合唱コンクール ①

高校生トニセンよっちゃんお誕生日編更新です。

合唱コンクールもやりますよ、もちろん。多分。


出演　：　坂本　昌行　・　長野　博

合唱コンクール　①



　５月中旬に合唱コンクールがある。これは全学年共通の行事なんだけど、なぜか学年ごとに時期が違ったりして、２年生は５月。中間テスト１週間前というケンカを売られているような日程だ。俺も坂本くんも別に勉強に必死ってわけじゃないけど学校行事に必死ってわけでもない。だからどうでもいい感は否めないんだけど、井ノ原が学校行事大好きモードですごく張りきってるからちゃんとＨＲの話し合いにも参加したし、休み時間や放課後の練習にも参加してる。クラスのみんなも井ノ原の盛り上げと寺山先生の「優勝したらジュースとお菓子奢ってやる！」宣言に煽られて協力的だ。
「でもやっぱりさ、すごいのはわかなさんだよね。」
「あー・・・いろんな意味でな。」
コンクールで歌う曲は自由なんだけど、既成の曲を歌ったってつまらない。と、井ノ原がお姉さんに曲を書き下ろしてもらってきた。
「優勝できなかったら殺す！とかメチャクチャ気合い入ってるって感じ。」
わかなさんは井ノ原の説得工作に付き合うのが面倒になって曲を作ることを引き受けてくれたらしいんだけど、完成した楽譜を手渡してくれる際に物騒な釘の刺し方をしたらしい。本気でそういうこともやりかねないキャラな人だと俺も坂本くんもよく知ってるから、例え学校行事でいい結果を残すために行った選択だとしても井ノ原のその無謀な行為には呆れてしまう。
「けどさ。」
「うん。」
「一生懸命やったって胸張って言えるようにはしてぇよな。」
なんだかんだで坂本くんは俺と井ノ原に甘い。長い付き合いなんだから友達として出来る限り優しくしてくれてる。
「いい合唱コンクールだったって言えるといいね。」
放課後のファーストフード店への寄り道。いつもは３人なのに今日は２人。話題の中心人物な井ノ原は、伴奏を担当してくれる女の子の練習に付き合ってあげていた。やるからには全力投球。の井ノ原はクラス委員長が天職だと思う。放課後のお楽しみを我慢して行事の準備に邁進する気持ちを足蹴にするように、空は暗く厚い雲を繰り出してきていた。
「ねぇ坂本くん。隣りの百均で傘買って井ノ原迎えに行かない？」
「だな。じゃあ俺テイクアウトで差し入れ買ってくわ。」

放課後の教室で食べるハンバーガーも悪くない。そんな単純なことで笑っていられる現在の時刻、午後16時前。