V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.215
2008/05/29 (Thu) 19:45:31
10000HIT御礼リクエスト企画、第5回でございます。
今回はしなこさまからのリクエスト。
12月18日の予告編。でいただきましたが、しなこさま、どうやら通でいらっしゃる。
この予告編を見て、これは長編用なのでは?とご推察いただきました。
その通りでした(苦笑)。
その旨申し上げましたところ、第何話でもいいので、ひとつ話を。
とリクエストいただきました。ありがとうございます。
ということで、第6話でございます。
こちらは、しなこさまのみご自由にお持ち帰りください。
大変長らくお待たせして申し訳ございませんでした。
感想などお気軽にお聞かせいただけましたら幸いです。
今回は12/18の記事を先に読んでいただいたほうが、分かりやすいかと存じます。
↓
http://731506name.blog.shinobi.jp/Entry/129/
今回はしなこさまからのリクエスト。
12月18日の予告編。でいただきましたが、しなこさま、どうやら通でいらっしゃる。
この予告編を見て、これは長編用なのでは?とご推察いただきました。
その通りでした(苦笑)。
その旨申し上げましたところ、第何話でもいいので、ひとつ話を。
とリクエストいただきました。ありがとうございます。
ということで、第6話でございます。
こちらは、しなこさまのみご自由にお持ち帰りください。
大変長らくお待たせして申し訳ございませんでした。
感想などお気軽にお聞かせいただけましたら幸いです。
今回は12/18の記事を先に読んでいただいたほうが、分かりやすいかと存じます。
↓
http://731506name.blog.shinobi.jp/Entry/129/
第6話 『寄合酒とクロワッサン』
師匠が高座に上がっているのを見たことがあるのは、たった1回だけだ。この世界に入ったきっかけだって、宴興兄さんの落語を聞いて感動したからだし。じいちゃんに強引に連れてこられた高座で、偶然にトリを勤めてたのが宴興兄さん。だからてっきりこの人が一門の中で一番偉い人なんだと思ってたけど、師匠だって人が出てきたから驚いたなんてもんじゃなかった。しかも俺と7つしか年が離れてない。さらに本職はケーキ職人だって言い張ってる。おかしくねぇ?さらにさらに、入門してから知ったんだけど、稽古とか誰にも付けたことないらしい。や、そんなの師匠じゃないじゃん。なんで落語家やってんだよ。結局は俺に稽古をつけてくれてるのも宴興兄さんだし。いいんだけどさ、確かにスゲー衝撃だったから。
あの師匠の落語、あんま面白くない。たぶん上手いんだと思う。ただ、なんつーか、テキスト通り?遊びがないから退屈なんだよ。きなこも言ってた。師匠の落語は優等生過ぎてつまんねー。って。あー、あと、大学の落研にいた時は宴興兄さんよりも面白かったのに。って。そこがピークとか間違ってるし。大学卒業と同時に襲名披露してんだからさ、普通はそこからもっと面白くなるはずじゃん。ま、どっちでもいいけど。
それどころじゃない。ピンチ的な噂、聞いちゃいました。俺ら東西亭一門のホーム、白樺亭が地上げの対象になってる。社長?が借金返せなかったのが原因。明らかにカタギじゃないガラ悪そうな兄ちゃんたちが取り立てに来るような、面倒な消費者金融からかなりの借金してたみたい。ギャンブル好きだからね、あの人。寄席小屋なんて儲からないし、返す当てがないんだろう。あと1ヶ月以内に返せなかったら、白樺亭は差し押さえ。すでに銀行が担保物件にしてるから法律的には出来ないって健が言ってたけど、いずれにしてもピンチ?商店会の緊急会議招集。師匠も朝から出向いてった。
出番表を見て、ポカンとした。だって今日の昼席のトリ、宴華兄さんになってる。ダメだろ、昼間っから廓噺とか。夜席はいつも通り宴興兄さんが出るらしい。絶対に逆だって。しかも今日って麻雀やる約束だったのに。
「おはよう剛くん。珍しいな。2時間も前に来るなんて。」
相変わらずののんびり口調で声をかけてきたきなこは、三味線を抱えてる。宴興兄さんの下座をやるんだろう。
「何やんの?」
「寄合酒。ちなみに博は『しの字嫌い』やるってさ。」
言われてもピンとこない。落語のこと、あんま知らないから。
「年に1回見れたらええ方やからね、必見やで。」
「そうなのか?」
「剛くん、見たことないんちゃう?博の滑稽噺。」
さすがに昼席で廓噺は良心が咎めたらしい。そして俺は見たことない。あの人、滑稽噺なんてできんのかよ?
「おもろないで。絶対に滑るから。」
「決め打ちかよ。」
「やって下手やもん。博がやったらブラック過ぎて、客が引くねんなー。」
あー、想像できる。廓噺だと、お色気で誤魔化せたりする。あの人の花魁役、人気だし。けど滑稽噺だとごまかしようがない。面白おかしいキャラとか、違和感あるし。
「なんで宴興兄さんが昼席じゃねぇの?」
「知らん。それより剛くんは?何やるん?」
「おすわどん。」
「・・・・・まぁ、小言念仏よりは合ってるかもな。」
「何だよ、今の微妙な間。」
師匠はまさに名前だけの師匠で、何に於いても宴興兄さんが決定権を持っていた。入門して半年も経ってない俺を高座に上げることも、あの人が決めたこと。四の五の言うより、実際に演じたほうが身に着く。なんてカラカラ笑って。経験が浅い分、もちろん落語は下手だ。ネタの種類もあまり知らない。けど、宴興兄さんは言う。
「俺は知ってるよ。宴蝶が隠れて努力してんの。」
麻雀仲間優遇キャンペーンでもやっているつもりなんだろうか?
昼席の宴華兄さんのスベり方は、観ていて清々しかった。常連さんはみんな、やっぱり時々、豪快にスベる宴華が観たくなる。なんて楽しそうに言ってて。この小屋を取り巻く環境は、ちょっとおかしい。だいたい酒の匂いをぷんぷんさせて楽屋入りする師匠なんて、あっちゃいけない。夕方に楽屋にふらりと来た師匠は不機嫌そうで、酒の匂いがして、聞けば商店会の会議も途中退場したとか。宴興兄さんの寄合酒が聞きたくなった。とは言うけど、ホントかよ?
「あんなのは、高2のホームルームだよ。」
廊下でタバコをくゆらせていた師匠は、隣りで同じようにしていた宴興兄さんに呟いた。不機嫌の原因は、今日の緊急会議らしい。
「なぁーにが商店街復活祭りだ。そんな一時凌ぎなことやったって、何も変わんねぇっつーの。てかさ、やりたきゃ勝手にやればいいと思わねぇ?俺まで巻き込むなよな。」
すこぶるご機嫌斜め。
「井ノ原だって思うだろ?俺のクロワッサンは、ニセモノなんだって。」
クロワッサン?なんて店に出してたっけ、この人。
「俺は店の格を落とすような物は、絶対に作る気はない。」
デニッシュ系のパンなんて、店に腐るほどあるじゃん。
「まだトラウマ?」
「うるせー。」
クロワッサンがトラウマって、どんな事件だよ。
「クロワッサンとエクレアの優劣で、その店の格付けは決まる。」
「うわっ!」
急に声かけんなよ。っつーか気配なかった。宴華兄さんっていつも気配なくねぇ?もしかして人間じゃないとか?
「一流の職人っていうのは、どちらも完璧に作れる人のことを言うんだよ。宴蝶は、師匠のエクレアを食べたよね?」
「あ、ああ。皮はサクサクでクリームはとろとろであっさりしてて、チョコはパリパリで、洋酒?とか使ってないのにインパクトちゃんと強くて、チョーうまかった。」
「あの人のエクレアは一級品だよ。一流の職人が食べても、そう言うと思う。でもね、クロワッサンは全然ダメ。こんなものはバターと小麦粉の残骸だ。って、たまたま店に来た同業者に言わしめたくらいだからね。」
「だからトラウマ。」
知らなかった。
「ほんのちょっとベタっとしてる。しかも一級品の食材を使ってるのに味が安っぽい。それがさ、商店会長さんは好きみたいなんだ。懐かしい。って。だから、商店街復活祭りに出店して、ぜひクロワッサンを作って欲しいって頼まれたみたい。」
そりゃ不機嫌にもなるか。
「あの人、自分の苦手項目は避けて通る保守的な人だから。」
「子供かよ。」
「アドリブの効かない人なんだ。失敗したらテンパっちゃって、大混乱。落語もお菓子も絶対に大丈夫だって確証がないと引っ込めちゃう。宴喜の名前を告ぐときも、駄々こねて大変だったんだから。」
大丈夫なのか?一門といい店といい、そんな脆弱な男に任せられるのか?
「井ノ原がこの一門に入った理由、知ってる?」
「さぁ?聞いたことない。」
「師匠の、坂本くんの寄合酒が気に入ったからなんだよ。」
憧れ?あんなつまらねぇ落語、どうやったら憧れられるんだ。寄合酒だったら全然、宴興兄さんのほうがうまいし。
「俺たちが同じ大学の落研出身だっていうのは知ってるでしょ。当時はね、坂本くんは落語の天才とか言われてた。今では井ノ原の十八番ネタの宿屋仇だって、あのころは坂本くんの十八番だったんだ。」
「じゃあなんで、今は違うわけ?」
「それはねぇ・・・」
「それは?」
「うーん・・・・・ま、そのうち分かるよ。」
あ、そーですか。新参者には話せないことなんですね。はいはい。知りたくないって言ったらウソになるけど、知らないからって死ぬわけじゃない。別にどっちでもいいよ。俺が好きなのは、今の宴興兄さんの落語だ。やっと面白くなってきたんだからさ、もうしばらくは平和に落語やりたいし。
「剛くん、時間やって。」
「おー。」
俺には現時点では関係ねぇよ。
夜席は満員で、大入袋が出た。けどなんてことない。商店会の会議の連中が、そのままこっちに流れてきただけ。プラスいつもの客で、狭い客席はあっさりいっぱいになった。宴興兄さんはよっぽどテンションが上がったのか、寄合酒で30分近く高座をやったんだからすごい。きなこがもっとやりたかったって言ったんだから、今日はかなりイイ感じだったんだと思う。師匠も大爆笑してた。俺は、まぁ、相変わらずだけど。終わるなり商店会長が楽屋に来て、しつこく師匠にクロワッサンの話をしてる。ご愁傷様。っていうかさ、諦めて作ってやりゃあいいのに。
いい気分のまま、約束は有効だったみたいで麻雀することになった。楽屋口の駐車場で待ってたら、井ノ原くんが師匠と一緒に来た。参加するのかと思って聞いてみたら、商店会長のしつこさから避難するために、約束があるから。って嘘ついて逃げてきたらしい。そこまでして拒否したいモンなのか?
「家まで送るよ。」
「ああ。」
なぜか苦笑交じりに申し出た井ノ原くんに、師匠は渋い表情で頷いた。
「俺はちゃんと知ってるから、坂本くんの味方だよ。」
車に乗り込む直前、井ノ原くんはそんなことを耳打ちする。言われた師匠は一瞬、若干嬉しそうな笑みを浮かべた。ワケありっぽいな。
「ごめん、お待たせ。」
やっと出てきた岡田は、高そうなトルコ桔梗の花束を抱えてた。来たんだな、岡田ファンの肉屋のおばちゃんとおばあちゃん。緑と紫と黄色の八重が大量に。いくらなんだよ!いつもバカデカイ花束を持って楽屋に来てるけど、落語の薀蓄を語って岡田を困らせていることに気付いてない。岡田は落語オタクだから何でも知ってるっての。
「よっしゃ。じゃあ今日は大入りも出たし、300、いってみる?」
「500でもええよ。」
「ギャンブラーだねぇ。」
井ノ原くんと岡田は麻雀が強い。俺は普通。ただ、これって健がかわいそうじゃね?あと一人のメンツのアイツは、本当に弱い。とにかく振り込む。けど生真面目なトコがあって、負けたぶんは即金で払って帰る。
「おい、健がいること忘れんなよ。」
「じゃあ健ちゃんは半分で。」
ちなみにこの2人、ちょっとした小遣いが欲しいんじゃない。単に、負けたら大変だって危機感が欲しいだけだ。そういう深く考えてないところが手に負えない。今日の高座の枕だって、徹夜麻雀の話から飲み会の話に持っていってた。袖で聞いてる岡田は楽しそうだったけど、俺は苦笑するしかなかった。実話が入っててリアル過ぎんだよ。麻雀しながら明け方まで飲んで、路上で寝てるところを散歩中の師匠に発見されたとか。
「剛、芸人は遊ばなきゃだよ。いろんな遊びを経験することで、芸の肥やしになるんだから。」
「お前らさ、特に井ノ原。兄弟子なんだから、もうちょっと模範を示せよ。」
あ、この人バカだ。
「それは俺じゃなくて師匠である坂本くんの役目じゃん。そんなこと言うんだったらさ、アンタ明日の高座に上がんなよ。」
ほぅら、墓穴掘ってやんの。
「それとこれとは話が別だろ!それに俺は、店があるから忙しいの。」
これ、この流れ、ヤバくね?
「ああ、あの職人のワガママでクロワッサン置いてない店?」
はい、地雷ヒットしました。
「テメェ、もういっぺん言ってみろ。」
「何度でも言ってやるよ!アンタ大概ワガママ過ぎ。落語はイヤ、クロワッサンもイヤ。強く押されたらすぐに拗ねる。今日の会議も何?中座?ガキじゃんか!」
「じゃあお前はどうなんだよ!酔っ払って道端で寝んのは棚に上げんのか!そっちのほうがよっぽどみっともないっつーの!」
えー、避難勧告発令です。こんな車の中にいたら、絶対に最終的に巻き添え食らうのが目に見えてる。岡田と目で合図し合って、静かに静かに車から退避。そんなことにも気付かずに、車中は口ゲンカがどんどんヒートアップ。結局さ、2人とも大人気ない。
「健くんにメールする?」
「だな。あと20分は続きそうだし。」
そんなことはどうでもいいからさ、早く麻雀やりに行こうよ。なんて恐くて言えねぇ。だって師匠は井ノ原くんにとって自慢の師匠だし、井ノ原くん、宴興兄さんは師匠にとって自慢の弟子だし、お互いが理想求めすぎて引っ込みつかなくなってる。夫婦喧嘩じゃないけど、犬も食わないね。もう見飽きた光景。本来の師弟関係とは、かなりズレてる。後を引かない分、まだマシだけど。少なくとも、今日の麻雀は荒れるな。井ノ原くんは泥酔するほど飲んで、同じペースで飲んでも岡田は顔色ひとつ変えなくて、よく考えもせずに付き合った健は二日酔いでダウンするに決まってる。本当に学ばない人たちだと思う。いつまでも子供みたい。ああ、だから俺の肌に合うのかも。落語をやるのが一番の目的だけど、実は俺はこの環境が好きだ。なんか、よくね?
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