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出演 : 井ノ原 快彦 ・ 坂本 昌行
かれにはあかがにあう、おれにもあかがにあうかな?
イチゴの季節はもう終わりだ。
けれどスイカやトマトの季節がやってくる。
初物のスイカを抱えて、彼が帰ってきた。真っ黒のそれは、とても珍しく、なかなか手に入らない高級品だと嬉しそうに話す。
価値なんて、どうでもいい。ただ「あか」ければ、それでいいのに。
大ぶりの包丁で豪快に切られたスイカに、イライラした。
違ったから。「あか」じゃなかったから。
カスタードクリームを思わせるような黄色いスイカ。黄色は彼には似合わない。
だったら、「あか」に変えればいい。「あか」はみんなのすぐそばにある。とても簡単に広げることができて、きっと一番本当に近い色だ。
皿だ塩だと彼はキッチンに行ってしまった。俺は、黄色を「あか」に変えた。置きっぱなしにされていた包丁で、さっくりと手首を切るだけでいい。ほら、簡単だ。鮮やかなほどに「あか」が広がる。
豪快に皿を落とす音が響く。割れたな、確実に。
「何やってんだ!」
あれ、なんで怒鳴るの?「あか」を塗りたくっただけだ。似合う色に、変えただけ。
「お前っ、井ノ原っ、なんで自分の手なんか切ってんだよ!」
触れた手に「あか」が伝わる。ああ、やっぱり、
「坂本くんには「あか」が似合うから。」
「は?」
「坂本くんには黄色よりも「あか」のほうが似合う。今だって、ほら、見てよ。手が「あか」になって、きれいだよ。」
「とにかく救急箱、いや、救急車か?」
「どうして?なんで慌ててるの?「あか」はイヤ?」
今にも泣き出しそうな表情でオロオロしている理由を見つけることが、出来ない。一番似合う色を纏っているのに、なぜそんなにも悲しそうに眉間に皺を寄せているのか。
「こんな赤、似合ったって嬉しくねぇんだよ。」
ああ、そういうことか。これだけじゃ、まだ彼を満足させてあげられない。もっと視界を一面に覆う「あか」がないと。
「坂本くん、じゃあこれでどう?」
Tシャツの上から、包丁で強く鎖骨の下をなぞった。彼がさらに「あか」で染まる。
「いの、はら?」
「きれいだ。すごく、似合ってる。」
彼には「あか」が似合ってる。
最期に見た彼は、今までで一番「あか」で、本当に心から思えた。きれいだと。ただ残念だったことがあるとしたら、悲しそうな泣き出しそうな表情だったことだろうか。もう一つ、そう、もう一つ。
「ねぇ坂本くん。俺も「あか」が似合う?」
「似合うわけ、ねぇだろ。バカ。」
彼の言葉は優しくなかった。ただ一言、言って欲しいと望んでいたのに。お前も似合うと、ただそう言ってくれるだけで、よかったのに。彼と同じだと思えたならば、もっと幸せな気持ちで終われただろうに。
秋は紅葉、冬はリンゴ、春が来たらまたイチゴ。彼に似合う「あか」はずっとある。この世界で一番「あか」の似合う、大好きな人。
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