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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/09 (Thu) 07:43:39

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No.100
2007/12/01 (Sat) 20:38:14

本日より、更新強化月間開始です。

毎日、更新は夜を予定しております。

お時間ございましたら、ちょっとした暇つぶしにでもお越しください。


ということで、1日目。

相変わらず暗い雰囲気な、いわゆる予告編でしょうか。






天使(仮)はバスで来る

 

 重篤な代謝性アシドーシスの男性患者が運び込まれてきたのは、初めての夜勤の夜。救急隊員の報告によると、帰宅ラッシュの地下鉄の社内で、急激な腹痛を訴え、昏倒。GOTGPTLDHが急激に上昇し、腹部は膨満。ショック状態が見られ、虚血性肝障害の可能性があるというのが、到着時の判断だった。一緒にいた指導医も一度はその意見に賛同しだが、治療中も貧血の進行やGOTGPTLDHの上昇が収まらず、造影CTをオーダーするも、その場での試験開腹を提案。血中乳酸濃度の異常な高さから腸管壊死ではないかという話が飛び出した。開いて見ればまさにその診断通りで、ここまで進行した状態では、オペには持ち込むが、生存率は極めて低いと告げられた。患者はDICに陥り、輸血が追いつかない状態。心室性頻拍になった為除細動するも、成果は見られない。心停止してしまえば、許される時間は5分と、大きく門戸が狭められる。緊張感で張り詰める外傷室。出入りする看護士さえ煩わしく感じるほど、みなが追い込まれていた。そんな、開腹したまま、カウンターショックを与えている緊急状態の外傷室に一人の女性が駆け込んでくる。看護士の制止を全力で振り払い、大声で患者のものと思しき名前を泣き叫びながら乱入してきた女性は、患者の婚約者だったそうだ。最悪のタイミングがこんなときに重ならなくとも。誰もがそう思った。モニターを見ていた看護士が「心停止です。」と告げる。慌ててマッサージを始めるも、手の施しようのない状態なのは火を見るより明らか。だが女性は早く助けてくれと詰め寄り、騒ぎ続けた。愛する人に起こっている出来事なのだから当たり前だが、誰も手を抜いたものなどいない。助けるためのあらゆる手段を講じた結果、努力の甲斐なく、そう、結局男性は息を引き取った。女性は死亡宣告を聞くなりさらに取り乱し始める。医者は手を尽くさなかったと責め立てて。そして、トレイの上にあったメスを手に、近くにいた医者に向かって突進。こんな状況、止めるのは当然。メスを持つ手を掴み、もみ合いになりながらも標的にされた医者からは逸らすことができたが、本当に不幸な偶然の事故。もみ合って倒れた拍子に、メスは女性の左胸に突き刺さった。死亡宣告後、ほんの2分にも満たない短時間での出来事。女性は死亡し、女性を止めるためもみ合いになった研修医は、事故であったとしてもそのことが大きな傷となり、医者への道を自ら絶ち、行方を眩ませてしまった。

 

 すべての世界との関わりを拒絶するように、ひっそりと存在する小さな町がある。まるで身を隠すために息を潜めている風にも見えるその町は片田舎の山間にあり、小さなバス停が近くにあったが、そんな場所で降りる人間などおらず、バスは毎日当たり前に通過していく。バス停にバスがごく稀に止まるとき、それはこの町に、外から来た人間を降ろすため。一番近くて、1年半ほど前に、左遷された若い巡査がやって来たときだった。

 バス停にバスが止まった。学校帰りの子供たちが齎した情報は、瞬く間に町中の人の知るところとなる。降りたのは一人の青年で、彼は小学校の建て直し工事の手伝いに来たと言った。とても人懐っこそうな、朗らかな笑顔を浮かべて。町の人にしてみれば、その青年がどんな人物であるかを知るすべがなく、あからさまに警戒心を露にしていた。青年は町で唯一の居酒屋に下宿し、確かに小学校の建て直し工事を手伝う毎日。華奢な体つきがとても危なっかしく、誰もが彼に疑惑の視線をぶつける。どうしてこんな小さな田舎の町に来たのか。どういう理由でこんな仕事をしているのか。青年と町の人間の溝は、まったく埋まる兆しを見せないまま、半年が経過する。

 町の南側に、比較的大きな川がある。子供たちの絶好の遊び場で、流れも穏やかだったため、大人たちは然程それを気にしてはいなかった。台風による大雨のせいで、川が氾濫したときも、子供たちはいつもと変わりなく遊びに精を出していたのだ。町で非常事態を報せるサイレンが鳴り響くまで、誰も何も考えていなかった。水かさの増した川に子供が転落し、溺れるという事態が起こって、初めて騒ぎになる。それは若い巡査が一番に駆けつけ、水泳が得意だと豪語して川に飛び込んで子供を助ける事態に発展。濁流からは救い出されたものの、意識のない子供に町は騒然。病院などなく、一番近くて車で1時間ほどの隣町に、小さな診療所はあった。そんな悠長なことはしていられないが、助けられる人間はここにいない。人工呼吸だ心臓マッサージだと上を下への大騒ぎが繰り広げられる中、冷静に、正確に、迅速に応急処置を施し子供を助けたのは、町の人間と大きく距離を取っていた外から来た謎の青年。まるで医者のようだと、誰かが呟いた。

 子供は一命を取りとめ、青年はすっかり町の一員として受け入れられる。下宿先の居酒屋を営む男も、青年に対して抱いていた不信感を払拭され、まるで兄弟のように仲良く店で飲む姿が毎日見られるようになったのは、それからのこと。

 青年は過去を一切話さない。男も過去を一切話さない。子供を助けた巡査も店の常連だが、同じように過去は話さない。外から来た人間は過去を隠し、この町にカメレオンのように順応した振りをして、世間から自分を隠す。今いるこの小さな町が、やっと見つけた居場所だから。たくさんのことを上塗りして、作り上げた新しい人生だから。

 ある日、バス停に見たことのない黒い外車が止まった。現われた一人の男は、町の人々に無尽蔵に話しかける。この町に、他所からやって来た人はいますか?日常の崩壊が、足音を立てて近づいてきた。

 

 

 井ノ原 快彦  元研修医。治療中に起こった事故が原因で、病院を辞職。

         素性を隠し、町にやってくる。

 

 坂本 昌行   町で唯一の居酒屋を営む男。5年前に外から町へ来た。

         素性は一切不明。1つ年下の弟がいた。

 

 三宅 健    町でたった一人の巡査。1年半前に外から町へ来た。

         職務中に何か大きな失態を犯したため、左遷。

 

 岡田 准一   ゴシップ専門タブロイド誌の記者。

         町にやってきて、外から来た人間について嗅ぎ回っている。
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