初の試み

シリーズ第１弾、更新です。

連載ではなく、世界だけがリンクしている小説に挑戦。
その第１弾を更新させていただきます。

えーとですね、いろいろと書くことがあったんですが・・・・・

すみません。

時間が迫って参りましたので、トニコンへ行って参ります。


出演　：　井ノ原　快彦

世紀末に。

 

 

 
 

　本州が４つに割れた。しかもすごく中途半端に。大地震が起こったわけじゃない。いや、起こったことになるのか？まぁ大陸が割れたんだから、断層がどうのとかそういう原理なんだろう。たった１回のチョー大きな震動、もう地の底から何かすごい力に突き上げられたんじゃないか？ってくらいに「ズシン」って、「何事だよ！」って思った時にはすでに割れた後だった。当時はそりゃもう大変なパニックで、日本沈没が現実になる日は近い。とか偉い専門家先生たちがテレビだ雑誌だ新聞だに引っぱりダコだったのを憶えてる。そっち系の本を買い漁ってるツレもいた。けど、人間は慣れる生き物。今じゃ誰も取り沙汰さない。普通に毎日を過ごせちゃってるんだから。ただ、本州には割れ目がそういえばあったかな。くらいのこと。だから俺はルーティンよろしく会社に出てるんだし。

 

　最近、喫煙所で知り合いになった他部署の人から聞いた。妙な噂が巷を騒がせてるらしい。なんだろう？なんかB級ホラー映画みたいな感じ？あくまでも一人歩き中の噂だから実情は明確じゃないんだけど、なんと・・・・・例の割れ目から地底人が出てきた！らしいですよ、みなさん。ね、胡散臭いでしょ。最初はネットの一部掲示板で盛り上がってただけのミニミニ都市伝説的規模だったのが、だんだんと広まって、ついには割れ目から出入りする人影を見たとか目撃情報が飛び出して、真偽の程は超絶アヤシイ決定的瞬間の写真がサブカル系雑誌に掲載されて、なんだか引くほど大ニュースの扱い。大仰な肩書きの大人たちが雁首突き合わせて真剣に討論する番組が増えた。地元のツレからは、割れ目に地底人を観に行こうツアーのお誘いメールが来た。余談だけど、俺の実家のすぐ近所を割れ目が通ってるからね。ブームってパワーあるんだなぁって改めて思う。

　っつーかさ、そもそも割れ目を放置した国が無責任じゃねえ？明らかな間に合わせ風に有刺鉄線張っただけで、小さな立ち入り禁止の看板が添えられてる程度のソコ。扱いがお粗末過ぎるだろ。最初は自衛隊？みたいなガタイのいい連中が厳重な人払いに尽力してたけど、あっという間にフェイドアウトしてたし。今じゃ自由に近付いていいよ。って言ってるのと同じ状態だもん。地元じゃ悪ガキたちの恰好の遊び場だって話。実際の所はどうなんだろうね？あの割れ目の中、どうなってんだろう。

 

　独り暮らしだから自炊なわけだ。自宅マンションの近所の24時間営業激安スーパーに寄ってから帰宅するのが日課。音の割れた有線が耳障りなくらい大音量で流れてる。面倒ながらも焼き魚が食べたい衝動に駆られて、鮮魚コーナーで悩むこと数分。俺の思考を盛大に遮ってくれたのは硬質なものが大量に転がる音。はい、若い青年がカートで引っ掛けて積み上げてあった缶詰を引っ繰り返しました。本日特売の１個68円のミカンの缶詰。積み過ぎでしょうよ。と心の中で突っ込んだのはついさっきのこと。俺の身長なんか軽く超えるほど積み上げられたそれが今では無残に散らばって、倒壊させた青年が大慌てで拾い集めてる。手伝おう。と思った俺が少し近付いて目を引かれたのは、その青年が押していたと思しきカート×２だった。今からパーティーっすか？それとも明日？もしくは大家族？もう３台目に移るべきでしょう。ってほど山盛りになってるそれ。いくら激安だからって限度がある。手近に転がってた缶詰を拾い上げてさらに接近してみれば、青年はもしかすると実は少年なのかも。と感じるくらい高い声で「すいません。」の連発をするかわいらしい顔立ちの子。華奢で小柄な体つきに、それでカートを２台も押してたのかよ！って突っ込みそうになったじゃん。

「あの、大丈夫？」

必死さを纏ってる青年？少年？に声をかけたら、はきはきと大きな声で

「大丈夫です！すいません！」

だって。微笑ましい。自然に手伝っちゃった。といっても、それからまもなく店員さんが来て、あとはやりますって言われて終了したんだけど。これも何かの縁だし、片手にほとんどモノの入ってないカゴを持ってただけの俺は、レジまでカートを１台引き受けてみた。彼はファーストインスピレーション通り、25歳の「青年」だった。

 
 

　結構な揺れの地震があって、せっかくの休みなのに６時前に目が覚めた。ニュース速報によると、震度４だった。津波の心配はありませんだってさ。何年か前に昔の予言者が地球が滅亡するとか言ったって話題になってたけど、別に何も起こらず終了。でも、さ、もしかしてそれが実は今だったってこと、ない？本当は今が世紀末でした。ってオチ。だってニュースさ、すごいことになってるよ。割れ目が１つ増えました。北海道に。割れすぎだって。とか言いつつ、明日からはまた会社だけど。朝イチと昼イチで会議の２本立て。もしも世紀末なんだったら通知とか欲しいよね。そろそろ地球もおしまいですよ。やり残した事はありませんか？みたいに。

　あ、クリーニングに出してたジャケットたち取りに行かなきゃ。定期も今日のうちに継続にしとこうと思ってたんだった。明日の会議って何だっけ？また月曜日か。退屈な一週間の始まりか。あーあ、憂鬱過ぎて踊っちゃうね。