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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/04/28 (Sun) 23:26:48

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No.131
2007/12/19 (Wed) 23:37:51

Live  Show 第14話です。

さらに末っ子、がんばる。



出演 : 井ノ原快彦 ・ 岡田准一 ・ 坂本昌行 ・ 長野博








 言いたいことは山のようにあるけれど、絶対に言わない。明るく、朗らかに、優しく、いつだって元気いっぱいで、みんなの痛みを少しでも和らげることができて、そんな役割でいる。そう決めたのは、自分なのだ。最後までやり遂げるのは、当然のこと。

 整理整頓のまったくなっていない井ノ原の部屋。岡田の目に留まったのは、テーブルの上に無造作に置かれた、竹とんぼ。誰かからの貰いものだろうか。手作り感溢れるそれには、ご丁寧に名前まで書かれている。「よしはる」と。

(よし・・・はる?よしひこやなくて?)

岡田は井ノ原のものではない名前に、首を傾げた。確かに「よしくん」には違いない。が、知らない名前だ。どこかで知り合った子供にでももらったのか、それとも今回のことに関係があるのか。部屋を見ていると、他にも昔懐かしの。と形容されるおもちゃはたくさんあった。その中のいくつかには、やはり「よしはる」の名前。

(誰やねん、よしはる。)

井ノ原の部屋に来れば、何か見つかるかもしれない。という発想は、あまりに短絡的過ぎたらしい。確かに「よしはる」という謎の名前が登場したが、それが今回のことに関係があるかといえば疑問だ。単純にまっすぐに考えるならば関係があるとして調べるのだろう。けれど、日本中に一体どれだけの数の「よしはる」が存在するかと思うと、そこから切り口にするのは時間と労力の無駄だとして、スルーするのが無難。なんて中途半端な手がかり。これではなかったにも等しい。深いため息を添えて、竹とんぼは元あった場所に戻された。収穫がないのに長居をしても仕方がない。岡田はさっさと部屋を出ようとして、自分でもどうしてかは分からない、ただ、何となく気になってしまって冷蔵庫を開けてみる。中には数本のミネラルウォーターと缶ビール・・・・・と、なぜかビンのフルーツ牛乳が5本。どれもへたくそな子供の字で「よし」と名前が書かれている。しかもすべて、一口程度飲んだ形跡があって、不自然。

(不自然やけど、だから何?って感じやなぁ。)

漠然とした痕跡ばかりを大量生産することに若干の疲労感を感じた岡田は、今度こそ井ノ原の部屋を出た。無理を言って鍵を借りてわざわざ足を運んだのに、手ぶらで帰る。無駄足という言葉が相応しすぎて、岡田は少し笑った。

 井ノ原はあのあと、何も話さなかった。時々「よしくん」が不安をにじませた口調で話しかけてきたが、岡田は一つ一つにきちんと答え続けた。その会話の中にさりげなく織り交ぜて、いろいろな情報をリサーチした結果、一番驚いたのは坂本が父親で、井ノ原昌行、30歳だということ。その衝撃が大きすぎて、その後にいろいろなことが分かったが、然程のセンセーショナル感はなかった。ただひとつ、ひとつ、これは驚いたというよりは意外だったと感じたことがあったのだとしたら、

「よしね、ながのくんのわらってるかおがすき。」

「ああ、優しそうやもんね。」

「ちがうよ。いつもやさしいけど、わらってるかおはうそのかおだよ。」

「嘘の顔?」

「おとーさんとかみんなのためにね、うそでもわらってるんだ。だからすき。」

「・・・・・じゃあ、いのっちは?いのっちの笑ってる顔も好き?」

「あんまり、みたことない。」

「あはは。そうやね。そういえばあんまり、笑わへんかもね。」

「よしがいっしょにいるから、きっとわらってくれないんだよ。じゃまなこがいっしょにいるから、おとーさんはわらってくれないんだ。」

「そんなこと、ないよ。」

「あるよ。だってよしのおせわで、おとーさんはいつもつかれてるもん。」

6歳の子に本当を見抜かれていること。

 刮目せよ。カタチあるものは壊れうるものだ。

 12年も一緒にいるからお見通し。自分たちの手を引いて、支えて、矢面に立って、光ある道を示してくれる年上の3人の口グセは「大丈夫。」だ。

「収録は無事終わったから大丈夫だ。ありがとな、岡田。」

「ごめんね、岡田。あとは大丈夫だから、俺たちに任せて。」

ほら、また大丈夫でごまかす。

「知っとるよ。」

「何をだ。」

「よしくん、2人が自分のせいで苦労してること、知っとるよ。」

坂本や長野に守ってもらうのは楽。とても安心できる。でもそれは、気付いていなかったときの話。一方的に依存することしかできなかった、子供の頃の話。

「大丈夫じゃないやん。今のトニセン、全然アカンと思う。」

眉をひそめる坂本。笑顔を繕う長野。岡田には手に取るように分かった。

「嘘は、ナシにして。」

「嘘なんてついてないよ。井ノ原のことは、俺と坂本くんで・・・」

「いつもやさしいけど、わらってるかおはうそのかお。」

「え?」

「よしくんが、博のこと見て思ってること。おとーさんは、よしのおせわでいつもつかれてる。これが坂本くんを見て思ってること。6歳やからって、甘う見てたんと違う?いのっちには変わりなくて、人の気持ちに誰より敏感なこと、忘れてたんと違う?俺らのことかって、カミセンには言わずにいようって、年下やから問題が起こっても内緒にしとこうって、2人だけで決めとったんやろ?6人でV6って言っといて、そんなこと全然思ってへんやん。俺は気付いてもうたけど、隠されてること知ったら剛くんと健くんは、めっちゃ悲しむと思うで。」

そんな関係を築こうなんて、一度だって望んでいない。置いていかれるのがイヤで、一生懸命に追いかけてきたのに。寄せ付けてさえくれない背中。お綺麗な嘘ばかり上手。

「よしくんは、俺と一緒に帰るから。」

肩を並べたときは拒絶しないでほしいと、それを切に望んでいた。大丈夫で片付けてしまったら済むと思われたくない。だから2人は困った表情をしているけれど、岡田は何もフォローの言葉を残さなかった。残したくなかった。

 井ノ原のマンションを出て、のろのろと歩く道。昨夜、帰り道でした小さな賭けを思い出して、自分の手を見つめる。岡田は井ノ原を繋ぎ止めておきたくて、でも束縛はしたくないから、ほんの小さな小さな、それを残すにとどめたのだ。たくさんのことを考えた、惰性で一緒にいるわけでない。何もしないのはイヤだ。やりすぎて、相手に重いと感じさせるのはもっとイヤだ。ただ、許されるのならばたった一つだけ、望まれなくても、してあげられることがあると岡田は考えていた。それをすることを迷ったのは、自分に責任を全うするほどの器があるかどうかの、自信がなかったから。中途半端は井ノ原を傷つける。坂本や長野には大きなことを言って突っぱねて、なのにまだ踏み出せない。踏み出さなければいけないのは当たり前で、その時に用意するべき表情も決まっていて。

「よしくん、俺ひとつだけ、お願いがあるんやけど、ええかな?」

「岡田?」

「ああ、いのっちやったん?うん、いのっちのことも大好きやで。もう俺はいのっちのやることには口出しせえへん。やから、ひとつだけ、お願い、聞いて欲しい。」

「何だよ。」

「手、出して。」

意図のつかめない言葉に、井ノ原は躊躇っている。岡田は自らは動こうとしない井ノ原の手を、そっと取って井ノ原の目の前で止めた。冷たくなってしまった手は心の温度と比例しているようで寂しかったけれど、笑顔を崩すことなく、言葉を添える。

「いつか、帰ってきてな。」

言いながら小指をゆるく絡めると、その瞬間だけはいつもの井ノ原がいたのかもしれない。岡田が勝手にしたその行動を、拒まずにいてくれた。それだけで、充分。今日になっても、いや、きっとその願いが聞き届けられる日まで残っているだろう感触は、たったひとつ、岡田の想いを保つための、大切な証だった。

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