あいはずっととおいみらいにあるときづいたんだ

短編更新です。

もしも、イノが愛の歌を健ちゃんのために書いたら？

カミセンツアースタート記念ということで。


出演　：　井ノ原　快彦　・　坂本　昌行　・　長野　博

あいはずっととおいみらいにあるときづいたんだ

 

 

 

　ゆるされるのなら　きみにつたえたいことばがあるんだよ

　あのころとちがう　おなじときをともにかさねたきみに

　

　

 

　事務所の公式携帯サイトから、今日スタートを切るライブを報せるメールが来た。同じグループのメンバーが考えたらしい文面は、どこか緊張や興奮なんかの感情に邪魔されてとっ散らかっていたような気がする。翌日に控えた修学旅行が楽しみで仕方ない。そんなテンションで昨夜送られてきたメールを思い出す。出会った頃からいくつも年を重ねてきた彼らに、果たして贈った想いは届くだろうか。

「今のアイツらに、心配なんて必要ないと思うけどね。」

変わらず手元の雑誌に視線は落としたまま、長野がゆったりと呟いた。その通りだ。ちゃんとステージをこなせるだろうか。ファンの期待に応えられるだろうか。体調は万全だろうか。怪我をしたりしないだろうか。そんなわが子に抱くような杞憂は必要ない。彼らはもう大人で、学ぶべき事は多分過ぎるほどに学んできた。

「歌が気になってしょうがねぇんだろ？なんだっけ？あの長いタイトルの歌。」

分厚い文庫本をテーブルの上に放り出し、ワザと意地悪く降格を上げた坂本が指摘する。このポジションに苛立たなくなったのはいつからだろう。追いつけないと焦って、自分を卑下さえしていた毎日は、気付けば風化していた。そして生まれた余裕が見せてくれた世界を、彼らに少しでも分けることが出来ればと・・・・・

「健ちゃんに、ちゃんと伝わるか心配でさ。」

「健？剛じゃなくて？」

「っつーかお前、だったら健に書いてやりゃよかったんじゃねぇの？」

「それじゃあ絶対に伝わらないよ。剛が歌うからこそ、健に伝わるんだ。」

今年、大騒ぎで30歳になった彼だからこそ、伝えたいことがあった。またグンと大人になった彼になら、もう意味のあること。聞いてくれる人にそこにある意味を説明できるだけの、器はあると信じて。

「カミセンも愛の歌、歌う年になったんだよね。」

「本当の愛ってさ、スゲー深いじゃん？若いときって勢いとかその場のノリが先行して、本質的な部分にまでは思考が届かないでしょ。でも、さ、もういいと思うんだ。もう本物をたくさん知っていく段階だよ。」

「で、何で剛なんだよ？」

「うん、それはね・・・・・」

きっと俺にしか分からない、俺がいた場所からしか見えなかった風景があるからだよ。

 

　たくさんの愛を、君たちの中に見たとでも言っておこうか。

 

 

 

　あいはずっととおいみらいにあるときづいたんだ

　だからいまは　きみをあいしてるといえるよ