V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.217
2008/06/02 (Mon) 19:10:08
短編更新です。
『蝶』を聞けば聞くほど、カップリングの曲のほうにハマっていきます(苦笑)
V6らしいなぁ。と。
で、もうHEY!×3には呼んでもらえないのかしら。
いいんですけどね。
うたばんで楽しみましたから。
出演 : 井ノ原 快彦 ・ 坂本 昌行 ・ 三宅 健 ・ 長野 博
『蝶』を聞けば聞くほど、カップリングの曲のほうにハマっていきます(苦笑)
V6らしいなぁ。と。
で、もうHEY!×3には呼んでもらえないのかしら。
いいんですけどね。
うたばんで楽しみましたから。
出演 : 井ノ原 快彦 ・ 坂本 昌行 ・ 三宅 健 ・ 長野 博
熱帯温室
熱帯雨林を髣髴とさせる、むせ返るような緑の中に彼はいた。
世界がどういったものであるのかは、捉え方によって大きく変化する。そして彼の世界もまた、常人の理解の範疇には収まりきらない、常軌を逸したものであるといえるだろう。この世に存在するすべてを総じて世界と呼ぶのではない。自らにとって生きていくうえで欠くことのできない存在のみを総じて世界と呼ぶ。彼、井ノ原快彦の世界は狭く深い。自分が認めた存在以外には決して侵食させることのない、隔離された空間。誰もが踏み入れることが出来ないその場所に、たった一人、当たり前のように入っていく男を除いては、中にどのような世界が構成されているのか、中で彼がどんな風に生きているのか。知る由はない。どんな風に生きているのか、これに関しては、彼の世界へ侵入することがごく普通の日常である男、坂本昌行にも測りかねるとは、本人が苦笑交じりに漏らした言葉。
燦燦と降り注ぐ人口的な光は、繊細な思考回路にとっての障害になる。そんな非科学的な理由を押し切って、井ノ原はいつも部屋に灯りを点けない。ただそれだけ、パソコンの画面が放つ光だけで事足りると言い切る。一度だけ坂本が灯りをすべて点けたことがある。目が悪くなるから。確かそんな理由だった。しかしその純粋な良心から繰り出された行為は、彼の世界を侵略したことに等しかったようだ。次の瞬間に坂本に対して示された凶行、パソコンのキーボードが井ノ原の全力投球によって飛んでくる。が答えを雄弁に語っていた。彼の世界に明かりを灯すことは、禁忌であると。
何を求めているのか、どんな世界を描いているのか。知りたいという好奇心を抑えることができない。今までに出会ったことのない人間。彼について、一つでも多くを知りたいと願う。そして知るためには、井ノ原が唯一同じ世界の空気を吸うことを許した、坂本に聞くしか術が思い当たらない。また違った意味で曲者だと名高い彼に話しかける勇気を構成するのに、半年もかかってしまったのはここだけの話だ。
「ねぇ、井ノ原くんって、どういう人なの?」
「アイツか。あれは、そうだな・・・・・長野が言うところの『よっちゃん』だ。」
表情一つ変えず、淡々とした口調で放たれたあまりにも漠然とした回答。坂本と同期だという長野博は、謎に包まれた存在である。いや、嘘に包まれた存在といったほうが正しいか。作り上げられたロボットのように完璧な感情操作。優しく、穏やかで、それらの雰囲気を駆使して人を自分のテリトリーには踏み込ませない。彼が何を知るのか、彼と坂本、井ノ原がどういった関係性であるのかを知る者は存在しなかった。転じて、導き出される答えはこうなる。
『知る必要のないことだ。』
何度求めても変わることのない審判は、常に最期なのだろう。
熱帯雨林を髣髴とさせる、むせ返るような緑の世界の王様は、孤独で悲しい。
数年後に知ることになった答えは、井ノ原が生きて存在することから降りてしまったが故に、自らの目で確認した現実。所狭しと置かれた植物、それらによって埋もれてしまった内線電話。すべての世俗を拒む世界には、彼しかいなかった。
彼の死によって彼の名を知る人間が嘆いたかといえば、そんな感情を持ち合わせた誰かが居たのかどうかを探し出すことは困難だろう。とても長い時間を彼のそばで過ごしたはずの坂本でさえ、無表情だったのだから。彼が生きることをやめた理由も、知らないと答えたのだから。ただ、涙を流した人間がいないといえば嘘になる。井ノ原という存在がずっと気がかりで、好奇心か、もっと別の感情か、知りたいと願っていた自分という男、三宅健は彼の死を知り、幾多の涙を流したのだから。
飽きもせずに彼のことを考えてやまなかったのは、そうあり続けることで自分も何かその他大勢の人間とは違う、特別な世界を持てるかもしれないと思ったから。その浅はかさを見抜いていたのか、井ノ原の世界から無断で持ち出したひとつ、植物の鉢植えは瞬く間に枯れてしまった。だったらいっそ、壊してしまえばいい。相応しくないものは、須く排除するに限る。
(ああ、だから井ノ原くんは生きることをやめたんだね。)
世界中に存在する世界は、今日もあるいは狂った軋みを孕んでいる。
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