足りない

高校生トニセン更新です。

ながのくん手伝う。



出演　：　坂本　昌行　・　長野　博　・　井ノ原　快彦














 

足りない




　長野くんが何かを難しそうな表情を浮かべつつ食べてる。「うー。」とか「えー。」とか呻いているけど、真剣ではあっても深刻な悩みではないのは知っているので俺と坂本くんは傍観していた。あくまで真剣な試行錯誤の真っ最中なのだ。話しかけたら「うるさい！」と怒られるのは分かっている。以前に２人してそれは経験済みで、だからただそれが完結するまでは待つことしかできない。
「何をどうしたらこうなるんだろう？」
大きく首をかしげて手元にあるそれを凝視する長野くんの眉間には大きくて深いしわが寄っていた。
「まぁ見るからに人間の理解の範疇を超えてるからな。」
「だよね。」
傍観者の坂本くんは同情めいた視線を少しだけ送ってDSの世界に帰り、俺は気も漫ろな同意の声を上げつつ読んでいるマンガ雑誌から視線は逸らさない。
　いつものことだ。見慣れた光景すぎてこれといったリアクションも取りようがなかった。とにかく口を挟まずに根気強く待つべし。
「分かった！いろいろ足りないんだ！」
勢いよく椅子から立ち上がった長野くんは嬉しそうに手元の物体を持って教室から駆け出して行った。足りないとかそういう次元の問題か？と思ったけど、突っ込むといろいろ面倒なことになるからやめておく。俺、利口。
「なぁ井ノ原、マクド１回分賭けようぜ。俺は不採用な。」
「そんなの賭けになんないじゃん。俺だってアレは明らかに不採用だと思うもん。」
「舘林さんスゲーよな。」
「それに律義に付き合う長野くんの方がスゴイよ。」

　10分ほどでスッキリした表情の長野くんが戻ってきた。例のブツはひとまず再検討の余地ありで話が落ち着いたそうだ。当たり前だけど。食堂であんな表現のしようのない色をした炒め物が出てきたら保健所の立ち入り調査確定に違いないし。っていうか舘林さん管理栄養士と調理師の資格持ってるってホントなんだろうか？



※ 舘林さんは学食の主任を務めるおばさまです。新メニューの試食をよく長野くんに頼んでいます。
　  但し、人外な味やビジュアルのモノが出てくることが多数あります。
　  管理栄養士と調理師の資格を持っているというのは紛れもない事実です。