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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/12/26 (Thu) 05:49:00

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No.327
2009/05/17 (Sun) 15:28:34

本日は井ノ原快彦氏のご生誕記念日です。

おめでとうございます。
ありがとうございます。

きっとたくさんの人から祝福されて幸せいっぱいの一日を過ごしているんでしょうね。
イノが笑顔だとこちらも幸せです。
いや、もう、本当に生まれてきてくれてありがとうございます。

33歳の1年も幸せな笑顔で満ち溢れた年になりますよう。

記念中編『彼らの今日』を本日よりスタートいたします。
明らかに暗い話ですが、もしご興味がございましたらお付き合いくださいませ。

さて、5月16日より『トニハニーを探せ!』が開催されております。
『HONEY3』より逃亡したトニハニーの捕獲にご協力ください。
詳細は本家サイトさまにて。



出演 : 井ノ原 快彦















 誰よりも終わりを待ち望んでいるなんて、聞けばあなたたちは、いや、あなたは俺を心の奥から侮蔑して、二度と一緒に何かを為すことなど許してくれなくなるのだろう。それだけは絶対に避けなければならない。勝手に憧れて、依存して、同じ括りの中にいられることを優越感としていいように捉えていたはずの自分は、もうとっくの昔に消え去ってしまった。果たしてあとどれだけ、続けることができるだろうか。
 
 
 仕事を終えて17日もあと1時間を切った頃、疲弊しきった身体を引き摺るようにして稽古場に辿り着いた。今日という日をこんなにも沈んだ感情に苛まれて終わりたくなかったからだ。何を求めていたわけでない。ただ安心したかった。自分の本来あるべき場所で心穏やかに締めくくろうという、些細な自身への贈り物のつもりでいたのだ。
 街の繁華街からは外れたうら寂しいそこに、帰るべき場所はある。誰もいないことは知っていた。今日はみんなでパーッと飲みに行くのだと、楽しそうな誘いの電話を昨夜もらったばかりだったから。仲間の姉が念願だった創作居酒屋を開店にこぎ着けたのだと。仕事の終わる時間が読めないため、残念ながら辞退させてもらった。代わりに大きな花を手配したのだが、無事届いただろうか。ひっそりと静まり返った稽古場の鍵を開ける音は、やけに大きく響いたように感じた。ふわり。と足元に絡みついたのは野良から劇団一番の人気者に成り上がった雑種のトラ猫だ。
「なんだよ、誰も連れて帰ってくれなかったのか?」
劇団員が取り合いをする勢いで交代制を導入してまで自宅に必ず連れ帰られる彼が、なぜか稽古場に取り残されている。自分と重なった。
「おそろいだねぇ。」
すこぶる安堵していた。まだ本当の独りにはなっていないことに。
「俺さ、誕生日なの、今日。でもさー、メンバーは誰も触れてくれないわけ。毎年のことなんだけどさ、うん。多分知らないんだよ、俺の誕生日なんて。3年も同じグループでいるのに、知らないんだよ。俺はみんなの誕生日、言える。メンバーみんなでお祝いしたりプレゼント渡したりご飯奢ったり、そういうのもしたいのに、拒否られんの。よくさ、不仲説出るじゃん?アレ、リアルにあるからね。もう坂本くんと剛なんて本意気だから大変なの。解散した方がいいって分かってる。でも坂本くん側がそれをさせてくれない。本人は解散に大賛成なのにさ、事務所が断固反対!みたいな。俺、間違ってたなぁ。って今さら後悔してるよ。罰なのかもしれない。誕生日に触れてもらえないの。テメェのせいだって責められてるんだろうね、きっと。」
何を猫相手に愚痴っているのだろうかと我ながら呆れる。話せる相手がいない皺寄せが、ここに来てしまっているのは明白だ。
「繋がってないの、イヤだって言いたい。スゲー言いたいよ。」
「言えばいいじゃん。」
幸せな声色。卑怯だと勘付きながら望んでいた。
「どうしたんだよ、こんな時間に。王子様のお迎えか?忘れて帰ったなんてみんなに知れたら、絶対にクレームの嵐になるもんな。そうだ、内緒にしといてやるからコーヒー1本奢ってくんない?もうノドがカラカラでさぁ。ここって結構乾燥して・・・・・」
「誕生日おめでとう、イノ。俺が迎えに来たのは、お前だよ。」
「俺を?」
「いつでも還ってきていいって言ってるだろ?誕生日なら、尚更だ。」
「ありがと。」
 
 離れる事を目的として強く抗えば、離れられる事はちゃんと知っている。離れないのはあなたのためだと語れば、傲慢だと一蹴されて終わりだ。無償で甘やかしてくれるあの人も、ファンの脚本家の頼みならと妥協してくれる君も、その彼に付き合って仕方なく続けている君も、よく分からないままに未来を委ねてくれた君も、みんな裏切られていると告げられた時に浮かべるのは目を凝らして確認するまでもなく侮蔑の表情。理解の範疇を超える狂気の沙汰だろう。うすっぺらいと形容されるこの拙い肩で、すべてを支えているような錯覚を起こした結果が生み出した致命傷だ。
(そうか。あるいは・・・・・・・)
 
 
 
 
 
 彼らの今日
 
 
 
 
 
 憶えてる?あの日の興奮を。
 憶えてる?あの瞬間の高鳴る胸の鼓動を。
 憶えてる?何物にも代え難い感動を。
 憶えてる?みんなはほんの少しだけでも。
 憶えてる?憶えてる?憶えてる?
 
 
 約束は1年だった。3周年を迎えたのは去年の晩秋。食い違っている。期間が限定されていたから抑えられた不満もあったのに。八つ当たりに他ならない関連付けで逃げるのはやめるべきだと、自分を批判しない日はない。大好きオーラを纏っているふり。どんな罵詈雑言にもめげることないタフな精神を兼ね備えているふり。今さら「できません。」とは言えないのだ。失敗は許されない。エスケープなんてもってのほか。軋むのは外の世界に続く窓か深層心理と直結の消え入りそうなラインか。どちらだって構わなかった。ふと冷静な感情を努めて心掛け、考えてみた事がある。彼のため。彼がそうしたいと望んだから従った。繊細で頑固で意地っ張りで自ら追った傷は誰にも悟らせない。放っておけば自滅して終わっていくタイプだと、揶揄したのはどこかのカンパニーのやり手演出家だったと記憶している。発端は事務所の悪ノリ。妙に楽しいことに敏感な大人たちが次々に便乗して、気付けば降りることなど叶わなくなっていた。何人か集めてユニットを作ろう。いい年をした大人が揃ってアイドルなんてウケるんじゃないか。君が望む通りの好きなチームを作ればいい。君は事務所の看板俳優なのだから。甘い誘惑と営業用スマイルが不安定な状況に陥った彼の背中を押す。ブレーキは存在しなかった。
 
 3年前に生まれたアイドルユニット『V6』は、当事者たちの平穏を掻き乱す枷である。
 
 大切なのは井ノ原快彦が坂本昌行の希望に則った環境を提供できるかどうか。寄せ集めの細切れな関係であっても、必要に応じては死守するべきなのだ。
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HN:
ごとう のりこ
性別:
非公開
職業:
妄想家
自己紹介:
無断転載、引用をすると、呪われます。
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