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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/06 (Mon) 09:41:13

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No.264
2008/08/27 (Wed) 22:29:54

アンラブリンク祭り『掛け合い企画』出展作品です。

ガコイコ!!
どうなってるんですか、ツートップ!
どうなってるんですか、イノ健!

肝試しの2組に絶叫いたしましたよ。
特にね、イノ健。
武者が登場するなり二手に分かれるってどういう了見ですか!
武者が困っていたじゃないですか(笑)。
しかもイノはゴール後汗だくという。

なんでしょうね。
まぁ構成は・・・・・・・ね、さておいて。
とにかく肝試しを見れただけで、お腹いっぱいになれました。


出演 : 井ノ原 快彦 ・ 坂本 昌行 ・ 長野 博(名前だけ)

     ※解説はお祭り参加時のものです。









わるいひと
 
 
 
 予め必須の情報として聞かされていたとはいえ、実際にそのものを目の当たりにしたときの嫌悪感は否めない。やはり彼、長野博は精神の深い部分で強靭な核を持っており、そこには外部からのいかなる力にも屈しない防御力の高さがある。もしも彼が存在を失えば悲しむ人間は多分に存在するだろう。それこそが彼の歩んできた時間の価値で、世間という大雑把な括りに属する人間からの彼に対する評価なのだ。
 
 長野博は『支配者』の異名を持つ。
 
 一介の高校教師が安定した日常を築くために選択する方法だとは考え難い。たまたま運が良かっただけだ。その幸運を利用し進んだ道は、この世における倫理を根底から逆走する悪道。冷静に判断すれば、虚構は簡単に見抜けるものである。しかし明るみにならない澱んだ実態は、暗黙の『見て見ぬフリ』というルールに守られていた。例え人間が強欲の象徴的存在であったとしても、一方通行のメリットを望んでいたとしても、自分に大いなる利益を齎すのだと知れば安易に「ギブアンドテイク」というスタンスへと寝返ることが出来るのだ。彼はその心理を巧みに利用し、飄々と笑える塊。あるいは異形の神。邪神とでも呼ぶべきか。
 
 「小難しいこと書いてるねぇ。」
その後の展開など一切考えることなく、堆く積み上げられた書類の上に置かれたカップ。見れば並々とコーヒーが注がれ、表面は不安定な揺れを終えることがない。慣れた。これはいつものことだ。書類がその液体の被害者になる前に、坂本は慎重にカップを自分の手元まで運ぶ。親切心と無神経が紙一重の同僚、井ノ原はイスを隣りに配置し、パソコンの画面を緩みきった笑顔で覗き込んでいた。
「これ、おもしろいの?」
詳細に渡る説明は必要としない。何度も何人もの人間から投げかけられている質問だ。そして井ノ原もその面子に漏れることなく含まれる。坂本自身が一番に意味を理解しているだろう。
「どうしてさ、坂本くんは持って回ったややこしい文章を書きたがるかな。ウチはただのお気楽雑誌なんだよ。このネタ、すごくおもしろいのにもったいない。」
坂本が理解しているのは井ノ原の質問の意図だけではない。自分がどれほど見苦しい悪足掻きを繰り返しているかも、些細なプライドにしがみついていることも、自らの価値観を多少なりと変化させることを恐れていることも、この記事が、日の目を見る日など来ないことも。
「俺には理解出来ない。長野博は、現代社会に巣食う悪性ウイルスだ。」
堅苦しい表現はさらに井ノ原の苦笑を色濃く変えた。もう大多数の人間は、坂本については見放したも同然なのだ。政治経済ばかりを扱うビジネス誌を10年以上も担当してきた人間が、カルト系の野次馬根性丸出しなマイナー雑誌の担当に配置換えを受けた。誰もが無理だと分かっている強引な人事。経営に関わる「偉い人」と俗に称される人間の事情がふんだんに盛り込まれ、明らかにとばっちりを受けた辞令。それにヘソを曲げて仕事を蔑ろにする気はないが、坂本にはどうしても馴染めない。娯楽染みた軽いノリの雑誌には、当然の如く綴られる適当な文章。否定はしないが馴れ合う気もなかった。今、こうして何度となくボツを食らっている記事は社会問題に値する。他人を欺いて私腹を肥やす汚い人間を、暴こうというのだから。
「これってさ、善悪着けにくいよね。だって気持ちだけの善意より、形ある偽善でしょ?」
「・・・・・世も末だな。」
「そう?やり方はどうかと思うけどさ、行動に移してる点では評価できなくない?」
「問題視すべき倫理に反する隙が少しでもあれば、それは悪なんだよ。」
「ふぅん、つまんない。」
何度言われただろうか聞き飽きた言葉のはずが、なぜか井ノ原の口から吐き出されたそれは、途端に坂本の信念に小さな亀裂を入れた。今までとは違う種類のものを吐きつけられたからなのかもしれない。不快にさせてしまったのではないかと、妙な焦りさえにじみ出てくる。確かに、この手の雑誌を好んで手に取るような人間が、果たして世間に対して誠実さを求めているだろうか。純粋な正論を戦わせることを望んでいるだろうか。答えは、否だ。だから雑誌は売れているし、熱心なハガキ職人も少なくない。
「俺の中で、長野博は「悪」だ。」
「みたいだね。」
「だがそれはアクマで俺の主観であって、全体の評価じゃない。」
「うん、それで?」
「だから新しい部分を開拓するのは、どうだろう。」
「長野博の?」
「ああ。例えば彼が外部からは見えざる部分に抱え込んだ影、とかな。」
自らの人生に不協和音を響かせる、彼の正体をひとかけら残すことなく晒せばいい。晒す手段が面白おかしいものであれば誰かが悦ぶのだろう。結果として悪を排除するに繋がれば、自分が満足するだろう。ならば選ばない。もうくだらない執着心とは決別だ。
「坂本くんが書くの?」
「書くよ。だからお前は助言しろ。」
「分かった。」
 
 何故すべてを善悪で振り分けようとしているのかは自分でも不明で、潔癖が過ぎるだけなのかもしれない。長野博の情報が坂本の中に取り込まれた瞬間、脳はその人間の悪い膿を暴けと信号を送ってきたのだ。そういえば、一度だけ以前の部署で謹慎を食らう危機に直面したことがあった。当時の外務大臣が愛人を介して某企業と癒着している。そんな内容の記事をやはり非難たっぷりに書いたときの事だ。裏付けは完璧に済ませていた。愛人と都内の高級中華料理店で食事をし、その後はホテルに消えていくというお馴染みのコースの写真も押さえた。そんな大きな記事が上の怒りを買ったのは、坂本の過剰な取材に対するクレームが、秘書の一人から寄せられたからだったと記憶している。悪いものを認めることが負けのような気がして、無償にそれらを叩き壊したくなってしまうのだ。
「おもしろいこと、教えたげよっか。」
これから到底おもしろい話が始まりそうな雰囲気など一切なく、井ノ原が話を切り出す。
「長野博には、パトロンがいっぱいいるのは知ってるよね?」
「ああ、何となくな。」
「その中に、ウチの会長もいるんだよ。」
「は?」
「お孫さんがね、ハマってるんだってさ。あの人、孫に弱いから。」
暗に長野博の記事はやめておけと、ほのめかしているのか。ここまで背中を押しておいて今さら、保身に走るほど自分が可愛くて仕方ないと?
「で、俺にどうしろってんだ?」
「別にぃ。記事にしたって、ウチのデスクは使ってくれる。面白ければね。ただ、雑誌ごと消されちゃう可能性は大きいって事。」
「何が言いたい?」
「坂本くんなら、そこまで捨てる覚悟はできると思う。ただ、一応は意気込みを確かめてみようかなぁって。」
「愚問だな。俺は外務大臣のスキャンダルを取った男だぞ。お前こそいいのか?」
「俺は左遷慣れしてるから大丈夫!子育て本の担当にされたこともあったんだから。」
自慢気に自分の汚点を披露する井ノ原に、思わず坂本は笑ってしまった。左遷されることに慣れてしまうほど経験はあるから、大丈夫だと言う変な男。ビジネス誌とは根本的にカラーが異なる。悪を読者の好奇心を駆り立てる方法で、面白おかしく暴くようだ。ベクトルは同じくしても、手法が違う。坂本はこれまでに自分が書いてきたものが、ここではいかにチープだったかが、やっと理解出来た。
「書いてやるよ。最高に楽しい記事を。」
形ある偽善の上に胡坐をかく、長野博の実態の記事を。
 
 『カルト教団「ひかりのはこぶね」主宰、長野博ってどんな人?』
 
 随分と砕けたタイトルで坂本の記事が巻頭を飾ったのは、翌月号のこと。これには読者やマスコミからの反響も多く、ひっくり返るような騒ぎになった。その記事中のセンテンスを区切るタイトルの一つとして、井ノ原の言葉が使われていたことがすべてを物語っている。善悪を判断する基準は人によって異なり、曖昧なものだ。相手を単純に巨悪の根源としてのみ捉えることも方法としては間違っていないが、多角的な目線で解体することもまた間違いではない。坂本は掲載された記事を読み、ずいぶんと自分を助けてくれた同僚の姿へ視線を動かした。読者からの投稿ハガキで盛り上がりながら、次こそは坂本に負けない記事を書く。と息巻いている。ひとつ、大きな貸しができたらしい。
「井ノ原、メシおごってやるよ。飲みに行こうぜ。」
もっと広い視野を持つべきだ。至極普通のことを年下の同僚に、教わった。それはなぜか悪い気がせず、どこか清々しい理由については、またいずれ考えることにして、坂本は井ノ原と連れ立って会社を出た。
 
 
 
 



 
 
*************************
 
 
 
 
 
 掛け合い企画でした。
 思いのほか難しかったですね。
 誰と誰の掛け合いにするかで、大いに悩ませていただきました。
 セリフの響きとしては、ツートップ系でしょうか?
 長野氏をブラックキャラに仕立て上げたかったので、このようになりました。
 
 ちなみに、裏設定としてイノが担当している記事は、
 『白いメリーさんを探せ!』
 です(笑)。
 有名な都市伝説ですよね。
 つまり2人の担当する雑誌は、そういう雑誌です。
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プロフィール
HN:
ごとう のりこ
性別:
非公開
職業:
妄想家
自己紹介:
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