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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/03 (Fri) 00:46:53

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No.333
2009/07/05 (Sun) 21:42:33

『HONEY3』出展作品の後編をアップです。

あとがきもお祭り出展時のものをそのまま掲載しようとしたのですが・・・・・・・行方不明です。忽然と姿を消しました。一体どこに!?

ということで、本編のみ、加筆と修正を加えてアップいたします。


HDDに放置されていたV6さんを、やっとお引越し。
結構な量でした(苦笑)。
9係さんが始まったので、この空きは大きいのです。
そう思うと、タイノッチやクマグスのオンエアがある地域に住んでいる方は大変ですね。
羨ましい悲鳴ですが・・・・・(しょんぼり。)


出演 : 井ノ原 快彦 ・ 坂本 昌行 ・ 長野 博















 憤りを齎した朝のニュースを、悔しさに爪が皮膚を突き破るほど拳を強く握り締めて、見ていた。標準を大きく上回る数の事業を展開していた企業の倒産。世間の度肝を抜いたのは、会社の倒産が回避できない事態だと早い段階で判断を下し、すべての事業の傘下からの独立、社員の再就職先と退職金の手配、取引先へのフォローなど、若造に分類される社長はたった一人ですべて迅速簡潔にやってのけた。後腐れの一切ない幕引きは、世間の疑惑の念を駆り立てる。強力なコネがあったのではないか?不正な資金繰りを行ったのではないか?マネーロンダリングの可能性も考えられるのではないか?ありとあらゆる憶測が飛び交ったが、それらの事実は皆無。ただ単に井ノ原という男が会社に、人に恐怖感を抱いていただけ。大切だと思う人を喪う事をこの世で一番恐れたが故の一連の流れ。利益に目が眩む余裕など、なかった。明るく元気に、まっすぐに。いい子でいるから、いくらでも与えることは厭わないから。数学でぴったりの公式が見つかってスラスラと問題が解けていくように、井ノ原という人間が紐解かれた。これを処世術とし、守りたいという願いを貫き。とても自然に笑えるようになったのではなく、とても自然に笑っている演技が出来るようになっていただけ。そばにいて共に朽ちるべきであった。共に朽ちてこそ理に適うというものであった。それが、本当に手を取るということ。
「初めて会った日と、同じだね。」
「え?」
「坂本くんがよっちゃんを助けて病院に運ばれた日と、同じだ。今にも消えてなくなりそう。」
「ふりだしに、戻ったか。」
「だといいけど。」
「ふりだしよりもさらに前に戻ったとして、変わんねぇよ。もしくはそれどころか全部喪ってたとしても、な。」
「そんなこと、当たり前でしょ。問題は・・・・・・・」
「井ノ原のアイデンティティとして確立されたその部分を、壊せるかどうか。」
物理的欲求をすべて満たすことが、繋ぎ止める唯一の方法だと誤解した井ノ原を救う義務がある。そんなにも愚かな誤解はないと、そんなものは抜きにして一緒に過ごしていたいのだと、すべての時間が尽きるまでかかっても伝えてこそきっと彼は還って来るのだから。彼の心は混沌より目を覚ますのだから。
「開店資金の3分の2だ。」
「貯まったの?」
「まだそれだけしか貯まってない。全然足りねぇんだよ。コイツは何でもない顔して一体、俺にどれだけの金を注ぎ込んだか。俺はバカでさ、まったく疑うことなく、ただただ好意に甘えてた。借用書は書かせた。当然だが踏み倒そうなんてこれっぽちも考えた事はなかった。けど、まさか借用書がガキの落書き同然のニセモノ、紙屑だったなんてさ、これじゃあ俺、詐欺師みてぇじゃん。」
「よっちゃんは会社経営者なのにね、2DKの家賃格安アパートで細々と暮らしてた。従業員も必要最低限しか雇ってなかったし、営業も企画も製作も経理も事務も、必要に応じて自分でやっちゃったり。ホントさ、気付かなかった自分に心底腹が立つよ。憶えてる?俺が金銭を受け取って放火犯を逃がしたんじゃないか?って疑われたこと。すごかったんだよ、よっちゃん。探偵は雇うわ大量に弁護士は雇うわ情報収集のために俺の上司だとか疑わしい人間の部屋に片っ端から盗聴器仕込むわ、いくら使ってどこまで危険を冒すんだって、引くくらいに。それほどまでに、願ってた。俺たちが離れていかないようにって。」
「離れるわけ、ない。俺たちは井ノ原のこと、普通に友達だって思って・・・・・」
「迂闊だったんだ。よっちゃんは、愛情を人よりもずっと少なくしか得られなかった子だって、知ってたのにね。」
中学生の時に両親が他界、駆け落ち同然に結婚した2人の子供に親身になってくれる身内などなく、たった独りで冷ややかな施設に頼らざるを得ず生きてきた悲しい子だと、
「会社が倒産したってニュースで流れた日の2週間ほど前に、俺の店はこいつの会社の傘下から独立してた。用意周到すぎて、なんつーかスゲエ、腹立つ。」
「負債なし。従業員への給料と退職金も支払い済み。そして張本人は失踪。」
立つ鳥後を濁さず、消息すら絶ち、
「ぜってぇ死ぬまで友達だって言い張って、付き纏ってやる。」
自己犠牲を友達に望んでいて欲しいなどと微塵も、思わせないように。
「俺が守る番だ。」
「俺らが、守る番だよ。辟易するくらい、幸せにしなきゃね。」
だから早く目を覚まして、笑って。手始めに心を込めて用意したあたたかい食事とはちみつミルクティーで、両手をいっぱいに広げて優しく優しく出迎える準備は万端なのだから。

 
 
 浮き世の春はここにある?
 
 
 純粋な幸せとは程遠い日常は今日も、当然の如く変わることなく訪れた。生鮮食品の類を自らの目で吟味して仕入れする坂本の朝は朝刊の到着よりも早い。しかし一番の早起きの称号を手にすることはなかった。挽き立てのコーヒーの香りと作り笑い。朝食用の弁当を詰め込むために忙しなく動きつつ発せられる挨拶。
「おはよう、坂本くん。」
「おはよう、井ノ原。」
朝食には早すぎる時間に市場へ出向いてしまう坂本のためにと、井ノ原は毎朝弁当作りに精を出している。何時に起きているのかは不明だが坂本よりも早い時間に起床し、坂本を送り出した後に家事全般をこなし、夜は夜で坂本が帰宅して寝室に引っ込むまで起きていた。家政婦を求めているのではないのだからそこまでする必要はないと何度も苦言を呈したが、次には必ず「だったら出て行く。」という伝家の宝刀が繰り出され、坂本は折れざるを得ないのだ。長野と2人がかりで言いくるめて坂本の部屋にとどまることをどうにか納得はさせたが、イーブンな関係には抵抗を示す。何かしなければ、何かを与えなければ2人はいつ自分から離れてしまってもおかしくないと、勝手に思い込んでいるのだから手に負えない。
「今日は折りたたみ、持って行ってね。天気予報が7時くらいから雨が降るって言ってたから。その時間だったらまだ市場でしょ?」
「分かった。」
「あと、長野くんがディナーの時間に行くから、魚料理のコースが食べたいって伝えといてって。」
「一人でか?」
「課長さんと一緒だって。あ、課長さんって舌が肥えてるらしいよ。長野くんよりも。」
「お前は?」
「へ?」
「お前は俺の店、来てくんないの?」
「ダメだよ。坂本くんのお店、いつも混んでるし。俺が1つ席を埋めたら、来れるお客さんが1組減っちゃうもん。」
自分が作った料理を食べたいとは思ってくれないのか?と言おうとして嚥下した。一度だけそう聞いて、井ノ原を泣かせそうになったことがあるのだ。坂本に迷惑をかけたくないと、懇願するような必死の拒絶を見せた。歯痒くとも焦りは禁物。ゆっくりと慎重に溶かすべきだ。もう繰り返さないことを決めた以上は間違えない。
 
 後輩に困った様子でランチに誘われて、何事かと思考を巡らせてみれば井ノ原に正社員になってくれるよう口添えして欲しい。と非常にありがたい申し出をもらった。仕事をするとアルバイト情報誌を購入しているのを発見し、だったらと小さいながらも安定したゲーム制作会社を紹介したのは長野である。高校でみっちり学んだ甲斐あってパソコンのスキルに長けた井ノ原は、どうやらこの不景気なご時勢に採用からたった1ヶ月ほどで正社員への道を切り拓いてしまうほど優秀な人材だったらしい。しかし本人は正社員になると拘束時間が長くなってしまうという理由であっさり断り、さらに会社も辞めると言い出したという。当人はいたって楽しそうに仕事をし、その傍らにふと呟いたようなのだ。
「独立しようかなー。」
背筋が凍るような悪寒が快調な食欲さえも奪っていった。会社経営の経験を持つ井ノ原にとって、得意のスキルを生かした会社を興すことなど造作ない。軌道に乗せることも、さらに規模を拡大することも。杞憂かもしれない。杞憂だったらそれに越したことはなく、逆に杞憂で済まされなかったとしたら、どうなる?
「ごめんね。俺もう、坂本くんと長野くんのために何もしてあげられないね。」
失踪する前の日に偶然出くわした井ノ原は、目にいっぱい涙をためて、それでも必死に笑って謝った。あんなことは金輪際ご免被りたいものである。関係性を履き違えたまま、また突っ走ろうとしている困った友達を、なりふり構わず止めなければならない。今はまだかろうじて引き止めている状態だが、いつ辞めると宣言されてもおかしくないと眉根に深い皺を寄せる後輩に、長野は力強く告げた。
「独立なんて、絶対にさせないよ。」
知らず過ちを繰り返すほど、生易しい関係ではない事を教える時がきた。
 
 
 
 なんでもあげるから、捨てないで。
 
 すべてを擲っても守るから、嫌いにならないで。
 
 どうかどうか・・・・・・・
 
 
 あなたたちはきっと、おれのかみさま。
 
 
 
 いつまでかかるのだろうか。結末はハッピーエンド?成す術がなく先輩に泣きついた手前、その手段に横槍を入れるのは筋違いと判断した三宅は待っていた。今日も今日とて延々と続く説得工作。正社員になるくらいならば独立した方がいい。の一点張りの井ノ原と、反対を決して覆さない長野と坂本。ここ数日の論争に耳を傾けていて、気付いたことがあった。長野はただ単に三宅を案じて井ノ原を引き止めているのではないらしい。何かを酷く危惧して、それがあるが故に会社を興すことに反対だし、あえて会社を興さなくとも、
「何もいらないと言ってるだろう!物理的な供給を踏まえてお前といるんじゃないと、何回言ったら分かるんだ!」
激しく机を叩く音と同時に、坂本の怒鳴り声。いいかげん、テーブルの強度も敵わなくなるかもしれない。井ノ原があんなにも頑固だとは思わなかった。
「俺は2人と一緒にいたい!そのためだったら手段は選ばないし、今の俺は何も持ってないからっ、だから独立して会社を興せばもっと自由に使えるお金がたくさん手に入るからだからっ、だから春休みはもうおしまいなんだ!」
双方の意見はスタート地点の時点ですでに相反するベクトルを示して、交わることがない。じれったく感じる。正社員になってもらうだとか会社に残ってもらうだとか、そういうことは抜きにして、非常に恐縮だが、
「井ノ原さんが間違ってる方に1票。」
「しゃちょー?」
突然の乱入者に、ポカンとマヌケ面を浮かべた井ノ原が頓狂な声を上げた。
「埒が明かないみたいだからスーパーヒント。逆もまた然りだよ。井ノ原さんは2人が、井ノ原さんと一緒にいたいって理由でいろんなモノとか、お金とか貢いでくれて嬉しいか?ってこと。以上。」
譲歩のない意見が飛び交っていた部屋は、三宅の意見を投入されたことで水を打ったように静まり返った。井ノ原が強く唇を噛んで俯いてしまったせいかもしれない。あとはお友達同士でどうにでも打開策を見出してもらえばいいと、三宅は小さなため息を残してチラリと長野に目配せを送り退室した。弾かれたように長野が井ノ原の頭を撫で、何か懸命に声をかけている。坂本が必死の形相でいくつもの言葉を紡いでいた。倦怠期カップルの痴話喧嘩を仲裁したお人好しみたいだ。まったくメリットのない自分の行動に呆れた笑みをこぼしつつ、三宅は3人の様子に気を取られて組み替えの途中だったプログラムへと再会を果たした。
 
 
 
 何も持っていない人間が、幸せになっても許されますか?
 
 やさしいかみさま、見返りは必要のないものですか?
 
 
 
 一種の習慣になってしまったのか、井ノ原の与え癖はしばらく続いた。坂本が何かを欲しいといえばそれを取りこぼすことなく聞き止め、勝手に買ってきた。長野が困っているとつい口にすれば、力になるべくすべてを駆使して奔走した。その回数も次第に減り、やがて3人は、
 
 
 
 
 坂本くんはともだち。
 
 長野くんはともだち。
 
 明日は何してあそぼうか。
 

 
 
 続く春の中で肩を並べて歩き始める。
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