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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/04 (Sat) 16:05:51

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No.154
2008/01/26 (Sat) 20:42:35

Live Show 第21話です。

そういえば今日は、SP最終回なんですね。


出演 : 井ノ原 快彦 ・ 坂本 昌行 ・ 長野 博
      三宅 健 ・ 岡田 准一







 大きな2つの背中が前に見えている限り、どこか安心できた。限りないパワーを発してやまない3つの笑顔がそばにある限り、なんとなく大丈夫なんだと信じていられた。慢心だ。12年も一緒にいたせいで、油断した。メンバーだからといって依存していい理由にはならないのに。抱えきれない重たい荷物を持つことを、手伝ってもらうことは絶対にしない。相変わらずバカみたいに優しく気遣ってくれる人に、仇なすなんて最低。1年も付き合ってくれた長野くんや、短い間だったけれど父親をやってくれた坂本くんや、今でもまるで自分のことのように泣き出しそうな表情を浮かべて傍にいる岡田には、してもし尽くせないほどに感謝をしている。でも、これ以上は踏み込ませない。線を引く。これは自分が引き起こした問題で、すべての責任を背負うことは当たり前のことだから。だから終わりだ。

「岡田、捨てずに俺の傍にいてくれて、ありがとな。」

あとは独りで、進むしかない。

「俺のことウザかった?」

「全然。ありがとな。って言ったじゃん。スゲー感謝してる。」

「してるけど、これ以上は関わるなってこと?」

「俺はみんなとV6をやれてよかった。岡田とも一緒に仕事できたしな。坂本くんと長野くんと同じグループでデビューしたいって夢は叶うし、なんかもう、やりたいって願ってたことは達成しました。って感じ?」

「いのっち。」

「このブランコみたいに、いつかなくなるものもあるわけよ。けどさ、それがなくなったからって、すべての人間が惜しんでくれるわけじゃない。」

「やめて、いのっち。」

「6歳の俺が迷惑かけて、ごめん。けどさ、もういいから。」

「よくない。何を言われても、俺は・・・・・」

「悪い子は生きてたらダメなんだってさ。」

「いのっち!」

綺麗な目をしてるんだな、相変わらず。なんて場違いなことを思う。自分なんかのために、目にいっぱい涙をためて、けれど泣き出すのを我慢して、握り締めた手はあんなにも震えて。こんな風に思ってくれる人を目の当たりにすると、気持ちはベクトルを定める。

「本当に、もういいよ。」

そっと頭を撫でて、笑っておいた。岡田は何か言いたいことがもっとたくさんありそうだったけれど、あえて背を向ける。公園を出ようと歩き出したとき、一度だけブランコを振り返った。今そばにいるのは岡田なのに、坂本の声が聞こえた気がして。嫌な幻聴だな。と苦笑する。自分の中に根付いて離れない未練のせいだ。けれどすでに道は分かれた。自分からあえて、道を逸れた。たとえ2度と交わらなくとも、後悔はしないだろう。大好きで大切な人たちから貰った、たくさんの優しさは色褪せることはないから。

 

 今さらまだ、井ノ原のことを救いたいと思っているなんて言っても、嘘くさいことこの上ないだろう。忘れたいと願った。煩わしい日々から、一日でも早く開放されたかったのだ。いっそ何も見なかったことにしてしまえば、もう関わらなくても済むとか。どうせ自分には、井ノ原の深いところにまで踏み込める力なんてないのだと決め付けて。勝手に降りた。それは心の底からの切実な願いだっただろうか。本当にそんな日が来たら、心は安らぐ?井ノ原が目の前から消えて、自分の心の中を掻き乱す存在がなくなれば、幸せだと笑うことができる?もっと違うカタチでいられれば、頑張れた気がしなくもない。例えばV6というグループの括りがなければ、自分にリーダーという肩書きがなければ、ここまですれ違うことはなかったのかもしれない。一度失ってしまった信頼や絆は、取り戻すことがひどく困難。井ノ原はもう、笑って。と望んでも、その癒しの空気を持ったきれいな笑顔は見せてくれない。長野はもう、共に歩いて欲しいと望んでも、隣で肩を並べてはくれない。岡田はきっと顔を合わせるたびに、侮蔑の視線をまっすぐに突き刺してくる。だから嫌なのだ。すべて嫌なのだ。強い願いが必ずしも、正当な姿をしてすべての人に示されるわけではないのだし。だから結論を選んだ。忘れればいい。なかったことにしよう。見えないふりでいれば、何も煩わしいものは降りかかってこない。心を軽く、しがらみなどなく、穏やかで平穏な日々を・・・・・

 初めて作るわけではないムースで、失敗した。料理をしながら、心ここにあらずだった証拠だ。これを型から出して、海老とアボガドを添えれば完成。ワインを開けて、ちょっと豪華で楽しいランチタイムが始まるはずだったのに。盛り付けてテーブルに並べた料理が、急に虚しい存在に見えた。片っ端からキッチンに引き上げる。こんなもので、誤魔化せるはずがない。荒んだ気持ちを隠すことが目的で作る料理なんて、最低の代物。捨ててしまえ。これは料理じゃないのだから、捨てて・・・・・これは、罰だ。責め立てられている。だったら、甘んじて向かい合わなければいけない。思わず床にへたり込んだ。ワインを開けて、料理を床に並べる。自分にはこの程度で充分。辛口のワインは、少し胸に突き刺さるような気がした。

 自転車を押して、のろのろと歩く。井ノ原を追いかけることができなかったのは、ここまで深入りしておきながら、恐くなったからだ。無理矢理に追いかけて、その先に待ち受けている結末を見るのが。井ノ原の捜し求めている宝物さえ見つかれば解決するなんて、浅はかな考えで走り出してしまった自分に呆れる。強くあろうと誓った。誰が見放しても、自分は大好きな人から絶対に目を逸らさないと決めたのに。家が遠い。家が・・・・・

(なんで、ここに来るかな。)

足が自然と自分を運んでいたのは、あの人の住んでいる場所。誰より早く、井ノ原に見切りをつけて背を向けた人。あんな風にはならないと、岡田にはっきりと思わせた人。

(あるいは、そっちの答えのほうが正しかったんかもしれん。)

迷っているはずの気持ちとは裏腹に、インターホンを押している自分がいた。数秒で、向こう側から聞こえる声。さっき話したばかりなのに、酷く懐かしく感じる。

「坂本くん、入れてもろてもええ?」

12年も経ったのに、自分はなんて未熟なのだろう。

 部屋に入れてもらった岡田は、視界に入ったキッチンの様子にポカンと立ち尽くした。散らかった流し台、出しっぱなしの使いさしの食材。床には坂本が座っていたであろう場所を囲むように並んだ、皿や鍋、ワイン。料理が上手なこの人は、キッチンをこんな風に使ったりしない。料理を作りながら、同時に洗い物や片付けもしながら、とてもスマートに一連の流れをやってみせるはずなのに。鍋に突っ込まれたスプーンとフォーク。直接、そこから食べた?

「なにやってたん?坂本くん。」

「ああ、メシ食ってた。岡田も食うか?っつーか、食ってくれたら助かる。作りすぎた。」

元いたであろう場所に座り込むと、坂本は岡田を手招いた。傍らにあったワインをラッパ飲みで煽って、空になった様子のそれを床に転がす。

「お前も、飲むだろ?」

返す言葉が見つからない。嫌なことがあって自棄を起こした人よろしく、坂本は新しくワインを開けてやはり直接ボトルのまま飲み、岡田に差し出した。真正面に突き出されたから受け取ってしまったはいいけれど、このまま飲むのはかなり憚られる。くるりとキッチンを見回して、棚から一つタンブラーを出して、それに注いで飲ませてもらうことにする。坂本の正面より少しずれた場所に座れば、坂本がスプーンとフォークをくれた。スープも、何か煮込み料理も、鍋から直接食べろということらしい。こんな状態の坂本が作った料理とはいかがなものか?と恐る恐るスープを一口飲めば、味はいつも通り、とてもおいしいと呼べるものだ。

「タップナードもうまいぞ。」

「え・・・」

切られていないバゲットを差し出されて、岡田は固まる。

「適当にちぎって、付けて食ってみ。」

タッパーに入ったペースト状の何かを指差されて、ああ、ブルスケッタ的な物か。と気付く。一口サイズにちぎったバゲットに、付けて食べてみれば、確かにおいしい。

「ほんまや、おいしい。」

「だろ?簡単に作れるし、冷蔵庫で保存もできるからな。お前もやってみればいい。」

「ニンニクと、ツナと、コショウ?」

「あとアンチョビとブラックオリーブとケッパーな。レシピ、あとで書いてやるよ。俺は個人的に、好みでブランデーを入れてる。料理のソースにも使えるから、便利なんだ。」

「相変わらず、凝ってんなぁ。」

自分の料理を褒められると、至極嬉しそうに坂本は笑う。その笑顔が、今日はやけに痛々しく見えた。この状況から判断すれば、趣味の料理を心から楽しんだわけではないことは明らか。ふと無造作に流しの横に置かれたカップに気付いて、岡田はそれを手に取った。すると坂本は苦笑して、さっさと回収する。

「これはやめとけ。失敗作だ。」

坂本が、料理で失敗?

「でも坂本くんが作ったんやろ?そんな人外なほどマズくはないんちゃう?」

岡田は坂本の手からカップを取り戻し、スプーンですくって躊躇なく口に運ぶ。これが失敗作なのだろうか?と疑問を抱くほど、味はおいしい。

「硬いだろ?蒸し時間、間違えたんだよ。」

「でも、味はおいしいで。」

「無理すんな。捨てるから、かせ。」

やっぱりいつもと様子が違う。

「いのっちのこと、気に病んでんねやね。優しいなぁ、坂本くん。」

「違う。」

坂本の否定はとても早かった。たった一言「違う。」、それだけの言葉なのに、岡田は背筋が凍りついてしまうのではないかと思った。現実を見るのが恐くて、顔が上げられない。そうだ。確かにこの人は言った。自分はもう、降りたのだと。なのにそれを引き合いに出されて、不快感を露わにしている。気が緩んでしまったせいで口走った言葉を、岡田は激しく後悔する。坂本は井ノ原の手を離したのだから、それははっきりと分かっていたことなのだから。

「なぁ、まだ俺ら、V6なんよね?」

軽率、だった。その質問は、坂本の表情を瞬く間に傷ついたものへと変える。これまでの平穏な日常の中でなら、即答できた質問。「当たり前だ。」と。迷っているのは自分だけではない。堪らなくて泣きそうになるほどに、心の中は嵐の真っ最中なのに。

「ごめん、無神経やった。」

慌てて謝れば、坂本はとても穏やかに、言った。

「俺のせいなんだから、お前は謝んなくていいんだよ。」

ずっとずっと自分たちよりも先を歩いている、大人の人たちだと思っていた。与えられた機会を本物にしようと、いや、本物にできる力を持った大きな人たちだと、思っていた。それは今でも変わっていなくて、きっと都合のいい依存心で甘えていたのだ。何もせずに守られていれば、確実な何かが保障されると。彼らが年齢差という現実を逆手にとって作り上げた壁を、越えようと試みもせずに。楽で卑怯な場所に、いたのだ。なんて、愚かな・・・・・

「ごめんな、頼りないリーダーで。」

「1個、頼みごとしてもええ?」

「何だ?」

「一緒にな、いのっちを連れ戻したいなぁ。って。」

覗き込むように目を見れば、長くて深いため息をつかれた。

「アカン?」

「・・・俺は、そういう役割じゃねぇんだ。ただ逃げてるみたいに聞こえるかもしれないけどさ、俺の役はそれじゃないんだよ。連れ戻すのは、きっと長野の役だ。俺は、さ、いつでも井ノ原が帰ってこれるように、V6って居場所を守り続けるって役で、帰ってきた井ノ原を、変わらず受け入れてやんなきゃなんねぇ。これまでずっと、そうやって三人はバランスを取ってきた。俺はV6を守る。長野は周囲を見渡して、その場に適した行動を選ぶ。井ノ原は、俺たちとお前たちを離れないように繋ぎ止める鎹でいる。これだけは、何十年経っても、変えることのできない絶対のバランスなんだ。だからこそ、井ノ原が欠けた今、V6はガタガタなんだけどな。」

何者とも引き換えにできない、確固たる大きな柱があって、それを拠り所にしていたのだ。初めから何もなくても強い人間などいるわけがない。距離は、勝手に感じていただけで、然程変わらなかった。みんな同じだから、V6は成り立っていた。そんなに簡単なこと。

「連れ戻すよ。俺と、博が。」

「ああ。」

まったく期待していない感たっぷりの、虚ろな返事が返ってきて、坂本の痛みの強さを表すようなそれに岡田は次の言葉を重ねることができなかった。連れ戻すことは絶対。だから本当は、坂本にはV6という帰るべき場所でその腕を目いっぱい広げて、待っていて欲しいと、続けたかったのに。

 

 どこかで見た。井ノ原がこの場所にいるシーンを、自分は絶対に知っている。長野は以前、井ノ原が一人で訪れていた民家に来ている。広い縁側に腰を降ろせば、静かな中に何かが浮かび上がってきそうな気がして、目を閉じてみた。流れる時間、6人が過ごしてきた軌跡。ひとつずつ慎重に思い浮かべては、流して。じっくりと小さなことも見落とさないように。ほんの少しでも井ノ原の憂いを、晴らしてやれたらこの状況は変わるはず。みんな元に戻る。井ノ原も、坂本も、三宅も、みんな帰ってくる。だからこそ、自分は思い出さなければいけない。この場所に関する記憶を引きずり出さなければいけない。

 随分たくさんの出来事を共有しているから、とても長い時間を要した。自分が一緒でない仕事のことなんて、すぐには記憶が蘇らなくて、必死で掘り起こして、ふと引っかかりを憶える。

(この風景。)

目を開けて家の中を振り返る。誰もいなくなって久しいであろう荒れた部屋の中。けれど、確かに同じだと思う。とても田舎で周りを山に囲まれて、近代化へまっしぐらの世界から取り残されたようにあるこの場所は・・・・・間違いない。井ノ原はここに来た。もう昔に分類されるほど前の話になるが、番組のロケで、そう、誰かと一緒に、統廃合で中学校がなくなってしまったから、わざわざバスに乗って待ちの中学校まで通う地元の子達に会うために・・・・・

(健と来たんだ。)

この家にはおじいさんが住んでいた。統廃合された中学校の元校長先生だという人。地元の子供たちに昔の遊びを教えたりして、人気者で。2人ともロケそっちのけの大はしゃぎで遊んで、それに一緒に、参加していたのは・・・・・子供。おじいさんの孫だという小さな子供。親が仕事で忙しいからほとんどここに預けられているという、男の子。確か来年から、小学校に通うと。竹とんぼとメンコが大好きな、あの子は、そう、あの子も「よし」のつく名前だった。おそろいだといって、井ノ原が笑っていた。だって自分で自分のことを「よし」と言って・・・・・じゃあもしかして、あの6歳の井ノ原は、

(あの時の子が重なっているのか?けど、どうして?)

おじいさんは墓があるということは、亡くなってしまったのだろう。それで、残された孫は?そのこと井ノ原の中の6歳の人格にどういう関係がある?イマイチうまく繋がらない。けれど糸口は見つけた。始まりはここだったのだ。

 近所の人に聞けば、分かるかもしれない。この家の人がいつ亡くなったのか。その孫が今はどうしているのか。そして、同時に聞かなければいけない。一緒にロケに来ていた三宅に、何か変わったことはなかったのかと。自分を強く拒んだ三宅ときちんと話をするのは、辛い。また拒絶されたら、そう思うと心が拒否反応を示しそうだ。でも進まなければ、このままでいれば、すべて失ってしまう。何もせずにその時を迎えるなんて御免だ。長野は一度思い出してしまえば呼び起こすことなんて安易な、過去を必死に辿りながら走り出した。まだ残っているはずの、V6であり続けるための光を掴むために。

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