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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/12/27 (Fri) 05:43:24

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No.316
2009/02/20 (Fri) 14:52:54

短編更新です。

本日は森田剛さん30歳の記念日(笑)。
おめでとうございます。

30ですって。
あの威勢のいい鼻っ柱の強かった少年がもう30歳ですよ。
早いものです。

ということで、短編はお誕生日記念作品。
長所だと思しきところを広げてみました。
広がってます・・・・・よね?(聞くな!)


出演 : 井ノ原 快彦 ・ 森田 剛 ・ 坂本 昌行













 


想像を遥かに超えて君は誇り溢れる


 
 
「またやってんの?」
すっかり呆れ返った口調で坂本が顔を覗かせる。
「随分カタチになってきたみたいだよ。」
「だから何?」
「やー、ここまで来るとさ、本番も完成が楽しみだなぁと思って。」
「楽しみじゃないな、まったく。」
見守る井ノ原と呆れる坂本の視線の先には、空き部屋を占領してダンスのレッスンに精を出す男の姿。どこかのストリートダンスチームから舞台やメディアで活躍するプロチームに引き抜きという栄転でやって来たはずの男は、それに喜ぶ表情一つ見せず黙々と、毎日のように、この部屋に独りきりで籠ってばかりいた。最初こそ周囲の人間も気を使って声をかけていたものだが、すでに3ヶ月を経過した今となっては、放置、あるいは無視されているという表現が相応しいだろうか。人のいい井ノ原と、なんとなく気にはなっているという坂本しか、この部屋を訪れる人間はいなくなっていた。
「ホームシックなんだよ、きっと。」
「知らねぇよ。」
男は基本のステップを繰り返し、そのひとつひとつを確かめるように丁寧にこなす。プロの目線で判断すると決して上手とは言えないけれど、そのすべてが本当に丁寧に、心をこめて行われているものだということが井ノ原には感じて取れた。坂本はいつもチラリとのぞいて、憎まれ口を叩いてはさっさと帰ってしまうが、井ノ原は1時間はその様子を見て帰る。年に一度の大きな公演が迫っており、一秒でも早くその振り付けを覚えなければならないときだ。そんな折に差し掛かってもなお、何が目的でやっているのかは見当がつかないけれど、彼のダンスへの誠実さや愛情のようなものは、何となく嫌いではなかったから。
 
 その基礎練習もそろそろキリが付きそうだろうか?と言えるくらいまで安定した形になってきた頃、井ノ原は初めて、それを繰り返すいう作業をしている最中の彼に声をかけてみた。開け放たれたドアをノックし、中に入ると彼は一瞬動きを止めて、けれどそれは本当に一瞬のことで、また黙々と身体を動かす。持っていたコーラのペットボトルを目の前に差し出すと、やっと彼は井ノ原を振り返った。
「ちょっと休憩とか、どう?」
「・・・うん。」
彼はコーラを受け取ってくれて、少しだけ笑ってくれた気がした。
「森田くんはさ、どうしてこの話を受けたの?」
「みんなが・・・・・チームのヤツらが行けっつったから。」
「森田くん自身はイヤだった?」
「別に、イヤじゃない。」
「よく優勝してたよねぇ。いろんな大会で。」
「たまたま上手い人間ばっかが、集まってただけだし。」
「それだけじゃないよ。スゲー熱くてさ、見てる人間も巻き込んじゃう感が最高だった。」
「そうなんだ。」
この少しの会話の間、森田の表情を見ていて井ノ原は思った。単純にホームシックで単独行動に走ったんじゃない。ならばどうして、やっているのだろう。
「基礎が不安?」
「違う。」
「新しい振り付けに馴染めないとか?」
「俺、ダンスは独学だから。基礎もちゃんとやったことないクセに、応用とか無理だし。」
「そっか。」
ひどく真面目でひどく不器用なのだ。自分勝手でも甘ったれでもない。どうすれば素晴らしいものを壊すことなくきれいに溶け込めるのかと、きちんと考えてくれた結果。
「もったいない!だったらもっとみんなとちゃんと話した方がいいって!せっかく一生懸命にやってくれてるのに。」
「それは、しない。」
「どうしてー。」
「だってこれが本当に正しい方法どうか、自信ないから。」
「森田くん、あのね・・・・・」
「コーラ嬉しかった、ありがと。」
「おい、ちょっ・・・・・」
立ち上げからこのユニットに参加していた井ノ原には、途中参加の森田なりの努力なのだと思えていた。それは途中参加という経験のない人間の、一方的な憶測なのかもしれないけれど。森田の真意を測りかねる。プロとしての経験もないのに完璧なダンスなんて急には作れっこない。ストリートで培われた経験が齎してしまう厄介なクセも分かっていた。責めたつもりはこれっぽちもなくとも、事実「本当に正しい方法かどうか自信ない。」と泣き出しそうな表情で言って、帰ってしまった。井ノ原は、触れてはいけない何かに触れてしまったのではないかと反省しながら、使い手の去った部屋を全体的に見渡した。確かめなくても見れば明らか。比較的狭くて利用者の少ないはずのその部屋の床はピカピカに磨き上げられ、大切に使用されていた。森田が、やってくれているのだと。
 
 土日を挟んで週明けの月曜日、何となくその部屋の前を通った井ノ原は、目に映った事態が飲み込めなかった。先にその部屋の前でじっと中を見つめていた坂本の胸倉を何も言わずに思い切りつかんで、突き飛ばしたのはよほど動揺していたからだ。
「お前ね、そこまで俺のこと見縊ってもらったら困るぞ。」
それを分かっていてくれた坂本は声を荒げることもなく冷静に言って、またそれを見る。
「誰の仕業か、防犯ビデオでも見せてもらうか?」
「いや、えーと・・・ああ、ああ。そうだ、うん。ごめんなさい、坂本くん。」
「ヘタクソでも、いい感じになってきたと思ってたんだけどな。」
「森田くんが見たらきっと、すごく悲しむよ。どうしよう?」
「魔法でも使えねぇ限り、元には戻せんだろう。」
「だよね。」
2人の目の前には、荒らされた荷物。大切そうに毎日持ち帰っていたダンスシューズは、修理するとかいう手段なんてまったく通用しないまで滅茶苦茶に、引き裂かれている。もう手の施しようがないのは分かっているけれど、井ノ原はそれをそっと手に取り、せめてはと揃えて置いてみた。荷物を片し始めれば、散らばった服や私物からきちんと汚れを払い、踏みつけられて汚れと型崩れに苛まれた無残なカバンがどうにか見られるまでにならないかと、試行錯誤をして。坂本は何もせず、ただじっとその様子を見ていた。いつのまにか自分たちの中で確かな存在になっていた彼の、きっと大切だろうものが壊れたという事実に胸を痛めて。
「何、してんの?」
心臓が跳ね上がった気がした。2人とも、声のした方を見ることができない。
「どうして井ノ原くんが、片付けとかしてんの?」
どう答えれば、森田を傷つけずに済むのか。
「誰かが悪意とかで荒らして靴も壊して、それを見たら俺が傷付くって思ってくれたの?」
何も答えられない井ノ原に森田はゆっくり近付いて、その手からカバンをひったくるように取って、あさっての方角へ投げ捨ててしまう。
「が、がんばればなんとかなるって。俺、手伝うしっ・・・」
「俺が壊したんだから、いい。」
「え?」
「もう、いいんだ。」
「どういうことなんだ?」
森田の言っていることがまるで理解できないと言わんばかりに目を白黒させている井ノ原に代わって、坂本が問う。すると森田は笑って、答えた。
「怖かったんだよね、ここに来て、お前はきっとこれまでのことなんか忘れて、最初からプロでしたってカオを当たり前にするようになる。って仲間の一人に指摘されちゃってさ。俺の出身はストリートで、それは普遍の事実なんだけど、お前はストリート時代を捨てたんだって言われたみたいで、堪んなく悔しい気持ちになった。」
「ウチに来たからって、みんなそうなるとは限らない。」
「でも、こっちに来て1ヶ月くらいたって、ソイツに近況報告のメールしたら、返事にそう書いてあって、途端に頭の中が真っ白になって、怖くなった。俺は、たった1ヶ月でストリートにいた頃のことを忘れたんじゃないのか?って。で、忘れてないって確かめたくて、最初にダンスを教えてくれた人がやればいいって薦めてくれた基礎練、してみた。」
「じゃあ、どうしてこんなこと?」
「もういいからだよ。」
思い切り井ノ原が眉をひそめた。森田が苦笑する。
「もういいのは、自分のポリシーをカタチにするって行為のことだよ。」
「ああ、そう・・・」
「誰が何を言っても、俺さえちゃんとしてればいいのかなぁってさ、思ったの。こういうことに時間費やすより、そう、週末にね、ちょっと井ノ原くんと話しただろ?そういうことに時間を費やしたいなぁって。で、もっと井ノ原くんと仲良くなって、いつか自分が出身だったチームをしつこいくらいに自慢して、じゃあ一緒に見に来ればいいじゃん、案内するから。みたいな、そういうの、したいなぁって。」
狐につままれたような、鳩が豆鉄砲を食らったような、複雑な表情で話を聞いていた井ノ原は瞬く間に蕩けそうな笑顔になり、森田は満面の笑みで続けた。
「今も大事にしないと、胸張ってホームに帰れないから。」
「おい、それには俺も入ってるんだろうな?」
「ここに来るのが本当はちょっと気が乗らなかったけど、新しい仲間が出来るのは嬉しいんだ。井ノ原くんと坂本くんがさ、いつも俺が勝手にこの部屋でちまちま練習してるの見ててくれて、そのときすごく優しい顔してくれてて、ああ、この人たちと仲間だったら毎日いい感じだろうなぁって、ずっと考えてた。アイツらのところに帰った時、自慢できるんじゃないの?って。」
伝えて、今回の場合は伝えなかったけれど、気持ちが通じたら嬉しい気がする。井ノ原はそう思って、照れくさくなって、とりあえず・・・
「つまり森田くんは、寂しかったんだな!で、俺たちと友達になりたかったのかぁ!」
「や、あの、そうやって改めて言われるとちょっと・・・」
「照れるな照れるな!俺たちは大歓迎だよ!ねぇ、坂本くん!」
「来るものを拒む理由はない。」
「はぁ、どうも。」
坂本にその役を押し付けておいた。森田は顔を真っ赤にして逸らしてしまい、井ノ原はニコニコ全開。坂本は森田の肩を優しく2つ叩く。
ダンスをとても大切に思っていた。プロに転向してもそれまでのプロセスも否定することなく、むしろ新しくできた仲間をあの場所に、あの場所で自分と関わってくれた沢山の人に、見せたいと。
「靴は、坂本くんが教えてくれたの使う。カバンは、今度井ノ原くんが買い物にでも行こうっよて言ってくれてたから、その時に買う。」
ぶっきらぼうなそれは、自分の確かめたかったことを知らぬ間に教えてくれた、新しい場所でできた新しい仲間への、最高の感謝の気持ち。井ノ原も坂本も、笑顔で頷いてその言葉を受け止めてくれた。
 
 もう、あの微妙なこだわりや違和感は森田の中できれいに消え去って、迷いもきれいに消え去った。壊れたシューズは、ただの過去からの抜け殻に過ぎない。前へと進む為の、一歩をつかんだ瞬間から。
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