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V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/13 (Mon) 12:35:25

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No.249
2008/08/02 (Sat) 23:54:43

短編更新です。

V6のライブツアーがスタートしているようですね。
行かれたみなさまは、存分に堪能されたのでしょうか。

新曲も披露されているということで・・・・・
行きたい。
行けませんけどね。


出演 : 井ノ原 快彦 ・ 坂本 昌行 ・ 長野 博 






Nonsense Work
 
 
 
 取引先との打ち合わせがあって、ずっと大阪にいた。会議のために東京に戻ってきた日もあったけれど、井ノ原と会うことはなかった。本当に久しぶりに会ったから、気付いてしまったのかもしれない。他のメンバーは何も変わった素振りは見せていないのだから、きっと自分だけが。
 2日ほどは様子を見てみた。周囲が鈍感すぎるのか、本人の芝居が秀逸なのか、それとも、職場を同じくしても大量の仕事に忙殺されているから何も気付けないでいるのか。少し離れて見ているこちらからは、明らかにそれが分かっているのに。いっそ言ってしまったほうがいいだろうか?いや、それには事情がはっきり把握できていないし、自分だってちゃんと報告されたわけでもないのに、不用意に隠し事をみんなの前で暴くような真似は出来ない。いたずらに事態をややこしくかき回してしまうだけどろう。でも、このまま隠し通しておくというのも、きっと後からややこしいことになるに決まっている。だったら、どうすれば・・・
(そろそろ潮時か・・・。)
1時間以上も続いた久しぶりの6人での書類の読み合わせが終わって、それぞれがバラバラと席を立つ。このあと、また各々が担当する仕事をこなすために散ってしまう。今日もまた気付かなかった。この先6人で揃って話をする機会がずっとないわけじゃないけれど、早く真実に気付かないと、何かが手遅れになりそうな気がしてならない。やはりはっきりと言うべきなのか。今ならまだ、全員を引き止めて、言える。
「井ノ原、急いでる?」
「ううん。」
「ちょっといい?」
「大事な話?」
「ああ、ちょっとね。」
「分かった。課長、ミーティングルーム借りてもいいですか?」
「どーぞ。」
いつになく真剣な表情で動いたのは、長野。坂本は平然を装いながら、ひどく気にかかっていた。ちゃんと気付いた?それとも別の用件?中に入っていく2人の姿をじっと目で追っていた坂本は、ドアが閉まったことを確認して、ドアの横の壁にもたれる。気付いて欲しいけれど気付いて欲しくない。いずれも厳しい選択なのだ。仲間を欠くのは大きな痛手だと思う。ここで立ち止まってしまうなど、戦わずして負けたみたいで悔しいから。
 
 
 自分で自分を追い詰めることがどれほどのストレスになるのかなど考えず、死に物狂いで仕事をこなしたところで結局、残るのは疲弊した自分だけ。会社は社員を一人切ることなど大した事だとは捉えてくれないに決まっているし、そこまでに及べば、もう事態を好転させるべく手を施せる人間はいなくなってしまう。世に言う、手遅れ。予めそういう展開が予見できるならば、防ぎたいと望むのは仲間ならば当然の人情である。
「大事な話って?」
「・・・・・単刀直入に言っても、いい?」
「何だよ、どうしたの?」
「右目、おかしいんじゃない?」
「長野くんは鋭いね、まったく。」
長野の問いに、苦笑しながら井ノ原はメガネを外した。一見、何も変わったところはない。そう、見た目には何も分からない。みんなが気付かないのも無理はない。でも、少し気を付けてみれば分かる。井ノ原はこのところ、不自然にも左目だけですべてを見ようとしていることが。
「調子、悪いの?」
「っつっても、ちょっとだけだよ。」
「本当は?」
「だから、見えにくいかな?ってだけだよ。」
「下手な嘘つかないで。」
「・・・ほとんど、見えてない。」
予感はしていた。そんなことかもしれない。何があっても平静を装って、ちゃんと話をするんだと決めていた。のに、実際に本人の口からその事実を聞かされてしまうと、
「いつから?」
「先週の木曜日、階段から落ちて頭をぶつけた。その時に、どうにかなったんだと思う。」
「・・・・・ってエレベーターが故障してた日?」
「そう。どうしてもすぐに11階に書類を出しに行かないといけなくて、そうしたら上から同じように急いでる感じの女の子が駆け下りてきて、ぶつかった。あ、女の子は大丈夫だったみたいだよ。尻もちだけだったし。」
「それで?」
「階段から落ちたけど、書類をとにかく出したくて、11階まで行ったよ。そうしたら俺を見るなり本部長が慌ててさ、流血してるところを手当てしてくれた。」
「労災の申請、もちろんしたんでしょ?」
「総務業務部にいる同期に頼んで、こっそりね。」
「で、同じ部署であるみんなには隠してる。」
「新しいシステムに切り替える準備で立て込んでるから、余計な心配事は増やせないよ。」
「なるほど。」
言ってもらえなかったことが悔しいのか腹立たしいのか、イライラがどんどん湧き上がってくる。その感情をすべて言葉にして吐き出してしまえば、きっと大口論になるだろう。長野は持って行き場のない気持ちを押さえ込もうとして、黙り込んでしまう。
「大丈夫だよ。大したことない。」
そういう嘘は誰のためにもならない。大したことなら充分にある。右目がほとんど見えていないのだ。普通なら、病院にも行って、きちんと精密検査をして、治療のために必要ならば入院だってあるかもしれない。いずれにせよ毎日パソコンに向かって、プログラムの直しなんてやっている場合ではないことなど、考えずとも分かることだ。
「全然見えないわけじゃないし、左目はちゃんと見えてるし、みんな気付いてないし、コンタクトを眼鏡にしたことなんてさ、俺がドライアイが酷くて。って説明したら誰も突っ込んでこなかった。心配することないって。」
気付かないメンバーには、ずっと隠しておくつもりだ。自らの過失で、ほとんど右目が見えていないという、とんでもない事情を。4年も一緒に仕事をやって来た仲間なのに。そもそも、誰も気付いていないのはどうしてなのか。自分以外はみんな、ずっと井ノ原と一緒に仕事をしていたのに。あえて誰かがバラさないと気づかないなんて。冗談じゃない。だったら6人が仲間だなんて、嘘っぱちも甚だしい。
「だからさ、長野くんも黙っててくれないかな、みんなに。」
「ヤダ。」
「頼むよ。ウチの部署にとって、大事な時期なんだ。分かってるでしょ?」
「隠し通す自信なんてない。」
「前回の管理システムの成功がマグレだったとか、誰にも言わせたくない。もっと上を目指して、みんなが優秀な社員なんだって認められるには、成功が必要だよ?」
「そのために、井ノ原が右目を捨てるの?」
「最優先にするべきことが、今は新システム準備なんだ。」
「俺は言うから。」
「長野くんっ。」
「お前の犠牲の上に成功を無理やり作り上げて、何を喜べるって言うんだ!お前は確かに今回のチーフだけど、俺たちの踏み台じゃないんだからな!」
「剛と岡田は週に何度か、会社に泊まりこんでる。健だって毎日帰るのは終電なんだ。それを逃して、俺の部屋に泊まることだって少なくない。みんな新システムを成功させるために他の時間をギリギリまで削ってるのに、俺だけが勝手は許されないだろ。」
「休め。」
「は?」
「治療に専念しろ。仕事も大事だけど、優先順位を今回は明らかに間違えてる。」
「休まない。」
「休め。」
「絶対に休まない。」
「あー分かった。したら今から、課長に報告するからね。で、課長に判断してもらえばいいんだよ。課長の決めたことなら納得せざるを得ないだろうし。」
「待ってよ長野くん!俺自身が大丈夫だって言ってるんだからさ・・・・・」
あまりにも食い下がる長野に困惑気味の井ノ原の言葉を、ドアの開く音が遮った。ドアを開けたのは、今まさに話題に登場した人物。
「ちょっといいか?」
坂本の登場で井ノ原も長野もうつむき、部屋の空気は一気に凍りつく。坂本は努めて穏やかな表情で、長野の隣りに座る。一番知られたくないと思っていた人間が、自ら登場してしまった。
「目、悪くしたんだって?」
「はい。」
「病院には行ったのか?」
「いいえ。」
「困ったなぁ。このままじゃマズイよなぁ。」
「あのっ、あの・・・・・。」
「みんなに隠して、本格的に見えなくなってから言うつもりだったのか?」
「それは・・・。」
「まぁ、俺は気付いてて黙ってたんだけどな。」
「え?」
「課長、知ってたんですか!」
「普通は気付くだろ。気付かないお前らの方を、俺はおかしいって思ってたぞ。」
坂本は涼しげに、薄く笑って井ノ原に向き直る。井ノ原の口からちゃんと話せということなのだろう。こんな風に追い込まれてしまったら、もう話すしかない。逃亡するなんて大胆な選択もなくはないが、後々のことを考えると却下だ。
「新しいシステムは、どうしても成功させないといけないんです。」
大きな成功の後に続く仕事で、誰にも隙なんて見せられない。
「これを乗り切って、俺の目がもっと悪くなっても、みんなそれぞれにちゃんと自分の地位を持っていて、ウチの部署だって、新システムが軌道に乗ればかなりの余裕が出来ると思うし、そうなればたかが俺一人がリタイアしたところで、誰にも被害は及びません。」
「今の為に、自分の未来は切り捨てるのか?」
「未来がどうなるかなんて、考えてたらキリがないと思うんです。今を一生懸命やっておかないと、きっと明るい未来なんて来ないでしょうしね。」
「後悔はしない?」
「それは分かりませんけど、新システムが実働を始めるまでは後悔しません。」
「そうか。長野、井ノ原はこう言ってるけど、お前はどうなんだ?」
「・・・・・よっちゃんはさ、変なトコ頑固で困る。自分のことは蔑ろにしてばっかりだし。みんなにとっては「たかが」なんて表現できるほど簡単な存在じゃないんだ。けど、まぁ、ね、もう譲らないぞ!って多分、自分の中で決めちゃってる感じだから、俺が何言ったってさ、よっちゃんは聞く気なんてないんでしょう?」
「ない。今は、一歩だって引けない。」
その意志の強さは、真一文字に引き結ばれた口とまっすぐな視線で証明されている。長野が諦めたようにため息をこぼせば、坂本は苦笑交じりに言った。
「いいだろう。俺たちはそれに応えるために、必死で走るしかないんだ。ここまで一生懸命な気持ちを無駄には出来ない。かと言って仕事を優先させた結果、降りかかってきた結論をたとえチーフだとしても、井ノ原一人に背負わせるわけにはいかないだろ。俺たちは6人で人事部システム統括課だって、決めたんだからさ。」
「課長。」
「その方向で行くための条件。ちゃんと6人で話し合って決めるぞ。いいな?」
「・・・・・。」
「井ノ原?」
「・・・・・。」
「6人でチームなんだ。」
「はい。」
「だったら話すのが筋だろう。気付かないのもどうかと思うけど、だからって隠すっていうのはよくない。あとでモメるのが目に見えてる。その上で困ったことが出来たら、俺がちゃんと協力してやる。だから、話せ。」
「・・・分かりました。」
「長野も、こうなった以上は井ノ原の力になってやってくれよ。」
「当たり前でしょう。協力できないなら、ここまで譲歩はしないよ?」
「ああ。」
「システムについての企画を起こしたら、必ず井ノ原に任せればまず安心だとかいう意見が出るけどさぁ、この子がとにかく一番手が掛かるんだよねぇ。だからって、いてくれなきゃ困る存在なのは事実だし、大体あとの3人を納得させること考えたら大変だしさ、もうね、どっちでもいい。1人大変なのも、みんな大変なのも変わらないんじゃないかって思うことにするよ。だからよっちゃんは、ね、好きにすればいいんじゃない?謝らなくていいからさ、誰もが絶賛するようなシステムをまとめあげて、誰にも文句言わせなきゃいいんだって。他の3人がゴネたりして立ち往生しそうなら、ホラ、課長がいるから。もう何も気にすることなんてないんだ。って思っていいんじゃない?」
それは全然うまくない言葉。でも心はあって、井ノ原の支えには成り得る。だったらむしろ、ここでバレてよかったんだと井ノ原を安心させた。この先、目が見えなくなっても、すんなり目が回復しても、同じこと。この長野の言葉を思い出せば、くじけそうになっても克服するのはそんなに困難なことじゃないと、言える。思わず手を差し伸べてしまった坂本にも、それははっきりと分かった。自らの困難を克服する術は、必ずしも自身の中だけで都合しなければいけないわけではない。時には仲間や近しい人の手を借りて、いいのだと。
 
 
 何日か後に、課内でのミーティングを早急にやりたいという井ノ原の申し出を坂本は受けた。システム稼動に向け、最終的な追い込みを誰もがかけている。1分1秒だって惜しい。そんな忙しい最中に大丈夫なのか?と聞き返そうとしたが、やめる。せっかくその気になったのなら、いい機会だ。緩衝材なしで本気でぶつかってみることも必要。6人が納得した結論で進まなければこの部署は、本当に進んだことにはならない。最悪は人事部本体が、どうにか進めてくれるだろう。なんて保険は抜きで、進むことが出来ればそれは本当の意味での進化。その進化の過程に加担してみたい。どうです?俺たちはまた、高みへ一歩近付きましたよ。そう言えるチャンスを手にしてみたい。一度は信じて、背中を押したのだから。
 パーテーションで仕切られただけのオープンスペースで行ったせいか、臨時ミーティングの現場を見かけた人間は多かったようだ。偶然見かけたという何人かの人間が、深刻な表情で坂本のところへやって来た。えらく6人の雰囲気を危惧して。
「なんか、この世の終わりみたいな雰囲気でしたよ。」
なんて表現するものだから、話し合いは端から見れば尋常ではない雰囲気を醸し出していたのだろう。けれど坂本は平然と構えて、言った。
「大学の部活じゃないんだからさ、そういうのもないとダメなんだよ。お前らも、たまには課内でそういう話し合い、してみたら?」
でないと、いつまでも本当にはなれないだろう。無難な馴れ合いの繰り返しだけでは、ホンモノにはなれない。
 半日近くも話し合って、半ば井ノ原が強引に押し切り、長野が援護する形で話は落ち着いた。その場においてはしぶしぶ納得したが割り切れなかったのか、三宅はそれから3日ほど不機嫌だった。けれど坂本は何も求められなかったから何も言わず、静観。壊れるときは何をしてもいずれ壊れる。自分たちはそうではないことを、相変わらず忙しなく仕事をしている様子で見て取ることが出来たけれど。いつもと変わらない風の、仕事風景。
「大きな賭けです。みんな、真剣でしょ?」
「そうだな。」
こっそりと井ノ原と岡田のシステムの詳細に渡る摺り合わせを覗き見していた坂本に、気配もなく近付いてきた長野が言う。真剣に仕事をするのは当たり前で、どんな状況でも差をつけてはならない。そう言おうとも一瞬考えたが、言わないことにした。
「俺はさ、今後も井ノ原にはこうやって、みんなをまとめるポジションを担ってもらいたいと考えてる。長野的にはどう思う?」
「それがベストですよ。」
井ノ原はパソコンに取り込まれた書類に食い入るような視線を送りながら、ときどき眼鏡をずらして目を気にしていた。それを目敏く発見しては、「5分休め。」と三宅が井ノ原をパソコンから引き剥がしている。岡田の実家から会社に大量のブルーベリーが届き、森田は目にいいとされる食べ物の情報を仕入れては、それを摂取できるようなランチに井ノ原を強制連行しているようだ。何がきっかけで絆が深まるかなんて分からない。坂本は長野が仕事に戻ったあとも最後まで、その日の5人の様子を見続けていた。
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