包囲網

トニセン高校生を更新です。
今日も今日とて小話です。


出演　：　坂本　昌行　・　長野　博　・　井ノ原　快彦

包囲網



　新学期の席順が決まった。井ノ原が窓際の一番後ろ。その隣が長野。そのまた隣が俺。長野の前の席はクラスで一番背の高い愛澤という感じだ。お前ら２人がしっかり長野の面倒を見ろ。という寺山のメッセージが刻み込まれた配置だと思う。長野の前にやたら背の高いヤツが座ってるのは、きっと教壇から長野が寝ているところを隠すために違いない。他は出席番号順に並んでいるのに、俺たちだけこの席順ってのは不自然だ。みんなから不満が出てすぐに席替えになるに決まってる。

　とかなんとかで１週間が経過したが、誰からも異論の声が上がらない。むしろ「長野包囲網」というわけのわからないネーミングで市民権を得ていた。まぁ一番後ろの席という点ではラッキーなんだろうが、授業中に寝ていることが当たり前なはずの長野が起きている時にやっている行動が気になって授業どころではないというデメリットを発見した。それを華麗にスルーしている井ノ原は尊敬に値する人物だと思う。
「坂本くんは気にしすぎなんだよ。あんまり気にしてたらハゲるよ？」
「だったら委員長権限で席替えを提案してくれ。」
「それは無理でしょ。そんなことしたら学級崩壊の危機じゃん。」
「・・・・・それは、ありうるかも。」
井ノ原に言い寄ってみたが、逆に納得させられた。長野本人にどうこう言う勇気はないから、もう少し我慢してみるしかない。長野は基本いいヤツだ。常識を逸脱した変人というだけで。たぶん・・・・・。


※　長野博の怪行動 （実例が多すぎたため１部のみ抜粋）
　　 その１．月曜日の数学→ただひたすらノートに四則演算の記号を書き連ねる
　　 その２．火曜日の社会→「にぼし。」と呟いてクスクス笑う。の繰り返し。
　　 その３．木曜日の現国→教科書の本文すべてを蛍光ペンでなぞる。
　　 その４．木曜日の数学→ひたすら正方形詰め込み問題に挑戦。
　　 その５．金曜日の物理→何かは不明だが怪しい色の物体を捏ね回す。