V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.352
2010/01/28 (Thu) 22:54:58
中編を更新です。
しれっと書きましたが・・・・・
今年初めての更新です。
幾度となく探りを入れてくださったみなさま、申し訳ありませんでした。
もう1月も終わるというところに滑り込み。
こんなダメ人間をそのままカタチにした管理人ではございますが、
本年も何とぞよろしくお願いいたします。
出演 : 井ノ原 快彦 ・ 長野 博
むかえるあさ
黒い猫
あなたが猫を拾った。
たったそれだけのことが、日常を変えたんだ。
家にいる間、長野くんは新たなルームメイトである黒ねことべったり一緒に過ごしている。俺が遊びに行っても、夫婦と周囲から形容される仲の坂本くんが遊びに行っても、今まで猫が大好きだなんて言ってことがなかったくせに、まるでそれの存在がなければ呼吸もままならないと言わんばかりに。俺は長野くんと話したり遊んだりしたくて行ってるんだよ。そう思って一度、猫をクローゼットの中に閉じ込めてやった。けれど長野くんの意識が俺に向いていたのはほんの数分のことで、すぐに泣きだしそうな表情になって猫を探し始めた。カリカリと内側から扉を引っ掻いてアピールする猫を発見した時の笑顔は、見たことのない安らぎに満ちたものだった気がする。そして、長野くんの腕の中に抱かれてこちらを一瞥した猫が、俺を嘲けるように笑った気も。またある日は、部屋を訪れて1時間もたったころに痛恨の一撃を食らった。オートロックのマンションで合い鍵もない。つまり部屋にあげてもらうには相手の承諾が必要だ。俺はちゃんとインターフォンを押して長野くんに部屋に招き入れてもらっていたはずなのに、言われた。井ノ原、来てたんだ?と。この経験は坂本くんもしたらしい。しかも長野くんと猫に手作りの夕食を振る舞ったあとに。
完敗だと悟った。もう長野くんのそばに俺の入り込む隙なんて1ミクロンもない。大声で寂しいと叫んだとして、きっと届かないに決まってる。
「じゃあ、さよなら。」
高い確率で、あの猫は長野くんよりも先にこの世を去るだろう。そのときにもし、まだ俺の事を頭の片隅にでも残していてくれたなら、元鞘に収まれることがあるような気がする。今の様子を見る限りでは、猫がこの世からいなくなったら、長野くんも追いかけて行ってしまう可能性が大きいけれど。
「長野くんが死んじゃったらきっと俺は、悲しすぎて死んじゃうなぁ。」
とは届かない主張。でも坂本くんも苦笑して、それは自分だって同じだと言った。
俺は猫が苦手になった。
惧れにも似たこの感情を、人は笑うだろうか。
鈴木家の事件
俺の住んでいるマンションの近所に、鈴木さんというお宅がある。広い家に小さな豆芝を飼うご家族だ。両親、祖父母、3人の息子と1人娘と五十川さんからなる大家族。絵に描いたような円満さを披露するこの家にも、それなりに事情はあるらしいが。というのは次男の和馬と仲のいい俺が、実際に語られた話。
同居中の祖父母は父方で、4人の孫と豆芝を溺愛している。特に、一日中家で過ごすことが常だという祖父は、今や犬と一緒に縁側で昼寝するのが趣味らしい。共働きの両親に代わって家事のすべてを担う末の妹は、兄よりもレベルの高い男としか結婚しない。と4年も付き合った彼氏からのプロポーズを断ってしまった。レベルが高いと評される長男は実際に群を抜くイケメンで、脳外科のやり手なお医者様である。ここで忘れず紹介しておかなければならないのが五十川さん。そのイケメン長男の超絶美人な婚約者。まだ結婚もしていないのに家族と同居しているのは不思議な話。この2人、世間一般とは逆パターン。結婚までは無駄な出費を抑える作戦らしく、晴れて式まで漕ぎつけた暁には出て行くのだそうだ。ただの公務員である次男は、頭のいいヤツの考えることは分からない。と呆れ気味に言っていた。最後に登場していなかった三男坊だが・・・・・28歳自宅内一人暮らし中。本人の名誉のために断言しておくが、引きこもりではない。母屋に住み、ネットビジネスを順風満帆運営しながら立派に生計を立て、友人もそれなりにいる。ただ、自分にとって一番の理解者が愛猫だと思い込んでいる偏屈さがあるだけ。という日本で最も多い名字の日本でも屈指の変わり者家族が鈴木家。
最近、三男坊が大切にしてやまない猫が行方不明らしい。見かけたらよろしく。ということで特徴を教えてもらったんだけど、えーと、どうしてくれよう。たぶん、というよりもう絶対、長野くんの家にいる猫だ。俺、勝手に板挟み状態。猫っていうのは気まぐれな生き物らしく、本当の飼い主にとても懐いているようだが、今はすごく長野くんに懐いているのだ。分かってる。あの猫が本来いるべき場所に戻れば、長野くんの傍は空く。けれど、そうなってあの人は本当に俺たちの方を向くだろうか。卑怯でも、猫の意思に任せた方が当たり障りがない気がする。
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