していた。神社仏閣のご神体と呼ばれるものを、まるで魔法のように百発百中で持ち去る窃盗グループ。目的は不明。どれだけ最新のセキュリティシステムで対抗しても、猫の手を捻るように簡単に、突破してしまう。口調こそ柔らかいものの坂本は苛立っていて、すでに井ノ原と森田は幾度もに渡って訓告と減俸を食らっていた。井ノ原は捜査一課でも数多くの事件を解決している優秀な刑事だが、その井ノ原でさえ手を焼く相手、まもなく登場。
24時35分、同所。相変わらずの静寂。境内はもちろん、寺の本堂にいる警官にも動きはない。今までに、時間通りでなかったことはなかった。なのに、今日は時間が来ても何の動きもない。
「おい、もうご神体は持ち去られた後いうことはないだろうな?」
1分ほど経過したところで、井ノ原が無線で中の警官に確認する。
―いえ、本堂の周辺では警官が厳戒態勢を敷いております!奴らがすでに侵入したということは決してありません!
「念のため、中を確認してくれ。」
―はい!
ご神体が万が一、持ち去られた後となると、初めてのケース。気付かないうちに侵入を許し、まんまと持ち去られたとしか言いようがない。坂本の怒り具合もとんでもないものだろう。そんなはずはない。とお気楽にも笑って言ってのける森田を鬱陶しく思いながら、井ノ原はタバコを咥える。どこから侵入して、どうやってご神体を持ち去ったのか。最悪の場合を考えながら、つけたばかりのタバコを投げ捨てたとき、中からの無線が騒音とも言える大声で割り込んできた。
(やっぱりか。)
―ご神体がありません!
「緊急配備、ここいら一体できるだけ広くだ!現場の確保忘れんな!あと、照明全開で点けろ!すぐ行く!」
―奴らを追いますか?
「当たり前のことを聞くな、バカ!」
―すいません!
(知能戦では負けない。ってか。)
すでに大騒ぎの本堂周辺を恨めしく見て、出るのは舌打ちばかり。もう鮮明に、坂本が眉間に皺を寄せて報告を聞く姿が想像できる。相手がここまで簡単に警察の包囲網をかいくぐれるとなると、あるいは・・・
「なんなんでしょうねぇ。内部に手引きしてる奴とか、いるんですかね?」
「そういうことを、安易に口に出すな。」
森田にはそう言ったが、同じ事を井ノ原は考えている。出来れば考えたくない、最悪のケースを。
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