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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/12/29 (Sun) 21:51:04

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No.126
2007/12/16 (Sun) 18:05:47

Live  Show 13話です。

今回はかなり短めになっています。

話の流れ上、やむを得ずここで切りました。

末っ子、がんばる。


出演 : V6







 目を閉じたり、開いたり。それを繰り返しながら、坂本は考える。今日の収録をどうするか。この状態で、井ノ原を参加させることは不可能だ。何かしらの理由をつけて休ませるしか選択肢はない。ただ、そうするとして、今の井ノ原は、一人で放っておける状態ではない。収録の間だけだと言ってもだ。だとしてそばにいることにできる人間がいるとすれば、坂本、もしくは岡田。メインであるV6が4人しか参加しないというのは心許ない話だが、この際、背に腹は変えられないだろう。狂った世界に侵食されて翻弄されるのか、平和主義を盾に傍観するのか。誰も選択を迫ったりはしない。選ぶのは自分自身。坂本は現時点で考えられる、一番いい方法を提案したくて、思考をめぐらせて、

「岡田はここに残ってくれ。長野は俺と収録、行くぞ。」

2人がおかしな表情を浮かべたのは、言うまでもない。けれど、坂本は井ノ原はもちろんだが、長野も放っては置けなかった。誰かに助けを求めてくるのは、本当の本気でどうにもできなくなったときだけ。だから、手を離せない。岡田は思慮深いがどこかまったりしていて、そう、人畜無害と言っても過言ではない。それを考えれば、こうするのが一番。

「俺はメンバーに関しては、誰のことも取りこぼさねぇよ。」

不安を目いっぱい称えた視線を送る長野に、なるたけ力強く言ってみせる。それでも長野は困惑しているようで、曖昧な表情を浮かべて、首を傾げた。逆に岡田は平然としていて、いつもと変わらない風に笑うと、長野に向かって優しさを強調しながら一言だけ、言った。

「大丈夫やから。」

傾いた足元を丁寧に補正するように、フラットな年下のメンバー。バランスの取り方を知っている器用な男は、長野の恐れを知ってか知らずか、今、この状況で笑う。

「坂本くんが守ってくれんねやろ?だから、大丈夫。」

根拠のない自信に満ちた言葉は、この状況ではとても有効に作用した。気持ちを切り替えるスイッチのように短く息を吐いた長野は、楽屋へ向かう。坂本がまるで後押しするように、その後ろを着いて歩く。2人は一度も振り返らなかった。

 助手席に乗り込むと、後部座席からかすかに聞こえる声。何かをぶつぶつと呟いている。いい年をして、メンバーの誰より頑固なのは井ノ原だ。それをよく知っているから、岡田は何も言わず、ただ座っていることにした。

「俺のことなんて、放っておけよ。」

そんな岡田に、後部座席から投げつけられる敵意のある言葉。言われることは分かっていた。だから返す言葉も用意している。

「うん。いのっちのこと放っとくから、いのっちも、俺のことは放っといて。」

「じゅんちゃんは、よしのことじゃまじゃないの?」

「平気やよ。俺はよしくんのこと、大好き。」

会話は途切れた。要は飲み込まれなければいい。この誰よりも頑固で強い意思を持った、大切な人の放つ、羅刹のような真理に。

 

 言えることはたった一つ。何もかも、面倒くさい。

 好きだけど、苦手なものが誰にでも、あるんだ。

 俺は俺のやりたいことで、死ぬまで笑っていたい。そんな話を、何度となくしていた。そして気付けばその言葉は、現実になっている。さして苦しみもがくこともなく、涼しい顔をして、ここまで来たわけではない。それを叶えてくれたのは、自分の力ではなく、きっとこの先、一生かかっても出会うことのできないであろう、大切な仲間だった。いつもそばにいることが当たり前のように、共存してきた。その存在について、言い尽くせない感謝の気持ちとは裏腹に、面倒だと思っている自分を知っている。やっぱり苦手だ。人と群れるのは。

 静かな楽屋。三宅が必死に森田に気を使って、おろおろしている。12年も一緒にいられたことを、奇跡だと今でも漠然と捕らえていると言ったら、メンバーはどんな反応をする?確証なんて感じたことがないと言ったら。

「みんな、遅いね。」

重い。

「のど渇かない?何か飲む?」

重苦しい。

「暖房、効きすぎてんのかな。ね、剛も暑くない?」

「うるせぇよ。」

奇跡だって、いつかは終わるのだ。

 結局、収録は4人しかいなくても、然程の影響もなかった。坂本が、岡田はドラマで撮影が終わった箇所に修正が出たので、急遽現場に行くことになり、井ノ原は体調が優れないため欠席だと告げた。それに対して森田も三宅もほとんどリアクションを見せず、勘繰ってしまうほど静かだ。何も聞かれないことは楽だけれど、不安も煽る。まるで、過去に戻ったようで。ただあの頃と違うのは、お互いをよく知ってしまったという現実と、その上で醸し出される、よそよそしい空気。嫌な夢に魘されているようなこれは、結末か、ただの経過地点か。

「ねぇ長野くん、俺さ、言ったじゃん?できることがあるならやるよ。って。」

「うん。」

「あれね、取り消す。やっぱ俺には無理だし。」

「健?」

「強引に関わって、邪魔しちゃ悪いしね。だからナシ。俺は、パスだから。」

笑いながら三宅が言ったのは、まるで決別。長野の瞳が激しく揺れる。

「俺、帰るわ。」

いつの間にか帰り支度を整えていた森田は、楽屋を出て行く。まるで他所の出来事には無関心だからと、言わんばかり。そして三宅も、上着とかばんを抱えて出て行った。扉の閉まる音は、拒絶を確定する音にも聞こえて、坂本は泣きたくなった。

 

 エンドロールが流れたら、物語は終わり。

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