Happiness nightmarish

短編更新です。

Ｖシュランのリーダーは最強ですね、相変わらず。

どうしてあんなにも素直に表情に表すんでしょうかね。
大きなシラスのカツ丼を見た瞬間の顔！
イヤそう過ぎました。
食べたら嬉しそうな顔するんですけどね。

いい人だ。きっといい人だ。


出演　：　井ノ原　快彦　・　坂本　昌行

Happiness nightmarish

 

 

 

　やめねぇよ。

 

　その答えはいつも、絶対に用意しておくべきだった。

 

 

　はじまりは、単純に捉えればただの世間話。けれど深読みする理由なんてないから、とても簡単に流してしまったんだ。

「長野くんってさ、今日は何してるか知ってる？」

「さぁ？オフだから食べ歩きなんじゃね？」

「ふぅん。」

誰だって世間話だと思うはずだ。ロケ終わりで飲みに行った帰り道、酔い冷ましがてら歩く夜道は生暖かくて、今夜も熱帯夜なのだと主張していた。ご機嫌で鼻歌を歌いながら数歩先を覚束ない足取りで歩いていた井ノ原が、ふいに立ち止まって放った言葉。メンバーの仕事のスケジュールは知っていても。プライベートの予定など知るはずがない。むしろ知っていたら恐い。長野は昨日と今日はオフで、そういえば・・・・・

「昨日、お前ランチ一緒にしたってイノなきに書いてなかったか？」

「書いたよ。」

「じゃあ今日の予定も聞いてんじゃねぇの？」

「彼女じゃないんだからさ、そんな細かくリサーチしないって。」

苦笑を浮かべた井ノ原は、眉尻を下げたまま「厭らしい」という形容がぴったりの笑みを口元にだけ浮かべ、ひどく好戦的な視線を坂本に向けた。

「坂本くんはさ、ずっと、ずーっとＶ６だよね？」

「はぁ？急に何言い出すんだよ。っつーか酔ってんだろ、お前。」

酔っ払いの戯言だと、軽く流そうとしていた。完全に油断し切っていて、真正面から真剣に取り合うことさえせずに。井ノ原の浮かべた笑みには意味があり、まともに取り合うべきだったと分かるのが、完全に遅れた。

「いつかは、辞める？それは近い将来の話？」

「んなこと言ってないだろうが。」

「じゃあ絶対の絶対に辞めない？」

「たぶん、な。」

「未来は不確定です。ってことなんだね。」

ふと見れば、井ノ原は納得したように何度も首を縦に振って笑っていた。

 

　月が特別な意味など持たず、ただ単純に照らす夜道。浮かび上がるのは満足そうに笑う男と、二度と笑うことの出来なくなった元は人間だったモノ。おそらく他意はなかったのだろう。子供が素朴な疑問の答えを親に求めるのと同じ。純粋に確証を得て安心したかっただけなのだ。なのに、それにすら応えられなかったら結末は、こうなったとしても仕方がないのかもしれない。

「坂本くんもいなくなっちゃったか。」

ちっとも残念そうでない口調で言ってのけると、井ノ原は携帯電話のスケジュール帳を呼び出す。そこには自分以外のメンバーのスケジュールが細かく書き込まれていて、すでに必要のなくなった長野と坂本のものは、削除されていた。

「次は誰に聞こっかなー。」

無邪気な言い様は、無垢な子供のようであるいは、子供よりもずっと純粋なのかもしれない。そう、そこに存在する唯一の願いは。

 

　欲しい答えはたったひとつ。

 

　大切なものはどこまでいっても続いていて欲しい。

 

　幸せな世界に、生きていたいだけ。

 

　それだけの願い。

 

　途方もなく広大で儚い願い。