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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/04 (Sat) 06:22:56

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No.311
2009/01/31 (Sat) 18:31:53

短編更新です。

『My Sun is little brothers!!』
に参加させていただくことになりました。
リンクよりお運びいただけます。
と申しましても、開催はバレンタインデーよりとなっております。
よろしければ覗いてみてください。

さて、1月も最終日。
今月は更新が滞りましたね。
こまめにチェックしていただいたみなさまには申し訳ございません。
2月はもう少し更新が捗ればと考えております。
それには、この崩れ切った体調をどうにかしなければ・・・・・。


出演 : 井ノ原 快彦 ・ 坂本 昌行 ・ 長野 博














 


It tries to find a way out of the difficulty
 
 
 
 傾いた西日がリビングをオレンジに塗り替えていた。初めてこの部屋にやって来た心身ともにリラックスできる効能があるというアロマの香りにやっと、思考が冷静な判断を下していく。あれほどまで頑なに反対した理由を、滅多に見せない怒鳴るという行為を披露しても止めようとした理由を、本能的に感じ取っている自分。この線を越えたら、たくさん失うに違いない。軽率な行動を悔やんで、大人気なく泣いてしまう気がする。いや、もっと、泣く程度では済まされない痛い目に遭いそうな・・・・・
「坂本さんは、とても人気のあるジャズ歌手ですね。去年の初め辺りから、急に注目を浴び始めた。おそらくそれまでも、歌手活動は続けていたのでしょう。」
心療内科医の穏やかな声。時計に視線を送り、今ごろタクシーでこちらに向かっている最中であろう守り人の掌の記憶に祈った。一秒でも早く、この禁忌にブレーキをかけて欲しいと。約束を反古にした事を怒鳴ってくれても、際限なく罵って嫌いになってくれても構わないからどうか、早く。
「ゆっくりと、深く呼吸をして。ご自分のペースで結構です。蓋を、開けてみましょうか。」
その中に、光がないことを知っている。
 
 偏屈な記憶喪失に陥って、けれど困ったことなんて何もない。すっぽりと見事に抜け落ちた4年分の記憶を、取り戻したいと思うこともなかった。だとして、なぜ?と問われれば、答えは1つ。これで世間にもっともっと広く、坂本昌行という歌い手の名を知らしめる絶好の好機だと踏んだからだ。コネも権力も持たず、ただ真っ直ぐに自分の実力だけを信じて突き進む彼の力に、なりたかった。素晴らしい歌声が埋もれていると、報せたかっただけだ。羽化の瞬間を今や遅しと待ち構えている狂気を、ずっと独りで封じ込めることに尽力してくれていた。なんてこと知りもせずにのうのうと生きてきた、愚かな人間への罰だろうか。
「俺は井ノ原を、多分殺した。」
苦肉の策ではあるが、もはやその場で同じ空気を吸うことさえも困難だと感じ、不在の彼の帰宅を自室に引き篭もって待つことにした。到来した恐怖の種類は、再び過去を繰り返し、大切な人の心がズタズタに引き裂かれてしまうのではないだろうかということ。何もされなかった。何も言われなかった。誰も悪くない。少し運が悪かっただけだ。ほんの数個だけボタンを掛け違えてしまったという些細な過ちは取るに足らない。そう言われた。彼に繰り返し言われた。大丈夫。もうすべて過ぎ去ったのだから。日常を脅かす災いは二度と訪れないから。言いながら幼子を慰めるように撫で続けてくれた。どうか早く、都合の良過ぎる言い分かもしれないけれど、早く彼が帰ってきてくれますように。
 
 いいと言うまで部屋からは決して出ないよう言われ、小狡いかな鵜呑みにして甘えた。リビングからは激しく言い争う声が容赦なく聞こえてきたのに、ipodのイヤホンを耳に突っ込んでボリュームを最大にして布団を被る。再びの日常を思うと、その被害者が誰なのかを考えてみた。そんなに遠くない昔、歯を食いしばって痛みと戦っていたのは・・・
 坂本昌行。酷く精神を病んだ人気ジャズ歌手。不安と苛立ちのすべてを暴力に変換して、年下の同居人に余すことなくぶつけていた。外でいい人な自分を演出することに精神力を費やし、その反動から来る歪を処理していたのだろう。四六時中欠かされることのなかった行為が形を潜めたのは、同居人を瀕死の重症に陥れたのが原因だった。都合の悪い現実から目を背ける為と言わんばかりに、記憶の中から消去したのだ。
 井ノ原快彦。暴力で日々傷んだ精神を浮上させようとするジャズ歌手の同居人。八つ当たりのレベルを超えた謂れのない暴力を、いっさい拒むことなく甘受していた。大好きな人の大好きな歌声を失わずに済むのなら構わないと、愛情ある抱擁にも似た笑顔を湛えて。瀕死の重傷を負わされ、そこに存在した血を見る日のない日常から隔離される対極に導かれる瞬間まで。喪失という恐怖から逃れたい一心が露呈した選択。
 長野博。繰り返される理不尽な行為を至近距離で見ていた。時にブレーキとなり、時に盾となり、光は未だ消えていないとまっすぐに信じ。唯一過去を忘却させる術を持たなかったが故に畏怖と自責の念に苛まれ続けてきた。自分を掛け値なしに慕ってくれる同居人を危うく殺しかけた男には何もなかった体を装い、大好きな人に殺されかけた男が抱える傷だらけの過去を氷が解けていくようにゆったりと消し、自らを蔑ろにしたのだ。
 
 リピートされる光景を、何故かぼんやりと見物していた。嵐の去った部屋は閑静という表現がぴったりと当てはまり、ベランダは異空間とも取れる隔絶された雰囲気。大丈夫だと優しく部屋から連れ出してくれた長野の手は、ひどく温かくかつ微かに震えていたような気がする。先祖がえりを起こす事を阻まれた坂本が浮かべる笑顔は果たして、ホンモノと呼べる代物であるのか。嘗て見たシーンと相違ない。だから次の展開を知っている。なのに抗おうという気が起こらないのは、もう、諦観しているから?
「付き合えよ。好きなヤツだろ?この地酒。」
わざわざ取り寄せた百歩譲っても安物とは呼べない地酒を、マグカップで飲む姿もまた様になる。
「ベランダ、寒くない?風邪ひいて喉痛めたら大変だよ。」
薄手のニットにジーパンという、真冬の外気温を無視した恰好の立ち姿は、とても懐かしく愛おしかった。
「お前も、俺の敵なのかよ。」
忌々しそうに吐き出される温度のない言葉。
「俺は俺に害なすヤツを見逃せるほど、聖人じゃねぇんだ。」
迷うことなく伸ばされた手が掴んだ両腕が、警鐘を脳に伝える。
「ウゼェんだよ。お前なんて死んじまえ。」
殺される事は諦めがつく。ただ湧き上がる杞憂は、坂本がきちんと自分を殺した事を忘れ去ってくれるだろうかということと、長野がこの繰り返された衝動を止めることが出来なかった事を悔やんだりしないだろうかということ。
「死んだらさ、もう俺なんかに嬲られずにすむんだぜ。おめでとう。」
溜まった膿を吐き出すタイミング。
「嬉しいだろ?笑えよ。」
再演の出来はいかがでしょうか?主演男優サマ。
 
 あの時と異なったのは、場所と服装だけ。ああ、ギャラリーのいる場所も違った。結果は・・・・・いや、プロセスはともかくとして、成果のほどはいかなるものかを判定していただきたい。坂本昌行がこれで更なるステップアップを望めれば、上々と言えよう。結末を知ることの叶わない人間に代わって、誰かが見届けてくれると幸いだ。思うが侭に虐げることの可能な同居人を結果殺してしまったジャズ歌手は、高みに辿り着けたのかを。またも間に合わなかった男が、けれどそんなことは忘れ去って新しい日々を平穏に過ごせているのかを。そういう目的が深層心理の中で働いていたのかもしれない。もう一度同じ過ちを繰り返すことで聳える目障りな壁を乗り越え、今度こそ本当に前へと進む。という画期的ポジティブ善後策。素晴らしいと絶賛して欲しいわけでなく、大切な人たちに幸せと言わせたいだけ。単純明快な目的。目的のためならば手段を選ばないなんてよく聞く言い回し、まさにそう。達成されたら満足だ。大団円だ。
 
 井ノ原快彦は坂本昌行の踏み台として優秀であったのならいい。
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プロフィール
HN:
ごとう のりこ
性別:
非公開
職業:
妄想家
自己紹介:
無断転載、引用をすると、呪われます。
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