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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/04/28 (Sun) 04:33:50

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No.332
2009/07/04 (Sat) 21:44:34

『HONEY3』出展作品をアップです。

加筆修正を加えた結果、前後編に分割となりました。
まずは前半部分の掲載です。


買ってしまいました。
『超ウルトラ8兄弟』メモリアルボックス。
新品未開封が3000円だったんですよ!
これは買うしかないと思いまして、即買いしてしまいました。
やはり癒されますね、ウルトラマン。
頭の自転車通勤ダイゴは永久保存版(←そうなのか?)
そしてあのガメラ属性感。
いい買い物をしちゃいました。


出演 : 井ノ原 快彦 ・ 坂本 昌行 ・ 長野 博














はちみつはるやすみ
 
 

 
 ずっとなりたかった。
 
 俺は坂本くんになりたかった。
 
 ずっとなりたかった。
 
 俺は長野くんになりたかった。
 
 あまくてしあわせな毎日を大切な人には、すごして欲しかった。
 
 
 ごめんね。
 
 坂本くんになれなくてごめんね。
 
 ごめんね。
 
 長野くんになれなくてごめんね。
 
 満タンのしあわせをあげられなくて、ごめんなさい。
 
 
 
 『幸福な王子』のようだと言われたけれど、そんなにキレイなものではない。ただ、切実に願うが故の行為。
(坂本くんと長野くんが、どうか俺を見限りませんように。)
 入り口の形はもっと異なっていた。かつて自らを助けてくれた坂本に何かを返したいと思い、かつて自らに手を差し伸べてくれた長野に何かをあげたいと思ったのだ。それが叶う間は自分が自分で居られたし、2人は自分に優しかったし。だからこそ、生み出された必然だったのかもしれない。初めはじわじわと、やがて濁流のようにどくどくと流れを明確にした恐怖感。与えるものがなくなってしまったとき、2人は自分の元から去ってしまうかもしれないという絶望の先行き。
(すべてを捧げると誓うから、だからどうか、捨てないで。)
狂っていた。麻薬に依存するジャンキーよろしく、形振り構わず固執し続けた。日々が強大なプレッシャーとの戦い。彼らのために、もとい、自分が彼らと共にあるためにもすべてを、手中にあるすべてを。
 
 均衡は、いとも容易く崩壊する。
 
 
 臨時休業。愛想もへったくれもない白の紙にマジックで殴り書かれた文字は、絶品のイタリア料理を振舞うと評判の食堂の入り口と硬く閉ざしていた。『Il sabato』のオーナーは旧知の親友である。高熱が出ようが台風が来ようが断固として店を開けてきた男だ。臨時に休まなければならないほどの大層な理由ができたのならば、何かしらの連絡は寄越してもおかしくない。前フリ的な言葉は無造作に零していたが、それを拾ってもらえるという長年の付き合いの中で出来上がった慢心には呆れるばかり。渾身の力を込めてドアに数発の蹴りをお見舞いする。無性に腹が立っていた。今回に限っては店を休まなければならない理由が、一人で抱え込む事をよしとするものではないと身を以って知っているから。
(自分勝手、ワガママ、スゲー腹立つ。)
何故こんな男と友人をやっていられるのだろうか。自分は神様よりも広い器を胸の中に秘めているのかもしれない。やり場のない憤りをぶつけようと拳を振り上げて、ドアの寸前で思いとどまり深く深くため息。気持ちは分からなくもなかった。彼を探す行為に篭った意気込みは同じ。果てしない空を仰いで、深呼吸で昂ぶった感情を押さえ込む。
(連れ戻せなかったら、絶対にシメる。)
物騒な宣誓を勢いよく打ち立てつつ、綻んだ心が抱くのは大いなる期待。あの男が彼を連れ戻してくれるようにと、ただ切実に強く。
 
 
 守れると過信していたものがある。幸せそうに笑う顔だとか、楽しそうに響かせる話し声だとか、穏やかな寝顔だとか。がんばれば守れるとは随分な驕り昂ぶりだったらしく、手の及ばないところで静かに朽ちていく彼に気付けず、失ってからあたふたと手を尽くしている。という実際のこの愚かな顛末に失望する。あの熱っぽい羨望の眼差しに押し切られて、どれだけ奪ってきたのかは数知れない。押し切られて?
(というよりは、甘えてぶら下がっていただけか。)
なぜなら自分も今ごろ同じように彼を探すもう一人の男も、薄々は感付いていたのに目を逸らす方向で進んだのだ。過去に残したたった一度の既成事実を盾にして。さながら純粋な友人を利用した悪役的要素さえ漂う今、思い出したのはあの物語。彼は空想の世界で美化されたそれに匹敵するほど、優しく澄んでいた。『幸福な王子』――――――無償の奉仕でやがて己の身を滅ぼす、明確な論理の成り立たない世界。
(俺には愚鈍にも、謂れのない施しに溺れてお前を滅ぼすなんて真似、出来ねぇよ。)
宝石と金箔に目が眩んだと、それだけは決してありえない事を断言すべきである。明るく濁らない色彩は確かにあると証明してくれた彼を、遠い夏に繋がる線を描いた瞬間から断じて裏切ることなく選んでいたつもりだ。価値観が噛み合わなくなり始めたのは、互いが弱さに気圧されたせい。錯綜してしまったものは仕方がないとして、次の一手をどのように選択するかが肝心だとする。そうして選ぶのだ。いっそ共倒れさえも厭わない。
 
 
 狭く閉塞的な、未だ村落と表現される場所であれば、十二分に在り得た結末。早く次の行き先を決めなければならない。のどかであたたかくて、居心地のいい毎日だったけれどもう、限界は訪れている。
「いのっちせんせーって社長さんだったんだって。」
「うそだぁ。全然そんな風に見えないもん。」
「おかあさんとおとうさんが言ってるの聞いたんだ。社長さんだったけど、会社がつぶれちゃったからせんせーになったんだよ。」
「じゃあさ、『しゃっきん』とかあるのかな?」
「しらなーい。でも、あったらかわいそうだよね。」
無邪気な声が織り成す世間話。借金はないが、会社を倒産させたのは紛れもない真実。そのおかげですべてを失い、すべてから目を背けた。あの2人と過ごす時間と削ることだけは耐え難く、大学を最も早く決まった私立の教育学部に後先考えず設定した事は、今になって幸いしたらしい。そしてまた、思い知らされる。自分はあの2人に生かされていることを。恐れ多くも傲慢な心は望んでやまない。坂本昌行になること、長野博になること。最初から無謀だとは思いつつ、結果、望みは破綻したわけだが。
(未来永劫あの2人が、思うが侭に生きていけますように。)
人知れず願い続けることだけは、赦されるといい。
 
 放課後の校庭は元気いっぱいの野球少年たちが主であった。すっかり日の傾いたそこには昼間と見紛うほどの活気が溢れ、シートノックをする大人の怒声が響き渡っている。ふわりと漂う風のように優しく脳裏をすり抜けたのは、いつかの汗と泥にまみれた眩しい笑顔。彼も野球に夢中だった。といっても仕事終わりに自宅のリビングで野球中継を見ながらビールを飲む。なんてどこぞのオヤジのようなささやかな楽しみ。突き当たる痛く苦い記憶。道を誤ったのはきっと、あの頃。
「なぁ、職員室ってどこにあるんだ?」
目を逸らすことは赦されない。キュッキュと小気味いいリズムでボールを磨く少年に尋ねると、あからさまに訝しんだ視線を突き刺される。
「おじさん、誰?」
素直な呼び方に漏れる苦笑。
「井ノ原先生に会いたいんだ。友達なんだよ。」
「いのっちせんせーなら、ねつがあるって校長先生につれて帰られちゃった。」
面白くなさそうに唇を尖らせて、抗議の要素をたっぷりと含ませた返答。それだけで感じることのできる優越感。この小さな世界で、井ノ原は慕われている。
「いのっち先生のこと、好きか?」
「うん。いっしょに遊んでくれるし、すごく優しいし、野球も上手なんだ。あと、話もいっぱい聞いてくれる。裏山で遊んでても怒らない。みんな大好きだよ、いのっちせんせーのこと。」
「いのっち先生の住んでる家ってどこ?」
「こうちょーせんせーの家。あそこ、あの青い屋根の大きい家。」
裏山を背負うように悠然と構える、群青の瓦屋根を携えた日本家屋。少年の指差す先に、どれほどの時間か探してきた大切な彼がいるのだ。否が応にも押し寄せるのは緊張。もう少し教師をやっている彼の評判を聞いてみたいという好奇心など凌駕する、早く会って連れ戻したい焦燥感。
「ありがと。んで、ごめんな。」
教えてくれてありがとう。彼をここから連れ去ってしまうことにごめんなさい。突如として現れた友達を名乗る人間のエゴで、子供たちは大好きな先生と別れることになる。罪悪感に苛まれないわけではないが、譲れないのだ。
(もう手離すなんて、絶対にしない。)
幸せだと能天気に笑っていればいいだけの毎日を、一生かかっても返し終えることは不可能であろう感謝の気持ちに代えて用意するつもりでいる。
 
 初めて出会った頃には、井ノ原にはすでに両親どころか親類縁者の類の存在がなかった。工業高校に通う学生を助けて親友が大怪我をしたと連絡を受け、随分深い時間に病院に駆け付けた時が初対面だったと記憶している。両親、兄弟、友人などが大挙して押しかけていた友人、坂本に対し、独りポツンと待合室の廊下でしゃがみこむ弱々しい人影。制服に付着した泥や埃を払った形跡はなく、袖口から覗いた大きな擦り傷に治療も施されていない。抱え込んだ膝と手の間に割り込んでいるひしゃげた眼鏡と学生証。そっと視線を注いで記憶を手繰り寄せた。確かに坂本が通う専門学校の近所にある工業高校。
(3年7組、いのはら・・・・・なんとかくん。へぇ、IT情報科なんてあるんだ。)
ゆるりと足元から頭のてっぺんまでを眺めてみて、気付く。紛れ込んでしまった透明人間のように空気と化した彼、井ノ原は膝に顔を埋めて、薄っぺらな肩が小刻みに震えを刻んでいた。坂本の容態はもちろん最優先で気掛かりだったが、手術室のランプは点灯したままだ。得られる情報も限られているだろう。けれど、
「だいじょうぶ?」
隣に腰を降ろして問えば、返されたのは、
「すみませんでした。」
掠れた謝罪の声。状況を聞かされていたのできちんと把握していた。信号無視のスポーツカーが交差点で脇道から出てきた車に衝突しそうになり、避けようとハンドルを切った次の進行方向は歩道だった。不運にもガードレールがちょうど途切れた場所を歩いていたのが井ノ原で、気付いて庇ったのがクラスメイトと下校中の坂本だったという話。井ノ原には何の咎もない。被害者だと開き直ってもむしろ許されるほどであるのに。
「君は痛い所とかない?家には連絡した?」
「どちらも、ありませんから。」
くぐもっているせいなわけなどない、確実に憂いと自嘲を込めた沈鬱な受け答えは侮蔑さえ漂う。
「すみませんでした。」
重なる言葉。
「君が謝る事なんてないんだよ。」
「すみません。」
成り立つ意思のない会話。
「看護士さん呼ばなきゃだね。怪我したのは手だけ?」
「こんなの、怪我じゃないから大丈夫です。」
切り崩す方法をめまぐるしく模索する。
「・・・くら・・・・・・・」
「うん?」
「いくら払えば、あの人は助かりますか?」
世の中の事象すべてを酸化と還元で成立しているように錯覚を起こしているのかあるいは、そうあることが当たり前の世知辛い環境の中のみに身を置いてきたのか。
「欲しいのは対価や代償じゃないよ。五体満足に生きている君、井ノ原くんの笑顔が見たいんだ。」
「そんなのっ・・・・・・・」
初めて上げられた顔はひとしきり泣いた子供のように歪んでいたけれど、十代のましてや学生の持つ若さや瑞々しさの欠片などなく暗く澱んで、察知させられた。世界には数多の矛盾が存在し、万人が幸せになれるはずがないという事を。
「世界を見限る前に、もう少しだけ欲張ってみる気はない?」
彼、井ノ原快彦を引き止めた理由は、心に巣食った陰を取り払いたいという感情と、己が生きている世界をまだ信じていたいという未練から成り立っていたような気がする。天涯孤独を知ってしまったが故に、磨りガラスを通して曇った毎日しか知らずに生きる事を然りと決め込む、彼に手を差し伸べたいと願った。最後の一瞬まで責任を取れるという保障もなく。考えてみれば、異常なほど残酷な思い上がり。
 
 
 知らなかったとはいえ、悪かった。
 
 全然分かってなかったね、ごめんね。
 
 ああ、どうか謝らないで。
 
 
 いつか、絶対に返すからな。
 
 一生かかっても、返すって約束するよ。
 
 違うよ。返したのは俺の方。返していないのは俺の方。
 
 
 大丈夫だ。俺たちがいるんだから。
 
 誓ってもいい。俺たちは離れたりしない。
 
 
 優しさに窒息する。
 
 
 
 窒息する。
 
 
 
 大きな幸せのせいで盲目になっていた俺の、罰だ。
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