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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/12 (Sun) 04:30:08

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No.98
2007/11/29 (Thu) 23:32:44

第7話になりました。

今回は本当に暗いです。

というか、とんでもない展開になってしまいました。



出演 : 井ノ原快彦 ・ 岡田准一 ・ 長野博 ・ 坂本昌行

 今日のロケが滞りまくりだったのは、井ノ原のせいだ。岡田は移動車の中で、一日のロケを振り返る。2組のゲストと、井ノ原を含めたV6のメンバーが3人のオールロケ番組。番組の中心は紹介する料理や店なのだが、それを生かすも殺すも、井ノ原のMCの采配にかかっているといっても過言ではない。メンバーもゲストも、料理を食べてコメントをするだけで、特に進行に関わるようなことはなく、井ノ原が場を仕切り、進行をする。それはとても大変なことで、けれどいつだってきちんとこなしていて、誰もが任せておいても大丈夫だと思っていた。ところが、今日のロケはといえば、セリフをとちる、店の名前を間違える。ゲストの名前を間違える。突然真っ白になって、進行が止まる。果てにはロケ車のドアに激突し、しっかりと瘤をこしらえて最後の結果発表を撮る羽目になってしまった。ゲストは番組に何度か出演してくれたことのある人だったから、そんな状況にもいやな顔ひとつせずいてくれて、逆に井ノ原のことを心配までしてくれた。なんというお粗末さだろう。こんなものは仕事でもなんでもない。顔に怪我をして現れた時点で岡田は、何かあったのだろうとは感じていた。が、井ノ原は普段から、メンバーの誰よりもプロ意識が強く、自分に厳しい。そんな人が、こんな容易なミスを連発するだろうか?もしかして具合が悪かったのか。いや、いつもなら体調が悪くても、それを最後まで隠し通して仕事をやってのけるような人。スタッフや共演者にそれを悟らせないことには長けている。だったらどうして、こんなことに?やはり何かあったのだと考えるのが妥当。何日か前のスタジオ収録のとき、岡田にぶつけてきた妙な質問。そもそも、あの時からおかしかったのだ。こんな体たらくぶりを見せられるくらいなら、もう少し掘り下げて話をしておくべきだったのかもしれない。岡田は頭の中で井ノ原の変化を改めて検証する。検証されている本人はといえば、さっきから一言も話すことなく、じっと今日の台本を見つめて眉間に皺を寄せている。自分でもおかしいと気付いているのだ。今日のロケが最悪だったことに腹を立てて、必死で反省でもしているに違いない。自分が同じ立場だったとしたら、井ノ原はどんな言葉をかけてくれていただろう。岡田はその姿を捉え、頭の中で話の切り出し方を考える。時々聞こえる舌打ちは、井ノ原が自分自身を激しく責め立てている証拠だ。話をしたい。こんな時は一人でぐるぐると考え込んでも、迷路のように思考がいっそう複雑に絡まって、気分が陰鬱とした方向へいくだけだから。けれど岡田は迷っていた、今日の井ノ原を責めるのか、フォローするのか、どちらのスタンスを取るべきなのかと。

「ごめんな、岡田。」

ボソリと、先に言葉を発したのは井ノ原。

「もうええよ。」

泣いているのか?と思ってしまうほどに弱々しく謝られて、岡田はそう答えることしかできなかった。こんなときに一緒に、坂本や長野がいてくれたら・・・

「今日のロケ、一緒のメンバーが健と岡田でよかった。」

思いもよらなかった言葉。井ノ原が派手にグダグダっぷりを披露してくれたのはもちろんだが、それに輪をかけてグダグダになったのは、MCをフォローできるようなメンバーがいなかったことにも原因はある。何が良かったのかの意味が分からない。

「どっちかっていえばさ、2人って癒し系とか和み系に入るじゃん?あ、もちろん俺の中でね。多分坂本くんとか長野くんだったら、ちゃんとしなきゃって焦って、余計にテンパってたと思うんだ。剛でもそうかもしれない。逆にだから、ちゃんと立て直せはしなかったけど、悪循環に向かって深みに嵌っていくことはなかったのかなぁ。って。」

井ノ原の作った笑顔が痛い。ただ、この雰囲気を少しでも軽いものにして、岡田を気遣って、などと考えての言葉と表情だろう。

「いのっち、この間からおかしいことない?ホラ、急にティツィアーノ・ヴェチェリオって知ってる?って聞いてきた日から。その次の収録のときも、すごい雨やのに窓開けたり。何かあった?プライベートでトラブルに巻き込まれたとか。」

あえて、ストレートに切り出してみた。井ノ原は自分が何か困っていても、とことん隠すに決まっているから。強引にこちらが引っ張り出さなければ、知りえないままだから。

「ティツィアーノ・ヴェチェリオの絵ってさ、なんかコントラストが悲哀を醸し出す感じやねんね。『洗礼者ヨハネの首をもつサロメ』いう作品、サロメはごっつあどけない女の子みたいな顔しとんのに、着てる服が真っ赤やねん。でも、持ってるヨハネの首はくすんだ感じ。なんかサロメって人が毒々しく見える。色彩の錬金術師って呼ばれてるの、なんとなしに分かる気がする。この間言った『聖母被昇天』かって、ホンマはすごく幻想的な光景のはずやのに、陰影をくっきり出してるから、ごっつリアルに見える。まるでその風景を、実際に自分の目で見て切り取ってきたみたいに。ルーベンスが影響受けるんも、なるほどな。って感じや。」

井ノ原がもちろんティツィアーノ・ヴェチェリオについてよく知っていると判断した上で切り出された話は、予想とは真逆に、聞いていた井ノ原にぽかんとした表情を作らせていた。

「岡田ってさ、色んなことに詳しいんだな。」

「や、でも始めは、いのっちから聞いてきたんやん。」

「そうなんだけどさぁ、なんか知らない言葉がいっぱい出てきた。ルーベンスとか、洗礼者ヨハネがどうとか。」

「いやいや、ルーベンスは有名やん。フランダースの犬やん。」

「作者?そんな名前だっけ?」

「違うって。最後、有名なアントワープ大聖堂のシーン。『キリストの昇架』と『キリストの降架』と『聖母被昇天』の作者や。知ってるやろ?」

「ああ!そうなんだー。へぇー。あれって実在するんだー。」

本当に知らなかったリアクションを見せる井ノ原に、岡田は苦笑して質問を重ねてみる。

「じゃあさ、なんで俺に聞いたん?てっきり、いのっちが西洋の絵画に興味が湧いたんかなぁって思とったんやけど。」

「うーん・・・なんで聞いたんだろう?」

まるで他人行儀な回答。聞いた以上は、絶対に何か理由があるはずだ。その真意を探るべく井ノ原の表情をじっと観察していた岡田の視線に気付いて、井ノ原は言った。この話は、これで終わりにしようという意味がこもっているような口調で。

「思い出したらさ、また聞くから。」

 

 深夜の電話は好きではない。何か緊急の用件であることが多いからだ。それがトラブルの類であれば、当然ながら肝を冷やすなんてこともある。それは時間が深ければ深いほど、いやな予感を駆り立てるわけで、坂本はできれば、深夜は携帯電話の電源を切って寝たいくらいだとも思っていた。夜中にたたき起こされてまで、嫌な報せは聞きたくない。そんな気持ちを足蹴にするかのように、深夜2時過ぎ、容赦ない着信音に睡眠を妨害された。

『着信 長野』

すぐに思い当たる。きっと井ノ原のことだ。岡田から今日のロケの話を聞いたのだろう。どうしてこんなにも、メンバーは揃いも揃って井ノ原に甘いのだろうか。

「はい。」

寝起きの声で、ぼんやりと働かない頭のまま電話に出る。しかし睡魔など、長野の次の言葉で一瞬にして払拭されてしまうことになった。

―坂本くん!どうしよう!井ノ原が死んじゃう!

深夜の電話は好きではない。何か緊急の用件であることが多いからだ。例えばこんな、メンバーに関する悪い緊急事態だったりするからだ。

 動揺がMAXの状態の長野の電話を、宥めて賺して坂本は必死で理解に努めた。話はまとまりがなく、結局は聞いた自分が整理してまとめるしかなかったのだが、要約するとこうなる。

 ロケ終わりで、井ノ原は長野に一緒にご飯を食べようと電話をしてきた。長野はもちろん外で食べると思い、店を選ぶためにリクエストを聞く。すると井ノ原は、何を悪びれるでなく、長野の家で食べる。そのために買出しもして、もうすぐマンションに到着するからと言った。断る理由もなかったので長野が待っていると伝えると、井ノ原は本当に近くまで来ていたらしく、5分とかからずにやって来た。久々に振舞われた井ノ原の料理に満足し、井ノ原は勝手に買ってきたビールを延々と飲み、こんな突然な行動をするには何か話したいことがあるはずだと長野が話を聞こうと思えば、テーブルに肘を着いて舟を漕いでいる始末。仕方なしに後片付けをしていると、リビングから長野にかけられた言葉は、

「ながのくん、よしのどがかわいた。」

6歳の井ノ原から発せられたものだった。もうそんな状況には慣れっこだった長野は、井ノ原にはちみつの入ったホットミルクを作ってやると、それを飲みながら、その場で寝てしまった。以上が、夜9時過ぎまでに起こった出来事。

 リビングで物音がして、長野は不意に目が覚めた。時計は深夜1時前。見れば、同じ部屋で寝ていたはずの井ノ原の姿はない。トイレに起きたのかもしれない。そう思って廊下に出ても、トイレは真っ暗。6歳の子が電気もつけずにトイレに行くだろうか?そんなことを思っていると、キッチンから明かりが漏れていることに気付く。のどが渇いたから、自分で何か飲もうとしたんだな。長野がそっとキッチンを覗けば、そこには・・・

「よっちゃん?」

出した覚えのないダンボールの箱。

「よっちゃん、いるの?」

キッチンをスルーしてリビングの電気をつけると、一番に目に飛び込んできたのは横たわる井ノ原の姿。どこをどう捕らえても、そこで寝ている様子ではない。

「よっちゃん!」

慌てて駆け寄ってみれば、井ノ原のそばに転がっていたのは、空になった醤油のペットボトル2本。ぐったりとした風な井ノ原の口端からは、醤油が線のようになって流れている。飲んだのだ。醤油は一般的にどこのご家庭にでもあるおなじみの調味料だが、大量に摂取すれば、塩分の血中濃度が急激に上がり、死に至ることもある。微妙に痙攣する身体をそっと抱きかかえ、必死に考える。吐かせるべきだろうか?いや、この際、世間体なんて気にしていられない。救急車を呼ぶべきだ。長野は動揺して覚束ない手つきで救急車を呼び、これからどうすべきかを考えながら着替えて、財布と携帯だけを持って、井ノ原に上着を着せて、駆けつけた救急車に飛び乗った。

 坂本の携帯に電話がかかってきたのは、病院に到着してからのことだったようで、井ノ原はすでに嘔吐を繰り返し、発熱、口渇、肺水腫といった症状を引き起こし、危険な状態に陥っているらしく、そこで出た第一声だから「井ノ原が死んじゃう!」だったのだろう。病院に坂本が到着した頃には長野は涙で顔をぐしゃぐしゃにして、廊下のいすにぼんやりと座っていた。こんな状態の人間に大声で事情説明を求めても、混乱に輪がかかるだけだ。坂本は静かに隣に座ると、今、どうなっているのかを知りたいというはやる気持ちを抑えて、そっと名前を呼ぶ。

「長野。」

小刻みに震える手を握れば、長野はゆっくりと口を開いた。

「どうしよう。まさか飲むなんて、思わなかったんだ。昨日届いたばっかりで、箱を開けて、キッチンの隅に置いてた。2本全部飲んでたから、1.3リットルは飲んでる。どうして、こんなことでよっちゃんが、ねぇ、どうしよう。よっちゃんが死んじゃったらどうしよう。」

「落ち着け。どうなんだ?危険な状態だって、医者が言ったのか?」

「うん。肺水腫っていうのになってて、危ないって。できるだけのことはするって言ってた。東北の郷土料理屋さんの店長と、仲良しになって、箱で送ってくれたんだ。おいしい醤油を見つけたから、俺にも使ってみてって。こんなことを、導くためのものじゃないよ。2本も飲み切るの、すごく苦しかったと思う。きっと気を失ったから、そこで止まったんだ。なんで飲んだの?たくさん飲んだら、死ぬって知ってたの?ねぇ、なんでよっちゃんはっ・・・・・」

「勝手な憶測で、自分の不安を煽るな。今は、医者が井ノ原を助けてくれるように祈るしかないだろう。醤油を誰かが飲むかもしれないなんて危機感、普通なら誰も持たないさ。お前は何も悪くないんだから、落ち着け。」

平静を繕うことに、必死だった。ここで2人して動揺して騒ぎを大きくしたところで、井ノ原の症状が良くなることはない。井ノ原がこんなになってしまって、この上長野までがどうにかなってしまったら、もう確実に手に負えなくなる。坂本がそうっと頭を撫でてやると、ふいに立ち上がって、ぽつりと長野が呟いた。

「電話、しなきゃ。まだ、坂本くんにしか、言ってないから。」

当然マネージャーに、知らせなきゃいけないな。思って、坂本はその意見を訂正。下手に知らせれば、事務所に話が及ぶ。カミセンのメンバーの知るところにもなる。その前に整理しておかなければいけない、たくさんのことがあるような気がして。

「もう少し井ノ原の状態がはっきりしたら、俺が電話する。」

「でも・・・・・」

「あんまりたくさんの人に知られて心配されたら、アイツのことだ、たとえ大丈夫じゃなくても無理に笑うに決まってる。」

「ああ、そうかも。」

「そうなる前に、俺は井ノ原の口から、本当のことが聞きたいんだよ。」

きっと井ノ原が自分の中だけに隠している、自分の身に起こったことの真実を、坂本はちゃんと聞いた上で、力になってやれたらと考えていた。リーダーの責任感からではなく、同じグループの仲間だからこそ、そうしたかった。

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