シリーズ ６回目

世界観のみリンクシリーズ、第６回更新です。

やっと６人が出揃いました。
今後も坂本・三宅コンビ以外は絡む予定はありません。
あと数話で終了の・・・・・予定（コラー！）。


出演　：　森田　剛

世紀末と。

 

 

 

　本州が４つに割れて、その割れ目から地底人が出てきた。っつー下らない話題で編集会議はバカみたいに盛り上がってる。ウチは芸能ゴシップを売りにしてる週刊誌、なんだよな？って確認したくなるほどみんな長時間ノリノリで会話を弾ませてて、いや、やるのは構わねぇよ。けど、俺はここにいる必要ないじゃん。って。大井勇斗と星川ちぐさの不倫疑惑、ウラ取れそうだから早く現場に行きたいんですけど。２人の子持ちイケメン俳優がバツ３で４度の年女を経験してるベテラン女優と不倫。しかも３人目を妊娠中の奥さんは健気に旦那を信じちゃってるとかさ、チョーおいしい状況だし。２人は今、ドラマで共演中。今日の撮影が終わった後のスケジュールは共に白紙。でも大井の方は奥さんに地方ロケがあるってマネージャーから連絡入れさせてる。もう絶対クロじゃん。最近、山梨で事務所名義にしてマンションを借りてるとか、あからさますぎ。これってまだ、ウチだけの独占なわけ。だから１分でも早くスタジオ行って、待ち伏せときたい。別冊で特集？ムック本？あー、好きにしてくれ。そっち系の専門家を押さえて？押さえりゃいいんじゃねぇの。知り合いにそういう人間がいる奴でって。じゃあ森田が適任？はいはい。俺にはカンケー・・・・・

「ちょっと待てよ！なんで俺がっ・・・」

「岡田准一だったっけ？お友達なんだろ？」

なんて言い出したデスクの目、笑ってないですから。スゲー本気モード入ってます。行かねぇならクビとかありそうな雰囲気。や、とはいえマジで俺、忙しいし・・・・・

「たまには流行りにも乗っかっとけって。」

岡田のせいだ。割れ目のせいだ。地底人のせいだ。芸能記者も所詮はサラリーマンってか。ウゼェ。マジでウゼェ。激しく有り得ねぇ。今すぐにでも、コンクリかなんかで割れ目を埋めてやりたい衝動に駆られてる。

 

　スクープを無事モノにして、同期に祝杯を挙げてもらって、ネタは継続になって、社長賞で金一封もらって、そんなアゲアゲの俺を待ってたのは割れ目と地底人の資料が段ボール６箱分。なんだそれ。いい感じに酔っ払って心地良くなってるところに頭から氷水をぶっかけられたら、こういう何もかも冷め切った心境に陥るのかもしれない。ここでこの編集部が火事になったらやらなくて済む。きっと同時に芸能人の不倫とか追っかけてられる状況じゃなくなるだろうけどね。懐かしい感覚。学生の頃、夏休み明けとかテスト前とか、どうやったら学校に行かなくてよくなるかをマジで考えてた。それと多分、同じ。せっかく順調にまっすぐ引けてた線が曲がるのがイヤで、正当化された理由を以って抵抗したいんだ。ガキ臭いつまんない意地だってバカにされても絶対に譲りたくないライン。今なら勢いで言う可能性もある。従えってんなら辞めてやるよ、こんなクソ出版社。とかね。代えの記者なんて掃いて捨てるほどいるじゃん、実際。

 

　新しく北海道に割れ目が出来て、札幌が南北に分断された。そこで何を俺なんかに未練抱いちゃってんのか、デスクが費用に糸目は付けない全額負担してやるから行って来い。って大風呂敷な打開策を提案してきた。多少の観光なら目を瞑るし、滞在も３週間くらいはOK。とかどんだけ行かせたいんだよ。だいたいさ、こういうのやったことないんですけど。たぶん割れ目に巻き込まれてる人たちにしてみりゃ由々しき事態なんだろ？芸能記者、ましてや無駄に扇情的な記事で世間を煽ってメシのタネにしてるような人間の書く文章なんてさすがにマズイ気がする。したんだ。けど、何の気なしに部屋でテレビから流されるその割れ目のニュースを見た瞬間、本職レーダーに引っかかった。それまでは思い付きもしなかったこと。ものすごいスピードで手繰るタレント名鑑。

（ヒット！でかした割れ目！）

俺が追いかけてるもう１つのネタ、人気ファッション誌のトップモデルが新興宗教の幹部になって、家族やら親戚やらから高額のお布施をかっぱらってるらしい。ソイツの実家が札幌にある。実家には両親、妹２人、祖父母が住んでるから、札幌に行けたらツッコミ放題じゃん。長期戦でトコトンぶつかれそうな感じだし。

「いいっすよ。行って来ます。」

お望み通り、札幌出張してやろうじゃん。スクープと、おまけで観光に・・・割れ目はちょこっと写真でも撮って帰ればいい。俺なんかに頼んだデスクは大馬鹿野郎だね。残念でした。