忍者ブログ
AdminWriteComment
V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.
2024/05/07 (Tue) 17:46:06

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

No.245
2008/07/24 (Thu) 23:56:45

リーダー、お誕生日おめでとうございます。
というか、37歳に見えませんが・・・・・

ともあれ、おめでたいことは確かです。
この1年も、リーダーが楽しくて仕方ないと思えるような1年になりますように。

さて、イノまぁ祭りに誕生日小説を出展いたしました。
そして、ここでもまた違う誕生日小説を更新です。

暗いですが・・・祝ってます。


出演 : 坂本 昌行 ・ 井ノ原 快彦






Il qui le fait
 
 
 
 世間に数多く存在する井ノ原の真実を知らない人間は、まるでそれが口癖か流行語であるかのようにぼろぼろと零していく。
 
 「彼、最近変わったね。」
 
 至極近い距離にいる人間は少しの気を使って、当たり障りのない言葉や態度でやり過ごす。隠された事情を知りたくて仕方がないのだろうが、日常に支障を来たすという危惧を捨てきれないのかもしれない。
 
 渦中の彼、井ノ原は突然、長年続けてきた日記を誰にも何の説明もなくやめてしまった。そのことが、周囲に何事かが彼のみに襲い掛かったのだと悟られる大きなきっかけとなったのは言うまでもない。それについては、名誉のために言っておく。決して面倒になったわけでも飽きてしまったわけでもなく、ただ単に、書けるような状況ではなくなってしまったからなのであると。かつての彼はもう、今となっては役者である井ノ原快彦が演じる役柄の持つ人格の一人でしかない。安直に表現するなら、架空の人物へと変貌を遂げてしまったのだ。
 
 発端は6月の中旬に遡る。番組の収録が終わり、いつもの年長メンバー3人は食事に行く運びになった。店はもちろん、年下のメンバーに『メシ屋要員』といういいのか悪いのかよく分からない称号をもらってしまった長野が選ぶ。「任せる。」と丸投げな意見を述べる俺、坂本と、「アレが食べたい。コレが食べたい。」と統一性のないリクエストを取っ散らかす井ノ原を軽く片手間にこなしつつ、長野の名刺を手繰る手は止まる気配を見せない。2人の酒好きと自分の肥えた舌、双方を充分に満足させる店を入念にセレクトしているのだろう。食に関して、この男が外すことなど有り得ない。という確信の元、俺はふいに静かになった彼へと意識の矛先を向けた。この瞬間が、スタートラインだった。
 完全に焦点を失った彼の目に、悪寒さえ覚えた。わずかな前兆もなく、電池の切れたオモチャのように制止した彼は幾度か名前を呼んでみたものの、反応という行動は起こさない。睡魔と闘っているわけでもなく、本当に単にバッテリー切れな様子の彼。俺は焦り、動揺し、大声で名前を呼びながら激しく身体を揺さぶった。すると彼はポツリと、感情のない声で呟く。
「あさやけのみえるうみにいかなくちゃ。」
ゆらりと立ち上がり、誰も止める者がいなければ本当に海へ直行していたかもしれない。それを許せば彼は二度と戻らない気がして、全力で止めたのだけれど俺自身が恐かったが故の行動だったのだと思う。大切な名刺たちを放り出してまで傍に来た長野が、先に握ったのは俺の手だったから。酷く震えていた。昔からそうだ。曖昧なトラブルに弱くて、四六時中何かを喪うことを恐れている。それをすべての人に対して隠し通すことが一番重要なことなのだと、常に気を張り続けている。年下のメンバー3人がここにいないことは、せめてもの救いだった。
「坂本くん?」
訝しげにかけられた彼の声は普段の井ノ原のもので、ゆっくりと長野の顔を視界に捉えれば、若干の苦笑。俺は慎重に息を吸い込み、確認するように呼吸を再開した。
 
 頼みもしないのに飛び込んできた大き過ぎる変化は、いよいよ俺を追い詰めていく。1人だったら、思考回路が瞬く間にオーバーヒートを起こし、彼を容赦なく傷つけていたに違いない。言葉と力の、両方を駆使して。
「俺、井ノ原じゃないよ。」
満面の笑みで軽く放たれた暴言。いつも通りに仕事に来たはずの彼は、平然と俺の呼びかけを全否定した。スタッフに挨拶をしながら現場入り姿に違和感はなかったし、当たり前に衣装に着替えたはずだ。それがロケの始まる時間になり声をかけた途端、返された言葉。矛盾にもほどがある。
「じゃあ、誰なんだ?」
努めて冷静な口調で尋ねれば、
「井ノ原だよ。」
無理問答の如く言い切られてしまった。意味の分からない出来事と間もなくロケが始まるという現実は、俺を苛立たせる。強引に彼の腕を取り、強制連行を試みた。するとスイッチが切り替わったようにあっさりと通常営業に戻った彼が、酷く困惑した様子で探るように俺の名前を呼んだ。
 
 まさか同じグループのメンバーが同居する日が来るとは、考えもしなかった。そうせざるを得ないのだが。最初は不可解な言動もごく稀なことで済んでいて、いつもより少し多めに気を配っていれば事足りていた。しかし今では、ほぼ毎日くるくると一日のスケジュールに予め組み込まれているかのように変化する。傍にいなければならないと思う。昨日だってタクシーに乗った際、運転手に思い切り怪しまれた。
「V6の坂本さんと井ノ原さんですよね。いつも見させてもらってます。」
何も珍しくない。こうやって声をかけられることには慣れている。坂本はあいさつ感覚のそれにいつも通りの応対をしようとした。が、先に口を開いたのは彼で、
「やだなぁ、運転手さん。俺はV6の岡田ですよー。」
タクシー内の空気は、みるみるうちに凍りつく。とても自然に吐き出された言葉は、冗談で片すにも無理があった。どうあしらえばいいものか。という困惑が、バックミラーに映る運転手の泳ぐ視線から見て取れる。下手なフォローで彼が余計なことを口走れば、事態はもっとややこしくなるに決まっていた。自分の非力さにうんざりしながらも、その場は沈黙で押し通すことしか出来なかった。
 ありとあらゆる場所で虚言を披露しまくってくれるんじゃないだろうか。杞憂では済まされなさそうな現状に、俺は彼を監視するという道を選んだ。大いなるエゴだと罵られれば、甘んじて受け入れるしかない。守りたかったのは彼であると同時に、自らを取り巻く環境やかけがえのない居場所だったのだから。壊れてしまった後では須く修復する自信がなく、だったら先に手を打っておけばいいと考えた。目の届くところに置いて、これ以上の悪循環を招き入れないように。ただ言っておく。日記を書かなくなってしまったのは彼の意思である。そこにどういった心理が作用したのかは知らないが、自分なんかが人に読んでもらう文章を書かない方がいい。などと口走っていた。手負いの小動物のように弱ってしまった彼を、この地球上に存在するすべてが忘れ去ってしまう日が、いつか訪れそうな悪い予感が湧き上がってくる。その流れが迫る過程に、十中八九、効果音はない。
 
 消費される日々の中で、俺は何度、彼のために何かしてやったことがあっただろうか。共に喜怒哀楽を分かち合いたいと願いながら、それを為せるだけの努力は足りていただろうか。いずれも評価は『不可』、落第点。もっとできることはあったのに、しなかった。結果、今目の前にある光景。どこから触れるといいだろう。いっそ、順序立てて説明するとしよう。そうすると多大な時間を遡ることになる。あまりに未熟だった俺が、知らず彼を捨てた日に。一方的に残酷な方法で、本来ならば表面化するはずのなかった闇を、ある意味の暴力で引きずり出した日に。
 迂闊で自分のことしか考えられない愚かな俺は、数え切れないほど井ノ原快彦を捨ててきた。諦めることなくまっすぐに手を差し出し続けてくれた彼を、幾度拒んだことだろう。その繰り返しの中で彼は知り、もうずっと前から拒絶していたに違いない。そして静かに積もったそれらが自らを埋め尽くし、溺れてしまった。何にどう縋れば救われるのかも、知らぬまま。
 帰宅してみて、彼の姿を確認できないことに大いに焦った。名前を呼んでも返ってこない返事。ゴミ箱に放り込まれた携帯電話。ふと自分の携帯を見て、こみ上げるのは後悔と怒り。一時間ほど前から分刻みで表示されている彼からの着信。また、見逃した。
「返事しろ!井ノ原っ。」
無性に泣きたい衝動に駆られる。
「井ノ原っ!」
誓ってもいいのだ。二度と裏切らないと。だから・・・・・
「・・・・か、もとくん。」
聞き逃したりしない。たとえ消え入りそうな声でも、掠れて途切れていても、姿が見えなくても、どんな結末が待ち受けていても。
「井ノ原!」
彼がいた場所は、狭く暗いクローゼットの中。俺の私服や私物が押し込まれて、わずかな隙間しか残していない。そこに迷子になった幼子のような不安を纏って身体を小さく折り畳んで入り込み、強く抱きしめていた。俺が一番気に入っている黒のジャケット。必死という表現がまさにしっくり当てはまるほど、絶対に話すまいという意思を込めてしがみ着いていた。呼んでも返事をしないし、手も握り返してくれない。
「出て来いよ、井ノ原。」
手を差し伸べれば、泣いていたのか細く掠れた声で、俺に向けられたのは彼なりの反撃なのかもしれない。
「騙されるもんか!坂本くんのフリして、俺を壊そうったってそうはいかないよ。」
伏せられた顔からはその表情が見て取れないけれど、言葉とは裏腹で今にも、押し潰されそうな泣き顔でいるのだ。精いっぱいの自己防衛。スルーされたサインはきっと、俺を必要としているという叫び声だったはずなのに。
「悪かった。ごめんな。独りにして、本当にごめん。」
「ウソ、なんだろ。」
「ごめん。」
そうっと髪を撫でると、彼の身体は強く硬直した。ジャケットを抱きすくめる手は小刻みに震えている。
「ホンモノの坂本くん?」
「ああ。お前を、連れ出しにきたんだ。」
手離せないのは俺のほう。恐がっているのは俺のほう。彼が普通じゃないと焦って、頭の中ではフォローの言葉を掻き集めて、けれど冷静でいると偽る。自分でも吐き気がするほど、みっともない。
「あーあ、お腹すいた。」
「は?」
「坂本くんが帰ってくるの、待ってたからお腹ペコペコなの。」
得たものは、慣れ。テレビのザッピングのように変化する彼に対し、順応できる。
「お前、自分でつくろうとは思わねぇのか。」
「だってさー、坂本くんが作ったほうがウマいじゃん。」
思い描いた毎日と違っても、彼はここにいるのだ。
「リクエストは?」
「和食!」
「かしこまりました。っつーか、手伝えよな。」
「はーい。」
誤魔化しの連鎖で深く沈んでいく底なし沼。彼の心を取り戻す術は、まだ見つかりそうにない。俺は時間に糸目をかけず、そばにいるつもりだけれど。
「俺、知ってるんだ。」
「うん?」
「坂本くんって、俺のこと重荷に感じてるでしょ。」
「いのはら?」
「毎日見てるから、知ってるんだぁ。」
「それは誤解だ。重荷だなんて・・・・・」
「重荷がなくなったら、気が楽になるよね。」
 
 あかい、あかい。彼は彼の世界を作り上げた。悲しいかな、とても綺麗な世界。俺はどうすることもできずに見ている。『あか』が染めた彼を。ここ最近で一番穏やかな笑顔を浮かべた、『あか』の中で眠る彼を。あまりにも静か。俺に声をあげて泣くことは、許さないと戒めているように。
 そうだよ、彼は変わってしまったんだ。だから俺が守ろうと思ったのに。なのに、結末は破滅的で綺麗で、泣くことさえ忘れそうな、最悪のシーンだった。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
[251]  [250]  [249]  [248]  [247]  [245]  [244]  [243]  [242]  [240]  [239
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
ごとう のりこ
性別:
非公開
職業:
妄想家
自己紹介:
無断転載、引用をすると、呪われます。
検索避けが掛かっております。
リンクの際には一言お声かけにご協力ください。
V6非恋愛小説サイト様でしたら、お気軽にリンクしていただいて構いません。むしろしていただけるなんて光栄の極みです。
感想、ご意見などをお寄せいただけると、管理人はニヤリとします。レスは必ずお返しいたします。
リンクの『ごいけんめやすばこ』にてお待ちいたしております。

感想、ご意見などを『ごいけんめやすばこ』に書くのは憚られる。という方は、お気軽にメールでお寄せいただけましたら、管理人は密かに嬉し涙しつつ、お返事させていただきます。リンクの『ゆうびんきょく』よりメールフォームがご利用いただけます。









    follow me on Twitter



    ブログ内検索
    カウンター
    最新コメント
    [01/25 管理人ごとう]
    [01/24 なな]
    [08/21 らん]
    [06/02 管理人ごとう]
    [05/29 あいあい]
    アクセス解析
    最新トラックバック
    忍者ブログ [PR]