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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/06 (Mon) 09:29:23

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No.272
2008/10/06 (Mon) 20:15:16

短編を更新です。

『アイドル武者修行2』買いました。

ただ、まだ読んでいません。

「キター!!」
「うわっ!スゲー赤!」

そしてテーブルの上に置きました。
また、じっくりと読み耽りたいと思います。


出演 : 井ノ原 快彦 ・ 長野 博 ・ 坂本 昌行










彩る
 
 
 
赤いなぁ。静かだし赤いし心臓の音がよく聞こえるし。
誰が一番赤が似合ってるかな。
最優秀インパクト賞は誰?
いい意味のインパクトと悪い意味でのインパクトじゃ違う。どっちでもいいか。
見たかったのはこの光景だけだったんだし。
この赤に埋め尽くされた世界を見たくて仕方なかった。絶対に似合うと思ってたんだ。
思った通り。
最高の仲間に出会えて幸せって言うべきなんだろうね。
こんなにも理想通りの赤を見せてくれた。
きれいだ。絵の具じゃ絶対に表現できない本当の赤。
絶対に忘れない。と思う。
どうだろうか。
忘れたらみんな怒るだろうな。その生命と引き換えに見せてくれた赤を。
賭けだ。
勝つのか負けるのか。結末を知ることは決してない。
きれいな音楽が流れてる。エンディングの時間だ。
邪魔されることのない赤を見ながら終わろうじゃない。
・・・・・くすんでない?ぼやけてますけど。
そんな要素はこの場所にはないはずなのに。
何が邪魔をする?理想の赤い世界を穢すのは誰だよ!
・・・・・自分だ。自分の涙。
もう終わらなきゃいけないのに水入りって?
めちゃくちゃダサい。らしいけどね。
全部カッコいいわけじゃないところがらしくて笑える。
リアルはこれだ。視覚のリアル。
そして次に訪れるのは感覚のリアル。
痛みを伴って終わっていく。
ちゃんと赤なんだろうな。まだ腐ってないんだろうか。
確かめる。
力いっぱい突き立てて抉れば見える。真実。
痛いし!
でもちょっといい。
だって見て。
ちゃんと赤い。赤いなぁ。ものすごく赤い。
今までに決して表現できなかった斬新な3人のオリジナリティ。
どう?これは俺たちの勝ちでしょ。
勝った!
俺は俺の選んだ道で満足のいく結果を得てやった!
ザマアミロ!
 
 
 ひと昔前なら世間でお馴染みのリストラ。正確にはリストラクチャリング=企業再構築。格差社会の問題が国会で頻繁で取り上げられて、論争が巻き起こった。かと思えば、あれよあれよとリストラ廃止法案が成立。企業側の一方的な決定による人員削減は、全面禁止となった。しかしそこはイタチごっこ。それぞれの企業が全力を挙げて、人員削減の抜け穴を自力で開拓していく。それは例外ではない、この組織も。
「長野くんって、健のこと気に入ってんのかと思ってた。」
「そんなの昔の話だろ。」
「そうなんだ。」
「あのチームが出来てから、すっかり疎遠になっちゃってたからな。」
「じゃあ今回のリストラも問題なし?」
「ああ。長野は、自分の邪魔をする人間は大嫌いなんだ。」
まっさらなダンボールいっぱいに詰め込まれた薬のシートを数えながら、研究員たちの日常会話。議題は社内事情。どの企業においても言えること。上司の癇に障るようなことをすれば、それなりの制裁を受ける。その制裁の選択肢の中からリストラが削除されたなんて、表向きだけの話。どの企業だって同じ。あの手この手を駆使しては、どうにか余剰人員の削減に精を出しているのだ。削減の方法は、様々だけれど。
「さて、じゃあ社長にギフトをお届けにあがるか。」
「怖いね、あの人。」
「まっとうな死に方したかったら、逆らわないことだ。」
暢気に答え、坂本はダンボールを抱えて研究室を出て行く。その後ろ姿を見て、井ノ原は複雑な心境になった。狂った会社に自分はいるのかもしれない。徹底的に排除して、その存在すべてを消し去るなんて。現時点では他人事。けれど明日はきっとわが身。だとして上手に生きていく手段を早く見つけないと、自分が負ける。負けたくない。あの3人みたいにはならない。
 
 清掃業者が真っ赤に染まった部屋を淡々と片している。その様子をコーヒー片手に見学。アングラでサブカルな映像の世界みたいだ。一昨日、ご飯に連れて行ってやったばかりなのに、もういない。負ける運命だったんだって。長野くんを選ばなきゃ、負けるって気づかないと。そこを見落とした時点で、この惨めな運命決まってたんだ。でも興味ある。なんで健は、10年以上の付き合いの長野くんから離れた?気が合ったってだけで、出会って1年少しの同僚に流れた?長野くんは独占欲が強くて寂しがり屋だってこと、誰より知ってたはずなのに。なんで、自分を拾ってくれた長野くんから離れた?どういう心境の変化で大切な人より、出会って1年少しの同僚に流れた?長野くんが健を守る気でいたって、ちゃんと気づいてたはずなのに。
「面白い?」
「すごくね。俺って血の色が大好きな人だし。」
「それだけ?」
「っていうと?」
「寂しいんじゃないの?親しい仲間が死んじゃって。」
「親しい?やだなぁ長野くん。アイツは、なんだか俺を頼ってワンコみたいに懐いてた。動物愛護はいいコトでしょ。敵意なし。害もなし。だから可愛がってるフリをしてた。別に死んだって、それはそれで構わないっつーの。」
「俺もそうなの?」
「まさか。だって世界で一番尊敬してる人だから。」
「井ノ原はいい子だね。」
「俺は何があっても、長野くんを裏切ったりはしないよ。」
「彼ら、なんで『music mind』ってチーム名だったの?」
「岡田が大学時代に入ってた、軽音サークルの名前らしいよ。」
「単純だね。」
確かめに来たんだ。裏切り者が残っていないかどうか。その辺り抜かりなくて、すごい。関係ないけど。だって裏切るなんてありえないから。長野くんが俺を捨てない限りは、ありえない話。
「新しく研究を始めた薬、もう予約が入ってるよ。」
「いつ完成する。って明言できないのに?」
「井ノ原は優秀だから。」
「お褒めに預かり光栄です。」
これはプレッシャー。会社の名前に、長野くんの名前に泥を塗ったら許さない。という。「失敗したらリストラするよ。」そう言ってる。目の奥が笑ってませんから。
「今日の予定は?」
「新薬の実験とデータ採取。」
「坂本くんと3人で、駅前のハロウィンイルミネーション見に行かない?」
「いいよ。」
「よかった。じゃあ後で。」
井ノ原の肩をたたいて、長野は行ってしまった。いつの間にかあらかたの片付けが済んだ部屋に視線を戻す。
「あーあ、消された。」
呟いた井ノ原は、愉しそうに笑っていた。
 
 捨てられなければ裏切らない。捨てられるくらいなら、ブチ壊してやる。世間はハロウィンでお祭りモードだよ。お菓子をくれないのなら、報復してやる。いたずらじゃないのかって?そういうの、子供騙しって言うんだよ。
「なぁ、決まった?」
「もちろん。坂本くんは?」
「決まったよ。長野が推薦しといてくれた。」
「じゃあ4月には、お別れだね。」
「だねぇ。」
長野くんは突然言い出した。製薬部門から撤退すると。つまり、製薬部門のスタッフはお払い箱になるってこと。俺は長野くんに見限られたってこと。新しい就職先は斡旋してくれたけれど、そういうことじゃない。感じてしまったから。捨てられたって。
「大丈夫か?」
「何が?」
「本当はあの3人に薬なんて、使いたくなかったんじゃないのか?」
「そうだよ。って答えてほしいの?」
「平気、だった。」
「当たり前じゃん。裏切り者には報いを。だよ。」
「怖い薬もあったもんだ。幻覚で仲間同士殺し合わせて。」
「怒ってる?」
「心配してるんだ。」
「俺が心を痛めてないか?って?痛めないよ。だってアイツらは、っていうか健は、長野くんを裏切った。」
「そう、お前は裏切らなかった。でも、長野はお前を必要としなくなった。」
「そんな気分のときもあるって。」
「寛大なんだな。」
「尊敬してる人だもん。」
正確には、尊敬してた人だもん。
「今日、来るか?」
「行くよ。長野くんのお誘いだから。」
世間はハロウィンだし。長野くんに確認しなきゃいけないことあるし。長野くんに伝えなきゃいけないこともあるし。びっくりして、ものすごく悲しくなったんだよ。この世の中に永遠に続く絶対はないって、長野くんは言ったよね。だから分かってほしいって。分かったよ。その上で、俺は結論を出したから。ちゃんと理解してよね。俺をただの都合のいい下っ端社員だと思っていたなら、残念。読み違えたあなたの負け。さぁ、今夜が楽しみだ。
 
 朝からずっと、分厚い雲が空を覆いつくしてる。淡いグレー。俺が脳内でエンドレスに見ているのは、赤い映像。あの映像。一番最初は剛、健に刺された。二番目は岡田、健に刺された、何度も。何度も。岡田と健のシーンは興奮する。だって健は笑ってるんだ。「勝つのは俺たちだ!」って叫びながら笑ってる。もうとっくに負けてることに気づきもせずに。馬乗りになって岡田を刺した瞬間の笑顔なんて、狂気。しかも最期には、自分の心臓を自分でえぐったって言うんだから。赤の中に沈む瞬間に動いた口の形なんてマニアックすぎて神だよ。「ザマアミロ」って長野くんに、捨て台詞残しちゃったんだから。綺麗だな。体の奥からあふれ出してくる、黒みがかった赤。この色が一番綺麗。見たい。もっともっと見たい。こんな曖昧な映像でなく、ライブで見たい。この目で、赤く染まる鮮やかな世界を見たい。
 携帯のアラームが鳴る。時間だ。空は、どこか重苦しい。ってかスゲー風、吹いちゃってるし。寒そうだな。すっかり薄暗くなっていて、外に出るのが億劫で仕方なくなる。でも俺はあなたを見逃したりはしない。ああ、長野くんも最期には、笑うの?
 
 ベタな家族連れとすれ違った。どこかで配っているのだろう、カボチャのお化けを象った風船を持つ子供をちらほら見かける。街路樹にはオレンジをメインにした電飾。世間はハロウィンなんだ。風が強くて、顔を前に向けるのも憚られる。でも、少し視線を上げただけで、辺りが薄暗くてもちゃんと分かった。ずっと一生懸命、追いかけてきた後ろ姿。同じ場所へ向かっているのだから、ずっと目の前を歩いている。着込んでいる白いダウンジャケット。それは演出?
「長野くん!」
振り返らない。声は届いていても、あの人は振り返らないし足も止めない。いつもそう。誰かの呼びかけに応じるような素振りは見せない。用があるならそっちから来るのが筋だなんて、そういう風に考えている人。だから少し走って、肩を並べて歩けるように追いつく。でも長野くんは黙々と歩いてる。ちょっと背中を丸めて、両手はポケットの中。この寒さに抗議してるようだな。と思ったら笑える。
「ハロウィンのお菓子、買った?」
「買ったよ。」
「また甘いものばっかりチョイスしたんでしょ。」
今年は俺も用意してるけどね。特別なモノ。驚かせる自信、あるよ。
「寒いのって嫌い。」
「長野くんさ、毎年言ってるよね。特にメリットがないから、でしょ?」
「それにさ、検体の管理も手がかかる。」
「製薬部門から撤退したら、関係なくない?」
「それに、みんな風邪を理由に簡単に欠勤するから嫌いなんだ。高熱が出て起き上がれなくなるまでは、いい大人なんだから仕事してもらわないと。」
「そんなもん?」
「俺はフェアじゃないことは、好きじゃないよ。」
「フェアじゃないこと、ね。」
あなたがそれを言うなんて間違ってる。だって真っ先に逃げた。自分で始めた新薬のいかがわしい仕事を、勝手に否定して。いいだけ人を巻き込んでおいて、あっさりやめるなんてズルイ。俺をずっと、縛り付けて利用したくせに。裏切ったら許さないって、口に出さなかったけど思ってたくせに。今さら正統派ぶる。身勝手な男。俺はあなたを、信じていたのに。あなたを、尊敬していたのに。
「白のダウンジャケットなんて、珍しいね。」
「貰い物。」
「赤が映える色じゃないと。って感じ?」
「は?」
「今日はハロウィンなんだから。」
「だから何・・・・・いのは・・ら?」
「お菓子かイタズラか。なんてね。」
お菓子を与えるコトを拒んだら、こうなるんだよ。仲間同士で殺しあう光景を見ているよりも、ずっとリアル。直接この手に伝わる、大降りのナイフが人間の体を引き裂く感覚。このまま回せばもっと血が出る。きれいな色があふれ出す。長野くんは意表を突かれた表情。驚いてもらえた?俺からのハロウィンならではのサプライズ。思わずポケットから出した手が強く、俺の肩をつかんでくる。声が出せないのか、目で饒舌なほどに責めて。
「先に裏切ったのは、アンタだ。俺を、捨てるから。」
血を吐きながら、口がかすかに動いている。言いたいことは山ほどあるんでしょ?俺も同じだ。けど言わずに、行動で示してみました。だって言った所で、あなたの気持ちは変わらないことは知ってるし。
「本当に、心から信じてたし尊敬してた。」
少しずつ手の力が弱まってきてる。俺は笑顔で長野くんの体を、押してみた。容易く崩れ落ちて、それでも長野くんは俺を見ている。
「これがお菓子をくれなかった意地悪な大人への仕返しだよ。」
あなただけのために、考えた。
「世の中、何でもギブアンドテイクで成り立ってるものでしょ。お菓子も用意せずに平穏にやり過ごそうなんて、随分と虫の良すぎる話だと思わない?俺も坂本くんも、長野くんに好き勝手利用されて捨てられることに、黙ってられない。健と同じくらい、ううん、健よりも赤が似合うよ、長野くん。」
痛いでしょう?俺も同じくらい痛いんだ。怒ってるよね?俺だって怒ってる。でも、俺は今、ものすごく笑顔。俺を裏切って捨てた人に、報復できたから。思い知らせてみました。どれだけ、あなたが酷いことをしたのかを。
「落ち葉よりも紅くて綺麗だよ。秋に相応しい。」
風に逆らうことなく降り続ける紅く染まった落ち葉が、きっとそのうちこの赤を覆いつくす。それまで、見てる。俺を裏切った人間が終わっていく姿を、見てる。見終わったらどこへ行こう。今度は裏切らない人を探したいな。傷つかない場所へ、行きたい。新しい光を手に入れないと。だって、今、失ってしまったから。
 
 
駅の大型ビジョンではニュースが流れていた。
都内の会社社長が、路上で誰かに殺されたらしい。
その犯人、俺なんですけどね。
けどね、被害者の人は自業自得なんだ。
裏切り者だから。
お菓子かイタズラか?その選択肢から目を逸らしたから。
そう、ハロウィンカラーを赤に染め直したのは俺ですが、何か?
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