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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/04/25 (Thu) 17:38:31

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No.334
2009/07/09 (Thu) 23:20:12

『HONEY3』にて「田吾作氏お誕生日会」出展作品です。

本文には若干の修正を加えております。
あとがきはお祭り出展時のものです。

さて、9係!
浅輪くんはだんだんイノに近付いてきましたねぇ。
無理なくストーリーに入り込んでいるということなんでしょうね。
ちなみに、ごとうの済んでいる地域では、
12日になぜか、2のSPのみ再放送があります。
あー、せーんーぱーいー。


出演 : 井ノ原 快彦 ・ 坂本 昌行 ・ 長野 博














麦藁帽子と空き箱と虹の国
 
  
 
 普段ならば見落としてしまうのも当然そうな小さい棘は、時間をかけて蓄積されることでその輪郭をはっきりと主張する。リアルに棘ではない。もしもそうならば話はとても簡単で、引っこ抜いて傷薬をつけて絆創膏の一つでも貼って終了。棘であって棘ではない。棘程度で済んでくれればいいのに刃のように鋭利。目に見えない凶器。隠された毒。獰猛で牙を剥き出しにした獣が、予め防衛目的で備え付けられた器を瞬く間に溢れ返らせる。救ってくれるのはあたたかい過去。手があたたかかったという記憶。
 
 
 喰われた。残骸は歪で腐臭を放ち妙に生々しく、涙が止まらなかった。無色透明の骸を抱きしめられるほど大人にもなれず・・・・・
「お出かけしよう。」
いつもその言葉を受身で待ち焦がれていた。
「1つだけ、お菓子買ってもいいよ。」
約束をしていたのだ。真実とは不釣合いな響きながら。共存を乞い泣き叫ぶ幼子の頭を撫でた「やさしいおとなのひと」は人より短い小指を立てて、約束をしてくれていたのだ。
「忘れないでいてくれればまた、いつかまた、きっと会えるんだからね。」
だから生きてきたのに。信じて待っていたのに。呼ぶことも探すことも我慢して、泣くことはせず大好きだと言ってくれた笑顔で、いい子にして待っていたのに。赤ずきんでいうところの狼だ。白雪姫でいうところの魔女の毒リンゴだ。桃太郎でいうところの鬼だ。敵が無造作に幸せを奪っていった。病気なんて後付けの言い訳で、本当は悪者が殺してしまったに違いない。大好きな「やさしいおとなのひと」を。
 
 太陽光線は、赤や紫といったいろいろな色をもつ光の集まりだが、この太陽光線が雨粒に入る際にそれぞれの色の光(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫)は異なった角度に屈折する。光線が雨粒の表面で屈折し、入射して、一回だけ雨粒の境界面で反射して空気中に出る際にさらに屈折。虹の7つの光のうち、赤い光は最も小さく屈折し、橙、黄、緑、青、藍の順に屈折する角度が大きくなり、紫の光は最も大きく屈折する。このため、地表面と地表面に到達する光線との角度(屈折率)は虹の7つの光の中で、赤い光が最も大きく、紫の光が最も小さいため、地表面から空を見上げると赤い光は最も高く(虹の最も外側に)見え、紫の光は最も低く(虹の最も内側に)見える。その他の光は赤と紫の間に順番に並んで現れる。
 
 日射病とは、直射日光のもとでエネルギー消費量の多い労働や運動をしている時、熱放散が不十分なために体内に熱が鬱積して起こる。体温が上昇し、体温調節機能が失われ、仕事や運動を続けることができず、昏睡、意識不明となる状態を言う。
 この障害では、体温の異常上昇(直腸温で40度以上)、全身的な発汗停止とそれによる乾熱皮膚、めまい、悪心、嘔吐、強い頭痛、精神錯乱、昏睡、反射の低下、筋痙攣などの精神や中枢神経障害の症状が出てくる。早急に体の冷却などの緊急処置をしなければ死に至ることもあるので、十分に注意をしなければならない。
 日射病は死に至ることがあるので、熱痙攣、熱疲労、熱中症に分類されている。
 「熱痙攣」とは、高温・高熱のもとで激しい労働や運動をした時に、痛みを伴う筋肉の痙攣が起こる状態。特に塩分を補給しないで、水分だけの補給時に痙攣が起こりやすい。
 「熱疲労」は、暑い日中での肉体労働時や、乳幼児や衰弱した老人に起こる水分喪失型がある。症状は強い口渇、倦怠感、興奮、高体温、昏睡となっていく。対して塩分喪失型は、大量発汗時に塩分を摂取せずに水分だけを摂取した時に起こる。症状は強い疲労、頭痛、めまい、悪心、痙攣など。体温はほぼ正常に保たれ、熱痙攣が筋肉労働に慣れた人の骨格筋に限局して起こるのに対し、熱疲労は筋肉労働に慣れていない人に起こり、全身症状を伴う。
 「熱中症」は高体温、発汗停止、昏迷、昏睡、中枢神経障害を来たし、死に至ることが非常に多い。また、熱中症と鑑別しなければならない病気(感染症、てんかん、心筋梗塞など)があるので、それらとの区別が必要。
 治療は、涼しい所に移し、衣服を緩め、意識があれば食塩水を飲ませ、全身を冷やすことである。
 
 ほんの10歳の子供に容赦なく専門用語を使用した説明を並べ立てた。分からないと質問を投げかけると決まって不機嫌になり、自分で調べろと国語辞典を一冊投げて寄越したものだ。わざわざ教えてくれた事を重ねて調べ直すことは嫌味だと子供心に判断し、大丈夫と言ってそれを拒否したのは、正しいことだったと今でも信じている。だから、あの人はオマケつきのキャラメルを強請ることだけは笑顔で許容してくれた。虫歯になってはいけないので一日にひとつしか食べてはならない。という制約付きだったけれど。
 
 
 しあわせなおもいでできずをなおすことのなにがいけないの?
 だれにもめいわくかけてないよ。
 
 
 人に歴史あり。だと思った。堰を切ったように寂しいという感情を交えた言葉を撒き散らした坂本は、自分の知る限りの中では最も井ノ原を大切にしている他人だったのだ。まさかそれを上回る存在がかつてはそばにあったなど初耳で、長野としても露わにはしないがいく分かの理不尽さを払拭できずにいる。いい年をして虹を見るとその下を目指して一目散に駆け出してしまう彼には、求めるものがあった。それが虹の下にあるわけがないのに信じて疑わない、眩いほどのまっすぐな心。子供サイズの麦藁帽子とキャラメルの空き箱を「たからもの」として大切に守る理由にやっと、辿り着いたとしてそこには、
「寂しかったんだね、いつも。」
「俺たちが一緒にいるのにか!アイツはそれで充分に幸せだと言った!それは嘘だったと・・・・・」
「当たり前に至近距離にある存在に手が届かないのは、とてももどかしい事だよ。子供なら特にそうだ。」
「だからってっ・・・だからってよりによって・・・・・」
「自分を誘拐して軟禁したヤツに依存しなくてもいいのに?そうかなぁ。人見知りの激しい井ノ原があんなにも慕うなんてさ、きっと、その人は井ノ原を見てくれる人だったってことなんじゃないの?だから懐いた。」
「誘拐は犯罪だ。」
「育児放棄も犯罪に匹敵するよ。」
「けどっ・・・・」
「じゃあどうして、坂本くんは井ノ原の誕生日に仕事でいなかったの?」
20年前に10歳の少年が1ヵ月半もの間、誘拐、軟禁されるという事件があった。仕事の忙しさにかまけてロクに家に寄り付かなかった両親は、最初の2週間はその事を知らなかったという。鍵っ子な事はもちろん、いつも独りでお留守番状態だった少年は誘拐犯といえど自分の手を引いて行動してくれた大人の登場に衝撃的な感動を覚えた。この理想的な大人を手放すわけにはいかない。特に拘束を施されていたわけでもない少年が、逃げ出すという選択肢を持ち合わせなかった理由。自分を見てくれる人に出会えて、嬉しさに満たされた。犯人の潜伏先に警察が踏み込み逮捕劇を演じた際、犯人の男と離れるのを少年は泣き叫びながら全力で拒んだという。ちょこんとソファーに腰掛けてご満悦で食べていたイチゴのショートケーキの皿の端に、『よっちゃん おたんじょうびおめでとう』とチョコレートで書かれたプレートが乗っていた。大勢の大人たちが力いっぱい引き寄せようとする中、懸命の想いで麦藁帽子とキャラメルの空き箱だけは掴んだのだと、それは大人になった彼、井ノ原に聞かされた話だ。
「未だに誘拐犯のおじさんが一番の心の拠り所だなんて、悲しいよ。」
いつも一緒で、外に出るときには強く手を繋いでいてくれる人。日差しが強いからと麦藁帽子を買ってくれ、買い物に行けばひとつだけお菓子を買ってくれた人。また会えると指きりをしてくれた人。出所する直前に、肺炎をこじらせて死んでしまった、もう二度と会えなくなってしまった大好きな人。
「俺には、虹の国を探してる30の大人の扱い方なんて、全然分かんねぇ。」
「虹の国?」
「いつかアイツが言ったんだよ。おじさんが、虹の下には願い事の叶う夢の国があると言ったらしい。おかしいだろ?虹の国って何だよ?願い事が叶う?そんなのイマドキ子供だって信じない戯言だ。」
「だからここまで構っておいて、井ノ原を見限るの?」
「見限るんじゃねぇ!ただ、なんつーか、俺には重いから。アイツの全部を許容してやれるほど強くないしな。」
「そっか。」
上から目線で坂本を責め立てていた長野が、ツイと目線を窓の外へ逸らした。外は眩しいほどに快晴で、見るからに強そうな日差しが降り注いでいる。こんな日に外に出たのかもしれない。麦藁帽子がなければ日射病になってもおかしくないほどの日に、2人で手を繋いで出かけたのかもしれない。そして優しい心遣いで買い与えてくれた、麦藁帽子とキャラメル。誘拐犯のおじさんとやらは井ノ原のことを、とても大切に扱っていた。初めて好きに慣れた大人はもう手の届くところにはおらず、心に開いた穴を埋めてくれるのは、誰?
「世話の焼けるヤツと知り合っちまってさ、ホント疲れる。」
「もういいよ。俺がご機嫌を取っとく。」
「やるぞ。」
「え?」
「今日やる。井ノ原の誕生日。盛大にやる。スゲーうまい料理作って、でっかいケーキはお前がとっておきの店で買って来い。キャラメルも忘れんなよ。」
「捨てないんだ。」
「虹の国はココなんだってこと、思い知らせてやる。」
侮っていた。たかが誕生日くらいと。大人になったのだから、大丈夫だと勝手に見縊っていた。
「俺が買ってやるよ。麦藁帽子くらい百個でも千個でもな。」
「坂本くんの愛情は不器用だねぇ。そんなんじゃいつか本当に本気で・・・・・ま、今はいいか。」
生きている優しさと見せてやろうと思った。闘争心に火をつけられたような、いわばあの時と同じ胸の内。伊達や酔狂で深い人付き合いが出来るほど器用ではない。過去の傷に遠慮して距離感を図れるほどデリケートでもない。長所であり短所であるとちゃんと自覚している、自分の性だ。
 
 広い広いベランダの片隅に観葉植物で作り上げられた頼りないバリケード。中心に鎮座ましますのは頭に子供用の麦藁帽子を乗せた成人男子。日付が今日に変わるその瞬間まで信じていた光。だんだんとか細くなり、消えていったそれと対峙するだけの器も持たずに、けれど一縷の望みを託して、
「井ノ原。」
2つほど鉢を動かし、陣取るのは真正面。
「いのはらよしひこ。」
ゆらゆらと焦点の合わない視線は虹を夢見る。
「よしひこくん、おたんじょうびおめでとう。」
大切に両の掌で包まれたキャラメルの空き箱。
「忘れてくれるなよ。お前を呼ぶ声は、ここにあるだろう?」
酷似していて非なる4本の腕。
「ここが虹の国だ。絶対にそうなんだ。」
生きている。
「謝ったって手遅れかもしれないが、ごめんな。」
生きている。
「おじさんは?」
「俺と長野がいるよ。」
「おじさんはいないの?」
「いない。」
「また会えるって、またっていつ?いつ会えるの?」
願いは重く強固な枷となり、
「会いたきゃ死ね。」
「死ねば会える?」
「知らねぇよ。」
「でも、会いたかったら死ねって・・・・・」
「おじさんは死んじまった。けどお前は生きてる。この意味を考えたことがあるか?」
求めてやまないものは、
「お前はまだ生きてろって、おじさんが言ったのさ。」
「おじさん、が?」
「生きて生きて生きまくって、幸せになれって言ったんだ。」
嘘で塗り固めて次の方向性を操作すればいい。
「好きな人が死んじゃったら悲しいだろ?」
「うん。」
「俺も悲しい。」
「にじの国に行けば会えるよ。だって願いごとがかなうから。」
「じゃあ行こうか。」
「い、けるの?」
幼い頃に母親が教えてくれた魔法。本当は魔法なんて小洒落たものではないけれど、自力で叶えられる夢は叶えて然るべしだ。人工物でも虹は虹で大きな転機をきっと、巡り巡らせてくれる。例え霧吹きで作った、陳腐で小さな虹だったとしても。
「さあ、行こう。」
太陽に背を向けて、霧吹きで細かい水の粒をたくさん作り出す。たくさん、たくさん。そしてそこに太陽の光を当てれば、完成。
「虹の国に、とうちゃく。」
君の頭上にも虹はできるんだ。
「にじ、だぁ。」
「おじさんがいなくても、俺たちがそばにいる。来年も再来年も10年先も50年先も、誕生日を祝ってやるから、だからお前は、生きてろ。」
「いちごのケーキはある?」
「ああ。大きなケーキを長野が持ってくる。」
「おたんじょうびおめでとうって、」
「チョコレートでな。」
「ふたりはどこにもいかない?」
「行かない。」
だって虹の国で出会ったのだから。
「2人とも優しすぎ。んでもって、大好き。」
隙間だらけなのに閉塞的な空間から飛び出してきたのは、よく知る彼だった。
 
 
 あたたかい手が麦藁帽子越しに頭を撫でる。
 
 
 育児放棄とは、幼児や児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食、又は長時間の放置、その他の保護者としての監護を著しく怠ることを指す場合が多く、ネグレクトともいう。
 
 いってらっしゃいもおかえりも聞こえない家。テーブルの上には無機質な一万円札数枚。参観日も運動会も行事予定を報せるプリントの類はすべて、自分でゴミ箱に捨てた。遠足をいつも仮病で休んだ。お弁当を作ってくれる人などいなかったから。両親との楽しい旅行の思い出・・・そんなウソの作文で賞をもらったことがどれほど痛いことか、あの人たちは終ぞ知る由もなかっただろう。誘拐された子供を平手打ちにして、迷惑をかけるなと怒鳴り散らした大人。誕生日に『好きなものを買いなさい』と書かれた札束入りの封筒一つをテーブルに残すだけだった大人。大学生になって家を出た子供に、一度の連絡も寄越したことのない大人。彼らは知らない。誕生日に与えたお金は一度も使われることなく、実家の部屋の引き出しに眠っている事を。
 
 
 廃品回収用にビニール紐で束ねられた塊の中から、裏の白い広告を1枚拝借した。スケッチブックや日記帳なんてものは持ち合わせていないので、今日の出来事について書き留めておく場所がなかったからだ。もちろん、胸の中には鮮明に焼きついている。この先ずっと、忘れることはないだろう。けれど、確かに触れられる形で残しておきたい衝動に駆られた。今日という日。煌びやかに彩られた記念日。どんなファンタジー小説のそれよりも長けていた魔法が、永遠に解けないことを心の奥底から希って。
 
 今年の誕生日プレゼントは最高だったと思う。麦藁帽子とオマケつきのキャラメルとあたたかい2人分のてのひらと、虹の国旅行。
 
 やさしいおとなのひとに、またであった。
 
 
 
 
 
 
 
 
→ いのはらよしひこ さま。おたんじょうびおめでとうございます。 ←
 
   『Denied existence value』管理人ごとうのりこです。
   もう誕生日なのか!
   と絶叫しながら書かせていただきましたこの作品ですが・・・・・
   上2人のお兄ちゃんにすこぶる愛されるイノを目指してみました。
 
   作品中に書いた虹の作り方は、昔、何かの雑誌で見かけたものです。
   本当にささやかですが虹を作ることができます。
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HN:
ごとう のりこ
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非公開
職業:
妄想家
自己紹介:
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