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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/05 (Sun) 03:14:10

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No.150
2008/01/13 (Sun) 21:29:32

Live Show 第19話です。

リーダーが料理をするようです。


出演 : 井ノ原快彦 ・ 坂本昌行 ・ 長野博 ・ 岡田准一 











 メンバーが全員オフという珍しい日。長野はまったく外出する気になれなかった。きっと、昨夜見た夢のせいだ。つまり、坂本のせいだ。坂本があの言葉を言った瞬間、井ノ原はあっさりと絡めていた腕を解いた。言った本人は気まずさを隠せないでいる。長野はあまりにも短絡的なそのセリフが頭にきて、怒鳴ってやろうとする。しかしそれを遮るように、先に言葉を発したのは井ノ原で・・・

「だったらさ、長野くんがいいんじゃない?」

信じられないひとこと。無表情で、すべてを諦めてしまったように見える。さっき楽屋でメンバーに、本番だけでも笑うように言っていた人間と、同一人物だとはとても思えない。何を言えばいいのかが分からなくなるほどに困惑した長野の腕を解いて、言うに事欠いて、坂本は長野にあっさりと告げる。

「だってさ。長野、頼むわ。」

イライラが噴き出しそうだった。肝心なところで目を背けると、そう言っているのと同じ。バラバラになりそうなV6にはお手上げと、甘えたことを思っているに違いない。だけどリーダーじゃないならやっても構わないなんて、ぬるいことを考えているのだろう。うまく言い返せる言葉が見つからなくて、けれどこのまま引き下がるなんてできなくて、長野は感情に任せて思い切り、坂本の頬を平手でひっぱたく。

「俺、今のアンタのこと、大っ嫌い。」

平手打ちはとてもいい音がしたし、啖呵は存分に迫力があった。長野は息を荒くして強く睨みつけている。坂本は逆に、そこまでされても何もリアクションを取らない。井ノ原は目の前で起こったことにどこか虚無感を感じて、どちらにも何も言えなかった。

「俺は何も聞いてないから。」

胸倉を掴んで、めったに出さない低い声で坂本に告げると、長野は足早に立ち去る。また自分独りで悩み抜き過ぎて、勝手に終わらせようとなんて、絶対に認められない。それはV6が壊れる理由として、充分に値するのだ。井ノ原が肯定したのは、あまりに腑抜けた坂本に見切りをつけたからなのかもしれない。感受性が豊かで、人の悲しみには敏感な男。

 あの日の晩から、眠れば一連の出来事が夢として鮮明に突きつけられる。目が覚めるたびにもれなく、最悪の気分。やりすぎたとは思わない。むしろ、あの坂本の態度から考えれば、もっとやってもやりすぎということはなかったようにさえ思えている。せっかく井ノ原の抱えている何かしらについて進展しそうなのに、その先へと足を進めることさえ億劫にさせてくれるなんて、どこまで端迷惑なリーダーなのだろう。みんなが信頼しているのに、自分から拒絶するなんて贅沢だ。これでは赤子の手を捻るよりも容易く、V6は・・・・・。

オフの日にメンバーと離れて過ごすと、心が穏やかになっていいな。坂本は最近、そんなことをよく考える。じっとしていると、ここ数日の仕事のこと、いや、一番はあの日の出来事か。とにかくそれらが頭を支配しそうになって、すべてを打ち消したくなって家を出たのは2時間も前。気分転換に、本格的な料理でも作ろう。スーパーで、専門店で、食材を吟味していると嫌なことは忘れ去ることができる。頭の中でレシピを思い描いていると楽しい気持ちなって、自然に笑みもこぼれるものだ。

(プーレのクリーム煮とラタトゥイユとニース風サラダ。ああ、スープもいるな。ジャガイモとポロ葱でいいか。そういや赤ピーマンがたくさんあるんだ。ムースにして海老とアボガドを沿えて・・・ソースはマヨネーズベースでちょっとタバスコでも入れりゃいい。じゃあサラダはやめてキャロットラッペにしよう。色取りはルッコラか?久しぶりにタップナードと野菜のマリネでブルスケッタを作って、じゃあバゲットは・・・・・買おう。あれは買ったほうが無難だ。ってことは、ファインバージンオリーブオイルを買わないと。ワインは家にあるし、ってソーヴィニョン・ブランだったか?それともピノ・グリ?確かめてくりゃ良かった。)

結局は辛口の白ワインを買って、酒屋からホクホクで出てきた坂本は、その一生懸命にチョイスしたストーンヘッジを危うく落としそうになった。一台の自転車が、ものすごい勢いで通過して行ったのだ。危機一髪でワインを抱きとめ、自転車の走っていったほうを睨むと、自転車は数メートル先で停車している。あたふたと降りて駆け寄ってきたのは、

「すいませんでした!怪我とか・・・・・あ。」

「あ。」

双方がポカンと口を開けて、立ち尽くす。楽しかった時間は瞬く間に払拭されて、坂本は走って逃げてやろうかとさえ考えた。暴走自転車の持ち主は最も会いたくない人物、井ノ原。何を求めて道を逸れたのか、メンバーの誰にも真実を悟らせず、笑う。

「ごめん。」

「お前、どうして・・・」

「本当の本当に、ごめんね。」

「いの、はら?」

「きっとみんななら、大丈夫だよ。うん。坂本くんがリーダーで、V6は大丈夫だよ。」

「その中に、お前もいるんだ。お前だって・・・」

「俺は、いいや。みんなが笑っててくれるなら、俺はいいや。」

井ノ原は笑う。笑って、捨てようとする。だからといって坂本は井ノ原の言い分を認めたくない。思い当たる過去の中ではいつだって、優しく元気でいてくれていた人の見せる、終わらせてしまいそうな雰囲気に、坂本は言葉をなくした。そんな身勝手な言い分は認めないと、言うことさえできずに。

「長野くんに、ちゃんと謝らなきゃダメだよ。あの人、本気で怒ってたし。」

こんなときでさえ、泣いてくれない。

「じゃあ俺、急いでるから。本当にごめんね。足止めさせちゃって。」

誰か井ノ原の傍にいて、優しい笑顔で、支えてくれればいい。井ノ原が全身全霊をかけて拒んでも、大丈夫だと、頭を撫でて、

「ばいばい、坂本くん。」

「俺はっ!俺はただ・・・」

「男は人前で泣くなんてみっともない真似、しちゃだめだよ。」

離れていく井ノ原を止める資格は自分にはないと、坂本は思った。どうしてこんなところにいるのかと聞くことも出来ずに、ぼんやりといくつかの会話をこなしただけだ。何かを言おうとしたけれど、一度遮られただけで取り下げてしまったし。井ノ原が「俺は、いいや。」なんて寂しいことを笑っているから、それを打ち消すために伝えたかった言葉も、飲み込んでしまった。恐くて逃げて、時間が解決してくれると甘えて、誰より本当の井ノ原の心の中を見ないようにしていた。何を泣いている?自分からは動かなかったくせに、思い通りにならなかったことに癇癪を起こして、ホラ、そんなズルい人間はリーダーになんてなれない。買い被られたって困るのだ。何かとても、大きな音がしている気がする。何の音かは、分からないけれど。もしかしたら、これこそが壊れる音なのだろうか。

 青く晴れ渡った空を見上げると、何もかも平気だとごまかせるのだ。

 あなたのせいで雨が降ったなんて、一度も思ったことはない。

 遠ざかって、見えなくなって、それでも坂本は動くことができずに見続けていた。流せずに飲み込んだ涙も、けれど抑えきれずに真っ赤になった目も、すべてが罪だ。何度も何度も繰り返し繰り返し、掴み損ねてきたのだから。大切な手、ぬくもり、笑顔、いつか必ず守ると心の中で強く決めたすべてを、自分可愛さに負けて、こぼしてしまったのだから。だからリーダーにねんてなれないし、何かを求めることが面倒くさくなって、そう、なのに、失って後悔している。我がままでどうしようもない人間に科された、罰。これでいい。関わらない。降りたのだ。みんなに聞けば分かること。こんな人間に、ひとつのグループを束ねていく役割を担う価値なんて、微塵もないだろう?

 遠ざかって、見えなくなって、それでも坂本は動くことができずに見続けていた。早く家に帰って料理に没頭して、忘れたいと思っているのに。

「坂本くん?」

ああ、どうしてせっかくの一人の時間を、みんなして侵害するのだろう。

「坂本くん、やんな?」

「どうした?岡田。こんなところで。」

振り返ればそこには、肩で息をしながら立っている岡田の姿がある。井ノ原もそうだけれど、今日は休みだ。こんなところで会うなんておかしい。住んでいる場所も、生活圏も、まったく違う。だから会うことなんて、ありえないはずなのに。

「えっと、いのっち、見ぃへんかった?」

「見たよ。」

「ホンマ?この道、通った?」

「たった今、自転車で走っていった。」

「そっか。ありがとう。」

乱れた息を深い深呼吸で整えて、岡田はまっすぐに前を見据える。トントンっと数回跳ねて、

「また来週な、坂本くん。」

次があることを信じて疑わない風に笑って、走っていった。それだけ?オフの日に偶然出くわしたメンバーに言う言葉は、それだけなのか?いや、これでも十二分に話したほうだ。あの2人がどうしてこの近辺で追いかけっこまがいのことを繰り広げているのか。そんなことは、どうでもいい。関係ない。でも、胸に何かが支えているような感覚がある。ほんの短い時間の中で交わされた井ノ原との遣り取りの中に、胸に支えるほどの何かが存在していた。違う。ない。そんなものはない。家に帰ってキッチンに立てば、すべて忘れること。

 2人が走り去った道を見て思う。同じ道を歩くことさえ、憂鬱だ。

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