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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/04/28 (Sun) 12:07:41

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No.344
2009/11/23 (Mon) 11:19:45

短編更新です。
メンバーの身長が捏造されております。

さて、こんなにも久しぶりの更新となってしまいました。情けない・・・・・。
しかもまだ、V6お誕生日中編が仕上がっていないという残念な管理人です。
すみません。

そんなこんなであたふたしているあいだにお祭りが2つも終わってしまいました。
主催者様には心より御礼申し上げます。
ありがとうございました。
おつかれさまでございました。
お祭りが終わるというのは寂しいものでして、なんだかものたりなさを感じます。
またいつか、次の素敵なお祭りに出会い、参加できるといいなぁ。
ということで、お祭り作品も加筆修正の上、いずれここにあげたいと思います。


出演 : 井ノ原 快彦 ・ 長野 博 ・ 坂本 昌行 














 


25センチ
 
 
 
 
 
 『ケータイトリオ』という愛称をどこの誰が付けたのか、それが何年前のいつだったのか、そんなことは記憶の中に残されていない。俺はそもそもこの3人でひと括りという分類を今でも納得していないし、むしろ嫌悪しているほどなのに。大嫌いなんだ。忌々しいと言っても過言じゃない。運動して、好き嫌いもなく、牛乳をどんなにたくさん飲んだか知れない俺の努力をコケにするように笑ったアイツが、この世からいなくなってしまえばいいとさえ・・・・・・・
 
 
 男子にとって身長というのはとても重要なステータスだ。と俺は思っている。テレビなんかで活躍するモデル上がりのイケメンたちが長身なことについては、若干の羨ましさを感じるものの、それが商売道具の人間なのだから割り切れる範疇だ。しかし、同じ一般人で長身を誇る人間を見ると、ふつふつと湧いてくるのは嫉妬心。器が小さい?器が大きかろうが小さかろうが、それこそが最大のコンプレックスなのだから仕方ないと言わせていただく。20歳までは「まだ身長は伸びるかもしれない。」というかすかな望みも持っていたが、さすがに成人したのちに成長期が来るはずがないことは知っている。180センチを超える夢は儚くも潰えたわけだ。運動をしていたおかげで横に成長しなくてよかった。なんて陳腐な慰めを寄越した父の身長は175センチ。その遺伝子は兄が掻っ攫っていったらしく、177センチの長身へと成長していた。
 子供の頃に何かのテレビ番組で格好よくダンクシュートを決めるバスケットの選手を見て以来、自分もそうなりたいとずっと努力してきた。小学校高学年からバスケ部に入り、中学、高校、大学までずっとバスケ一筋。大学時代には3on3のストリートバスケチームを友達と結成までしてバスケ漬けだったのに・・・・・試合に出ることが叶ったのは小学6年の最後の試合とストリートバスケのゲームだけ。分かってる。だって身長がたったの167センチしかないんだから。中学3年でやっとそこまで漕ぎ付けて以来、1センチだって伸びてない。ストリートはそもそも3人しかいないチームだから洩れなく出られるし、ダンクは難しいけれど俺には必殺技がある。エアウォーク。縦にも横にも成長しなかった俺の武器は小回りが利くことと身軽なことだけ。それを有効利用した最たるだ。今でも時々、コートに顔を出している。そんなバスケが大好きで大好きで、なのに夢破れた俺はただのサラリーマン。ありふれた人間の中の1人。
 高校のバスケ部で知り合った長野くんの身長は178センチ。だけど彼は選手じゃない。中学までは選手だったらしいんだけど、高校になって練習メニューの厳しさにマネージャーへの転向を即決したとは本人談。別にバスケがやりたいわけでなく、ただ単にバスケを観戦するのが好きだったから。とバスケを始めた理由を照れ臭そうに話してくれたのを覚えている。居残りをして練習に精を出す俺にいつだって付き合ってくれた人。珍現象とはまさにこのことで、希少に分類される名字の井ノ原が2人バスケ部にいたせいでみんなが俺を『小』と呼ぶ中、ちゃんと俺を『井ノ原』、もう一人を下の名前で呼び分けてくれた人。高校時代は当然長野先輩と呼んでいたけど、卒業する時に「もう先輩じゃないから。」と長野くんという呼び方に変えるように言い出した変わった人。現在進行形でお付き合いがある。俺はこの人がなんだか好きだ。疲れることは嫌いと言いながら高校の先生とかいかにも疲れそうな仕事に就いちゃったところも、妙に広い交友関係を駆使して格安旅行に出かけては、お土産を大量に買い込んできてくれるところも、コンパスが違うことを悟らせないように歩く速度をさりげなく合わせてくれているところも、他にもたくさんの要素が合わさって好きだ。でも、一番好きなのは俺を信じていてくれるところ。長野くんはたった一言、俺を従順な飼い猫のように手なづける魔法の一言を持ってる。
 
「井ノ原がそう言うなら、俺は信じるよ。」
 
ああ、一生、未来永劫、俺の一番の座はこの人のものだ。って真剣に思う。だからこそあの男だけには妥協できない。あんな最低最悪の男が、今では長野くんのとても親しい友人だなんて。
 
 
 大学からは違ってしまったから、お互いにお互いの時間が増えた。進路も違って、社会人になったそれぞれの道は高校教師とサラリーマン。俺にも大学では大学の、会社では会社の仲間ができたんだし、長野くんにしたって同じことだ。生活リズムが違うなりに工夫して遊んだり飯に行ったりというのは続いてるけど。ただ違うのは、そこにもう1人加わった現状。大学のゼミで知り合ったというその人物は長野くんとずいぶん仲がいい感じを醸し出している、大嫌いな奴。坂本昌行、身長192センチ。その身長がうらやましくて毛嫌いしているんじゃない。会社にだってものすごく長身の人間はいるのだし。原因は俺にしてみれば最上級に値する侮辱の態度。絶対に、一生忘れることはない。
 
「お前、ちっこいなー。っつーか俺がでかいのか?や、でも長野より小っせぇか。」
 
子供にするようにポンポンと頭を軽く叩いて、愉快だと言わんばかりの笑顔と共に吐いた言葉。怒りが湯水のごとく溢れてくる。坂本昌行に?それは2分。8分は馬鹿な自分に。長野くんの紹介してくれる友達だからイイ人に決まっている。なんて勝手に理想像を作り上げてノコノコやってきて、それでいて現実を目の当たりにして落胆している愚かしい自分が疎ましい。長野くんの周りにいる人たちまでもがみんな、長野くんと同じ種類の人間であるわけがなかった。ちょっと考えれば小学生にでも分かる単純なこと。坂本昌行は坂本昌行以外の何者でもなく、その中に長野くん属性を求めるのは身勝手すぎる。まぁ、発言はいただけないけど。というかこの先、俺はこの人とは仲良くできないと思ってるけど。けど、長野くんの友達なんだからしょうがない。俺の背が低いのは見れば一目瞭然の身体的特徴なんだからしょうがない。しょうがないんだよ。
 
 
 妥協で愛想を振りまいた初対面。会うこともそうないだろうから、ほんの時々我慢すれば済むと思ってた。それが甘い読みだと思い知ったのは、最悪の出会いを果たして2カ月ほどが経過した頃だ。長野くんと遊びに行く。長野くんとごはんに行く。長野くんと一緒に出かけるときには当たり前のように、その男も付いてくる。3人で行動を共にすることが昔からの慣習だったかの如く、普通になっていた。坂本昌行が見ているものは、長野くんならば若干の背伸びをすれば見える。俺には見えない。3人でいるのに、2人の人が構成する世界に誤って紛れ込んでしまったと錯覚しそうな疎外感。この男が現れなければ、俺と長野くんの時間に変化はなかったのに。こんな気持ちを味わわずに済んだのに。この人さえ、コイツさえいなければ。
 
(コイツさえいなければ・・・・・・・)
 
仕事の帰りに待ち合わせて行く店は定番化していた。3件ほどの居酒屋をローテーションで利用する。だから俺たちはおなじみの3人になっていた。心外なことに『ケータイトリオ』と呼ばれたりして、相手は悪意を持っていないから強く否定もできず、ざわつく胸の内から目を逸らして笑顔で応える。携帯電話の電波のようにうまくできた身長差。俺と坂本昌行の身長差は、25センチ。俺と長野くんの身長差は11センチ。もしも「うわ、アイツらバリ3じゃん!」ってテンションあがった人が我慢できずに「ケータイトリオだ!」と命名してしまったという裏話があってもおかしくないほど、本当に見事に3本立ってます状態。でもって3コイチ扱い。仲良し3人組だと思われているのがたまらなくムカつく。長野くんと俺は仲良しだけど、長野くんと坂本昌行は腹の立つことに仲良しらしいけど、俺は坂本昌行が大嫌いだし、坂本昌行は俺を小馬鹿にしてる。背が高いことがそんなに偉いかよ!って、言いたくても長野くんの手前言えないし。ある店に行ったとき、そんな俺の複雑な心境を見抜いた店長さんが声をかけてきた。何か悩みでもあるのか?笑った声に元気がない。そんな風に。俺はハッとした。長野くんのことを俺はすごく慕ってて、長野くんも俺をかわいがってくれてはいるけれど、坂本昌行といるときにそこまで察して声をかけてくれたことがあったかな?って。高校の頃とは違う。変わってしまった。女々しくても俺は、やっぱりそう思う自分を止められない。ああ、もういっそ・・・・・・・
 
 
 社内が騒然となり始めたのは、始業時間をまだ1時間も過ぎていない朝の事。得意先とのアポイントがあった俺も、さあ会社を出ようとビルのエントランスをくぐらんとしたところで慌てた様子の同僚に引き止められた。ひどく慌てた様子の同僚の口から飛び出した衝撃ニュースに、俺もまたすぐに慌てふためいたのだけど。
 
「地下鉄が脱線だってさ!ウチの人間も3人乗ってたらしいぜ。」
 
聞けば、それは今から俺が得意先に向かうために利用しようとしていた路線。アポイントの時間が20分ずれたおかげで、乗り合わせなかった幸運。自分が助かったからそれでいい。なんて身勝手なことを言うつもりはない。ただ、本当に今日は、今日だけは何事もなく一日が終わってほしいと願ってたから、本気で胸をなでおろす思いだった。今夜は久しぶりに、長野くんと2人で食事の約束をしていたから。乗っていたのは2課と5課の人間だったとか、これから乗ろうとしていた人間は慌てて社用車を掻っ攫って出て行ったとか、飛び交うニュースをぼんやりと聴覚の端で捉えながら俺も時間を確認する。社用車を調達すれば、充分に間に合うだけの時間はあった。今日は長野くんと穏やかな気持ちで楽しい時間を過ごすのだ。高く切り立った崖っぷちに立たされた俺に与えられた、ひとときの休息を存分に。
 
 得意先の担当さんに会ったのは、ご機嫌伺いとほんの少しだけ仕事の話をするため。これならば早く帰れそうだと考えていたのは甘すぎる推測で、主婦顔負けにこういう話題には目ざとい。と自負する担当の人に、件の事故の話ですっかり引き止められる羽目になった。それは幸か不幸か、会社にいればきっと終業まで知り得なかったであろうニュースをいち早く耳にするきっかけとなったのだ。応接室に置かれた大きなテレビが映し出す事故現場からの中継。そして、現時点で判明している死傷者の名前。
 
坂本昌行が、意識不明の重体で病院に搬送された。
 
 
 昨日、長野くんとの約束を守ることはできなかったのに、未だ携帯に長野くんからのメールや電話の類は1件もない。そりゃそうだ。大事なお友達が地下鉄の脱線事故に巻き込まれて意識不明の重体ってときに、他の友達と遊ぶことに現を抜かせるほど冷めた人じゃない。そんなに、器用な人じゃないし。だいたい、俺は長野くんにいつも通り会えるような気分じゃない。だから、ちょうどよかったのかも。あれから、どうなったのかは気になっていた。坂本昌行はどうなったのか。今も意識不明のままなのか。重体とはいかほどの負傷なのか。俺は好きじゃなかったし、むしろいなくなってくれればいいのに。とか思っていたからダメージを感じてない。でも長野くんにとっては友達で、事故に遭って大怪我なんてことになれば当然心配するわけで、ああ、じゃあ長野くんは大丈夫?という疑問に直結するわけで、俺はとにかくずっと気が気じゃなくて、出社したものの仕事どころじゃないわけで。
 
俺が、いなくなれなんて願ったせいだ。
 
忌々しい25センチの距離を、疎むことしかできないでいる。例えば俺が坂本昌行と同じくらいの身長だったら、こんな気持ちには苛まれなかっただろう。目の届くところに置いた携帯電話は、着信を知らせる兆しさえ見せない。
 
俺はもう、なくしてしまった?
 
なくしたくなかったな。
 
喫煙所で一番の仲良しは、身長163センチの常務だ。常務はバレーボール選手になりたかったが、その身長を理由に諦めた人。お互いに「この身長がねぇ。」と傷を舐め合う寂しい関係。常務に至っては、奥さまは身長171センチの元OL。スレンダーな優しい美人。交際を開始した当初、その身長差が原因で何度もけんかをしたらしい。世の中にはどれだけ権力や財力をもってしても補えないものがある。いかに科学が進歩したとして、身長を伸ばせる薬というのは耳にしたことがない。人道的な問題があると言われればそれまでだが、身長というコンプレックスが存在することも少しは念頭に置いて頂きたいものだ。という議論を交わしながら、2人が2人とも気付いている。建設的ではないと。絶対に叶わぬ妄想に夢を抱く暇があるならば、仕事をするべきであると。
 
だって時間は流れてく。
 
その日の夜中に、長野くんから謝罪と報告のメールが届いた。坂本昌行は無事に意識を取り戻し、怪我も日常生活を侵害するほどの大事ではなかったそうだ。
 
 
 一生離れられない予定だったのに、あっさり決別したこの虚しい結末。俺が連絡を絶ってしばらくは長野くんが気を使って連絡をくれたけど、それも今ではさっぱりだ。きっと今日も今日とて坂本昌行と明るく楽しく過ごしているのだろう。25センチの身長差がなければ生まれなかった溝は、大きなものを飲み込んで奪った。同じ都内に住んでいて住所や携帯の番号を知っているならいつでも会える。とは過剰な油断だ。一度発生した空白はそう簡単には埋められない。その勇気がないし、俺は、きっと長野くんに会う資格のない人間だから。とはいえ、ときどき考える。今日も長野くんは元気かな?って。
 
ねぇ長野くん、今日は何してる?幸せで楽しくて笑ってる?残念ながら俺は、笑い方を忘れちゃったみたいだよ。

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