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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/12/29 (Sun) 22:17:04

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No.125
2007/12/15 (Sat) 22:35:07

更新強化月間15日目です。

やっと『way of life』のCDを聞きました。

カップリング、いいですね。








最上階より愛をこめて

 

 社運を賭けた大型プロジェクトが座礁した。原因は、担当した社員が提携を結ぶ予定だった会社との取引の席で、相手方の担当者と諍いを起こしてしまったこと。おかげで会社は莫大な損失を抱える羽目になり、諍いを起こした社員とその上司が、責任を取って辞職。プロジェクトを担当していた部署は、撤廃された。辞職したのは、会社創設当時から苦楽を共にしてきた、いわば社長にとっての大切な同志だった。

「やはり現在の経営状況を維持するには、大幅な支出の削減が必要です。先日お渡ししましたけど、あの計画通りに人員削減を実施すれば、人件費だけで35%のカットが見込めます。これを期に大幅なリストラを実行し、会社の利益を守るのが得策かと思われます。仕事の質と給与に釣り合いの取れない幹部クラスから順に早期退職を募っていき、いずれは社員もスキルレベルによっては、専門知識に長けた派遣社員へとシフトする方針です。賞与は年に2度から1度へ。給与の再度見直し。出張費や必要経費なども実費精算を徹底。全てを修正しなければ解決が見込めないのなら、これも過剰ではありません。社長、この方向で進めてよろしいですね?」

「いいよ。」

「・・・・・本当ですか?」

「坂本くんは会社のことを考えた上で、この計画書を提出したんでしょ?だったらいいじゃない。人事と経理で連携して、徐々に始めてみて。」

「社長、大丈夫ですか?」

「厳しい選択をせざるを得ない状況だよ。」

「ここに越して来て、半年くらいになりますね。」

「だから?」

「まだ、忘れられませんか?」

「坂本くんはそんな事を聞くために、ここへ来たの?」

「違いますけど、でも・・・」

「あのね、坂本くん。少なくとも俺は、あの企画にGOサインを出した責任を取るべきだったはずだ。でも実際には企画を出してくれた若い社員を3人も失った。そう、その3人が所属してた企画2課だってそうだ。俺が・・・」

「違います!全部、全部あなたのせいじゃない。」

「社員の身に起こったことだよ。大企業ならともかく、こんな小さな会社だ。社長の俺はみんなに対して責任があった。」

「小さな会社だって言ったって、社員は90人いるんです。全員の細やかなケアなんて、できないことくらいみんな分かってます。」

「言い訳なんて、みっともないじゃない。」

「社長としての仕事はきちんとしているとはいえ、そうやっていつまでも自責の念に駆られてマイナス思考ばかりで、それこそどうかと思います。」

「坂本くん。」

「はい。」

「絶対に井ノ原って呼んでくれないんだね。」

「社長は社長ですから。」

「しかも敬語だし。」

「当然です。」

「こっち、来てみなよ。やっぱさ、ビルの70階ともなるとさ、チョー景色いいよね。」

「乗り出さないでください。というか、窓は閉めてください。」

「夕焼けがきれいだね。まるで、血の色みたいだよ。」

「何を言ってるんですか。」

「もうすぐ冬が来て、雪が降って、全部を覆い隠す頃には今年も終わり。今年は長い1年だった。よく知ってる人間が次々といなくなって、辛すぎたよ。」

「だからって、あなたはいなくならないでくださいね。」

「・・・・・そうだね。」

「約束してください。いなくならないって。」

「寂しがりやなんだなぁ、坂本くんは。」

「社長、まじめな話をしているんです。」

「そんな怖い顔してないでさ、空、見てごらんよ。」

「計画案に判子をお願いします。」

「いいよ。井ノ原って呼んでくれたら、押してあげる。」

「社長。」

「夕焼けは何でも、オレンジに染めるんだね。」

「それが何か?」

「いや、まぶしいなぁと思ってさ。」

「酷くお疲れになっているようですね。しばらく、仕事をお休みされてはいかがですか?」

「社長なのに?坂本くんが代わりに仕事してくれるの?」

「そうじゃなくて。」

「思い切って、会社、畳んじゃう?」

「最悪はそれも、アリだと思います。」

「極論だけどね。」

「だって限界でしょう?このまま続けていくには、失ったものが多くて、大きすぎます。それに何よりも、俺は傷を隠すためにこんなところに引っ込んでるあなたを見てられないんです。だったら社長なんて辞めて、あなたはもっと自分に優しくなるべきだ。」

「そんなことしたら堕落して、だたのダメ人間になる。」

「ダメじゃない。救われるために選ぶだけです。」

「堕落を?そんなことできないよ。」

「社長っ!」

「さっきのリストラ案だけど、早急に始めてくれる?最終決算までには赤字、帳消しにしないとだし。ああ、判子を押さないと。」

「・・・・・あなたには、俺の声は届かないんですね。」

「せめて30人は従業員をカットする方向で。」

「・・・分かりました。リストラ案が完成したら、メールで送ります。」

「よろしく。」

自分の知っている井ノ原はもういないのだと、改めて坂本は思う。井ノ原快彦は、夕焼けのオレンジに溶かされて、空に消えてしまったのかもしれない。

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