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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/04/27 (Sat) 03:12:46

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No.363
2010/12/27 (Mon) 18:16:28

夕焼けドロップ出展作品の掲載です。
更新じゃなくてすみません。

掲載に当たり、若干の加筆と修正をいたしました。
あとがきはお祭り掲載時のものです。


出演 : 井ノ原 快彦 ・ 長野 博














 


よっちゃんとひっくん
 
 
 
 
 
 今年の4月、俺は高校生になった。髪を金髪にして耳に3つとへそに2つピアスを開けた。学校は成績さえ維持していればあとは自由な校風だったから、教師陣は誰も何も言わなかった。申し訳ないが俺は勉強も運動もできる。入試での成績は2位だったが、定期テストでは首位の座を1度として誰にも明け渡したことはない。あまりにメジャーな不良スタイルで、これから1年を一緒に過ごす予定のクラスメイトはドン引きしてたけど。あと親が激怒して実家を追い出されたけど。まぁ、そういうのは別にどうでもいい。特に親と仲がいいわけでも、高校生になったら友達たくさん作ろう。とか意気込んでいるわけでもなかったから。かといって高校生になってはっちゃけちゃったわけでもない。むしろハメのはずし方なんて知らない部類の人間だったし。だったら、どうしてこうなってしまったのか。どうしてこんな手段を取ろうなどと考えてしまったのか。すべては、あの人のせいだ。
 
 現住所が実家のほど近くな両親は、近所に友人知人が多い。その友人の中にいる母親の友達の1人の息子は小さな頃から親同士が茶飲み友達だったこともあって、我が家に入り浸っていた。親が話し込んでいる時間を俺たちは一緒に遊んで過ごした。家同士が近所なため幼稚園、小学校、中学校はもちろん同じ。しっかり者で面倒見のいい彼はすっかり俺のアニキ的存在になって、ひとりっ子だった俺はそれが凄く嬉しくて、気付けば一緒にいる事は当たり前という依存を生みだしていたんだ。だから俺は彼と同じ学校に頑張って進学したのに、なのに、彼は言った。
「俺ね、2年間休学してアメリカに留学するんだ。でね、もし向こうでの勉強に着いて行けそうだったらあっちで編入するかもしれない。」
「じゃあ俺が入学しても、長野くんは学校にいないの?」
「うん。3月の末には出発しちゃうからね。」
「そうなんだ。」
俺が勉強を得意だと言えるのは彼、長野くんのおかげだ。友達がみんな塾で忙しい中、俺は長野くんのちょっとした家庭教師だけで今のズバ抜けた成績を維持している。本当に1歳しか違わないのか?と心底疑いたくなるような天才的頭脳の持ち主らしく、教え方は分かり易く簡潔。答えられない質問はない。その恩恵あって、勉強で苦労をしたことはない。高校入試でこそ2位に甘んじたけど、それも点数に差があったからではなく、名字の五十音順が先に来る相手と同率首位だったからに他ならなかった。そんな大好きな天才的幼馴染と春からはまた同じ学校に通えると歓喜していたのに、不意に希望が立ち消えてしまった。しかも海の向こうに2年も留学、というかもしかすると帰ってこないかもしれないなんてこと、簡単には受け入れられなかった。でも、長野くんを困らせて嫌われたら困る。という思考が働いたおかげか、俺はずいぶん聞きわけのいい子だったと思う。
「もうよっちゃんの家庭教師してあげられなくなっちゃうね。ごめんね。」
「いいよ、自分でなんとかするから。ひっくんこそがんばって。」
俺がショックを受けていることを隠して元気いっぱいに長野くんを送り出した後、入学式の直前になって訪れた変化を張本人は知らない。
 
 最近、考える。親同士が仲のいい手前、仕方なく付き合ってくれていただけなんじゃないかって。留学は鬱陶しい年の違う近所の子を切り捨てるいい口実になったと喜んでいるかもしれない。俺が勝手に舞い上がって慕っていただけで、実は長野くんはずっと迷惑していたってことも十分にあり得る。だって俺と長野くんじゃまったく釣り合わない。勉強も運動もできて手先が器用で色白でふわふわして友達もたくさんいてご近所での評判は上々。学校では年中無休の告白ラッシュ。特別な人種の人だった。俺は勉強と運動はできるけど友達付き合いは下手くそだし手先も器用じゃないし身長こそあれルックスだって芳しくない。今だって勝手に寂しがって不貞腐れてまるで子供だ。俺は深くて暗くて狭い場所に自分で勝手に・・・・・
(俺ってチョーひっくんにふさわしくないじゃん。)
勝手に、落下したんだ。
 
 
 
 2年間が死ぬほど長いと感じた。やりたい勉強があったから留学なんてしてみたけど、毎日留学するんじゃなかった。と思っていた。あまりにも文化が違いすぎる。生活のペースも乱れ放題。英語は話せたから問題ないと即決した過去の自分、本気でムカつく。帰国する何日か前にクラスメイト達が送別会を開いてくれたが、いいかげんイライラもMAXに到達していた俺は、
「俺はタバコ吸わねぇし酒も飲まねぇしピアスも開けねぇしナンパにも興味はねぇ!テメエらみたいな俗まみれ野郎と一緒にしてんじゃねぇよ!クソったれ!」
と素晴らしく汚い英語を駆使して叫び散らした。2年間頑張って猫を被っていた俺の突然の弾けっぷりに、クラスメイト達は見事フリーズしていた。けど、はっきり言おう。こんなにすっきりした気分になったのはアメリカに来て以来初めてだ。これで思い残すことはない。帰国したら母のご飯を堪能しよう。畳の部屋でのごろ寝を堪能しよう。広い風呂も堪能しよう。そしてお土産を山のように抱えて井ノ原に会いに行こう。一度だけおばさんが手紙をくれた。井ノ原は高校で成績トップを突っ走る先生のお気に入りな優等生らしい。入試の成績も上々だったし、きっと勉強が得意なタイプになったんだろう。運動神経はいいし、人当たりもいい。女子にモテて大変なことになっていたら、存分に冷やかしてやろうかな。何度か家に電話をかけてみたけれどいつも留守だったのはデートに忙しかったからなのかもしれない。一人でいたわけではなかったことに今さら安堵するなんて都合がよすぎると、井ノ原は怒るだろうか。いつだって気にかけない日はなかったと言えば、嘘つきと罵られるだろうか。否、そんなリアクションは見せないと分かってる。結局は優しくて自分の気持ちに折り合いをつけてでも相手を優先させることができる子だから。
 
 行っても行かなくてもよかった留学だったのかもしれない。とか言ったら両親に死ぬほど怒られるんだろう。好きなことを勉強しながら飛び級で大学まで卒業できたことはいいことだったけど、井ノ原と一緒に学校通ったり、遊んだり、勉強したり。そんな普通の毎日の方を自分は欲していたんじゃないか。って向こうにいるときにずっと考えていた。明確な答えは出なかった。明確な答えが出たのは帰国して2週間後の土曜日の朝だ。生まれてここまでで一番の衝撃映像に遭遇した時に、真剣に考えたんだ。どうすれば時間を戻してこの2年間をやり直せるかを。
 
 
 
 日本の大学に編入できることになったから、手続き諸々の関係で高校へ行った。この日は本当に本気であまりのショックに意識を失いそうになった。
「え、井ノ原?アイツは高天学院の法学部。頭だけはいいからなぁ。入試の成績も満点でトップだったっつって大学の人がかなり驚いてたし。ああ、今まさに来てると思うぞ。図書室の本で返し忘れてるのあったとか言ってたから図書室にいるんじゃないか?」
元担任の教師に聞いてみたところ、苦虫を噛み潰したような渋い表情でそう答えてくれた。頭だけはいい。とか失礼だろ。井ノ原にはいいところがいっぱいあるんだ、お前が知らないだけなんだよ、バーカ。という反論は心の中にしまっておき、図書室に駆け足で馳せ参じてそこまでは心がウキウキしていたはずだ。図書室の引き戸を開けて鉢合わせるまでは久しぶりに会う幼馴染に何を話そうとか今日はお土産を絶対に渡そうとかそういう計画で胸躍っていたはずだ。なのに、現在、絶句して立ち尽くし中。
「そこに立ってられると出られないんですけど。」
敬語だ。っていうか怒られてる。
「どいてもらえます?」
金髪でピアス開けまくり服装乱れまくりの井ノ原に怒られてる。
「シカト?俺アンタに何かしました?」
アンタとか初めて言われた。
「・・・・・されたのは俺の方だって主張しても怒られない状況ですよね。」
この人は似ているだけで井ノ原快彦じゃないのかも。
「さっさとどいてくださいよ、ひっくん。」
確定。目の前にいるのは幼馴染の井ノ原快彦だ。
「あー、もー、ウゼェ。マジないし。っつーかアンタ帰ってたんだ。もう一生アメリカに住んでアメリカ人になる気なんだと思ってた。ま、今となってはどうでもいいけどさ。というわけだからどいてください。俺はこれからバイトに行かないといけないんです。」
棒読み口調でキレられてる。またアンタって言われた。こんなの俺の知ってる井ノ原じゃない。面影も残ってない。先生、頭だけはいい。の意味が分かりました。幼馴染なのに今さら発見した。こんな風に不貞腐れるんだ。にしても極端すぎるだろ。こんなの、こんなチーマーみたいなの、
「おっ、お前なんかよっちゃんじゃないに決まってるー!」
先生、バーカ。とか思ってすいませんでした。
 
 井ノ原家を訪ねたら平日なのにお父さんがいた。日曜出勤をしたので代休だそうだ。上がってお茶でも。とにこやかに誘ってもらったのでお言葉に甘える事にした。井ノ原のことを聞くチャンスだ。しかし紅茶を出してもらって一息ついたところで本題を切りだすと、お父さんはニコニコと笑って、
「何を言ってるんだ博くん。ウチには息子なんていないよ。いけないなぁ、時差ボケがまだ治ってないのかい?」
と切り返された。怖くてそれ以上突っ込むことはできなかった。今晩にでも自分の母親に探りを入れてみよう。あの人は井ノ原のお母さんと親友だと豪語しているから。
 
 母に懇々と説教をされた。俺が井ノ原に何も言わずに決めた海外留学を2年もしていたせいで、井ノ原は拗ねてグレたらしい。それは俺のせいなの?とは聞けるわけがない。がんばってきなさい。と快く送り出してくれたはずの母は、井ノ原のお母さんとの友情に亀裂が入ったら俺のせいだ。勘当だ。とかグチグチネチネチと繰り返していた。ひとまず井ノ原が実家に戻れるようにした方がいいだろうか。それにはあの金髪をなんとかしなければならない。ピアスも外させて、穴はピアスをはめなければふさがると聞いたことがある。服装は大学生になれば私服だから、チーマーみたいな服装やチンピラみたいな服装はさせないようにしないと。・・・・・・・その前に、どうすれば井ノ原と再びお近づきになれるかを考えよう。アメリカ留学の代償は大きかった。もう二度と勢いで留学はしないと誓う。本当に本当に全知全能の神に誓う。
 
 
 
 卒業式の日、保護者席に井ノ原の両親の姿はなかった。井ノ原が卒業証書と卒業アルバムを捨てて帰ったが、長野がせっせと保護した。一方、なんとなくな世間話を装って教師に長野の編入先の大学を聞き出した井ノ原は、自分の通うことになっている学校とは異なる名前が発せれたことにひどく胸を撫で下ろした。2人の関係が修復される日は来るのか?井ノ原は本来あるべき道へと軌道修正ができるのか。それらについてはまた別のお話。
 
 
 
 
 
 
 
[書き手の言い分など]
 
 『Denied existence value』管理人ごとうのりこです。
 昨年に続き、この素敵なお祭りに参加できて歓喜しておりました。
 いつまでも「なーのくん」だとか「ひっくん」だとか言って懐いているよっちゃんがいいです。
 ということで、過剰に長野くん大好き!な話を書かせていただきました。
 また別のお話にて。という締めになっているのは、どこかで続編を書けたらと考えての事です。
 やはりこの2人を書くのは楽しくて仕方がないですね。
 ということで、
 ここまで読んでくださったみなさま、参加させてくださった管理人様には、
本当にありがとうございました。
ほんの少しでも、このお祭りの盛り上げに貢献できておりましたら幸いです。

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