真夏にサクラが咲いたらね。

短編を更新です。

こちら、お祭りに出展しようとしていた作品です。
が、あまりにもあまりなので引っ込めました。
非常に暗いお話です。

さて、50000HIT突破いたしました。
ご訪問者様、こんなにも更新遅延なサイトにお越しくださり、本当にありがとうございます。
何か感謝の気持ちをただ今、考えております。
こんなにも早く50000HITに到達するなんて、まさかの事態に驚いております。
幸せモノな管理人ですね。

スピリット。
もう毎日パワープレイです。
今回のPVは非常にシンプルでお好みですね。


出演　：　井ノ原　快彦　・　長野　博

真夏にサクラが咲いたらね。

 

 

 

　これだ。

 

　この表情に途轍もなくイライラする。

 

　この言葉にすべてを壊したくなる。

 

 

　だったら本当のお前はどこで自分を休ませてやるんだ？

 

 
 

　控え室のソファが占領されていて安心した。マネージャーの調整の賜物か然程立て込む事のないスケジュール。のはずが、何がどうなったのかここ２週間ほどの間、行き着く暇もない仕事ラッシュが井ノ原を追い立てていた。睡眠時間も惜しいと言わしめるハードな日々は、昨日で一段落したと聞いている。そして今日は、ラジオの収録だけという非常にゆるいスケジュールだということも。雲ひとつない快晴の本日、謎の15分間停電。というアクシデントに襲われたため大幅な待ち時間が発生していた。スタッフは機材の再調整や収録のスケジュール調整に追われて、出演者に構っている余裕はない。坂本は雑誌の取材が押して入りが遅れ、長野は黙って近所の見せにおやつを仕入れに行ったため、自動的に１人で待つ羽目になった井ノ原。ノートパソコンは持ち込んでいたがさすがに暇を持て余したのか、お気に入りのどら焼きをゲットして戻ってきた長野の目に飛び込んだ光景。ダラリと身体をソファに投げ出し、無防備に惰眠を貪るその姿。

 

　「大丈夫だよ。チョー元気。」

 

　充電はいつか切れる。どんなに我慢強いとしても限度があるだろう。幸いにも年上の人間が２人もそばにいると油断していた。笑い、はしゃぎ、走る井ノ原を痛いと感じたとき、溢れたものは怒り。昨今はすっかり気丈に成長した手に縋りつく側になってしまった坂本は、まったくもってあてにならない。よく見てみろと大声で叫びたいのに、肝心な核の部分が酷く脆いことを知っているから叶わず、だったら自分だけはと思ったのだけれど・・・・・

 

　「俺は全然平気だから。」

 

　ああ、コイツを永遠に眠らせたい気分だ。

 

　「井ノ原、大丈夫なんだ。だから、頼むから、もっと自分に優しくしてやれ。」

明らかに恐れていた。この先に起こるかもしれない突然の暗転を。大丈夫と繰り返し、計算の上に成り立つ笑顔を貼り付け、それは誰にとってメリットのある行為なのか？と問いたくなる残酷な習慣。

「お前が苦しいと、俺たちも苦しいよ。」

届かない願い。

 

 

　「じゃあ、真夏にサクラが満開に咲いたらね。」

 

 

　少し休んでも許されると、面と向かって告げたことがある。満面の偽装された笑みで返された答えがそれだった。壮絶な苛立ちに襲われ、不機嫌を強か露わにして一方的に話を終了させたのだ。でなければきっと、全力で罵倒してズタズタになるまで傷つけていただろうから。井ノ原が履き違えているのは、それが親にも似た優しさなのだと錯覚して油断しているという部分。長野は深く深呼吸を繰り返し、平常心を保てと己に命令を下しながら仕事という喧騒が再開されるのを待った。

 

 

　世界が崩壊すればいい。

 

 

　そしてあの忌々しい強がりさえも喪われる事を希う。