今日は『身体測定の日』なのだそうですね。
今日は何の日?
毎日、正直言ってうんざりしてる。どれだけ引きずるんだよ。って。それを口に出して言えないのが、弱いところでもあるんだけど。
「なんで3人分のメシ、あるの?」
「俺と、剛と、長野くんで3人じゃん。」
「長野くんは死んだだろ。」
「でもさ、帰ってきたら困るでしょ。あの人、ご飯ないと拗ねるから。」
もう3ヶ月も経ったよ。いいかげん受け入れてもいいんじゃないの?始めは気を使って黙っていたけれど、もうホント、勘弁して欲しいと思う。だから最近は包み隠さず言っているのに、井ノ原くんは毎日、欠かさず長野くんのご飯を用意する。死んだことを告げても表情一つ変えずに、帰ってきたら困るから。といたずらっぽく笑うんだ。井ノ原くんは長野くんがおいしそうにご飯を食べるのを見ていると、幸せな気持ちになるとよく言っていた。恋人かよ、キモイな。なんて突っ込めば、恋人じゃないけど、大切な人だよ。と必ず答えた。知ってる。だって今だって、顔を合わせれば話題に出ない日はない。この家にはまだ、生きているかのように、長野くんの存在を示すものがたくさん残っているし。
一度だけ、イライラして洗面所の歯ブラシを捨てたことがある。朝、仕事に行く前にゴミ箱に放り込んでやった。でもその日の夜には、新しい歯ブラシがちゃんと用意されていた。長野くんがいつも使っていたメーカーの歯ブラシ。しかも井ノ原くんは、それを捨てたのは明らかに俺なのに怒りも、いや、そのことに触れさえしないで。そのあと、何度か長野くんが使っていたものを捨ててみたけど、すぐに井ノ原くんが買ってきたりして元に戻すというイタチごっこ状態で、もう、捨てるという手段は諦めた。はっきりと突きつけないと受け入れようとはしないと分かったから。だから、言う。長野くんは死んだ。と。
いつまでも引きずってるのは止めろと言えずに、言えばよかったと後悔するのはもう少し先のこと。
ものすごく不思議なことがある。剛が、長野くんが死んだと言う。死んだ?ああ、死んだのかな。そんなこともあったかもしれない。だとして、でも長野くんだし、帰ってくるはずなんだよね。お腹空いた。って、よっちゃんご飯。って。だから毎日ちゃんと用意しているのに、長野くんがご飯が用意されていなかったらものすごく怒ることなんて知っているはずなのに、どうしてあるんだ?みたいなニュアンス。剛は勘違いしてる。長野くんは、きっと帰ってくる。死んだなんて関係ない。
大切な人なんだよ。いないと、ダメだ。死んじゃったことなんて、百も承知。その瞬間を見ていたから。けどきっと、帰ってきてくれる。一度は自分からつかんだ手を、簡単に離すような人じゃない。剛だって知ってるはずなのに、どうして割り切ろうとするんだろう?待っていれば、絶対に帰ってくるよ。だから歯ブラシもお茶碗もマグカップもお箸も服も靴も部屋も全部、そのままにしておかないと。歯ブラシは決まったメーカーのものしか使わないから、たくさん買い置きしてある。他のものだって、全部あるよ。会社に履いていく革靴は磨いてるし、おいしいって褒めてくれた手作りの苺ジャム、今年もたくさん作ったし、何も変わっていない。帰ってくるよ。帰ってくるのを、ずっと待ってるよ。
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