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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/04/25 (Thu) 20:44:45

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No.108
2007/12/06 (Thu) 20:11:35

アンラブリンク・ハロウィン祭、出展作品後編です。

後編だけだと、メインは2トップみたいになってしまいました。


出演 : V6






スタジアムの客席は、ハロウィンの仮装をした客で溢れかえっている。坂本は2階席からバトルフィールドを見下ろしながら、祈るような気持ちを抱いていた。昨日の三宅のように、井ノ原までもが倒れてしまったら・・・。力ずくでも棄権させておけばよかったか?などと、今となっては後悔さえ感じる。去年までは楽しいお祭り騒ぎだった。バトルが終わればみんなで酒を酌み交わし、また来年。来年こそは優勝するから。なんて盛り上がったものだ。それが今年は一変。とてもそんな気分にはなれそうにない。「お菓子かイタズラか!」と大人たちのところを駆け回ってお菓子を集めている子供たちを見ていると、昨日の朝の三宅を鮮明に思い出す。いい年をして、「お菓子かイタズラか!」と叫びながら、キッチンに乱入してきて、フライパンを手にした坂本に抱きついてきた。用意していたキャンディを渡すと嬉しそうに笑って、「これで今年も勝てるね。」と無邪気に笑っていた。井ノ原は井ノ原で、これまではそんなことは一切しなかったのに、今朝に限って「お菓子かイタズラか!」と叫びながら、コーヒーを入れようとしていた坂本に抱きついてきた。坂本が余分に買って余っていたキャンディを渡すと嬉しそうに笑って、「絶対に勝つからね。」と元気一杯に宣言した。いやな予感は、尽きることを知らない。バトル開始の鐘が鳴り響き、井ノ原と岡田がフィールドに現れる。どうか何事もないようにと、もうここまで来たらそれを願うことしかできない。

 隠しきれない不安と格闘しながらフィールドを見下ろしていた坂本の隣に、黒猫の仮装をした客が座った。手には売店で販売されているパンプキンパイやジャンクフード、プディングなどが目一杯抱えられている。お祭りの雰囲気に浮き足立っているのだな。と楽しんでいる様子を少しうらやましく思いながら、坂本は視線をフィールドに戻した。

「ここには来ないと思ってたから、びっくりしちゃった。」

隣に座っていた男が、おもむろに口を開く。独り言かと思って聞き流せば、

「坂本さんでしょ。井ノ原くんや三宅くんと同じ工房の。」

どうやら、坂本が目当てでこの席を選んだらしい。突然話しかけてきた見知らぬ男に訝しげに目を向けると、男はふわりと笑って坂本を見ていた。

「井ノ原くんはあなたが見守ったとしても、負けるよ。だったら危篤の三宅くんのところに駆けつけてあげたほうが、ずっと懸命だと思うけど。」

「危篤?バカなことを言うな。今朝、井ノ原と会いに行ったときには元気だった。」

「そのあと、急変したみたいだよ。ああ、でもいまさら行っても、もう死んでるかもね。」

「貴様は、誰だ?」

「岡田の応援。長野博。あと、井ノ原くんの『マミー』の仕上がり具合も見に来ちゃった。あれ、すごくかわいいよね。欲しいなぁ。」

長野と名乗った男は楽しそうに言うと、フィールド上の井ノ原のギミックを満足そうに見る。それは子供がデパートでおもちゃに見とれているのと同じ目線。

「別にさ、岡田が勝つことは分かってるから応援とかはいらないんだけどさ、やっぱ、お祭りって聞いちゃったら行きたくなるでしょ。その場限定の食べ物って、チェックしたいじゃない。それに、やらなきゃいけないこともあるし。」

「井ノ原が勝つかもしれない。」

「彼は勝てない。ギミックの使い方、下手だもん。岡田は完璧だから、絶対に負けないよ。」

「随分と、自信があるんだな。」

「そうでなきゃ、世界の天辺を目指そうなんて思わないよ。このパンプキンパイが食べられなくなるのは残念だけど、この町は邪魔だ。」

坂本には、長野の言葉が理解出来なかった。いや、理解するという行為を拒絶させるような内容だった。一度も笑顔を崩すことなく話をするこの長野という男、とても危険人物には見えない。それはうわべの印象にごまかされているだけなのかもしれないが、どこか、やわらかい空気を纏っているような気がするのだ。今だって、パイのクリームを口の周りにつけていることに気付いていない。

「ギミックってさ、使いようによっては最強の武装アイテムだと思うんだ。それを十二分に活用して、高いところからこの世界を見下ろせたら、最高じゃない?おいしいものでも食べながらさ、ゆったりとした雰囲気の中でさ、ひれ伏す世界を見渡すの。いいよねぇ。」

「どの町から来た?軍用ギミックに興味があるのか?」

「違うよ。世界の天辺に興味があるの。ほら、ファーストステージが終わる。岡田の圧勝だね。いい仕上がりだ。ときに彼、井ノ原くんはどうして、あんなにギミックと密接して動いてるの?傷だらけじゃない。」

「一緒に戦いたいんだよ。そういう男だ。」

「ふぅん。じゃあ、セカンドステージの最後まで、もたないかもね。ギミック使いが。」

「健・・三宅みたいな目に遭わせんのか。」

「そうだねぇ。それくらいしないと、岡田の絶対的な存在感は演出できないからね。この町の人には、ギミック使いの岡田に恐怖を抱いて欲しいし。」

「恐怖?」

「岡田は強くて残忍なんだ。やるとなったら容赦はしてくれない。ギミックでバトルを挑めば、確実に最後は殺される。って感じ?」

「ペラペラしゃべってんじゃねぇ。女子高生かよ。」

三宅と同い年くらいの男が、長野の肩に両手を着いて乗り出してきた。長野とは違って、刺々しいオーラを隠すことなく放っている。

「だってさ、彼、すごく腕のいいギミック職人なんだよ。興味湧いたし、一緒に来て欲しいから、お近付きになってみただけ。それより岡田、順調だね。」

「当然だ。あんなヘタクソなギミック使い相手に、手こずるわけねぇよ。」

アンバランスな2人だな。と思う。この町に対してはよくない存在だが、どこか好奇心を駆り立てられる。例えば三宅が危篤で、最悪死んでしまったかもしれないという話が本当だとして、例えば井ノ原が本当にセカンドステージの途中で倒れたとして、そんな会話が飛び出しているというのに、何故か坂本はもっと、長野の話を聞きたいと思っている。どこから来て、目的は何で、職人なのか、それとも違う職業なのか。2人はとても、大切な仲間のはずなのに。

「やっぱり欲しいよ、うん。ダントツで可愛い。何で・・・・・ああ、そうか。分かった。だから可愛いんだ。ねぇ、剛。岡田に指示出して。今バトルしてる『マミー』と、ギミック使いを壊さないように。って。」

「は?『マミー』だけでいいじゃん。」

「ダメ。彼もセットじゃないとつまらないから。」

「あんなヘタクソの何がおもしろいんだよ。」

「ギミック使いの腕じゃなくて、彼の行動がいいんじゃない。だから、セットで欲しいの。」

剛と呼ばれた青年は、不服そうに長野を見ている。しかし長野は怯むことなく、笑顔の中に威圧感さえ含ませて、一歩も譲る気配は見せていない。ほんの少し膠着状態があり、まだ口論が続くのかと思いきや、青年のほうがため息交じりに左右に首を振って、降参のポーズ。

「・・・・・分かったよ。あんた、相変わらず意味不明だな。」

皮肉をたっぷりこめた口調で言うと、青年はどこかへ行ってしまった。バトル中の職人とそれ以外の人間とは、接触が出来ない規則なはずなのに。

「アイツは、どうやって岡田にお前の言伝を伝えるんだ?」

「それは企業秘密。で、これまでの会話の流れから分かると思うけど、改めて言うね。俺と一緒に天辺へ行ってみない?井ノ原くん、彼も一緒にね。」

火を、着けられた気がする。とても興味が湧いているのが分かった。この町は好きだし、おもしろそうな話をぶら下げられて、手のひらを返したように長野を信じたわけじゃないけれど、外へ行けばギミック職人として、また新しい道が拓けるのではないか?と思えてしまっている。長野は大きな口で嬉しそうにキッシュをほおばって、世界の天辺を目指すなどと言い出すような男にはとても見えなくて、けれど、

「お前、本気なのか?」

「世界は変えるよ。俺たちが変える。だとしても、この町のギミックは、きれい過ぎるんだ。きれいなものって、時には邪魔になるからね。だから、ここで終わりにしてもらって、俺たちが世界を作り変えたい。」

「俺はきれいじゃない?」

「ううん。きれいだけど腕が良くておもしろい。だって『ウイッチ』だっけ?あれ気に入っちゃったから。もちろん『マミー』もね。井ノ原くんとセットでさ、まるでダンスのパートナー同士みたいに動くところが、チョーかわいい。」

ああ、世界を作り変えるとか、天辺を目指すなんて大きな話をしている割に、この男はあまりにも無邪気でいるから気になるのかもしれない。

「世界の天辺に行けたとして、それから、どうする?」

「どう?って、別にどうもしないけど。俺は毎日おいしいものが食べられたら幸せだし、剛はギミックの職人を続けられるならいいって言ってるし。自分のやりたいことを思う存分に出来るって、最高の至福じゃない?」

長野の満面の笑みは、まるで楽しい夢を見せてくれるドラッグのように、坂本の心を捉えた。その様子に、思わず坂本はシリアスな表情を崩されてしまって、苦笑さえ浮かべながらハンカチを差し出す。

「とりあえず、口の周りは拭かないか。」

 

 ハロウィンといえば子供たちは決まって「お菓子かイタズラか!」と言って回る。それでもらえる甘いたくさんのお菓子に、とても幸せそうに笑うのだ。今年のハロウィンは、子供でもないのに、ずいぶん甘美なお菓子をもらった。ある国の辺鄙な田舎町にある職人の町を出ていった先には、どんなことが待ち受けているのか。こんなにもワクワクするハロウィンは初めて。毎年大はしゃぎで仮装したり、お菓子をもらったりしていた三宅の行動も、強ちバカにできたものじゃないと、坂本は思った。

 ちなみに、バトルは岡田の優勝で幕を閉じている。淡々と破壊を続け、優勝しても終ぞ笑顔のひとつも見せなかった岡田は、町の職人をすっかり恐怖させていた。坂本は準決勝まで順当に勝ち進んだが、準決勝を棄権。長野に「つまんない。」と批判されたが、ギミックを壊された上に大怪我をさせられた日には、世界の天辺どころの騒ぎではない。岡田に敗れた井ノ原は、長野の進言があったにもかかわらず大怪我をして戻ってきた。これでも手加減はさせた。死ななかったのがその証拠だ。と言い切る森田だったが、長野はすっかり拗ねてしまって、『マミー』をどこかに隠してしまっている。あのギミックは、井ノ原以外には使わせたくないらしい。井ノ原が使わないと、可愛くなくなるからお気に召さないのだそうだ。こんな感じで最後にして最狂のハロウィンイベントは幕を閉じ、坂本は町を出た。世界の天辺に行くために。

 

 数ヵ月後、世界中のありとあらゆる戦場で、悪魔と表現されるギミックの目撃証言が飛び交う。『メドゥーサ』と『ウイッチ』、『マミー』のパーティ。それが通った後には、焼けた大地と死体や兵器の残骸が山のように積み上げられる。それは言うなれば、終末を運ぶ死神のようなパーティだと。
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