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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/04/29 (Mon) 09:07:23

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No.338
2009/09/23 (Wed) 16:48:50

短編更新です。

久しくサイトを留守にしておりましたが、夏が終わりましたので戻ってまいりました。
まだご訪問くださっている皆様には、大変申し訳ございませんでした。

いろいろと気持ち的に整理がつきましたので、これからせっせと執筆に精を出します。

カミコン札幌にね、実は参戦してみました。
スゴイ席で驚きました。
近すぎてどうしたらいいか分からないっていう(バカ)。

来年こそはVコンがありますように。
だって15周年ですから!

検索避けを強化してみました。
どうして掻い潜って辿り着く方法があとを絶たないんだろう・・・・・


出演 : 井ノ原 快彦 ・ 坂本 昌行















その夏の波紋
 
 
 
 
 
 後輩から一括送信のメールが届いた。俺の母校がなくなるらしい。来年度からはちょっと有名な進学校と合併し、野球部の存続はほぼ絶望的なのだという。仕方ないことだ。歴代にて最も快進撃とうたわれた記録は、自分が現役の時に地方予選の準々決勝まで駒を進めたあの夏以来更新されていないのだし。
(あの夏は楽しかったな・・・)
と思い返すのは、快進撃を繰り広げた次の年の夏。高校球児である以上、そりゃあ試合に勝てば嬉しいし、ギリギリ肉眼で霞む程度に甲子園の輪郭を夢見ちゃったのは事実だ。けど、同時に周囲の盛り上がりに圧倒されて窒息しそうだったのも事実で、こんなことを言えば不謹慎だと叱責されるだろうが、あそこで負けて若干ホッとした複雑な夏だった。打って変わって次の夏は、おなじみの野球部にあっさり逆戻りしていて、予選1回戦敗退。試合を機能させることのできる頭数は揃えたい。という監督の要望で居残った受験生の坂本くんは引退。尊敬する先輩の抜けた穴にまんまと嵌った俺は、野球に身が入らなくなっていた。
(尊敬?尊敬、ねぇ。)
尊敬する先輩と一度は評してみたものの、すぐにそれは違和感を伴った後味に変化した。確かに恩人ではあった。坂本くんに出会わなければ、野球なんて一生無縁だったに違いない。一生、あの狭められた世界の中で、
(これは悲しいお報せの中に分類されるのか?)
ふと、考えてみる。将来の夢にプロ野球選手を掲げたことはないのだ。子供心の中に垣間見えるささやかな希望を叶えてもらった人に、一方的に懐いていただけ。ただ単純に、父親とキャッチボールをするよその子に憧れていた。単身赴任で海外に在住する父親、結婚して子供がいるにもかかわらず仕事に熱を上げる母親。憧れの構図に近づきたくて、コンクリートの壁を相手にボールを放る毎日。会話はない。変化もない。キャッチボールとはこんなにも退屈なものではないはずと異論を訴える心に頑丈な蓋をして、自分を納得させるためにコンクリートの壁に父親の姿をへたくそながら描いてみた。虚しくなった。そういう風に理不尽にできていた日常の中にある日新たに登場したのが、坂本くん。キャッチボールを教えてくれた人。グローブは利き手とは反対の手にはめるものだと教えてくれた人。バットの握り方を教えてくれた人。野球のルールを教えてくれた人。友達同士で作っている野球チームに1つ学年が下の人間を快く迎え入れてくれた人。両親よりも両親のように俺のことを気にかけてくれた、大好きな人。
(重要なことだけど、あの時ほどじゃない。)
坂本くんは魚屋の長男坊で、実家を継ぐと息巻いていたので大学受験をしなかった。母親がぜひとも大学に進学させたかったらしいが、父親と結託して阻止したらしい。早々に夏の大舞台と無縁になった俺たちは、純粋に野球を楽しんだ。坂本くんを筆頭に、受験にさほど左右されない3年生は皆、毎日のようにグラウンドへやってくる。名門校に入学すれば試合とははるか遠い場所に追いやられてしまうであろう1年生や、たまたま居合わせたほかの部の人間も区別することなく巻き込んで、いつも日が暮れるまで試合をしていた。サッカー部なのに野球も上手な人間の加入で坂本くん率いる3年生のチームが野球部以外の人間合同チームに負けたり、1年生のチームが大人気なく本気を出した3年生のチームに34-0で負けたり、なぜかサードの自分が先発を言い渡されたり、とにかく野球が楽しくて仕方がなかった夏だった。本気で甲子園を目指す学校にしてみれば、酔狂にもほどがあるとしか言いようがなかっただろうけれど。
(大事なことは、いつもメールで事務的に知らされてる。)
俺は大学にしてもなお、母校の野球部に足繁く通っていた。そこには同じ考えの同級生や先輩、後輩、もちろん坂本くんの姿も。年をとって環境が変化しても、この野球部にまつわるすべては変わることがないと、信じていた。あのメールが届くまでは、本気で。
『今朝、坂本先輩が亡くなりました、通夜は明日、葬儀は明後日です。詳細は改めて連絡があるのでお待ちください。取り急ぎ、ご報告まで。』
夏風邪をこじらせて寝込んでいるということは聞いていたが、まさかこんな結末に至るほどだなんて、微塵も考えてなかった。俺と野球をつなぐ人が、こんなにも早くこの世を去るなど。
(1年、経ったんだなぁ。)
今月の頭に一周忌の法要で集まったばかりだ。校長がグラウンドを野球の試合に使いたいという申し出に何の難色も示さなかったのは、きっとこういう事情がすでに、固まっていたからなのだと今になって理解する。メールは便利なツールで、緊急連絡の手段としてとても有能だと思う。が、同時に文字だけで大切な人の死を知らされるこのやりきれない憤りにも似た感情を引き起こす有害物質でもあるわけで、つまり、
(ムカつく。)
つまり、俺にとってこの近代文明の利器は敵に相違ない。
 
 
 母親にこっぴどく叱られた。年端のいかない子供のようなことを口にしたせいだった。どうあっても携帯電話を使用しての連絡ができない俺に業を煮やした後輩が、家電にかけてしまったが故に露呈した行動。いろいろな要因が重なって、イライラして、ムカついて、携帯電話をへし折ってやった。そのせいで大量の電話番号とアドレスを損失したが、後悔はしていない。もう、坂本くんがこの連絡先を利用することはないから。なんて、バカ正直に告白した途端、母親の大説教大会が開会宣言。すっかり上の空で軽く聞き流していたことを見抜かれて、さらにそれが延長戦を重ねたことにうんざりした。もう坂本くんはいないし、野球部だってなくなってしまうのに。
(なんか、何もかも面倒くさい。)
昨夜、インターネットで発見したサイトを利用しようと真剣に考える。面白いサイトだ。その名も『世捨て人講座』。世界に絶望するにはまだ早い。と坂本くんが大激怒しそうだけど、俺にはもう、これといった執着はないから。すべてに背を向けて、あの楽しかった思い出の中に閉じこもって余生を浪費するのもいい。
(そうだよ、それがいい。)
絶対に持っていくものは思い出と、グローブとボール。
 
 
 風の噂で耳にした。両親が警察に捜索願いを出したそうだ。
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プロフィール
HN:
ごとう のりこ
性別:
非公開
職業:
妄想家
自己紹介:
無断転載、引用をすると、呪われます。
検索避けが掛かっております。
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