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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/12/21 (Sat) 07:36:19

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No.223
2008/06/14 (Sat) 23:37:18

短編更新です。

昨日観てきました。『第17捕虜収容所』

蝋マッチに興奮してたマニアはごとうだけでしょうね(苦笑)

やー、健ちゃんって、やっぱり若いですね。
そんなことをつくづく思いました。


出演 : V6










早咲きの花
 
 
 
 昨日、戦争が終わった。
 すべてを失った、戦争だった。
 
 早咲きのひまわりが一面に咲き誇る。咲いても愛でてくれる人はいないのだと告げても、それを嘲笑うかのように。この場所をみんなで歩いたのは、いつだったか、とにかく過去の話。そんな理想めいたことなんて、2度と出来ない。未来永劫、みんながこの場所で集うことは、ありえない。だから今となってはもう歩きたくない。ただ、すべてを終わりにするためだけに、来たのだし。
「ダメだよ、坂本くんが死んだら、本当に全部終わっちゃう。」
「え?」
幻だと思った。その力強い手で、肩をたたかれて気づいたけれど。まだ、すべてをなくしたわけではなかったのだ。
「井ノ原、お前は生きてたのか。」
「うん。剛に助けてもらっちゃった。「アンタが死んだら健がすげぇ悲しむから、だから絶対に死なせねぇ。」ってね、言われて助けられたんだ。」
「そうか。」
「俺を助けたせいで死んだから、もういないけど。」
付きまとう、重い言葉。大切な人の死を、告げる。
「初めて、思ってる。ひまわりなんて大嫌いだ。」
「そんなこと、健が聞いたら怒るよ。」
「健はおとといの夜に、死んだ。」
「そう、なんだ。」
「長野は行方不明のままだし、一番若い岡田は一番に戦死するし、何もかもサイアクの結末だよ、まったく。」
「だから、坂本くんも死ぬの?」
その言葉には笑うしかないけれど、違う。みんながいなくなったことに対して、絶望したから死ぬわけじゃない。それが理由なのだとしたら、まだ死ぬ必要はない。井ノ原だけでも生きていることが、分かったのだ。でも、俺は生きているのがイヤで死ぬんだから。昔痛めた膝の調子が思わしくなくて、戦場に借り出されずに済んだ。そんなマヌケな俺の役目は、みんなが帰ってくる場所を守ることだったのに。何がなんでも、健を助けるべきだったのにそれもできず。こんな時代に、一番大切な場所を守れなかった人間だけが生き残っているなんてみっともない。だからもう終わりたいんだ、この場所で。この場所だから、よもや井ノ原は甘い感傷に浸っていると思っているんだろうけど。
「もしも長野が帰ってきたら、支えてやってくれ。」
「坂本くんが支えればいい。」
「・・・・・戦争は、終わった。でも戦争が始まる前に戻ったわけじゃない。いや、まだ続いているのかもしれない。それが俺の答え。」
「納得できないよ。」
「できなくても、それが現実なんだ。」
「こんなところで終わって、悔しくないの?」
「ああ。」
「この場所で会おうと、約束したのに?」
「そんな青臭いことはしてねぇよ。俺が、勝手に来たんだし。」
「俺では坂本くんを、止めることはできない?」
「できないな。」
「誰なら止められるのかな。」
「誰が止めても、きっと答えは変わらないさ。」
「長野くんでも?」
「長野でも、健でも、他の仲間でも、俺の気持ちは変えられない。」
だって戦争は起こってしまったのだから。
 
 昨日、戦争が終わった。
 今日、俺の戦争が終わった。
 
 坂本くんは、俺の目の前で命を絶った。長野くんは北の戦場で行方不明になって、結局見つかっていない。剛は銃撃戦の真っ只中で、俺をかばって死んだ。健は南の戦場で流行り病に感染して帰国したけれど、結局は回復することなく死んでしまった。岡田は何を思ったのか、さわやかに生物兵器を搭載した戦闘機ごと敵軍の本拠地に突っ込んで死んだ。かつて仲間と一緒に見ていた早咲きのひまわりは満開で、きっとしばらくはその姿を見せつけてくれるだろう。健が好きだと言って憚らなかったひまわり。剛と岡田と3人で、とても楽しそうに世話をしていたのを鮮明に憶えている。長野くんが笑顔でひまわりの種は甘くておいしいと言って、坂本くんがそれを使ったブリオッシュを焼いてくれた。俺は、俺はそれだけが、その日常だけがあれば他には何もいらないとさえ、思っていたんだ。世界のどこかで戦争が起きても、ここで静かに干渉することなく生きていければ、よかった。この、広いひまわり畑のそばで。
 毎年、望まれて咲いていた色鮮やかな花は、無意味なそれに成り下がった。次に咲くときには、いや、今もすでに、望んでくれる人はいないのに。
 戦争には意味があるのかもしれない。新しく始めるために、終わる。だから、誰にも止める隙を与えず、すべてを奪っていくのかもしれない。でも望んでしまうのはエゴだろうか。もしも長野くんが戻ってきたのなら、戦争なんて二度と、起こらないようにと。
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