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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/05 (Sun) 04:55:29

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No.92
2007/11/08 (Thu) 08:34:07

間にvoyagerが入ってしまいましたが、やっと3話更新です。


少し、話は動きます。


出演 : 井ノ原快彦 ・ 坂本昌行 ・ 長野博 ・ 岡田准一








 テレビ局の廊下で、ダイエット話に花を咲かせるグラビアアイドルの集団とすれ違った。坂本は思う。1週間ほど6歳児と一緒に暮らしたら、食事制限せずとも痩せられる。と。

 6歳の井ノ原は、案外頻繁に出てくる。極力長野に押し付けて・・・基、預けていたのだが、坂本が井ノ原の扱いに大苦戦するお父さんの風を呈している様子を楽しんでいて、長野は井ノ原と一緒にいるシチュエーションを作るようになってきたのだ。突飛な行動も多い。とは聞いていたが、その突飛さが想像を軽く飛び越え、一緒にいる時間、つまり仕事以外の時間に、まったく心も体も休まらない。例えば、昼のメロドラマで見たらしく、通りすがりの年の差カップルに「おくさんとわかれたの?いさんは?」と話しかけたり、海外の某国でやしの木を昇り降りする現地の人のテレビ見た次の日には、銭湯の煙突に登って滑り降りようとしたり。店の中では静かにしているという約束でコンビニに行けば、偶然流れていたコスモレンジャーの曲を聞き、慌てて店の前に飛び出し、大声で歌いながら見ず知らずの酔っ払い相手に戦っていたり。

 子供と大人では視点も感性もまったく違うが、坂本から見れば、これは奇行の域なのである。長野がどうやって井ノ原とうまく過ごしていたのかを、借りたノートから探ろうとするが、最初は分析的なまじめなことが書いてあったはずが、いつの間にやら井ノ原と過ごした楽しい日々の日記に変化。使えそうで使えない。疲れを残したまま仕事に行くなんて納得がいかない。が、疲労は蓄積されても解消されることがなく、逆に大人でも子供でも変わらず元気いっぱいな井ノ原を恨めしく思った。

 楽屋に着くなりソファに横になってしまった坂本。事情を分かっている長野は、ご機嫌を損ねると手に負えないと思い、そっとしておこうと、静かに雑誌を読み始めた。今でこそその扱いにも慣れたものだが、自分だって6歳の井ノ原と遭遇したばかりの頃には、毎日が大混乱で、ひとたび井ノ原が自由気ままに行動を始めれば、運動会よろしく走り回ったものだ。行動は6歳児、体が大人なものだから、手のかかり具合も半端ではない。

「お疲れさま、おとーさん。」

眉間に深く皺を寄せて、難しい表情で寝息を立てる坂本に、長野は苦笑しながら小さく声をかけた。昨夜の井ノ原は通常営業で、まっすぐ家に帰ったと聞いている。けれどそんな日に限って、仕事終わりで友人に飲みに連れ回されたようだ。根っからの苦労性だな、この人。そんなことを思いながら、長野はそっと上着をかけた。

 楽屋のドアを開けて、挨拶をしようと思った口を慌ててつぐむ。ソファで難しそうな表情を浮かべて寝入っている坂本が視界に入ったからだった。

「おはよう。」

そう小声で長野に挨拶をすると、コーヒーでも飲んでこよう。と、岡田は荷物を置いて楽屋を出た。何かとお疲れのリーダーの安眠を妨害する理由はない。

 楽屋を出るなり鉢合わせた、打って変わってこちらは元気いっぱいの井ノ原と連れ立って、岡田は自販機の前でコーヒーを飲んでいる。珍しく、井ノ原はココアを購入。岡田にそのことを聞かれると、「何となく?やっぱり飲み物といったらこれ。って思った気がしたから。」と、酷く曖昧な答えをくれた。元気いっぱいの種類がいつもと違う。そう感じて、岡田は井ノ原を観察する。初めは立って飲んでいたのに、いつの間にか廊下にぺたりと座り込み、まるで子供のように両手で缶を持っていた。岡田が隣に腰を降ろすと、おもむろに井ノ原が口を開く。

「なぁ、ティツァーノ・ヴェチェッリオって知ってる?」

急に聞かれて思考を巡らせる岡田。どこかで聞いたことがあるその言葉をしばらく探って、見つかった答え。それは、もし当たっていたとしたらあまりにも唐突で、

「聖母被昇天の?」

「さすが准ちゃん。偉いねぇ。」

けれど、そう言っただけで、井ノ原は黙り込んでしまった。答えはしたものの、詳しくは知らない。何かの本で見かけた気がする。くらいの薄っぺらい知識だ。井ノ原が西洋の絵画に興味があるなんて初耳で、少し面食らってしまった。そして今度は、岡田が聞いた。

「いのっち、好きなん?」

「んー、違くないけど違うかな。」

答えた井ノ原は笑っていた。乾いた風に、どこか意味深に。

 そのあとは会話が一切登場せず、普段は話題満載の井ノ原にしては珍しいな。と感じる。結局は「そろそろ戻ろっか。」と、井ノ原が発した言葉はそれだけ。たまにはこんな気分の日もあるんだろう。と結論付けていた岡田が、井ノ原に対して違和感を感じたのはその瞬間だった。先に立ち上がった井ノ原の背中が、とても小さく、儚く見えたのだ。それについて声をかけるべきか迷っていたが、そこは触れてはいけない部分のような気がして、その場では言葉を飲み込んでおいた。井ノ原は、心に何かを抱えていても、それを吐き出すのがとても下手。そのくせ誰かから指摘されると頑なに隠して、最後には自爆してしまうことが多い。折を見計らって、聞いてみなければいけないのかもしれない。岡田はぼんやりと、井ノ原の背中をしばらく見送っていた。

 

 楽屋に戻ると、相変わらずそこには坂本と長野しかいなくて、岡田はチャンスだと思った。トニセンで一緒にいることが多い長野ならば、何か知っているかもしれない。

「博さ、ティツァーノ・ヴェチェッリオって知っとる?」

岡田の唐突な質問に一瞬だけポカンとした長野だったが、すぐに笑みを浮かべて逆に聞き返してくる。

「何それ?新しいレストラン?」

自分のことは何でも長野に話すような無防備な井ノ原でもないとは分かっていたが、長野にも話していないようなことを自分に聞いてきたことに、岡田は少し驚いた。

「ヴェネチアの画家やねんけど、知らん?」

「知らないなぁ。っていうか、相変わらず岡田は、いろんな知識を仕入れてるね。その画家がどうかした?」

「いのっちから、知ってる?って聞かれた。」

思いもよらない答えだったのか、数回ぱちくりと瞬きをして、長野はすぐに少しだけ硬いと感じさせる笑顔で、何の脈絡なのか理解し難いセリフを呟いた。

「ありがと、岡田。」

何について「ありがとう?」とは思ったが、長野から放たれる詮索するなオーラに気後れしてしまい、それ以上は何も聞かないほうが懸命だという結論に達した。元々、トニセンの3人は3人だけの世界観を背負っていて、深くは入り込ませてもらえないような風である。余計な詮索をする理由もないし、さっき、井ノ原の様子が少し違ったとも思ったが、きっと3人でいつの間にか解決してしまうのだろうと、それ以上話をすることは止めた。

 井ノ原が、西洋の絵画に興味があるなんて初耳である。しかし、ただ趣味として興味を抱いたわけではないはず。もしもそうなのだとしたら、メンバーにそれについて語ったり、自分の日記に書いたりと、もう周知の事実化してしまうほど話しているはずだからだ。岡田に話したのはどうしてなのか知らないが、余計な心配事を増やしてくれたのは確か。妙に勘がよかったり、ときどき名探偵並に頭が回ったりする岡田が、それがきっかけで井ノ原の異変に気付いてしまわないとは言い切れない。長野は考える。その画家の何かが、今回の件に何か関係があるのかもしれないと。調べてみる価値はある。本当に何かがあったとして、それならばなおさら、井ノ原はメンバーに隠し通すだろう。人のことには心配して、力を貸すとすぐに言い出すのに、自分のことは誰にも干渉させないのだから。さしあたってできることがあるなら、その画家についての情報を集めることと、お父さんにリサーチすること。そのお父さんはといえば、未だ起きる気配を見せず、がっつりと寝入ってしまっている。休み明けなのに疲れをしっかりと溜め込んでいる坂本と、急に西洋の画家の話題を岡田に振った井ノ原。何かが動いている。これ以上ややこしいことにならなければいいが。長野が切に思っていることは、そればかりだった。

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非公開
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