V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.357
2010/02/19 (Fri) 18:38:02
中編の最終回を更新です。
中編というほどの長さじゃないのでは?
というつっこみは取り下げて頂けると幸いです(オイ!)
本当はもう少し早く更新できる予定だったのに、
なんだかサーバー障害に巻き込まれて足止めを食らいました。
今後のこと、考えた方がいいのかな?
それはさておき!いや、ワイドショー先行ですか。
嬉しかったですけど。
スポーツ新聞も買いましたけど。
FCの振込用紙、早く届いてもらわないと時間がない(汗)
出演 : V6
Delimitation
マネージャーが今年のコンサートの話を俺のところに持ってきた。どうも坂本くんに対して警戒心が芽生えちゃったらしい。こんな時にもちゃんとコンサートのスケジュールは入ってくるからスゴイよね。これは優秀なマネージャーの手回しのおかげだけど。V6を仕切ってまとめるはずのお2人さんの様子がおかしいってこと、社長はもちろん事務所スタッフにも内緒にしてくれてる。お気遣いに感謝。そしてその好意に応えるのは、今回ばかりは俺の役目。今までずっと坂本くんの近くでコンサートが完成に向かって作り上げられていく経緯を何十回も見て来てる。15周年の特別なものを絶対に作らなきゃなんだよ。最近、いつにも増してテンションを上げまくってるから、カミセンからのウザがられ指数は急上昇中。孤軍奮闘、頼れるのは自分だけ。かなり不安だけどさ、がんばっちゃう。記念の年だから、みんなで作りたかったっていう本音は、誰にも悟らせたりしない。V6を前進させ続けるんだ。大丈夫。思いに勝るものなんてない。強く願えばきっと叶う。俺たちがデビューできたのと同じように。
笑って騒いで仕事してコンサートのこと考えて、ツレとの遊びも忘れず実行。とか、俺過労死するかも。若い頃は徹夜なんて全然平気でしょ?遊びは別腹じゃん。って思ってた。でも、30過ぎたらさすがに身体が悲鳴を上げたりする。メンバーの前では通常営業を装いつつ、他の仕事の時には移動時間も待ち時間もカツカツに仮眠に充てることにしてた。タイト過ぎる毎日のせいで、当たり前のことに気が回らなかったんだ。俺がちょーやられちゃってるっていう業務連絡が、坂本くんに回っちゃいました。太一くんから。かなり参ってるみたいだから、気をつけてあげてほしい。っていうメールでの注意喚起。俺情報を山ほど持ってる太一くんとマネージャーに坂本くんは速攻で事情聴取して、本日、収録後の楽屋で差し向かえ。確かに一人で突っ走っていたことは悪い。その件に関しては謝罪します。けどさ、だったらアンタはどうなのよ?1ミリも余裕なかったよね?うかうかしてる間にV6が悪い方向へ流されてっちゃったらイヤだから必死でがんばったのに、頭ごなしに説教なんて割に合わない。努力をほんのちょっと誉めてくれたってさ、ねぇ。
「今のお前、見てると昔の自分を見てるみたいでイライラする。」
「昔の坂本くんみたく、あからさまにテンパってないし。」
「そうだ。だから俺は気付けなかった。」
「でも別に、仕事に支障は来してないもん。」
「・・・・・・・お前、井ノ原、ほんとバカ。」
バカとかなくない!?って反論しようとしたのを、慌てて飲み込んだ。痛々しい泣き笑いの表情を浮かべた坂本くんにぎゅっと、手を握られたから。声がクリアに聞こえる。ごめん。とありがとう。と、メンバーをもっと頼っていいとか、けどよくがんばったとか、これからはみんなでコンサートのことを考えていきたいとか、いろいろ。すごく近くてあたたかい、大好きな声。気持ちは頑丈に武装していたつもりなのに、あっさりほどけていく。いつも待ってたんだ。こんな風に坂本くんが戻ってきてくれるのを。それが叶ったわけだからもう、なんていうか、ウワーって、泣けた。本当はずっと言いたかったコト。やっぱりみんな一緒にコンサートを作り上げたい。そう素直に、やっと言うことができた。「うん、作ろうな。」って坂本くんが頭をなでてくれるから、「大好きーっ!」って絶叫しながら抱きついてみる。同時のタイミングでドアが開いた。事情を知らない剛と健が苦笑いで登場。この際、からかわれるんだろうなぁ。という覚悟は必要ない。断然嬉しさの方が勝ってるから。さあ、どっからでもご自由にどうぞ。
「なんだ、一件落着したの?」
あれ、健のセリフ、おかしくない?
「よかったじゃん。」
ついでに剛のセリフも。
「俺らもそうだけど、岡田も心配してたんだからね。」
スゴイなー。坂本くんより先に察知するなんて。カミセン、侮り難し。
「じゃあ、あとは長野だな。」
独りの毎日がようやく終わった。6人が揃える日も近いんじゃないかなとか、安直にも俺は考えている。みんながいれば取り戻せそうじゃない?とか、希望的観測ばかりをこの瞬間の俺は弾き出していたんだ。
朝
明け方4時前に、とんでもない恐怖電話で叩き起こされた。低音で抑揚のない坂本くんの声が、俺に大至急で長野くんの家に来るようにとせっつく。考えるまでもない。何か良くないことが発生したんだろう。行きたくない。という言葉が出かかったのを必死に抑えつつ、気力で「分かった。」とだけ答えた。外は真っ暗。俺の胸の中は真っ黒。着替えようとして開けたクローゼットを見て思う。もしもここに青い猫型ロボットが寝こけていたら、何か道具を出して助けてよ!なんて泣きつけるのに。いい年した大人がバカじゃねぇの?とか笑われるかもだけど、それくらい、追い込まれた心境でいるんだよ。
陰鬱としたリビングに坂本くんと長野くん。ねこはいない。いつも絶対、長野くんのそばにまとわり着いていたのに。今確認できるのは、どこか散らかった感の残る部屋と、重苦しい沈黙。誰が最初に口火を切るのか。俺は縋るような目を坂本くんに向けたけど、意外にもスタートの合図を発したのは長野くん。いつも以上にかすれた声で、呟いた。
「あの子がいないんだ。」
スゲー凹む。どうしてイヤな予感の的中率はこんなにも高いんだろう。ねこは気まぐれでおなじみの動物。ふらりといなくなることも多い。でも、だったら、長野くんの心は持っていく必要なくない?自分勝手ならそれでもいいよ。ただせめて自己完結してくれてたら、こんなことにはなってなかった。
「俺のこと、嫌いになったのかなぁ。」
そういう問題じゃないと思う。と言おうとして長野くんの方を見るなり、世界で最も恐ろしいホラーを目の当たりにしたような感覚に襲われた。笑ってる。しかもチョーおだやかに。
よみがえる記憶は最悪のシチュエーション。酷似してる。何を言っても「よっちゃん、ごめんね。」の一点張りで事務所を去っていったときに見た表情。もう過去だと決別して久しかった悪夢。
「ねぇ、もしかしてドッキリ?2人して俺のことハメようとしてる?だったら早くあの子を返して。じゃないと、許さないよ?」
本気の目。メンバーから疑念を持たれる日が来るとか、しかもそれが長野くんとか、あまりに予想外で否定するパワーを根こそぎ奪われた。思考がもう、おぼつかない。
「俺たちはそんなことしねぇよ。」
絞り出すようなやっとの返答を坂本くんが提示すれば、「そう、よかった。」と長野くんはサラリと言うだけ。グルグルと思考が変形を始めた。ここにいるこの人は誰?長野くんにずいぶん似てるな。まさか親戚の人だったりして。そうだ、どうして気付けなかったんだろう。
「これ以上話しても埒が明かない。帰るぞ、井ノ原。」
「あの、よかったらその子を探すの手伝いましょうか?」
「井ノ原、お前何言って・・・・・」
「きっと1人より2人で探したほうが見つかりやすいですよ。」
「そうかな?」
「そうに決まってます!だから、一緒に探しましょ?」
坂本くんが憤りをあふれさせてる。俺が突如敬語を使ったことに、長野くんは突っ込まない。違うよ、違うんだ。この男の人はよく似てるけど、V6の長野博じゃない。世の中には瓜2つの人が3人いる説に当てはまる珍しい人なだけ。それなら合点はいく。俺たちよりねこに夢中なんだってのも納得だ。どうかしてた。そんな初歩的な見落としをするとかさ。
「どんな子なんですか?写真とかあります?」
「今朝撮ったのがケータイに入ってるよ。すごくかわいかったんだ。」
嬉しそうに見せてくれたそれに、とっさの称賛を失う。明るい紫色のリボンを首に飾った澄まし顔の黒ねこ。誉めなくちゃ。ホントだ、かわいいですね。って同意してあげなくちゃ。脳が送り続けるシグナルを、全神経が拒否してる。どうして苦しい?何をイヤだと・・・・・
「・・・・・っ」
二日酔いでも食当たりでもないのに痛烈な吐き気がこみ上げて来て、俺は部屋を飛び出した。オカシイ。いろいろいっぱいオカシイ。
そのまま廊下にうずくまってしまった俺を追いかけてくれた足音は、
「大丈夫か?」
安心する手のひら、いたわる声。坂本くんだ。
「ねこ、探さなきゃ。」
紫のリボンが目印のねこ。それから、
「それから、ホンモノの長野くんも。」
長野くんだと期待してた人が別人だったってことは、ホンモノがどこかにいるはず。探して、また一緒にV6をやるんだ。コンサートのリハーサルが始まるまでには探さないとだよね。
「長野にホンモノもニセモノもない。あの部屋で見たことがまさに真実なんだぞ。」
「違うよ。」
「そうなんだ。」
「全然違ったじゃん。あの男の人は長野くんじゃない。」
「長野だよ。」
「違うもん!あの人はソックリさんだもん!」
俺の声が廊下中に響き渡った、早朝から近所迷惑なことしてすいません。なにぶん、坂本くんが聞きわけないものですから、つい。
「俺たちの大好きな長野くんは別にいる。だから探しに行こう?坂本くん。」
どうして泣くの?芸能人でアイドルなんだから、きっとすぐに見つかる。すぐに6人に戻って、今年もファンのみんなに最高のライブを届けなきゃ。それまで涙はお取り置きしとけばいい。感動の再会の時のために、たくさんたくさん取っておくんだ。
「早く長野くんが見つかるといいね。」
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